強欲を司る略奪者   作:ユキシア

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約半年ぶりの投稿!遅くなって申し訳ありません!


暴食と龍と人間の力

怠惰の魔神グルー・ベルフェゴールと色欲の魔神シルティ・アスモデウスを満身創痍になりながらも辛うじて倒すことに成功した香歩、あずみ、雫、徹。

残りは傲慢、嫉妬、憤怒、暴食の四人の魔神達。

 

「貴方が自分の相手っすか?」

 

煉を始めシルティ・アスモデウスにそれぞれ別空間に飛ばされたなか、煉の騎士(ナイト)である鬼姫の前にも一人の青年が立っていた。

 

「初めまして、私は暴食を司る魔神デュア・ベルゼブブ。以後お見知りおきを」

 

丁寧に一礼するデュアに鬼姫は一瞬戸惑うが、拳に力を入れてかまえる。

 

「申し訳ないっすけど自分は早く姐さんを助けに行かないといけないっすからソッコーで倒させてもらうっすよ」

 

鬼姫の体から電撃が迸り、雷撃龍(グローム・ドラゴン)の力を解放する。

そんな鬼姫にデュアは感嘆の声を上げる。

 

「これは素晴らしい。力強い龍の波動が肌を通して伝わってくるよ」

 

「御託はその辺にしないと一瞬で終わるっすよ!」

 

体中に雷撃を纏いながらデュアに突っ込んでいく鬼姫。殴り、蹴りの猛ラッシュといえる程の攻撃を繰り返す鬼姫だが、目の前のデュアは余裕綽々と躱す。

 

「この!」

 

余裕綽々と躱すデュアに鬼姫は苛立ちを感じながらも更に激しい攻撃を繰り出す。

そんな鬼姫をデュアは面白そうに見ていた。いや、見定めるかのように鬼姫を観察していた。

 

「いいね。もしかしたら君はさぞかし美味なのかもしれない」

 

「ッ!?」

 

デュアから感じるうすら寒い阿寒を感じた鬼姫はとっさに後退してデュアと距離をとる。後退する鬼姫にデュアは止めることも追撃することもなく何かに納得するかのように頷いていた。

 

「ふむ、リオンからは殺さないように言われていないし、食べても問題はないだろう」

 

鬼姫を見ているデュアの目が獲物を見つけてそれを食べることに悦びを感じている捕食者の目に変わる。目の前にいるデュアに恐怖を感じた鬼姫は雷撃を体内に走らせ、身体能力を極限まで上げる。

 

「ではまずは手ごろなサイズへカットするとしよう」

 

デュアは手元から一本の魔剣を創り出す。その魔剣に見覚えのある鬼姫はすぐに気付いた。リアス・グレモリーの騎士(ナイト)である木場祐斗が持っている神器、魔剣創造(ソード・バース)だった。

 

「この魔剣には龍殺しを付与している。龍の血を宿している君にはかすっただけども致命傷だね」

 

デュアの言葉に鬼姫の頬に汗が垂れる。デュアの言う通り龍と人間のハーフである鬼姫でも龍殺しは脅威でしかない。だけど、鬼姫はすぐに戦うことに意識を切り替えた。

 

「確かにヤバいっすけど当たらなければ意味がないっすよ!」

 

雷撃で極限まで身体能力を上げた鬼姫は一瞬でデュアの背後を取る。デュアは鬼姫に背後を取られているにも関わらず反応すらしていなかった。

 

終わりっすよ!

 

一撃で終わらせる勢いで拳を放つ鬼姫。だけど、デュアの背後から突然現れた黒い穴に鬼姫の腕が入った。

 

「っ!?」

 

突然現れた黒い穴に鬼姫はすぐに攻撃した腕を引っ込み、デュアと距離を取り、攻撃した自分の腕を見るが何も問題がなかった。

 

「やはり、ハーフとはいえ龍の力は極上だ。直接食べればいったいどれほど美味なのだろうか?」

 

唐突に変なことを言い始めるデュアに鬼姫は怪訝そうにデュアに視線を向けるとデュアもそれに気づいたのか、笑みを浮かばせる。

 

「先ほどの君の動きは素晴らしいよ。私でも反応することができなかった。だけど、どうやら君と僕とでは相性が最悪のようだ」

 

そう言うデュアは自分の手元に黒い穴を出現させる。

 

「これは私の魔神の力、黒捕食(ブラック・プレデター)。この穴に入ったものを捕食する力を持つ。力も技も肉体も魂までも私は食べることができる。それも私の意志関係なく自動的に発動することもできる」

 

その能力に鬼姫は驚愕した。能力自体も厄介だが、自動的に発動するという点が一番脅威だ。奇襲はもちろん死角からも攻撃しようがそれも勝手に捕食されたらまるで隙がない。

 

「・・・・厄介っすね」

 

