魔法少女はるか☆ウィング   作:青川トーン

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錬金術師で、中学生

 

 夜明け、日が昇れば朝は来る。

 

「一先ずは、出来た」

 

 様々な手続きをしながらも空いた時間で手を加えて来た、錬金術武装(アルケミック・ジャケット)「ヘブンスハート」に「賢者の石」を埋め込む事で盗難や紛失への対策を完成させ、さらに防衛力を上昇させた。

 

 錬金術武装「ヘブンスハート」は私が開発した、パワーアシスト・ステルス・防御能力・飛行能力を兼ね揃えた自衛の為の装備。

 四次元格納する事でいつでも何処でも展開が可能で、肉体に同化している為に持ち運びの心配は無用。

 更に「賢者の石」を搭載した事でその場での新たな「武装」の生成を可能とし、出力も改修前に比べて250%増し、さしずめ「一人第七艦隊」と言った所か。

 

 そうこうしている内に時計の針は7時と45分、春の朝は短い、急いで支度をする。

 

 学校までの距離は徒歩10分、肉体強化を使えば3分を切る程度だが、なるべく余裕を持って行動したい。

 

 ただでさえ目立っているのだから悪目立ちはしたくないのだ。

 

 通学路、曲がり角は感覚強化で人の気配を察知しながら、早足、ぶつかったりしたら相手が危うい。

 

 市立第三中学、校門前、風紀委員の見張り、ステルスでさりげなく通りすぎる、下駄箱、ラブレター無し。

 

「おはよう」

 

 3年3組教室、8時丁度に無事到着、挨拶への返答、静寂、ちょっと悲しい。

「お……おはよう緋泉さん」

 

「ああ、おはよう」

 

 後ろから女子の返答一名、ちょっとうれしい、流石に入り口に居たら邪魔だと、道を開けて席へ向かう。

 

 私の席は編入という都合で一番後ろで一番窓際、最も孤独なポジションだと思っていたが。

 

 どうやら違った様だ。

 

「あ、えーっと緋泉さん……今日もその、白衣似合ってますね」

 

 恐る恐る話し掛けてくるのは先程の女子、「オイオイオイ、死んだわアイツ」などと言ってる男子は私をなんだと思っている、失礼な。

 私の前の席へついたという事は出席番号29番、確か若葉だったか?。

 

「よく言われる、というより自分でも白衣以外を着こなせる自信がないよ」

 

「ふふ……私、若葉薫(かおる)…昨日はなんていうか圧倒されちゃって話し掛けづらくて」

 

「圧倒……?」

 

 そんな威圧するような自己紹介はしてない筈だが……。

 

「なんていうか、そう……間近でキリンを見た様な……サイズ感の違いというか」

 

「失礼な、私は等身大の人間だぞ」

 

 いくら165センチとはいえ背の高めの男子と変わらないし簡単に追い抜かれそうだが。

 

「なんていうか私からしたら2メートルくらいに感じるよ?そういえばオーラ……?とかが違う相手だと余計に大きく見えるって言うしそれかな?でもこうして話してみると案外普通に見えてき……やっぱり大きいわ」

 

「滅茶苦茶失礼だな!」

 

 人の中で浮いている、という居心地の悪さを和らげてくれてありがたいけど、滅茶苦茶失礼な奴だな!

 

「そういう君は140センチに満たない様に見えるが?」

 

「141あるよ!!失礼だね!!」

 

 なので仕返しはさせてもらう、背の低い事は気にしていたのか。

 

「まあ、よろしくね、コロポックル」

 

「よろし……誰が小人ですか!このギガンテス!」

 

 意外に中学生というのも、楽しいかもしれない。

 

 

 

 そんな風に会話を楽しんでいれば予鈴が鳴り、真琴先生がやってくる。

 

 中学生活二日目、割といい気分のスタートだった。

 

 そして昼休み、昼食を摂ろうと鞄から弁当を出す。

「緋泉さんのお昼ご飯ってどんなのか気になるー」

 

 すると当然の如く若葉が机の向きを変えてこちらを向き。

 

「ここいいかい若葉、それと緋泉さん」

 

 もう一人、女子がやって来た。「オイオイオイ死ぬわ加賀宮さん」とまたさっきと同じ男子が言っていた、本当に失礼な奴ばかりだなこの教室!

