結局、怪盗の逮捕には至らなかったが、黒太子のルビーは無事ロンドン塔に戻された。
本物のオールコック卿は自宅で軟禁状態にあるところを保護された。
残念だったのは、依頼をしたのがオールコック卿本人でなかったため、依頼料が全く入って来なかったことだ。しかし、今回の件でチャンバース私立探偵社の名声はまた上がっただろう。
それも嬉しいが、やはり今回の一件で僕が得た最大の収穫は、探偵として楽しみを見出したことだ。これでやっと、今は亡きパーキンス先生に顔向けができる、そんな気がする。
それから、カスパールが追い、僕とジョセフィーヌで捕えた例の男は、どうやら切り裂きジャック当人ではなかったらしい。カスパールは少し落ち込んでいたが、犯罪者を捕えたことに変わりはないので適当に慰めておいた。
怪盗事件と殺人未遂犯逮捕の功労を認め、スコットランドヤードからチャンバース私立探偵社に感謝状が贈られてきた。感謝状は、ハイゲートの事務所の方に大切に保管してある。
さて、今日僕は久しぶりにオールドストリートの八十五番地に来ていた。あるものを取りに来たのだ。ハドスン夫人に礼を言って部屋の鍵を受け取り、久しぶりに部屋に入る。
何もかも元のままだった。僕は、目的の物に近づいた。
クロゼットだ。先生が亡くなった後、先生の遺した〝あるもの〟を仕舞い、僕自らが封印したクロゼット。僕はその鍵を開け、中から〝あるもの〟を取り出した。
鹿撃ち帽とインバネスコート。先生は事件の度にわざわざこれに着替えていた、探偵の必需品だ。僕は少し微笑んで、コートを身にまとい、鹿撃ち帽をかぶった。
さあ、繰り出そう。深い霧の中、無数の謎が蠢くロンドンへ。
あとがき
こんばんは。高望皆斗です。1000文字いかないと投稿できないので、ここに後書きをねじ込む。
今回はライトな感じにして見ました。初めて作中で人が一人も死にませんでした。
なるべく時代背景に準拠して書いているつもりですが、時々資料を漁るのがめんどくさくなって勝手に捏造したりします。ジュエルハウスのルビーの間なんてものはない。多分。
それから、校正してません。誤字脱字、キモイ言い回しは全て作者が眠いのがいけないです。不健康です。
今回は少しだけ、ほんの少しだけ伏線という物を意識してみました。しかし、謎自体は非常に分かり易く、読んでる途中で気づかれることも承知でやってます。何が言いたいかっていうと、伏線は意識したけどミステリーではないよ。
こんな拙い作品に目を通していただき、有難うございます。他作品もぜひ、ご一読いただければ幸いです。