折角なので新しい敵を登場させたいなということで、新しいライダーに登場していただきました。
仮面ライダーシールド
盾のスートのライダーで、その名の通り盾を武器に使用するライダー出会う。
盾とカミキリムシがモチーフです。
第三話
「ここだ」
青いバイクを駆り、森の奥、とある石造りの小さな遺跡の前に一人の男がたどり着いた。
指に嵌められたスペードの指輪。
彼の名は剣崎一真。又の名を仮面ライダーブレイド。
バトルファイトを終わらせないために自らの体をアンデッドへと変質させた彼は常に闘争という本能と戦い続けることとなった。
アンデットを求め、終わらせてはならない戦いを求め続ける本能。
長い年月をその本能を抑え込みながら放浪を続けた彼の心は既に擦り切れそうになっていた。
しかし、その中でこの地に引かれた。どうしようもなく、心が魂が本能が、この地に行けと彼を突き動かした。
抗えないほどの欲求に従い歩を進めた。
そして、遂に、本能の示す場所にたどり着いたのだ。
人の手が加わらない森の奥地、そこに場違いな石造りの遺跡が聳え立つ。
台形を伸ばしたような形状のその遺跡は中央に階段が備えられており、まるで剣崎を導くかのように静かに佇んでいる。
引き寄せられるように階段に足をかける。その刹那、剣崎の身に言いようのない感覚が襲う。
「うっ!?」
胸を引き裂くような感覚。体の内側から、何かが這い出して来るようなそんな感覚。
いや、正確には、抑え込んでいたものが溢れ出してくる。
「ジョーカーの力が抑えられない!?」
その力を必死に抑え込む。
強く噛みしめた唇からは、緑の血液が滴り落ちる。
「やめろおおおおおおおおおおおおお!俺の外に出るなああああああ!!」
腰には緑色のバックルが現われる。
剣崎の意思に反して、そのベルトは脈動を起こし、少し、また少し、その体をアンデッドのものへと置換しようとする。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
気合。
意思の力の身で、その衝動を抑え込む。
本能を抑え込む理性の力。幾多の激戦を潜り抜けた彼にはそれだけの力が備わっている。
ドス。
鈍い音が響く。
自らの鳩尾に拳を叩き込む。
「ごはっ」
痛みで一瞬意識が飛びそうになるが、その一瞬を乗り越えることで、意識がハッキリとする。
自らの内でなおも暴れるジョーカーだが、その力を抑え込むことには何とか成功した。
しかし、ジョーカーの意思は尚もその体を進めようとする。
前へ前へ。階段を上れと剣崎をはやし立てる。
もはや、その衝動に逆らうことは不可能。
一歩、また一歩。歩みを進める度に、体の内側から、燃えるように闘争心が湧きだしてくる。。残り三段。
「いったい、何があるって言うんだ」
残り二段。
もはやまともに立つことすらままならない。
残り一段。
砕けそうになる体に最後の鞭を打つ。
頂上。
そこには、深紅の石板が鎮座していた。
「これが俺を呼んでたいたのか」
不思議と、先ほどまで感じていた自分の中のジョーカーの力が鳴りを潜めている。
「どうなってるんだ」
その問いに答えるかのように脳に直接声がかかる。
「ようこそ、剣崎一真。いや、今はジョーカーと呼んだ方がいいか」
「誰だ!?」
「誰だ、か。君だって分かっているだろう。私の声は直接君に届いているのだから。君の前には私がいるのだから」
脳裏に響くのは無機質な、男とも女ともつかない声。
拳を構える。
「答えろ」
「その行動は無意味だな。それは確かに私だが、私ではない。壊したければ壊すがいい。しかし、その結果は君にとって何の意味も無いだろう」
大人しく話を聞くのも癪だが、でなければ話は進まない。ジレンマの中、拳を収める。
「物分かりが良くて助かるよ。では自己紹介をしようか。私は破壊者。バトルファイトを惑わす者。更なる混沌が種の進化を促す。それを証明するためにのみ私は存在する」
