この黄金の獣に祝福を!   作:ニャロー

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~今回の話を書いてる時の自分~

「ヒャッハー!獣殿に壁ドンからの顎クイとか俺得だぜぇぇぇぇ!」

~書き終えた後の自分~

「何書いてんだろ俺……(白目)」

いやぁ、深夜テンションって怖いですね……(しみじみ)
今回の話で「こんなの獣殿じゃないわ!ただの色魔よ!」と言われ、そのまま低評価を入れられるのは目に見えていますが、さっさと獣殿を無双させたいのでこのまま行きますごめんなさい!(土下座)






第3話

「すまない!もう一度だけ、たった一度だけでいい!先程あの男に向けたのと同じような感じで、私を見下ろしてはくれないか!?」

 

 Q.強姦魔から助けた筈の少女が発情した雌犬のような表情になっています。どう接しますか?

 

 A.接したくない。

 

  「…………」

 

  一瞬、何かよく分からない言葉のやりとりが脳裏に浮かんだような気がしたが、恐らく気のせいだろう。

 

  「卿、頭でも打ったのか?」

  「あぁ、イィ!その変な物でも見るかのような眼差し、すごくイィぞ!」

 

  言外に『お前の言動は可笑しい』という意味を込めてラインハルトはそう伝えていたのだが、少女にとってそれはむしろ逆効果でしかなかった。

 

  「さぁ、もっとだ!もっと私を蔑んでくれ!」

 

  鼻息を荒くして詰め寄ってくる少女。

 これまで多種多様の女を見てきたラインハルトであっても、少女のような自分から蔑まれるのを求めるタイプの女性は初めての経験だった。

 どう対応すればいいか。ラインハルトは少女への接し方を考える。

 

  少女のようなタイプの女性は確かに初めてだが、それに似たタイプの女性ならばラインハルトは何人か相手にしたことがある。

 その経験を元に少女への接し方を思考すること数秒。何をどうすべきか決めた後、早速行動へと移した。

 

  「ほう、そんなに蔑まれたいのか?」

  「あぁ!勿論だとも!」

 

  期待で瞳を爛々と輝かせ、今か今かと待ちわびている少女。

 そんな少女の背後。民家の壁へとラインハルトは右手を押し付け、顔をグイッと少女へ近付ける。

 

  「本当によいのだな?」

  「うぇぁ!?」

 

  如何に思考回路が可笑しいとは言っても、所詮はまだ年端も行かない少女。

  突然の展開に驚き、奇声を発しながら今度は違う意味で頬が赤くなった少女は、それを隠すようにして顔を下げようとしたが、しかしそれは出来なかった。

  何故なら、ラインハルトの左手が少女の顎をクイッと上げて掴んでおり、顔を逸らさせないように固定していたからだ。

 

  「答えよ。卿は私にどうされたいのだ?」

 

  絶対に逃がさないと告げている獣の如き鋭い眼光を向けられ、少女は────

 

「わ、わらひをメチャクチャにしてくらひゃい!!」

  「あぁ、いいだろう」

 

  己の願望を口に出し、ラインハルトはそれを受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……数分後。

 

  「ダメぇ……もう立てないぃぃ……」

 

 そこには数々の言葉攻めによって足腰を完全に砕かれた少女と、何処までも晴れ渡る青空を遠い目で眺めているラインハルトの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

「改めまして、先程は危ない所を助けていただきありがとうございました。ラインハルト殿」

  「別に礼など要らんよ、ダクネス嬢」

 

  場所は変わってとある騒がしい飲食店の中。あの後、ラインハルトはダクネスと名乗った少女と共に裏路地から移動し、今はテーブルを挟んで向かい合わせになって椅子に座っていた。

 

  「私はただ、婦女子が襲われているのを黙って見ていられなかったから手を出しただけに過ぎんよ」

  「それでも、私が貴方に救われたのは紛れもない事実。感謝をしない理由にはなりません」

 

  頭を深く下げ、感謝の意を伝えてくるダクネス。その様子からは先程までのような変な雰囲気は一欠片も感じられなかった。

 

  「そうか。ならば、勝手にするがいい」

  「えぇ、そうさせてもらいます」

 

 そう言って年相応の笑顔を見せるダクネス。今この時だけを見ればまともな風に思えるのだが、ラインハルトの頭には先程見てしまったダクネスの姿が色濃く残っているせいで、まともな部類の人間だとは全く思えなかった。

 

