この黄金の獣に祝福を!   作:ニャロー

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仕事が終わらぬ……執筆が出来ぬ……泣けるぜ(´・ω・)
とりあえず次回は別視点で書こうと思いますが、更新日は不定ですごめんなさいorz


第6話

 本人曰く、ラインハルト・ハイドリヒという男は与えられた役目をこなすだけの無能でしかない。

  何処にでも居る凡百の一人だと、ラインハルト自身はそう思っている。

 

 しかし、それはあくまで自己評価。他人からしてみれば、ラインハルト・ハイドリヒという男は決して無能などではなく、むしろ有能すぎた。

 ラインハルトが冒険者となってから一週間。これまでに受けた依頼の様子を見れば、その異常性がはっきりと見えてくるだろう。

 

 ケース1。風邪で休んだ料理人の代わりとしてギルドに付属しているレストランの厨房に入った時。

 

  「アンタの料理の腕前を見てから何の仕事を任せるか決めたい。一度俺がこれに書かれているレシピの手本を見せるから、その後はそこにある食材を使って同じものを作ってくれ」

 

  料理長からそう言われて渡された数々の食材とレシピが記された一枚の紙。

 ラインハルトはこれまで料理など全くしたことが無かったが、レシピがあるならそれ通りに作ればいいと思い、料理長の手本を見た後にさっそく準備へ取り掛かった。

 

  料理無経験であったが為に包丁捌きはたどたどしく、食材を取るのに少しだけ時間が掛かったりはしたものの、それは最初の方まで。慣れてくれば包丁捌きも上手くなり、食材を取るのも速くなった。

 

 そうして出来上がったラインハルト作の料理。料理長の動きを真似たおかげで素人にしてはまずまずの出来映えになっただろうとラインハルト本人はそう思っていたが、料理長は違っていた。

 

 ラインハルトの料理が出来た時、そしてその料理を一口食べた時、料理長ははっきりとした戦慄を覚えた。

  何故なら、ラインハルトが作った料理は料理長が作った料理と寸分違わない見た目をしており、香りも味も食感も完璧に再現されていたのだから。

 レシピ通りとは言え、録に料理もしたことが無い素人が何十年も料理の道を生きてきた人物と全く同じ物を作ったのだ。冗談か悪い夢としか思えない。

 

  「よ、よし、アンタの仕事は俺の補佐だ。俺が指示を出すから、アンタはそれ通りに動いてくれ」

 

 これまで培ってきたプライドが砕けそうになるのを必死に耐えながら、料理長はラインハルトが厨房に立つことを認めた。

 そして、料理人代行として本格的に働き出してから僅かのこと。ラインハルトはまたしても料理長を戦慄させる。

  料理長から出される指示をラインハルトは忠実にこなすのだが、その速度と精密さが時を進める毎に増していくのだ。

  一番忙しい時間帯である昼飯時になる頃には、既にラインハルト一人で厨房のほとんどを回せる程になっていた。

 

 それによって他の料理人達は手持ち無沙汰になってしまい、皿洗いぐらいしかすることが無くて誰もが困惑しているのを他所に、仕事が終わるまでずっと一人で厨房を回し続けたラインハルトに向けて料理長は思わず「アンタ本当に人間なのか!?」と叫んだ。

 

 ケース2。アクセルの街の外で土木作業をした時。

 

  「邪魔な岩の撤去。それがテメェの役目だ」

 

 そう言って棟梁からピッケルを渡されたが、ラインハルトは棟梁に待ったの声を掛けた。

 ピッケルは折れてしまう可能性が高いという旨を伝えるも、戯れ言と判断した棟梁はそれを無視して他の作業場所へと移動してしまった。

  聞く耳を持たない棟梁に諦め、仕方なくラインハルトがかなりの手加減をしてピッケルを振ってみれば、案の定岩と共に粉々に砕け散った。

 

 これでは仕事にならないと判断し、どうするべきかと思考すること数秒。ふとあることを閃いたラインハルトは懐から冒険者カードを取り出す。

 そして、何故か大量にあった初期ポイントを使って『ストライカー』のスキルを全て習得する。

 

 こういう誰でもお手軽に強くなれるというのはラインハルト的にはあまり気に入らなかったが、郷に入っては郷に従えという言葉があるように、この世界では当たり前となっているスキルを試してみることにしたのだ。