「その破壊者が俺に何の用だ。バトルファイトは俺のせいでいつまでたっても終わらないんだ。お前の思い通りじゃないのか」
語気を強める剣崎、しかし、破壊者は剣崎をあざ笑うかの様に言葉を紡ぐ。
「甘いな。それは混沌ではない。ただの停滞だ。私が望むのは純粋な混沌。バトルファイトはその時代、最も繁栄するべき種を決める戦い。しかし、ジョーカーが勝利することは生命のリセットを意味する。それは本来の目的ではない」
「質問の答えをまだ聞いてないぞ。もう一度だけ聞く。お前は一体俺に何の用がある」
「せっかちな男だ。用があるのは貴様のその体だ」
破壊者が答えた瞬間、石板からは13本の触手が剣崎の体を貫く。
「何!?」
「ジョーカーの細胞。確かに頂いたぞ」
ズシュ
緑の鮮血を噴き上げながら、すべての触手が引き抜かれる。そして、すべての触手はその根元から千切れ落ちる。
不意打ちの傷は深く、目の前の光景をただ、見守ることしかできない剣崎の目の前で、触手は徐々に形を変える。
緑の血液その身に取り込むかのように、丸い球体を形作ると、ドクン。と拍動を始める。
ドクン。胎動。丸い球体の中では何かが目を覚まそうとしている。
「い、いったい何をするつもりだ」
言葉を発することですら、今の状態では大きな負担である。
「すぐに分かる。君はそこで待っているがいい」
その言葉を肯定するかのように一つの球体が形を変える。
人。
四肢と頭部を備え、二本の足で立つ姿は人型と形容する他はない。
「まさか、新しいアンデッドだって言うのか!?」
「その通り。彼らは君の細胞から生成したアンデッドだ。そして、バトルファイトを再開させる者達なのだよ!」
その中でも最も初めにアンデットの形となった者が今、ジョーカーの前に立つ。
その姿は、頭部に鋭い大顎と長い触角を備えている。背中に生える翅が、その種を暗示する。カミキリムシの祖たるアンデッド。ロングホーンビートルアンデッド。
「バトルファイト再会カ。ソシテ目ノ前ニハ弱ッタジョーカー。最高ダ」
その腕には巨大な斧が握られている。
陽光を反射し、その白刃が煌めく。
「貴様ヲ封印シ、ジョーカーノ力ヲイタダク!」
振り上げられる斧。
その刃が、剣崎の身に迫る。直撃する瞬間、体を捻り、階段を転がり落ちる。
体の傷は深いが、このままの状態では、目の前の敵に黙って封印されることになる。自らが封印されるということが何を意味するのか。
覚悟を決めるしかない。
ジョーカーの力。
今は、それしか頼るものが無い。
「変身」
腰に現れた緑にベルト。そのベルトを起点に、剣崎の体はジョーカーへと塗り替えられる。
何者の祖先でもないジョーカー。しかし、仮面ライダーブレイドとしてアンデッドの力を使役し、その姿へと至った剣崎一真。
ジョーカーの姿は、紫を基調とし、各所には金色の装甲が走る。巨大な角を備えた頭部の意匠はヘラクレスオオカブトのようにも感じられる。
手に握られるのは、先端に行く程、幅広の刀身となりその先端が二又に分かれる、超重量の大剣、オールオーバー。かつて、カテゴリーキングであるコーカサスビートルアンデッドが用いたものと同型であるが、その刀身はまばゆい黄金色に輝いている。
ジョーカーとカテゴリーA。今、ここにバトルファイトが再開されたのだ。
ジョーカーの構える大剣に対して、斧を構えるロングホーンビートルアンデッド。
間合いはジョーカーの方が幾分広くなる。しかし、その重量故、振りのスピードでは後者に軍配が上がる。
激しい打ち合いが展開され、周囲には金属のぶつかる鈍い音が響き渡る。
「ヤルナ。シカシ、ソノ傷デドレダケ戦エル?」
「うるさい!こんなところで封印なんてされてたまるか!」
怒りを露わにするジョーカーは勢いに任せて大剣を振るう。
「甘イナ」
しかし、大振りになった攻撃は容易に見切られ、大きな隙を晒してしまう。
その隙に斧の一撃が叩き込まれる。
「ぐはあっ」
重量の乗った、重い一撃が肺の中の空気をすべて奪い去る。空気を求め、乱れる呼吸は更なる隙を生む。