  「それはそうと、先程は失礼をした。落ち着かせる為だったとは言え、卿に心無い言葉を多く浴びせてしまった」

  「い、いえ!むしろご褒美ですからお気になさらずこれからもどんどん私に心無い言葉を浴びせてください!」

 

 まともとはいったい何だったのか。早口でそう言い、また頬を紅潮させて興奮し始めたダクネスに、ラインハルトは先程の自分の行動は軽率だったことを改めて認識した。

  興奮した女性を落ち着かせる方法。それは相手の欲求を可能な限り全て受け入れてやること。ラインハルトは今までそう思っていたのだが、例外もあるということを今日学んだ。

 

  「卿のような可憐な乙女に、先のようなことはもうせぬよ」

  「はぅ!まさかの放置プレイ!?いやしかし、それはそれで……」

 

  駄目だ、話が全く通じない。

 いったいどのような育て方をすればこのような変態を産み出せるのか、一回でいいから親の顔を見てみたいと、ラインハルトは少しだけそう思った。

 

  「にしても、卿に会えたのは本当に運が良かった。まさか観光しに来た初日に持ち物を全て盗まれるとは思ってもいなかった故、困り果てていたのだよ」

  「それは本当に災難でしたね。仕事を辞め、遠い異国からこんな田舎の街まで遠路遥々やって来たというのに」

 

 このままではまたさっきの繰り返しになってしまう。そう直感的に察したラインハルトが咄嗟に話題を変えると、ダクネスは悲し気な表情を浮かべた。

  実はこの店へと移動する前、ラインハルトは自分のこれまでの来歴を全てでっち上げ、それをダクネスに教えていたのだ。

 でっち上げる必要など無いのではないか?と思われるかもしれないが、考えても見てほしい。

 よく知らない人物から『自分は女神に転生させてもらって異世界からやって来ました』などと言ってくる光景を。どう考えても怪しいとしか思えない。

 そこで、ラインハルトは以下の来歴を作り上げた。

 

  『自分はこれまで海を越えた先の異国に住んでいたのだが、勤めていた仕事を辞めたのを機に世界中の観光名所巡りをしており、この街には休息がてらに寄った。少し休めば直ぐにでも次の観光名所に行くつもりだったが、ふと目を離した隙に持っていた荷物を何者かに盗まれ、所持金も身分を証明する物も全て無くなり困っていた。ちなみにこの服装は仕事の名残であり、気に入っているから今も着ている』

 

 これがラインハルトが即興で考えた来歴。『異世界からやって来ました』と言うよりかはマシだが、それでも普通に考えれば怪しさは充分にある。

 だというのに、ダクネスはその来歴を全て真に受け、ラインハルトに心の底から同情したのだ。

  二人が飲食店に来たのもそれが理由。助けてもらったお礼兼お金を持っていないラインハルトへの手助けという、感謝の気持ちとお節介の気持ちに後押しされたダクネスによって連れてこられたのだ。

 

  「この街の治安は悪くない方だと思っていたのですが……まさかそのような事件が起きているとは。何としてもその盗人は捕まえなければ!」

 

  心を義憤の炎で燃え上がらせ、決意ある眼差しをしながらそう豪語するダクネスだが、その表情は何かを期待しているかのように緩みきっている。

 まだ出会って数時間も経っていない間柄ではあるが、ラインハルトにはダクネスの考えていることについてある程度察しがついていた。

 

(捕まえようとして返り討ちに遭い、あわよくばそのまま屈辱を与えられたい、か……理解不能だ)

 

 普通の人間では決して理解出来ない変態の思考回路に呆れを抱きつつ、ラインハルトは咳払いをしてダクネスの意識を戻し、自分の方へと向けさせた。

 

  「盗人を捕まえるのは良いが、荷物が返ってくるまで私は宿に泊まることは疎か、食べ物を一つ買うことすら出来ん。そこでだ、卿には悪いが何か仕事を紹介してくれるような場所と、身分を証明する為の物を発行してくれる場所を教えてはくれないだろうか」

  「それは勿論構いませんが……仕事の紹介……身分証の発行……」

 

  年下の少女にいい歳をした大人の男が聞くような内容ではないが、ラインハルトが恥を忍んでそう言うと、ダクネスは目を閉じて一人でウンウンと唸り始めた。

 そうして暫くすると、何かを閃いたのか閉じていた目をカッと見開いた。

 

  「冒険者ギルドに登録なされてはどうでしょうか」

  「……冒険者ギルドか」

 