 

 スキルを習得した後、汗拭き用にと用意されていたタオルを何枚か両手に厚く巻き付け、拳に通る痛みが無くなったのを何度か確認してからラインハルトはさっき習得したばかりのスキルを使って岩を殴ってみた。

 

 するとどうだろうか。岩はまるで大砲で爆撃されたかのように見事に木っ端微塵となり、後には小さくなった大量の石ころが地面に落ちているだけ。

  拳での破壊が可能という事実に気付くや否や、ラインハルトは習得したスキルを次々と実際に試していく。

  邪魔な岩を撤去出来ると同時に、使ったこともないスキルを試せるという正に一石二鳥。

 

 ゴロゴロと転がっている岩を殴ったり蹴ったりして次々と破壊していくラインハルトを、周りで作業していた他の作業者達はドン引きした目で見ていた。

 

 ケース3。辞めた従業員の代わりとして宿屋に入った時。

 

  「貴方には受付係としてカウンターに入ってもらいます」

 

  宿屋の女将から渡された従業員の制服に着替えた後、ラインハルトはそう言われた。

 

  「微笑みを浮かべてお客様に対応すること。特に難しいことでも無いので問題は起きないと思いますが、何かあれば直ぐにこのベルを鳴らしてください。私は今から料理の仕込みがありますので対応出来ませんが、代わりにそこの主人が対応してくれますので」

 

  女将はカウンターに置かれている銀のベルを指差し、直ぐに慌ただしく奥の厨房へと去っていった。

 

  「まっ、気楽にやってくれや。案内とかは俺や他の従業員がやるから、お前さんはお客様に迷惑を掛けないようにしてくれりゃいいさ」

 

  女将が去った後に残された宿屋の主人は人が良さそうな笑みを浮かべてラインハルトの肩を叩いた。

 しかし、この時宿屋の主人はラインハルトのことを確実に侮りすぎていた。

 

 ラインハルトが宿屋の受付係として働くこと凡そ一時間。宿屋はこれまでにない程の人で賑わっていた。

 

  「ねぇねぇお兄さん、この後って時間ある?」

  「よければ私達とお茶でもしませんか?」

  「あっ!ずっるーい!それ私達の方が先に提案したのに!」

 

  女性、女性、女性、見渡す限りに女性一色。ラインハルトが居なければ女の園かと錯覚してしまう程の女性客が宿屋に詰め寄っていた。

  彼女達が何故宿屋に詰め寄っているのかと言えば、原因は勿論ラインハルトである。

 

  忘れては困るが、ラインハルトの容姿は人体の黄金比と称される程に美しい。

  基本的に無表情である為、多くの人はラインハルトのことを美しいと感じるよりも怖いと感じてしまうのだが、今のラインハルトは仕事とは言え常に爽やかな微笑みを浮かべている。

 しかも普段から使っている何処か天上人じみた口調は完全に丁寧で紳士的なものへと変わり、誰に対しても気さくに対応している。

 

  簡潔に言葉にするなら纏う雰囲気を変えただけ。だが、たったそれだけのことで、ラインハルトはアクセルの街に居る数多の女性達を虜にしてしまったのだ。

 そして、女性の噂話というのは広まるのが早い物。宿屋に人生で一度見れるかどうかのイケメンが居ると噂が流れれば、それを確かめに何人もの女性が宿屋に向かう。

 

 そして、実際にラインハルトを見て、一目で心を奪われた女性達が少しでもラインハルトと話したくてカウンターに詰め寄ったり、カウンターの近くにあるテーブルに座ってラインハルトと個人的に話せるチャンスを狙うようになる。

 だが、待ってるだけでは腹が空く。そこで女性客達は料理を望むようになる。

 

 その結果、宿屋は多くの女性達で溢れかえり、料理を作る女将や主人だけでなくそれを運ぶ従業員達は大忙し。

 もはや宿屋ではなく料理屋として機能し始め、それはラインハルトの仕事の時間が終わるまでずっと続いた。

 

 この他にもラインハルトは様々な仕事に手を出し、その度に予想以上の成果を出す。

 そして、ラインハルトが冒険者となってから僅か一週間。ラインハルトの懐には依頼の報酬金だけでなく多額のお礼金まで入っていた。

 

 その数、凡そ200万エリス。

 

  「……冒険者とはこんなに儲かるのか」

 