「終ワリダ!」
もがくジョーカーの首元に斧が振り下ろされる。
ザシュ
骨を断ち切る鈍い音が響く。
「ヌアアアアアアアアアア!」
そして、宙に舞う、斧とそれを握る腕。
絶叫を上げたのはロングホーンビートルアンデッドだ。
振り下ろされた斧は、刃が届くことなく、その腕ごとジョーカーに切り飛ばされたのだ。
「言ったろ。封印される気は無いって」
再び立ち上がったジョーカーは剣を体の正面で回転させ、構え直す。
お互いに深手を負った状態となったが、最初の時点で実力は互角。しかし、それがジョーカーの力ではない。スペードのスートのアンデッドの能力を継承したともいえる剣崎には莫大な回復能力が備わっている。例え、腕が引き千切られてもものの数時間で完全に再生する。
カテゴリーA単体ではいくら手負いの状態と言えども、到底勝てる相手ではない。
「こいつはさっきの礼だ。取っておけ!」
下段に構えた大剣で袈裟懸けにカテゴリーAを切り裂く。
その胸部を覆う装甲に深々と傷が付けられ、鮮血が噴き出す。
そして、カテゴリーエースのバックルがカチリと音を立て、その中央から二つに分かれる。
その中心には、Aの文字とハート、スペード、ダイヤ、クローバーどれにも属さない白いマークが二つ刻まれている。そのマークは禍々しい盾のようにも見て取れる。
シュッ
ジョーカーの手から一枚のカードが放たれる。
ラウズカード。
アンデッドを封印し、その力を我が物として使役できる。バトルファイト有利に進める上では決して欠かすことのできない存在。
ロングホーンビートルアンデッドに突き刺さったカードは、アンデッドを封印し、ジョーカーの手に舞い戻る。
そこに描かれているのはカテゴリーA。CHANGE LONGHORN
「流石に俺のスートには対応してないか」
正体不明のアンデッド相手に使ったのはコモンブランクのラウズカード。もちろん生成されたのはワイルドベスタのカードである。
そうして、戦いが終わり、遺跡を見上げた瞬間。
ジョーカーの体は大きく吹き飛ばされ、カードは手から零れ落ちる。
油断した!?
一瞬の虚を突かれたジョーカー。その眼前には一人の男が立っている。
「誰だ!」
太陽を背に立つその男の顔をジョーカーは認識することができないでいた。
「私は盾野。盾野十蔵。バトルファイトの再開を望む者。そして新たな仮面ライダーとなる者だ」
その盾野の手にはバックルが握られている。ディフォルメされた盾、その紋章が表すのは先ほど封印したカテゴリーAと同じものだ。それが何を意味するのか。
ジョーカーの手から離れたカード。そのカードは今、盾野の足元に佇んでいる。
おもむろに拾い上げたカードをバックルに挿入する。
無機質な音が辺りに響き渡り、不気味な気配が充満する。それに呼応するかのように太陽は陰り、露わになった盾野の口元には明確に邪悪な笑みが浮かぶ。
「変身」
OPEN UP
腰に装備されたバックルからは白く輝く光が放たれ、盾野の体を包み込み、仮面ライダーへと変身させる。
仮面ライダーシールド。
それが、この仮面の戦士の名だ。なぜライダーシステムが彼の手にあるのか。なぜ、新しいアンデッドに対応したシステムが存在するのか。盾野とはいったい何者なのか。様々な疑問がジョーカーの中を駆け巡るが、そんなことはお構いなしにシールドが動く。
その装備は盾。
縦に長い五角形の上部にはカードホルダーを、底角には小型ながら、鋭利な刃を備えている。
迫りくるシールドに対して、剣を振るうジョーカー。斬撃は乾いた音と共に盾に阻まれ、軌道が巻き戻される。
ドンッ
低い衝撃音を放ち、ジョーカーが吹き飛ばされる。シールドバッシュ。盾による体当たりとでも言おうか、単純な一撃だが、その威力はすさまじく、ジョーカーの体はいくつもの木々を薙ぎ倒しながら、森へと吹き飛ばされる。
「他愛無いなジョーカー。封印してやろう」
絶望を告げる足音が一歩ずつ近づく。
