強欲を司る略奪者   作:ユキシア

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開戦と怠惰

「・・・・ここか」

 

煉と煉の眷属たちであるレスティナたちは初代七大魔王たちに捕らわれたウラルを取り返す為に冥界にある旧魔王たちが住んでいた跡地へ到着すると煉たちの目の前には巨大な城があった。すると、突然、城門が開いた。

 

「・・・・入って来いってことか?いいぜ。行ってやる」

 

煉たちは迷うことなく門を潜り城の中へと足を踏み入れる。すると

 

「やっほー!お久しぶりだね、お兄さん!」

 

煉達の前に立ちはだかっていたのは色欲の魔神、シルティ・アスモデウスであった。

 

「ウラルはどこにいる?素直に吐けば軽いお仕置き程度で済ましてやるぞ?」

 

「出来ればエッチなお仕置きでお願いします。ここの地下にリオンと一緒にいて私が鎖で亀甲縛り状態にしておきました」

 

「亀甲縛りと言ったら荒縄だろう?あの体に喰い込む感じがエロくていいんじゃねえか。お仕置きはハードかアブノーマルか?」

 

「それもいいと思ったんだけどやっぱり囚われのお姫さまと言ったら地下で鎖が常識だよ。あとアブノーマルで」

 

「いったい何の話をしているのですか!?この変態魔神たち!」

 

殺伐とした雰囲気の中、急にズレた話を始めた煉とシルティに香歩は思わず煉とシルティにツッコンでしまった。

 

「「変態魔神ですが何か?」」

 

「何で敵同士で息が合っているんですか!?」

 

「「色欲/強欲の魔神だから」」

 

「ええい!さっさと話を戻しなさい!」

 

再び、香歩にツッコミを入れられた煉とシルティ。するとシルティは煉に話しかける。

 

「ねーねー、お兄さん。私達のところに来てよ。もちろん眷属の皆と一緒にさ。そして、一緒に人間を喰べまくろうよ。きっと楽しいし、私個人としてお兄さんと戦いたくないし、何よりお兄さんの後ろにいる眷属の女の子たちを・・・・じゅるり、ハーハー、しゃぶりつくしたい。ウヒヒ」

 

目を光らせながら涎を垂らし、香歩たちを舐めまわすように見るシルティに香歩たちは身を拒ませるが煉が香歩たちの前に行く。

 

「悪いな、シルティ。確かにお前とは気が合いそうだが断らせてもらうぜ。リオン・ルシファーは俺の女を攫った。あいつを倒すには充分な理由だ」

 

「ええーー!そっか、残念・・・・・・それじゃあリオンの予定通りか」

 

残念そうに叫んだシルティは小声でそうつぶやくと手元にルービックキューブを出現させると同時、シルティや煉たちの姿が忽然と消えた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・ここはどこですか?」

 

突然、転移された香歩は辺りを見渡すと何もない空間。悪魔のレーティングゲームのような空間にいた。

 

「香歩お姉ちゃん!」

 

「香歩殿」

 

聞き慣れた声が聞こえ振り返るとそこには雫とあずみがこちらに来ていた。

 

「香歩殿。ここはいったい・・・・」

 

「少々お待ちください。今、解析します」

 

香歩は人口神器、解析の魔眼鏡(アナリスト・オルクヴィートロイ)をかけ辺りを見渡す。

 

「どうやらここは魔力で出来た箱の中に閉じ込められているようですね。それもかなり濃密な魔力で。恐らくご主人様たちも私たちと同じように閉じ込められているのでしょう」

 

「ふぁ~。その通りだよ」

 

「「「っ!?」」」

 

突然の第三者の声に振り返るとそこには中学生ぐらいの茶髪の眠たそうな男がいた。

 

「この空間は・・・・・・・・・ああ、めんどくさいからいいや。僕は初代七大魔王の一人にして怠惰の魔神、グルー・ベルフェゴール。初めまして、強奪神の眷属の人たち」

 

呑気に欠伸をしながら名前を名乗るグル―に香歩は問いかけた。

 

「グルー・ベルフェゴールさん。どうしてウラルさんを狙ったのですか?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

香歩の問いかけにグルーは無言で返した。答える気がないと思った香歩たちは戦闘態勢に入る。雫は神器を発動して香歩とあずみの後ろに行き、あずみは四獣の力宿している宝刀を取り出し、香歩は魔力を具現化させ盾と刀を創る。

