色欲の魔神シルティ・アスモデウスと戦闘を繰り広げていた煉の
『NO、1325。実験開始』
それは徹が煉たちと出会う前、生物兵器として科学者たちに体を弄り回されていた時のことだった。
あらゆる生物の特性を適合させるために体中を薬漬けされ、何度も痛みに失神して痛みで目を覚ます毎日。
「たすけ・・・・たすけて・・・・」
助けて、助けてと何度も懇願する徹。だが、科学者たちはそんな徹の懇願に傾ける耳は無かった。
ただ、淡々に作業をこなすように、尚且つ死なないように細心の注意を払いながら実験を繰り返していた。
元々徹は普通の少年だった。自分を産んでくれた両親がいて、家があって、家庭がある。極々普通の少年だった。
だけど、ある日を境に徹の人生は大きく変わった。
両親が詐欺師に騙されて多額の借金を抱えたまま自殺した。
まだ幼い徹は自殺することが出来なかった為、借金取りに連れて行かれて科学者たちの実験台として徹は売られた。
そこには徹以外にも多くの少年少女がいたが、すでにその少年少女は人ではなくなっていた。
角が生えている少年、鋭い牙がある少女、人の原形を留めていないものまで閉じ込められていた。
そして、徹の腕に1325という番号を付けられてその日から徹の地獄が始まった。
痛みという痛み、苦しみという苦しみ。
休むことなく毎日行われ、次第に徹の体に変化が訪れた。
自分の身体とは違う全く別の何かに徹は変化した。
しかも、それを見た科学者たちは徹の実験結果を見て歓喜した。
今までの実験体の中で徹はどの生物との適合率が非常に高いということが判明された。
それを知った科学者は更なる実験を徹に行った。
それは魔獣、聖獣、妖怪、それ以外の生物の細胞を徹に埋め込み適応させようとという実験だった。
更なる苦痛、恐怖、絶望を徹は知った。
毎日が地獄、いや、地獄以上だった。
適応に成功するにつれて歓喜する科学者たち。
成功するにつれて絶望していく徹。
死にたい・・・・・死なせて・・・・・。
助けてという懇願から死にたいという懇願にへと変わる程まで徹は絶望していた。
もう、自分が自分ではない。いや、自分とはなんなのかさえ、わからなくなった。
両親の名前は?好きな食べ物は?嫌いな食べ物は?誕生日は?名前は?
その全てがわからなくなった。
「あ・・・・ああ・・・・・・」
自分の中にある何かが崩れる音が聞こえた。
「さーて、そろそろ壊れたかなっと」
徹を黒い箱の中に閉じ込めているシルティは徹の様子を確認していた。
「おー、いい感じに壊れている壊れてる。これなら調教もスムーズにいけるなぁ。ウヒヒ、これでプレイの幅も広がる」
実質、徹が閉じ込められてからそこまでの時間は経っていなかった。
徹を閉じ込めてから実質10分も経っていない。
だけど、徹にとってたった10分でも一日以上に感じていた。
「さてさて、この子を調教したらそうだな・・・・グルーのところならまだ五体満足かな?お兄さんとは違って後は適当の転移させたから誰がどこにいるか調べないとねぇ。あー、無事だといいな、ペロペロしたな、しゃぶりたいな・・・・じゅる」
妄想を加速させ、涎を垂らすシルティ。
「あー、エルフのお姉さんのおっぱいもよかったな。リオンのことだからまだ生きてると思うから用が終わったら私にエルフのお姉さんくれないかな~ダメかな~」
捕えているウラルのことを思い出してぼやくシルティ。すると、徹を閉じ込めている黒い箱が少しずつ崩壊し始めた。
「あ、とうとう壊れちゃったか」
歓喜な声を上げながら近づくシルティ。そこには膝をついて動かない徹の姿がいた。
「うんうん、いい感じに壊れてる。これなら問題ないかな?この
徹の様子を見てはしゃぐシルティは徹と視線を合わせる。
「私の声聞こえる?聞こえるなら頷いて」
「・・・・・・・」
徹は静かに頷いた。それを見たシルティは笑みを浮かべる。
ほんと、壊れた人の調教って簡単だな~。
一度壊してから自分の思うように別の心を植え付けるのがシルティの調教。
「いい?よく聞いて。キミは私の玩具。私の言うことだけを聞くんだよ。私の役に立つことがキミの幸せなんだよ」
「・・・・しあわせ・・・」
「そう、さぁ、手を取って私の玩具に」
手を差し伸ばすシルティに徹はゆっくりと確実にシルティの手を握ろうと手を伸ばす。
「そう、それでいいの」
手を伸ばしてくる徹にシルティの表情は新しい玩具ができたとう確信の笑みを浮かべていた。
「・・・・・・」
それに対して徹は何も考えられなくなった。
ただ目の前にいるシルティの言われたとおりに手を伸ばした。
何もかも全てがどうでもよくなった。
もう、どうでもいい、や・・・・。
何もかも諦めてただシルティの手を握ろうとした。
『良し!お前の名前は山神徹だ!』
しかし、徹の手は突然止まった。
「?」
突然止まった徹にシルティは首を傾げる。
もしかしてまだ
記憶とは定着するもの。止まったのはまだトラウマをまた思い出していると思ったシルティは徹が再び動き出すのを待っていた。
しかし、徹の頭の中にはシルティが思っていた違う光景が浮かんでいた。
『あの、どうして山神徹なのですか?』
メイド服を着た女性が名前を言った男性に尋ねると男性は胸を張って答えた。
『ノリと気分!』
胸を張って答えた男性の頭にメイドはハリセンで頭を叩いた。
『名前をノリや気分で決めないでください!』
『そうだよ~、私はこの子の名前をキーちゃんと命名!』
『〇〇〇さんももっと真面目に考えてください!』
