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20件ぐらい減るかなって思ってたのに、5倍以上お気に入り件数が増えていて、しかも評価バーが赤くなってるってどういうことだってばよ……(困惑)
えっと、こんな小説でも皆様が楽しんでくれているなら嬉しいです。これからも頑張りますので、引き続き楽しんでいってください!
「次の方どうぞー」
異世界とのギャップに戦慄しながら列に並ぶこと十数分。ようやくラインハルト達の番が回ってきた。
「こんにちは。本日はどういったご用件でしょうか?」
そう言って微笑む金髪の受付嬢。その態度は正しく役人そのものなのだが、着ている服装はかなり際どい。
肩から胸の上部にまで掛けて肌を大胆に露出しており、魅惑の谷間がこれでもかと言わんばかりに見えてしまっている。
まるで娼婦か何かが着るような服装だが、彼女は恥ずかしくないのだろうか。
ラインハルトが受付嬢の服装について無駄に気にしている間に、ダクネスが前に出て受付嬢と話始めた。
「私の隣に居る彼の冒険者登録をお願いしたい」
「分かりました。では、登録手数料として1000エリス頂きますね」
「あぁ」
懐から数枚の硬貨を取り出し、ダクネスは受付嬢へと渡す。
「はい、確かに。では次に冒険者カードの作成へと……」
「その前に少しいいだろうか」
ダクネスから硬貨を受け取り、受付嬢が何処からともなく一枚のカードを取り出してきた時、受付嬢の服装から思考を切り替えたラインハルトが待ったの声を掛けた。
「はい?どうなされましたか?」
「いや何、実は私は遠い異国から来た身でな。私が居た国の方にあった冒険者とこちらの方の冒険者の仕事やその他諸々について違いが無いか確認したい。面倒かもしれんが、説明を頼む」
何の不都合も起きずにサクサクと登録作業が進むのは良いことだが、ラインハルトは冒険者というものをまだ詳しく理解していない。
ダクネスに聞けば答えてくれそうではあるが、個人に聞くより役所に勤めている者に聞いた方がより正確に教えてくれるだろう。
適当に理由を並べてラインハルトがそう言うと、ハッとした表情になった受付嬢は慌てて頭を下げた。
「す、すみません!最近の人達はだいたい冒険者について知っているので、つい説明を飛ばしてしまいました!」
「謝らずともよい。きちんと説明をしてくれるならそれで充分だ」
「は、はい!」
慌てふためきながらも、受付嬢は冒険者についての説明をし始める。
「まず、冒険者というのはですね────」
そうして、説明を受けること凡そ十分。長かった受付嬢の説明を要約すると、以下の三つになる。
・冒険者とは主にギルドから出される依頼を請け負ってモンスターなどの人に害をなすものを退治することで報酬をもらう職業を指す。
・冒険者としてギルドに登録された場合、ギルドから冒険者カードという身分証明書の代わりになる物を渡される(なお、偽造は出来ない為もしも紛失したらギルドにて再発行しなければならない)。
・冒険者は自己責任。例え死んだとしてもギルドは一切責任を負わない。
他にもレベルやら職業やらステータスやらと、色々分かったことはあるが全て挙げるとなると非常に面倒なので今回は省略する。
「以上で説明を終わりますが、何か質問などはありますでしょうか?」
「いや、大丈夫だ。時間を取らせてしまい申し訳ない」
「いえいえ!私がまだ新人なばっかりに起きてしまった不手際ですので、謝るのは私の方ですよ!」
ラインハルトが軽く頭を下げれば、受付嬢も再び頭を下げる。
二人して頭を下げている光景は何とも奇怪に見え、ダクネスは少し噴き出しそうになるのを堪えて咳払いをする。
「んんっ……それで、冒険者カードは何時になったら作るのだ?」
「そうでしたっ!で、では、こちらの水晶に手をかざしてください」
そう言って、受付嬢は窓口から直ぐ真横の位置にある奇妙な装置を手で示した。
受付嬢に言われた通りに装置の水晶がある部分にラインハルトが手をかざすと、装置は動き出して先端の針の部分から直線の細長い青色の光が発射され、台に置かれていた冒険者カードに文字と数字を描き始める。
そして暫く経つと装置から光は消え、完成された一枚の冒険者カードがそこにあった。