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

「・・・・・・・・・」

 

いつ攻撃されようが対応できるように身構える香歩たち。だが、グルーはぴくりとも動かなかった。あまりの異変に香歩たちは疑問を感じていると

 

「スースー」

 

小さな寝言が聞こえよく見るとグルーは立ったまま器用に寝ていた。

 

「こんな状況で何寝ているんですか!?」

 

「香歩殿!?」

 

思わずツッコミを入れてしまった香歩にあずみは驚きの声を上げてしまった。

 

「香歩殿!相手は主と同じ魔神の一人なのですぞ!何故ツッコミを!?」

 

「ご、ごめんなさい、条件反射でつい・・・・・」

 

冷や汗を流しながら顔を逸らす香歩。

 

「あー、いけない。つい寝てしまった。いや、もう眠いから寝ようか?リオンから倒せとまで言われてないし、とりあえずは・・・」

 

グルーは右腕を上にかざす。

 

「少し静かにさせるか」

 

右腕を香歩たちのほうに振り下ろすと香歩たちの足場に突如、小さなクレーターが出来た。

 

「これは風の魔法!?いえ、魔力ですか・・・・」

 

「正解。僕たち魔神の力は創造(クリエイション)と言ってね、自分の好きな力を創ることが出来るんだ。まあ、一度創ったら変えることは出来ないけど」

 

グルーは風を両の手の平に集める。

 

「そして、これが僕の魔力、静寂の風(サイレンス・ウインド)。風を自在に操り、見ることも、聞くことも出来ない静かな風。もちろん」

 

ドカッ!

 

「ぐっ!」

 

「あずみさん!」

 

「あずみお姉ちゃん!」

 

「攻撃するとき相手は喰らう瞬間まで気づくことも出来ない」

 

風の塊を喰らったあずみは後方に何メートルも飛ばされたがすぐに臨戦態勢に戻る。

 

「さてと、面倒だけど一応、僕らのボスであるリオンに強奪神がやられるまで時間を稼げ、もしくは殺せと言われているから死にたくなかったら粘ってね」

 

ドンドンドン!

 

雫は水の砲弾をグルーに向かって放つがグルーに当たる瞬間見えない壁にぶつかりグルーには当たらなかった。

 

「白虎!」

 

あずみは白い刀から白虎を出現させ、グルーに突進する。

 

「無駄だよ」

 

だが、白虎は風で斬り裂かれ姿が消えた。だが、あずみは白虎を囮にして一瞬でグルーの懐に入り込んだ。

 

「御守流、動の型・・・・四斬繚乱!」

 

至近距離で斬撃の四連撃を放つあずみ。だが、それも全て風で防がれてしまった。

 

「あずみさん!下がってください!」

 

香歩は魔力を鎖に具現化させグルーの体に巻きつかせる。だがグルーはそれをいともたやすく風で斬り裂いた。

 

「ふぁ~、もう終わり?」

 

欠伸をしながら言うグルーに香歩たちは歯を噛みしめる。

 

強い・・・・ッ!

 

香歩はずっとグルーの魔力を解析しようとしているがグルーの膨大な魔力量に解析が困難になっていた。

 

解析さえ出来れば後は私の魔力操作で勝機が生まれるはず・・・・・ッ!それまで時間を稼がないと・・・・ッ!

 

強敵であるグルー相手に香歩はどうやって解析出来るまでの時間を稼ぐか思考を働かせていると

 

海獣神の怒号(リヴァイアサン・レイヴ)ッ!」

 

雫が自分の持っている神器、海獣神の咆哮(リヴァイアサン・ローア)の形態解放し、強力な水の砲弾を放つ。

 

「いくら威力を上げても無駄だよ」

 

だが、グルーは風の盾を作りそれを防いだ。グルーが防いだと同時、あずみがグルーに接近し、刀を振り下ろしていた。

 

「ハァァァアア!!」

 

「だから無駄だって」

 

嘆息するかのように言いながらあずみの攻撃を風で防ぐ。

 

「ここだ!」

 

「っ!?」

 

正面にいたはずのあずみがいつの間にかグルーの背後に突然現れたがグルーはそれを避けて躱した。

 

「危ない危ない。確かキミは相手の意思や認識をズラす魔眼を持っていたんだった。お返し」

 

「ぐはっ!」

 

風があずみに直撃しあずみは飛ばされてしまうがそれでもまだ立ち上がることが出来た。

 

「あずみお姉ちゃん!」

 

「大事はない・・・」

 

雫は飛ばされたあずみの傍に行っているなか香歩は一つの変化に気づいた。

 

「まさか・・・・・」

 

確証はないけど、確かめる価値はある!