自分の主である煉も主に相手の力を奪いそれを自分の力にする。そういう意味ではデュアも煉と同じ系統の能力を持っているが為、その厄介さも鬼姫は十分に承知している。

だけど、弱点も知っている。

それは容量オーバー。いくら奪おうが自分の力より上回るものは手に入れることができない。

 

自分の最大の攻撃に賭けるしかないっすね・・・・。

 

半分は人間の血を宿している分、龍の力を使いすぎると体が動けなくなる。

下手な攻撃を続けていたとしても龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の魔剣で斬られたり、黒い穴で力を奪われ続けられたらそれこそ鬼姫が負けてしまう。

だからこそ自分が倒れる前に鬼姫は自分が出せる最大の一撃に賭けることに決めた。

 

「スー、ハー」

 

大きく深呼吸した鬼姫は覚悟を決めて翼を広げて上空へと飛び、雷撃を拳に纏わせる。

 

「フルパワー降雷撃ッッ!!」

 

自分が出せる最大の一撃をデュア目がけて放ち、その一撃は激しい爆音と共にデュアを呑み込んだ。

 

「はーはーはー」

 

地面へと降りた鬼姫は肩で息をしながらその場で膝をついた。

もう絞り出せる力がないくらい鬼姫は疲労していた。しかし、現実は残酷だった。

パチパチパチと拍手する音が聞こえた鬼姫は拍手がする方へ視線を向けるとそこには何事もなかったかのように立っていたデュアの姿があった。

 

「いやいや、凄まじい雷撃だ。今の一撃は五大龍王にはおよばないが、上位のドラゴンと同等かそれ以上だったよ。ハーフでそれだけの力を振り出せるとはいやはや、食べればさぞかし美味なのだろう」

 

態度変わることがないくらい余裕綽々なデュアは魔剣を持ちながら鬼姫の元まで歩き始める。戦おうと立ち上がろうとする鬼姫だが、先ほどの一撃で動くことすらまともにできなかった。

 

「では、まずは試食だ」

 

「ああっ!」

 

魔剣で鬼姫の肩を斬るデュア。龍殺し(ドラゴンスレイヤー)が付与されている魔剣に斬られた鬼姫は斬られた肩だけではなく全身に激痛が走る。激痛に見まわせれている鬼姫を無視してデュアは魔剣についた鬼姫の血を舐める。

 

「龍のように力強い味とそれをまろなかにほぐすように殺さず調和している人間の血。血だけでこれほどまでに美味なのは初めてだ。その肉はこの血以上に素晴らしいのだろう。ああ!食べたい!かぶりつきたい!でも、ダメだ。だからこそ最高の状態で食べなければせっかくの食材を台無しにしてしまう」

 

鬼姫の血を舐め興奮気味にどうするかを考えるデュア。すると、何かを思いついたかのように手を叩く。

 

「ああ、そうだな・・・それが一番ベストだろう」

 

ドス。という音が聞こえた。鬼姫は音がした方を見ると自分の両肩と両足に魔剣が突き刺さっていた。そして、刺さっている所から少しずつ体が凍り始める。

 

「とりあえず冷凍保存しておくとしよう。この場で食べるにはあまりにもおしい。安心してくれ、君は最高のディナーとしておいしくいただく」

 

ふざけるな、嫌だ。自分のことを食材のように扱う目の前のデュアに文句が言いたい、殴りたい、倒したい。だけど、体がいうことをきかない。

降雷撃で放った疲労と突き刺さって徐々に凍り始めている魔剣のせいで鬼姫の体は指一本も動かすことができなかった。

 

自分はここで死ぬっすか・・・?

 

鬼姫は自分の母親がどんな人か知らない。物心つく前にすでに他界していた。鬼姫はドラゴンであり、父親である雷撃龍(グローム・ドラゴン)と一緒に森の中で住んでいた。

だけど、その父親もドラゴン特有の病に罹り病死した。

 

ごめんっす・・・・兄貴・・・・。

 

鬼姫は心の中で煉に謝罪した。力になれなかったことに、約束を守れなかったことに心から謝罪した。

 

母ちゃん・・・・父ちゃん・・・・自分もそっちに・・・・・。

 

体の感覚が失っていくとともに諦めるかけたその時。

 

『このアホ娘が!目を覚まさんか!』

 

『あいた!ってあれ?ここどこっすか!?』

 

閉じ込められていた空間ではなく、辺りを見渡せば懐かしき森、それと鬼姫の目の前には懐かしき今は亡き父親。

 

『父ちゃん・・・・どうして・・・』

 

鬼姫は何が起きたのか、何故自分の目の前の今は亡き父親がいるのか何がなんやら分からなくなった。だが、そんな疑問を雷撃龍(グローム・ドラゴン)が答えた。

 