 まだこの世界に来たばかりである為、ラインハルトは冒険者ギルドという存在すら知らないのだが、設定上では今の自分は世界中の観光名所巡りをしていることになっている。

 もしも冒険者ギルドがこの世界にとって当たり前の存在ならば、知らないというのは可笑しいことになってしまう。

  疑われる可能性は少しでも減らした方が都合が良い。そう判断したラインハルトは知っているフリをすることにした。

 

  「えぇ、冒険者ギルドならば幾つもの仕事の紹介がされてますし、身分も冒険者カードで証明出来ますので」

  「確かにそうだが、こちらの方での手続きの仕方は?私が居た国では面倒な書類を書かされたりしていたが」

  「そうなんですか?アクセルの街にある冒険者ギルドでは専用の装置に手をかざすだけで登録出来るので、面倒なことは特に無いと思います」

 

  表情を全く崩さずに、然り気無く嘘をついて情報を入手する。

  流石は国家保安本部長官まで上り詰めた男とでも言うべきか、そのやり方はやけに手慣れていた。

 

  「ただ、登録する際に登録料として1000エリス掛かるので、その点はラインハルト殿が居た国とは違うかもしれません」

  「むっ……」

 

 ダクネスの口調からして、エリスというのが恐らくこの世界で使われている通貨だというのは何となく察したが、今のラインハルトの所持金は当然0である。

 

  「ダクネス嬢。分かってはいると思うが、今の私には払える金が無いのだが」

  「あぁ、その点はご心配なく。ラインハルト殿の登録料は私が代わりに出しますので」

 

  事も無げに言ったダクネスの言葉に、ラインハルトは一瞬だけ己の耳を疑い、次にダクネスへ不審を孕んだ目を向けた。

 いくら危ない所を助けてもらったからとはいえ、ここまで尽くされてしまうと流石に何か裏があるのではないかと疑ってしまうのも当然だろう。

 

  「それも卿の言う『礼』か?」

  「え?……あぁ、なるほど」

 

 ラインハルトの言葉にダクネスは一度だけ首を傾げたが、自分に向けられている不審の目に気付くと納得したかのような声を出した。

 

  「これは別にお礼ではありません。エリス教徒の一人として、ただ単に困っている人を助けたいと思っただけですので」

 

  裏の思惑など断じて無いとばかりに明るい笑顔を浮かべるダクネス。

  職業柄故か、その笑顔を見てもラインハルトは疑いの心を捨て去ることは出来なかったが、少なくともダクネスのことはある程度信用出来るだろうとは思えた。

 

  「それに、今ここで恩を売っておけばラインハルト殿とまた会う口実になりますからね!」

 

  折角の信用が急転直下する勢いで無くなった。やはり女という生き物は何処か信用し切れないらしい。

  頭を抱えたくなる衝動を抑え込みながら、ラインハルトはため息を吐いてダクネスに手を差し出した。

 

  「色々と世話になるぞ、ダクネス嬢」

  「えぇ、お任せください」

 

 ダクネスはラインハルトの差し出した手を取って握手を交わした後、急に席を立ち上がる。

 

  「昼からだとギルドは人で混みますから、先に登録を終わらせてから昼食を取りませんか?」

  「了解した」

 

  冒険者ギルドという物を全く知らない以上、ラインハルトに断るという選択肢は無かった。

 

  「それでは、案内してくれ」

  「はい、こちらです」

 

 ラインハルトが立ち上がってそう告げた後、嫌な顔一つせずに了承したダクネスは直ぐに歩き始める────店の奥へと向かって。

 

  「ここが受付です」

  「…………」

 

  歩き始めてから数分もせずに辿り着いた先には、数人の武器や鎧を装備した人々が列をなして受付と書かれた窓口に並んでいる光景があった。

 

  「……ダクネス嬢、確か登録するには冒険者ギルドに行く必要があったな?」

  「えぇ、そうですよ?」

  「では、ここが冒険者ギルドなのか?」

  「はい、ここがそうです」

  「…………」

 

  本日何度目かも分からぬ完全な閉口。ラインハルトは最早ため息すら出せなかった。

 これは勝手なイメージではあるが、ラインハルトは冒険者ギルドと聞いた時、城とは往かずともさぞ立派な建物の中にあるのだろうと思っていた。

 いや、今居る建物が決して立派ではないと思っている訳ではないが、それでもまさか冒険者ギルドと飲食店が同じ場所にあるとは思いもしない訳で。

 

 つまるところ、何を言いたいかと言えば。

 

  「これが……異世界か」

 

  今居る世界と死ぬ前に居た世界とのギャップ。ラインハルトはまだそれに慣れていなかった。

 

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