 

「いい加減さっさと倒れてくれない?僕、もう眠くて仕方ないんだけど・・・」

 

眠たそうに瞼を擦るグルーに香歩は魔力で刀を創り両手に握りしめ接近する。

 

「・・・・鬱陶しいな」

 

グルーは風で香歩を吹き飛ばそうと手を向けた瞬間、香歩は片方に持っている刀をグルー目掛けて投げつけた。

 

「それが何?」

 

だが、グルーは顔を動かしてそれをあっさりと躱し、続けて攻撃してきた香歩の攻撃を風で防いだ。しかし、香歩は防がれたにも関わらず不敵な笑みを浮かばせていた。

 

「いったい何が面白いガッ!?」

 

笑みを浮かばせている香歩にグルーは疑問を感じ問いかけようとした瞬間、突然グルーの背後から先程香歩が投げてきた刀がグルーの背中に突き刺さっていた。

 

「やはり、貴方のその力は一か所、いえ、正確には一か所における一定空間しか操ることが出来ないようですね」

 

「くそっ!」

 

風で薙ぎ払うかのように攻撃するグルーだが香歩はそれを躱し、距離を取る。

 

「貴方のその力には二つの弱点があります。一つは先程申し上げた通り。そして、もう一つは貴方が認識しているところしか風を操る空間を作ることは出来ないことです」

 

淡々と言う香歩の言葉にグルーは初めて苦渋の表情になる。

 

「始めにあずみさんを吹き飛ばしたとき、あの時は貴方の手元から風の弾丸を放ったと思っていました。しかし、そうではありませんでした。あれはあずみさんの周囲に風を操る空間を創り貴方が手を向けたと同時、風を固めあずみさんを吹き飛ばした。それを見た私たちは風を自在に操り攻撃するものと思い込ませ警戒させ、見えない、聞こえない攻撃と私たちに認識させるためのフェイク」

 

「・・・・・・」

 

歯を噛みしめるグルー。だが、香歩は続けて。

 

「魔眼を使って貴方に攻撃したとき貴方は避けて躱しましたね。何故か風で防御しませんでした。いえ、出来なかったのですね。それはつまり、貴方が認識しているところでしか風を操る空間は作れないから。だから、貴方はあの時避けて躱しました」

 

香歩は魔力で刀を創りそれをグルーに向けて言う。

 

「もし、違うのであればどうか否定してみてください」

 

「・・・・・・・」

 

香歩の言葉にグルーは一言も否定の言葉は出なかった。そして、その光景を見ているあずみは

 

何という洞察力・・・・・ッ!

 

香歩の洞察力に驚愕していた。正直、あずみは香歩は眷属のなかで一番弱い存在だと思っていた。自分の主である煉や圧倒的な攻撃力を誇るレスティナ。特殊な力を持つウラルや龍の力を持つ鬼姫、様々な生き物の力を持つ徹、冷静沈着な性格に神器を深く理解し、動きの無さや神器の特性を使いこなしているサイト。まだ子供だが海獣神の神器を持ち、一撃一撃の威力を持っている雫。そして自分自身であるあずみは生まれつき魔眼を持ち宝刀である四獣を持っている。だけど、香歩だけは誰もが持っている魔力を繊細に操作するだけで神器もなければ特殊な力もない。唯一持っているのが人口神器である解析の魔眼鏡(アナリスト・オルクヴィートロイ)だけ。だけど、これは解析するだけで攻撃の手段には使えない。

 

考えを改めなければならぬな・・・・。

 

あずみの中で香歩の認識が改まった。それと同時、今まで香歩をどういう目で見ていたことを正直に話して謝ろうとあずみはそう考えた。

 

「どんな強力な力でも見破られたら終わりです。降伏して私たちをここから出してください」

 

グルー降伏するように告げる香歩にグルーは肩の力が抜け腕をダランとし、上を向く。

 

「あーあ、こんなにも早く僕の力が見破られるなんて思ってもみなかったよ」

 

ため息を吐き頭を掻くグルー。

 

「わかったよ。キミたちを舐めすぎていた」

 

グルーのその言葉に香歩たちは安堵の息を漏らす。

 

「だから、キミたちを敵と認識し、一人の神として魔神として本気を出そう」

 