「不備が無いか確認しますね。えっと、名前はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ様ですね。ステータスの方は……なぁっ!?」
完成されたラインハルトの冒険者カードを台から手に取り、何か不備は無いかと確認していた受付嬢が驚きの声を上げた。
あまりにも大きすぎた声にギルドの内に居た人々は何事かと目を向けてくるが、ラインハルトは勿論ダクネスにも分からない。
いったいどうしたというのか。ラインハルトが声を掛けようとした瞬間、受付嬢は急に立ち上がり叫んだ。
「何ですかこのステータスは!?幸運を除いた全ての能力の値が平均能力値よりも大幅どころか圧倒的と言えるぐらい上回っていて、しかも上級職を含めた全ての職業に適性あり!?こんなの普通じゃありえません!!」
「「「「はぁ!!??」」」」
正に前代未聞。受付嬢の声が建物中に響き渡り、ダクネス含むそれを聞いた冒険者達が受付嬢同様に驚きの声を上げた。
まるで化け物でも見るかのような目を一気に向けられることとなったラインハルトだが、そんな視線を一切気にせずに受付嬢から自分の冒険者カードを受け取る。
「ふむ……何か不備があった訳では無いのだな?」
「不備は無いですけど明らかに異常ですよ!!」
「不備が無いならよい。後は職業を決めて終わりだったな?」
「えっ?そうですけど……って、いやいやいや!自分のことなのに何でそんなに冷静何ですか!?」
ヒステリック気味に叫ぶ受付嬢。しかし、ラインハルトは特に驚いたりすることなく冷静沈着のまま。
如何に自分のステータスが凄いと言われた所で、まだ異世界の常識に染まりきっていないラインハルトからしてみれば「ふーん、そうなんだ。で?」という感じでしかなかったのだ。
「たかだかステータスの値が高いというだけで、何をそんなに驚く?ステータスが高くとも、それを活かせなければ何の意味も無い。重要なのはステータスではなく、その者が冒険者となった後。冒険者となりて何を為すのか。何を魅せるのか。何を遺すのか。それこそが重要だとは思わんかね?」
「その、えっと……えぇ?」
ラインハルトにそう問い掛けられ、受付嬢は困惑した表情を浮かべているが、それは全くもって普通の反応である。
ラインハルトはステータスをどうでもいいような物のように扱っているが、冒険者にとってステータスは決してどうでもいい物ではない。
むしろその逆、冒険者はステータスこそが重要なのだ。
例えばの話、モンスターの討伐依頼を冒険者に出すとしよう。その場合、どんな冒険者に依頼を受けて欲しいかと言えば決まって強い冒険者に受けて欲しいと思うのは当然だろう。
依頼を達成してほしいのだから強い冒険者を求めるのは当たり前。では、強い冒険者と弱い冒険者を見分けるのはいったい何処の部分になるのか。
容姿か?性格か?それとも着けている装備か?いいや、そんな物では断じてない。
強い冒険者と弱い冒険者を見分ける簡単な方法。それは冒険者カードを見ること。即ち、その人のステータスを見るに外ならない。
強い冒険者ならステータスは高い。弱い冒険者ならステータスは低い。それがこの世界での当たり前。
つまるところ、冒険者にとってステータスとは一種の商売道具なのだ。どうでもいい筈なんて無い。
しかし、ラインハルトが言ったことも間違いではない。
いくらステータスが高くとも、それを活かせなければ意味が無いというのは全くの事実。ステータスが高い=強い冒険者とは限らないのだ。
だがそれではステータスが信用できず、強い冒険者かどうかの見分けがつかなくなってしまう。
そこで、決まって人が次に見るのは冒険者の経歴。つまりその冒険者がこれまで何を為してきたのかを見るのだ。
強いモンスターを数多く倒していたりすればちゃんとそのことが冒険者カードに書かれており、もしも何も書かれていなければそれはまだモンスターを一匹も倒したことが無いということを指す。
倒してきたモンスターの数や種類、それらを見ることによって強い冒険者かどうかを見分ける。
ステータスと経歴。その二つこそが冒険者にとって重要なのだ。
ただ、この世界の人々にとっては大抵がステータスで見分けたりするのでステータスの方に重さを傾けてしまい、逆に異世界からやって来たラインハルトにとってはステータスよりも経歴の方に重さを傾けてしまっている。