戦闘力という点では両者に圧倒的な差は無い。しかし、この地に踏み込んでから常に付きまとう圧倒的な破壊衝動を抑えながら戦うジョーカーは本来の力の半分も出すことができない。
更に、ライダーシステムを相手にするのは分が悪い。言うなれば対アンデッド用の決戦兵器である装備に対して、アンデッドの体で挑むということは自殺行為に等しい。
「せめてベルトがあれば戦えるのに・・・」
恨み節が漏れる。
しかし、この場で無いものねだりは何の意味も持たない。
「冥土の土産に面白い物を見せてやろう」
そう言ってシールドが取り出したのは一つのバックル。
スペードのマークが描かれたそれは、かつて剣崎一真が使用したもの。アンデッドの力を融合し、仮面ライダーとなるシステムの根幹をなす装置。
「なんでお前がそれを!」
「フン。少し考えれば分かるだろう。私のライダーシステムを作るのに旧型を研究したまでのこと。流石にターンアップは採用しなかったが」
この状況で渡せと言ったところで、盾野が渡す理由もないが、この状況でバックルを取り出した意図は未だに読めない。
「それをどうするつもりだ」
「知れたこと。貴様にはたっぷりの絶望を味わっていただきたいだけだ。この状況だ起死回生のこいつを破壊されれば多少は堪えるだろう?」
やはり、破壊が目的。
しかし、絶望を与える意味が分からない。今の状態で既にジョーカーは詰んでいる。
更に追いつめる必要などないのだ。
「剣崎一真、いや、ジョーカー!」
声高にその名を呼び、吠える盾野
「絶望し、最強のファントムを生み出すがいい!」
ファントム。剣崎一真にとっては未知の存在。その名を叫びながら、盾の底部の刃が無慈悲に振り下ろされる。
「やめろおおおおおお!」
「無駄だ!!!」
切っ先がバックルに触れる瞬間。
キン
刃をすり抜けるようにバックルが弾む。
「何!?」
驚きの声を上げる盾野。何が起きたのかは分からないが、形勢は動いた。弾き飛んだバックルは吸い込まれるようにジョーカーの足元に転がる。
何だか分からないけど、やるしかない!
答えを出す前に体は動いていた。掴み上げたバックルを装着する。迷いは無い。
「変身!」
TURN UP
ジョーカーの体を青い光が包み込み、カテゴリーA、ビートルアンデッドの力が鎧となる。
仮面ライダーブレイド。数多のアンデッドを封印した最強のライダーがここに再び現れる。
「チっ!一体何が起きたんだ!」
毒づく盾野の背後から新たな声が放たれる。
「ここに来たのはお前だけではなかったということだ!」
思わず振り返るシールドとブレイド。
その方角には朱色の鎧を纏った、戦士の姿が。
「橘さん!?」
「久しぶりだな剣崎。再開の挨拶は後にしよう。今は盾野を止めるぞ!」
「はい!」
赤と青、二人のライダーが白銀のライダーと対峙する。
「二対一では分が悪い。使いたくは無かったが仕方ない」
パチンと指を鳴らす盾野。その音を合図に盾野の影がうごめき始める。地面に存在するはずの影は瞬く間にその存在を空間へと移し、二次元の存在から三次元の存在へとその在り様を変容させた。
「おう、やっと俺の出番って訳か。待ちくたびれたぜ」
そして、影だったモノは人型の怪人へと姿を変じていた。
その姿は頭部は鳥であり、腰には二本の剣がぶら下がっている。
「カイム、事前の打ち合わせ通りにやってもらうぞ。これ以上の失敗は許されん」
「へいへい、分かったよ。その代わりこれが片付いたら俺の手伝いもしっかりしてもらうかんな」
「無論だ」
盾野が短く会話を終わらせる。カイムと呼ばれたその怪人は腰の剣を一本抜き放つ。その切っ先は真っすぐにギャレンに向けられている。
「おい、そこの赤いの。お前の相手は俺ちゃんがしてやるからよ。動くんじゃねーぞ。一発で仕留めてやるからよ!」
「お前が何者かは知らないが、俺たちの邪魔をするというのなら容赦はしない!」