終わった。そう思った矢先にグルーはそう言い放つと同時、膨大な魔力がグル―から溢れ出た。その魔力量に香歩たちは驚愕を通り超えて恐怖した。それと同時、グルーの両腕に緋色のブレスレッドが出現した。

 

「これがこの人間の肉体が持っている神器、支配の腕輪(ドミネーション・ブレスレッド)。この神器の能力は手をかざしたところの一定箇所、一定時間の間、支配することが出来る。その部分だけ重力を軽くすることも重くすることも生物であれば空間内の体の一部でも支配することが出来る」

 

「な・・・・何故・・それを・・・・・」

 

何故、敵にそこまで説明するのか問いかけようとする香歩だがグルーの魔力に当てたれ声がまともに出なかった。しかし、グルーには聞こえたのかそれに答えた。

 

「僕はね。基本的には面倒なことはしないし、する気もない。戦いだってそれは同じだ。今はリオンの命令でここにいるだけで適当に終わらせて寝るつもりだった。だけど、敵として認識した相手は面倒とは思わない。魔神の一人として本気で戦わせてもらう」

 

真剣な表情で香歩たちに告げるグルー。そして、香歩たちにとって絶望的な言葉をグルーは口にした。

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

その言葉と同時、先程まで溢れ出ていた膨大な魔力がグルーの両腕に巻きつくように纏わっていき、グル―の両腕は緋色に覆われ、両手首には円盤のようなものが付いていた。

 

「これは強奪神をヒントに編み出した魔神の魔力を最大限に引き出し、尚且つ神器まで加えた魔神の新たな力。名を空神の魔風(シエルデュー・デュバン)。改めてもう一度名乗らせてもらう。僕は初代七大魔王の一人して怠惰の魔神、グルー・ベルフェゴール。強奪神たちの眷属たちよ。名を聞かせてもらおう」

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

名を聞こうとするグルー。だが、香歩たちは恐怖に怯え声を出すどころか体の震えが止まらなかった。それを見たグルーは瞑目し、息を漏らす。

 

「名を聞きたかったけど仕方ない。早く終わらせてあげるよ」

 

グルーは両腕に付いている円盤を飛ばし、香歩たちを挟み込むように囲む。すると、その円盤から風が出現し始める。

 

まずい!動いて!私の体!早く!早く!

 

香歩たちはそれを避けようと体を必死に動かそうとするが恐怖で動くことは出来なかった。

 

大嵐(テンペスト)

 

ドゴッオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!

 

円盤から発生した嵐に香歩たちは飲み込まれ円盤から風が止むと体中ズタボロになり地面に倒れている香歩たち。

 

「まだ生きているのであればそのままでいるといい。僕たち魔神の目的は強奪神だからキミたちの主が死ぬまでそこで眠っているといい。目が覚めたころには全て終わっているはずだ」

 

グルーは香歩たちの容体を見てそう告げ禁手(バランス・ブレイカー)を解く。

 

「魔神とはいえ神相手に本気を出させたんだ。その攻撃を喰らって生きているだけでもキミたちは称賛に値する」

 

称賛の言葉を言うグルー。だが、香歩たちには聞こえなかった。その前に言葉に意識が行っているからだ。

 

ご主人様が・・・・死ぬ・・・・。いや、それだけは・・・・絶対に・・・・ッ!

 

涙が溢れる。だが、今だに恐怖で体が動けなかった。煉が死ぬなんてありえない。香歩はそう思ってる。だけど実際に魔神の力を目の当たりにした香歩は煉が死んでしまうかも思ってしまった。

 

行きたい!ご主人様・・・・レンさんのところへ・・・・生きて会いたい!

 

自分にとっての全てを捧げてもいい存在である煉が死ぬのは自分が死ぬより辛い。今すぐにでも立ち上がって、戦って、勝って、生きて会いたい。だけど、今の香歩は恐怖に打ち勝つ勇気がなかった。

 

主殿が・・・・・。

 

香歩同様、あずみも恐怖で体が動かなかった。

 

認めるものか・・・・私が認めた主殿がそう簡単に死ぬわけがない。

 

虚栄心を張るかのように自分に言い放つあずみ。だが、魔神の力を思い知らされたあずみも最悪な事態を想像してしまった。

 

主殿の忍、失格だな。

 

一瞬でもそう思ってしまったあずみは自分の心の不甲斐なさを思い知り、諦めたかのように目を閉じようとする。

 