本来ならば釣り合っている筈の天秤がどちらか一方へと傾いてしまっている状態。それ故に起きる価値観の違い。
今、受付嬢が困惑しているのはそれが原因だった。
「と、とりあえず冒険者カード作成の続きをしましょうか」
「それもそうだな」
思考を断崖の果てへとぶん投げ、叫び疲れた受付嬢はもうさっさと休みたいと思い始めていたが、ラインハルトはその様子に気付くことなく冒険者カードに描かれた職業一覧を眺める。
「ふむ……多いな」
冒険者カードをタッチしては表示を変え、またタッチしては表示を変えるという動作を何度も繰り返すが、一向に終わりが見えてこない。
段々作業染みてきて面倒になってきたラインハルトだが、ふとある職業を見て指を止めた。
「『冒険者』?」
「あっ、ダメです!」
冒険者なのに職業も冒険者とはこれ如何に。興味を持ったラインハルトが声に出して呟けば、疲れた表情をしていた受付嬢が決起迫る様子で窓口から身を乗り出してきた。
その際、彼女の胸が窓口のカウンターに乗せられ、餅のようになっているのを数人の男性冒険者達が凝視しているのだが、実にどうでもいいことである。
「その職業はダメです!ラインハルト様ならば『冒険者』よりも他の職業、特に上級職にした方が絶対にいいです!むしろそうするべきです!!」
「卿、何をそんなに慌てているのだ?」
「いや、それはラインハルト殿が『冒険者』になるのを止める為だろう」
早口で必死になって説得してくる受付嬢を不思議に思っていると、今まで無言で事態を見守っていたダクネスが口を挟んできた。
「ラインハルト殿が居た国ではどうなのかは知りませんが、少なくともこの国において『冒険者』という職業は最弱の職業なんです。他の職業の持つ全てのスキルを自由に習得することができるとはいえ、スキルポイントの消費量は多い、技の完成度は本職より劣る、そもそもスキルを覚える為に他の者から教わらなければならない、と簡単に挙げるだけでもこれ程のデメリットがあるのです。ギルドからすれば、ラインハルト殿程の高ステータス持ちを即戦力にならない『冒険者』にさせてしまうというのは何億の金を溝に捨てるのと同じこと。だから止めるんです」
「なるほど、理解した」
全てのスキルを習得できるという言葉には惹かれたが、ダクネスの説明と首を縦に何度も振って同意している受付嬢を見て、ラインハルトは『冒険者』になるのを止める。
そしてまた職業欄をタッチする作業に戻る訳だが、正直に言ってラインハルトはもう面倒になっていた。
「卿、何かお勧めの職業は無いのか?」
「お勧めですか?特にありませんが、そうですね……強いて言うならラインハルト様の戦い方をイメージして選んでみては如何でしょうか?」
「戦い方?」
「はい。冒険者である以上、モンスターとは必ず戦うことになります。ですから、自分の戦い方をイメージして剣を使うならソードマスター、魔法を使うならアークウィザードという風に」
「ふむ……」
受付嬢に言われ、自分の戦い方をイメージしようとした時、ラインハルトは何とも奇妙なイメージを幻視する。
ラインハルトが見たもの、それはもう一人の自分だ。
黄金に輝く槍を携え、無表情ではなく微笑みを浮かべ、碧眼ではなく黄金の瞳に髪を長く伸ばしているもう一人の
その姿を見た時、ラインハルトは直感的に忌避を感じた。
あれは、
「ラインハルト殿?どうなされました?」
「ッ…………」
ダクネスに声を掛けられ、ラインハルトは我に返る。
さっきのイメージは何だったのか。その答えはラインハルトにも分からない。
ただ、少なくともありえてはならない未来の一つを見たような気がした。
「いや、何でもない」
「そうですか?何やら顔色が悪いような……」
「心配せずとも大丈夫だ。それよりそろそろ職業を決めよう」
心配そうに見つめてくるダクネスから視線を外し、ラインハルトは再び職業一覧を眺め、そして決める。
「私はこの『ストライカー』とやらにする」
「『ストライカー』ですか……上級職とはいえ、かなり珍しい職業を選びましたね」
拳や脚による打撃系統の攻撃スキルが揃った『ストライカー』をラインハルトが選ぶと、受付嬢はホッと安堵のため息を吐いた。
「それでは、以上で冒険者登録の方を終わらせていただきます。貴方様にどうか素晴らしき冒険者ライフがあらんことを!」
「あぁ、激励感謝する」
受付嬢からの激励を受け、ラインハルトとダクネスは窓口から離れた。