迫りくるカイムに銃撃で応戦するギャレン。助太刀に入ろうとするブレイドの眼前にはシールドが立ちふさがる。
「貴様の相手は私だ」
斬撃と銃撃。剣戟が銃弾を切り裂き、銃撃が剣線を強引に捻じ曲げる。繰り出される無数の手数が激しく交錯し、一瞬の命の駆け引きが怒涛の如く繰り返されている。
対照的にブレイドとシールドの戦闘は全くの静寂。
盾とはつまり、相手の攻撃を受け止めることで初めてその意味を成す武具である。その堅牢な守りに自ら飛び込むことは愚策に他ならない。
突破口を開く。
そのための糸口がつかめずにブレイドの攻め手は完全な静寂に包まれている。
真っ先に戦局が傾いたのカイム。
銃弾の軌道を完全に見切り、自らの間合へと踏み込むと同時。
「貰った!!」
目にも止まらぬ高速の一振りがギャレンの腕に迫る。
完全な虚を突かれたが、勘のみでその斬撃を交すギャレン。しかし、完全に躱し切ることはできず、腕に装着されたラウズアブソーバーは天高く弾き飛ばされる。
「チ、腕ごと貰うつもりだったんだけどなぁ」
ストン。
放物線を描き、カイムの腕にアブゾーバーが収まる。
「貴様の狙いは最初からそれか」
「半分当たりだけどな。もう半分はしっかりお前の命が目的だぜ?」
「そう簡単にくれてやるつもりはない」
再び銃口を向け対峙するギャレン。しかし、カイムの興味は既にギャレンには無い。
「今日の所はこれで勘弁しといてやるよ。あっちの方も目的は達しみたいだしな」
その言葉を裏付けるかのように、ギャレンの背後では金属のぶつかり合う音が一つ響く。
睨み合いが続いたブレイドとシールドの両者だが、追いつめられるギャレンの姿を捉えたブレイドの動きに一瞬の動揺が走った。
その隙を完全に読んだシールドは一気に攻勢に出る。
否応なくそれに応じるブレイドの剣戟はしかし、いとも容易く弾かれ、隙を晒してしまう。
「貰った」
そのブレイドから掠めとるように一枚のカードを奪い去るシールド。
カテゴリークイーン
そのカードが確かに手に握られている。
「どういうつもりだ。そのカードはお前にとって大した価値は無いはずだ!」
「それを決めるのはお前ではない。私だ」
奪われたのはアブゾーバーとカテゴリークイーンの二つ。
それがシールドにとってどのような効果をもたらすかは想像に難くない。
「今回の目的は十分に達した。やれ、カイム」
シールドの言葉を合図に特大の一撃を地面に放つ。
斬撃の衝撃を受けた地面は瞬く間に砕けちり、辺りに噴煙をまき散らす。
完全に視界を奪われたギャレンとブレイド。両者の耳に届くのはただ、遠ざかる足音のみ。
「待て!」
「へへ、待てって言われて待ってやる程俺ちゃんはお人好しじゃないぜ?」
その言葉を最後に、敵の気配は完全に消え去る。
「すまない剣崎。加勢に来たつもりがアブゾーバーを奪われてしまった」
「いえ、俺の方こそクイーンのカードを奪われてしまいました。あいつらの目的はやっぱり・・・」
「ああ、上級アンデッドのカードを使った強化変身とみて間違いないだろうな。新型のシステムに対応したアブゾーバーか、それと同等のシステムを作るための材料と言ったところか」
表情を曇らせる橘。
既に二人の変身は解かれており、互いに懐かしい素顔を晒す。
「それはそうと、橘さんはどうしてこんな所に?」
「それはこっちの台詞だ。俺たちの目の前から姿を消して10年以上、連絡すら寄越さなかったのはどこのどいつだ」
「それは・・・」
思わず言葉を積もらせる剣崎。確かに葛藤はあった。しかし、軽率な行動を一つでも起こせば、それがどれ程の災害をもたらすかは剣崎自身にも予想がつかない。それほどまでにジョーカーとしての力と本能は抑えがたく抗えないものとなっていた。
「ほんの冗談だ。気にするな。お前が一番辛い思いをしていることくらい俺にだって分かる。だから」
そこで言葉を区切り、正面から剣崎を見据える。
「久しぶりだな剣崎」
腕を伸ばす。
そこには何のわだかまりもない、純粋に友を迎える一人の男の姿があった。