『俺が死ぬ前にお前の中に俺の精神を入れておいた。ここはいわばお前の精神世界というものだ、アホ娘。そんなことよりあのざまはなんだ?』

 

あのざまというのはデュアに殺されかけていることだろう。と、鬼姫はすぐに理解した。

 

『仕方がないじゃないっすか・・・自分は龍と人間のハーフ。父ちゃんのように強くなれないあいたっ!』

 

『このアホ娘が。だからお前はアホなんだ。いいか?人間という生き物はこの世で誰よりも強い。お前の母もそれはもう強かった』

 

『母ちゃんが・・・』

 

『ああ、俺もあいつに会う前は人間はこの世で一番弱い種族だと思っていた。だが、それは思い違いとだと気づいた』

 

懐かしき遠い過去。感慨深く雷撃龍(グローム・ドラゴン)は当時のときを思い出していた。

 

『いいか?鬼姫。人間という生き物は自我が強く悪魔以上に欲望に忠実だ。だからこそ、何かを貫き達成しようとする人間はどの生き物よりも強い』

 

雷撃龍(グローム・ドラゴン)は鬼姫の頭に手をのせて優しく撫でる。

 

『お前はあいつと俺のたった一人の娘だ。誰にも負けないと信じている』

 

その言葉は娘が誰にも負けるはずがないと信じ切っている信頼の言葉。その言葉鬼姫の瞳からポロポロと涙があふれ出る。

 

『神如き、超えてやれ』

 

『はいっす!』

 

涙をふき取り鬼姫は再び戦場へと舞い戻る。

 

 

 

 

「なに?」

 

デュアはつい今の今まで戦意喪失していた鬼姫が凍り付いている氷と魔剣を砕き、ゆっくりと立ち上がった。

 

「まだ・・・・終わりじゃないっすよ・・・・」

 

笑みを浮かばせる鬼姫にデュアも更に笑みを浮かばせる。

 

「凄まじい執念・・・ああ、ダメだ!もう我慢できない!禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

魔剣と黒い穴が一つになるように纏わり始め、そこに一本の禍々しく常闇のように漆黒の剣が出現する。

 

禁手(バランス・ブレイカー)暗黒の捕食剣(ソード・オブ・ダークプレデター)。この一振りで君の魂の欠片も残さず喰らい尽くしてあげよう!」

 

漆黒の剣を振り下ろし、黒いオーラが鬼姫を呑み込むかのように襲ってくるが鬼姫は拳に力を入れ、その拳に自分のありったけをそれ以上の力を込める。

 

「うおりゃああああああああああああああああああああッッ!!」

 

黒いオーラと雷撃がぶつかり合うなか、デュアは可笑しそうに笑っていた。

 

「あはは!まだそれだけの力が出せるなんてね!だけど無駄だよ!私の禁手(バランス・ブレイカー)状態のこの黒いオーラは先ほどまで使っていたものの三倍の力を持つ!いくら残り少ない力を込めたところで何の意味もないんだよ!」

 

哄笑するデュア。だが、その笑いもすぐに消えた。

何故なら鬼姫の雷撃がデュアの黒いオーラを押し勝っているからだ。

 

「ば、バカな!?ありえない!先ほどの一撃より巨大だというのか!?いや、それよりこの威力は本当に人とのハーフなのか!?」

 

困惑するデュアは負けじと魔剣に力を込めて更に黒いオーラを放つが鬼姫の雷撃に押し勝つことが出来ないどころか更に押し負けていた。

 

「純潔でもない、ハイブリットでもない何の力も持たない人間とのハーフなのに!どうして魔神である私が負けている!?」

 

「人間だからっすよ」

 

焦燥し荒立てるデュアに鬼姫は答える。

 

「どこまでも自我が強く、欲望に忠実。でも、何かを貫き達成しようとする人間は誰よりも強いっす。そして、その人間の血が流れている自分だからこそ、強いっすよ」

 

雷撃の威力が更に増大し、デュアの黒いオーラがどんどん押し負けていく。

 

「ありえない!ありえるわけがない!私は魔神だ!初代七大魔王の一席!悪魔の始まりの存在!そんな私がハーフ如きに負けるはずがない!」

 

自分の全ての力を込めるデュア。だが、それでも鬼姫の雷撃は止まることを知らない。

 

「龍を・・・人間を・・・・甘く見ちゃいけないっすよ!」

 

ついに雷撃は黒いオーラを破壊し、デュア自身を呑み込んだ。

 

「馬鹿な馬鹿な馬鹿な!私が!私があああああああああああああああああッッ!!」

 

雷撃に包まれたデュアはそのまま姿が消え去った。

 

「勝ったっすよ・・・・父ちゃん・・・・母ちゃん」

 

それだけを言って鬼姫は前のめりに倒れる。だけど、どこか満足そうに気を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな鬼姫を見守るかのように龍と人は寄り添いながら嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

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