耳が長く銀髪の女性が徹を抱きしめながら命名するがメイドの人にツッコまれていた。
『自分は鬼姫2がいいと思うっす!」
『〇〇ちゃんもご主人様たちにのらないでください!それと2ってなんですか!?』
『はいはい、落ち着きなさい〇〇。それでこの子をどうするの?〇〇』
高貴な雰囲気を漂わせる女性がメイドを和ませる。
『・・・・・〇〇さん』
『主殿』
太ももにナイフが収められている女性と忍者のような女性が男性を呼ぶ。
『お兄ちゃん・・・助けてあげて』
蒼髪の女の子が男性の服を握りしめて懇願すると男性はその女の子の頭を優しく撫でる。
『そうだな。ここのくそ科学者どもは全滅。被験者である子供たちも死んだ。辛うじて生きているのはこいつだけか・・・・』
男性のポケットから何かを取り出した。
『助けられなかった罪滅ぼしというわけではないが、こいつならずっとどうしようか悩んでいた最後の駒、
自分の体に駒のようなものを入れられる。
『お、転生出来たか。良く聞けよ、たった今からお前は山神徹だ。変更は認めん。嫌なら俺を倒してから変えろ。今日からお前は俺の下僕だ』
意味の分からない言葉ばかり述べる男性に頭がついて行けなかった。
『まぁ、その様子じゃ俺が何を言っているかはよくわかっていないだろう。だが、これだけは知っておけ』
男性はしゃがんで目線を合わせて手を伸ばす。
『今日からお前は俺の下僕であり、眷属であり、仲間であり、家族だ。お前が抱えているもの全て俺に、俺たちに奪わせろ。いいか?俺の名は煉 ヴィクトル。これをしっかり覚えておけよ、徹』
下僕など、眷属など、よくわからなかった。だけど、目の前にいる男、煉 ヴィクトルの存在が、言葉が、何もかも受け止めてくれるような気がした。
今まで感じていたはずの痛みも苦しみも恐怖も絶望も何もかもまるで奪われたかのように消え去った。
そして、伸ばされた手を徹はしっかりと握りしめた。
「・・・・思い・・・・出し、た・・・」
「え?」
あと少しで握っていたはずのシルティの手を徹は振り払い、シルティは驚愕した。
「僕・・・は・・・・・」
「うそ・・・・うそうそうそうそ!あり得ないよ!?」
ゆっくりと足に力を入れて立ち上がろうとする徹にシルティの理解を超えていた。
あり得ないよ!?完全に心は壊れていたんだよ!?今までどんな人間だろうと悪魔だろうとこれで壊して玩具にしてきたのにどうして!?
「僕・・・・は・・・・あの人・・・・の・・・・
立ち上がる徹。そして、今までに見た事も経験したことのない未知の恐怖と徹の気迫にシルティの表情は青ざめる。
「あの・・・・・人の・・・・煉・・・・・ヴィクトル・・・・の・・・・・家族・・・・・」
一歩、また一歩シルティに近づく徹に連れて下がるシルティ。
「ハハ・・・・お兄さんっていったい何者なんだろう?」
苦笑しながらそんな疑問が口から洩れるシルティは手元にあるルービックキューブを動かす。
「私はまだ死にたくないから逃げさせてもらうね!」
空間をいじり、逃げようとするシルティ。
だけど、いくら動かしても逃げることが出来なかった。
「え、なんで?さっきまで動いていたのに!?えい!えい!」
何度動かしても逃げることも別の空間に移動することも出来ないことにシルティは困惑する。
「まさか・・・・・」
困惑するなか、偶然にも思いついた結論。
「私の力を・・・・魔神の力を・・・・奪った?」
煉ならまだわかる。だけど、シルティが相手にしているのはその眷属の徹。適応する力はあっても奪う力はない。
だけど、徹が力に適応する力を持っていたら?すでに煉から強奪の力に適応してその力を使えたら?
「ハハ・・・・あり得ない・・・・本当にあり得ないよ・・・・お兄さんってどうやってこんな化け物を調教したんだろう?」
シルティはもはや笑うしかなかった。
そして、そのシルティの眼前に徹が拳を握りしめて全ての力を拳に集めていた。その一撃は全てを葬るような強力な一撃を。
それを見たシルティは悟ったかのように天を見上げる。
「あーあ、もっとエロいことしたかったな」
「あああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
咆哮に近い雄叫びを上げながら徹は自分の全力をシルティに向かって放つ。
向かってくる力の塊。喰らえば肉片一つ残らず消えるだろう。
その攻撃を甘んじて受けようとシルティは目を閉じた。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・あれ?
向かってきたはずの攻撃が来ないことに対してシルティは目を開けると自分の顔の近くで徹は攻撃をやめていた。
「どうして?」
シルティが真っ先に疑ったのは何故攻撃をやめたのかだ。
ウラルを攫い、トラウマを見せつけて心を壊そうとした。非道なことをしたシルティに徹は寸止めで攻撃をやめた。
「僕は・・・・キミを許せな、い。だけど、キミは女の子だか・・・・・ら・・・・」
その場に倒れる徹にシルティは顔を覗くとすやすやと寝ているのを確認した。
許せない。だけど、女の子だから攻撃しなかった。
シルティはそんな徹の言葉を思い出して胸元を押さえた。
「どうしよう・・・惚れちゃった」
徹の優しさがシルティの心を射抜いた。
ふふふ、私が一人の男の子に惚れるなんて・・・・覚悟してね、徹くん。魔神を惚れさせた罪はキミの体で払ってもらうからね♡ウヒヒ・・・・。
徹は気を失いながらも身の危険を感じた。