side咲兎
三日目の修行が終わり、みんなが寝静まった深夜
俺は一人で月を見ていた。
フェイトはお子様なので夜が早い。
だから夜遅くは一人になることが多いのだ。
「隣いいかしら?」
後ろから不意に声をかけられた。
声をかけた主は分かっている。
「良いですよ、グレモリー先輩。」
紅い艶やかな髪を持ったリアス・グレモリーがパジャマ姿で立っていた。
俺の座っていたベンチの隣に座り俺と同じく月を見た。
「月が好きなの?」
「いえ、どちらかと言えば嫌いです。
月を見ると捨てられた日のことを思い出しますから。 」
両親に捨てられたのも今日と同じく月の綺麗な夜だっ た。
あの日の月はまるで捨てられた俺を嘲笑うかのように鈍く、濃く輝いていた。
そんな月を見上げているときだった。
月に人影が照らされて、色素の薄い幽霊が舞っていた。
只々綺麗で、呆れるくらい美しくて、何も出来なくて呆然としていた俺ですら見とれてしまった。
その幽霊は俺の方を向き笑った。
月のように嘲笑うわけではない。
純粋に俺のことを見て眩しいくらい純粋な笑顔で笑っ た。
そして、こう言った。
『あなたにはこれから私がついててあげるから。』
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「咲・・、咲兎・、咲兎君!」
「はい!?」
「どうしたの?いきなり黙りこんで。」
どうやら月を見ている間に気がつかないうちにボーッとしてしまっていたようだ。
「いえ、すみません。
何でもないです。」
「ねぇ、正直な意見を聞きたいのよ、
あなたはこのレーティング・ゲーム勝てると思う?」
「無理だと思います。」
俺はきっぱり言った。
残念ながら事実だ。
この十日でイッセーは、かなり強くなるだろう。
他の奴らも強くなるだろうし、木場と智花は神器の使い方も上手くなるだろう。
しかし、それだけではフェニックスには絶対に勝てないだろう。
俺のような一体、一体が禁手の神器と同等もしくはそれ以上のものならまだしも、あいつらの神器では禁手に至らなければフェニックスに止めを刺しきれない。
「そう、やっぱりあなたに聞いて良かったわ。
多分他のみんなだと私のことを心配して本当のことは 言ってくれないでしょうから。」
それはまあ、そうだろ。
誰が好き好んでこんなモチベーションの下がるようなことをいうか。
「俺も聞いて良いですか?」
「なにかしら?」
あら、珍しいというような顔で俺を見ている。
「なぜ、そこまであのフェニックスとの結婚を嫌がるのですか?
確かに女誑しで嫌な奴ですが、名家の生まれだし、慢心さえ無くせばそれなりに強くなれそうですけど・・・。
どうしてですか?」
その質問に対してグレモリー先輩の目は少し濁った。
「私はね、どこにいっても『グレモリー』なのよ。
魔王の妹で、グレモリー家の次期当主
それだけで自分で言うのもなんだけどプレミアな存在なの。
でも、私は私のことを『リアス』として見てくれる人と結ばれたいの。
私が魔王の妹だからではなく、
私がグレモリー家の次期当主だからではなく、
私を唯の一人の女性として見てくれるそんな人とね。 」
俺はグレモリー先輩の話を静かに聞きこう返す。
「・・・俺はあんたのことを正直良くは知らない。
でも、それ以上にもっと悪魔の事情なんて興味すらな い。」
俺の返答を聞き、グレモリー先輩の表情が暗くなる。
「そうよね、だってあなたは人間「だが!」!?」
悲観的な面持ちで話すグレモリー先輩の声を遮り俺は、
「だから、俺はあんたのことを『グレモリー』としては見ない。
俺にとってあんたは俺の所属する部活の部長『リア ス』なんだ。
ただそれだけだ。
それに、あんたが最後まで諦めないのなら俺はあんたに勝利を導いてやるよ。
んじゃ、俺は戻ります。」
話終わったあとで、いつもの口調になっていたことに気づいた。
(あれ、いつの間にこんなに気を許していたんだ。)
基本的に気を許した相手にしか口調は崩さない。
「ライザー・フェニックス
貴様に地獄よりも恐ろしい恐怖を教えてやろう。
『ブリューナク』『アルナミス』の2体にどれだけ耐えられるかな?」
俺は一人そう呟いた。
side change
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sideリアス
『あんたが最後まで諦めないのなら俺はあんたに勝利を導いてやるよ。』
彼―花ケ崎 咲兎がいなくなったあと、私―リアス・グ レモリーは一人で彼の言葉を思い出していた。
『俺はあんたのことを『グレモリー』としては見ない。
俺にとってあんたは俺の所属する部活の部長『リア ス』なんだ。
ただそれだけだ。』
「そんなこと言われたら、私あなたのことを好きになってしまうじゃない。」
はじめてだった。私のことを『グレモリー』ではな く、『リアス』として見てくれる人に出会ったのは。
「トモは確実に彼のことが好きのようだし、子猫も少し怪しいわね?
でも、ライバルは多いほど燃えるのよ。
こうなった以上、ライザーには必ず勝たないと!」
私は月が照す場所で静かに気合いを入れ直した。
智花との使い魔(ドウター)である双角獣〈バイコーン〉
名前は『アルナミス』になりました。
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