「い、いや・・・・・」

 

だけど、その言葉を聞きあずみは目を見開いた。いや、あずみだけではなく香歩やグルーまでも目を見開いていた。何故なら、子供である雫が動けるはずのない恐怖のなか立ち上がったのだから。

 

「いや・・・・いや、いや!お兄ちゃんもウラルお姉ちゃんも皆死ぬなんていや!絶対いや!」

 

「だ・・・め・・・・・雫ちゃん・・・・・」

 

声を振り絞り雫を止めようとする香歩。だけど雫は止まらなかった。

 

「死なせない!お兄ちゃんもウラルお姉ちゃんも香歩お姉ちゃんもあずみお姉ちゃんも皆、私の大好きな人たちなんだから!」

 

雫は涙を流しながらも自分の神器をグルーに向ける。

 

「もう守られてもらうばかりの私はもういや!今度は私がお兄ちゃんたちを守る!」

 

その雫の姿にグルーは内心驚愕していた。香歩やあずみならまだグルーは理解できた。しかし、現実は違った。香歩とあずみは恐怖と先程のグルーの攻撃でダメージを負いいまだに立てれなかったのに対して体の至る所が傷だらけで力の差を見せしめ普通なら立つことの出来ない状況で子供で、一番戦闘経験の少ない筈の雫が立ち、武器を構えている。それを見たグルーはもう一度禁手化(バランス・ブレイク)する。

 

「まだ子供なのに見事な覚悟。その覚悟と決意に僕は―――――――キミを確実に消そう」

 

グルーは再び円盤を飛ばし、今度はそれを自分の両肩周辺に留める。

 

「今度はさっきと違って手加減なしの本気の攻撃だ。これを直撃したらキミの体は肉片残らず消滅するほどの強力無慈悲な攻撃」

 

グルーの元々の魔力の力は空間内に強固の風を発生させる防御型の魔力。それに神器である支配の腕輪(ドミネーション・ブレスレッド)を加えた禁手(バランス・ブレイカー)である空神の魔風(シエルデュー・デュバン)は円盤中心を真空状態にし、そこから風を集めそれを自在に制御することが出来る。そして、その真空を作る範囲が広ければ広いほど威力は増し、強力な力を出すことが出来る。

 

本来なら使わなくてもいいけど・・・・・・。

 

グルーはもう一度雫に視線を送る。その瞳は死ぬ覚悟の出来た瞳じゃなかった。絶望的状況下でありながら生きて勝つという気迫の瞳だった。

 

死を覚悟して、向かってくる奴は今までも見てきた。そういう奴は大抵はすぐに死んだ。だけど、あの目は何かが違う。

 

長い年月生きてきたグルーの直感と経験から雫の存在自体を消さなければならない存在と感じ取った。だからこそ、グルーは本気を出す。

 

「これで終わりだ」

 

グルーは円盤の照準を雫に向ける。そして、その円盤からは先程とは比べ物にもならないくらいの風が発生していた。

 

「雫ちゃん・・・・逃げて・・・」

 

「・・・・・く、体が・・・・・」

 

香歩とあずみは雫を助けようと必死に体を動かすが恐怖が体に纏わりつくまともに動くことも出来なかった。そして、雫自身もグルーの圧倒的な力に足を震わせ死の恐怖に今にも逃げたかった。だけど、雫は・・・・・。

 

逃げない・・・・逃げたくない!私はお兄ちゃんのように・・・・・皆を守るんだ!

 

逃げなかった。自分を助けてくれた煉のようになるために雫はその覚悟だけで今、立っている。

 

だからお願い、海獣神の咆哮(リヴァイアサン・ローア)ッ!私の想いに応えてくれるなら力を貸して!

 

その瞬間、雫の神器である海獣神の咆哮(リヴァイアサン・ローア)が雫の想いに応えるかのように蒼く輝き始める。それを見たグルーは瞬時に理解した。

 

至ろうとしているんだ・・・・ッ!禁手(バランス・ブレイカー)に!だけど!

 

「こっちのほうが速い!暴撃神嵐(テュラン・テンペスタ)ッ!」

 

刹那、圧倒的な暴風が円盤から発射された。

 

「全てを薙ぎ払い飲み込む!魔神の嵐の飲まれ存在そのものごと吹き飛ぶがいい!」

 

その無慈悲なまでの暴風は・・・・・。

 

 

 

 

 

――――――――雫を飲み込んだ。

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