  元の世界と比べて、たった一週間真面目に働いただけでこんな金額を稼げるこの世界にラインハルトは戦慄したが、それは勿論違う。

  一流の冒険者ならともかく、まだ駆け出しの冒険者では日に数万エリス稼ぐのが限界で、普通ならこんなにも稼ぐことは出来ない。

 

  駆け出し冒険者が一週間で200万エリスもの大金を稼ぐのは不可能に近い。だからこそ、それを成し遂げてしまったラインハルトは正に異常だった。

 

  「凄いものだな、この世界は」

 

 しかしながら、自分を無能だと思い込み、周りが凄いと勘違いしているラインハルトにはそれが気付けない。

 そしてそれを指摘する人物も居ないせいで、現地点でラインハルトの勘違いが解かれることは無かった。

 

  「それはともかく、これをどうするか……」

 

 200万エリスという大金を手に入れたラインハルトは、その使い道について考える。

  食費や泊まっている宿の宿代として幾らか引き、また幾らかは貯金するとはいえ、それでも100万以上のエリスは確実に残る。

 

  当初の目標であった金を稼ぐ方法や住む所、身分証明となる物の確保は完了し、この一週間で仕事の合間にこの世界での常識などの知識もギルドにある書物や人から聞いたりして既に粗方覚えている。

 

 さて、本格的に金の使い道が無くて困っていると、ラインハルトの前に一人の冒険者が通り過ぎた。

 

  「チクショウ、また武器屋に行かなきゃいけねーのか。めんどくさい……」

 

 ぶつぶつと文句を垂れ流し、刀身が半ばから折れている片手剣を抱えている冒険者を見て、ラインハルトはあることに気付く。

 

  「そう言えば、武器が無かったな」

 

  冒険者であるにも関わらず、自分は装備を何一つとして着けていないことにラインハルトは思い至った。

  『ストライカー』というもはや全身が一種の武器と化した職業に就いてはいるものの、いつまでも素手のままというのは些か心細い。

 

 ギルドの書物で知り得たことではあるが、世の中には幽霊や精霊と言った魔法攻撃は効いても物理攻撃は無効なモンスターが多く居るらしく、ずっと素手に頼っていてはいつか手痛いしっぺ返しを食らうことになるだろう。

 

  「となると、必要となるのは魔法攻撃がそれ単体で可能な武器か」

 

  杖のように魔法の威力を高める物ではなく、それ自体が魔法攻撃となるような武器。それがラインハルトに必要な物だった。

 どうしてそんな物を必要とするかと言えば、原因は『ストライカー』のスキルにある。

 

  残念なことに『ストライカー』のスキルには─────魔法攻撃が可能なものが無い。

 

 つまり、『ソードマスター』のように剣に魔力を纏わせるだとか、『アークウィザード』のように魔法を杖からぶっ放す、ということが『ストライカー』には一切出来なかったのだ。

 

  拳に魔力を纏わせることが出来れば、物理攻撃無効な相手にも有効打を打ち込めるのだが、そういったスキルが無い以上は諦めるしかない。

 どうしても魔法を使う必要があるならば転職することも吝かでは無いが、折角就いた職業なのだ。転職するにはまだ早いだろう。

 

  「……モンスターと戦ったことも無いというのに、我ながら随分と偉そうなことだ」

 

  自嘲しつつ言葉を溢した後、ラインハルトは意識を切り換える。

  武器を買うなら武器屋に行くのが当たり前だが、ラインハルトの欲してる武器が普通の武器屋に置かれているとは考え難いし、そもそも剣や杖ではラインハルトの力に耐えられないだろう。

 そうなると、行くべき場所は自然と絞られ、最終的にラインハルトはとある一件の店に目星をつけた。

 

 ラインハルトは行ったことは無いが、人伝に聞いた話によるとその店は女性が一人で経営しており、世にも奇妙な道具が沢山売られているらしい。

 

  他にも、その店主は特大の巨乳だとか、男性経験は無いらしいだとか、ぽわぽわとしていて見てて和むだとか、全て店主についてのどうでもいい話しか無かったが、ラインハルトは奇妙な道具という点に自身の望む物があるかもしれないと予測を立てていた。

 

  「では、早速向かうとしよう」

 

 そうして、ラインハルトは歩き出した─────『ウィズ魔道具店』に向かって。

 

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