 

「あ、了子(リョーコ)ちゃん、いいよ!」

 

「自己紹介が遅れたね、あたしは加賀宮(かがみや)了(りょう)、了子ってのはアダ名だよ」

「緋泉遥だ、よろしく」

 

 加賀宮は、私よりは低いとはいえ背も高く、なんというか見るからに運動部系という感じの外見だった。

 

 それに比べると。

 

「ねえ、緋泉さんも大概失礼ですよね」

 

 若葉と並べると凸凹コンビと言わざるを得ない。

 

「今絶対に心の中で凸凹コンビって思ったでしょ!このタイタン!」

 

 謎の言い掛かりをつけてくるアルヴィー(小人)に曖昧な笑みを返して差し上げ、弁当の包みをほどく。

 

 今日の弁当は「クッキー」だ。

 

「うわ、見た目通りの弁当だね……マジでサイエンスって感じだ……」

 

「微妙に全部色違いって辺りがSFな感じがする……」

 

 加賀宮と若葉が「マジかよ」と言わんばかりの表情を向けてくるが、想定内だ、というか「ウケを狙ってやっている」のでむしろ「大成功」か。

 

「栄養食だ、きちんと手作りだ」

 

 キャラ付け、より親しみを持って貰うに為に、ユーモアのあるキャラを演じる為に、先程「錬成」した。

 

 実は弁当など今日は持って来ていなかったのだが、若葉との予想外の出会いに、急ぎで空間中の物質を「根源物質(プリマ・マテリア)」に変換して錬成したのだ。

 

 まさか「賢者の石」をこんな使い方をするとは自分でも思ってもみなかった。

 

 プリマ・マテリアの精製までは通常の錬金術で出来るのだが、プリマ・マテリアをクッキーとしての情報を与える為に賢者の石が必要だったのだ。

 

「あ、一個貰うね」

 

 などと悦に浸っていたら若葉がクッキーを躊躇なく持っていった。

 容赦ないなこいつ!

 

「うわ、チキン系の味がする……」

 

 しかも「うげっ」という表情をするあたり更に失礼さが二倍だ、なんだか今日一日で若葉という奴がわかって来たぞ。

 

 

「若葉、さすがにあたしも勝手にとってそれは失礼だと思うよ、あ、一個貰うね」

 

 と加賀宮もわりと遠慮なくクッキーを持っていく、それは。

 

「………」

 

 クッキーを半分かじった加賀宮の顔色が面白いくらいに青くなっていく。

 

「それはいなり寿司だ」

 

「緋泉さんはさ……意地悪な人だね」

 

 震える声で残り半分を押し込んだ加賀宮、随分と律儀だな。

 

「ねえ緋泉さん、こんな事をしてたら人の心を失ってロボットになっちゃうからさ……私の弁当分けてあげるね」

 

「あたしも、というか明日から二人分作って来るよ?」

 

 若葉と加賀宮が苦笑いしながら弁当を差し出してくる。

 

「冗談だ、明日はまともな弁当を持ってくるさ……今朝は材料が揃ってなかったから、保存食を持って来ただけだよ」

 

 ああ、やはり中学生というのは楽しいな。

 




◆キャラ紹介

「若葉(わかば)薫(かおる)」
身長141センチ、文系小人。
かなり無遠慮で馴れ馴れしい性格が災いしてか、友達は若干少ない。

「加賀宮(かがみや)了(りょう)」

身長155センチ、陸上部系タイタン(若葉談)

 アダ名はリョーコ、ボーイッシュな雰囲気で名前も相まって男っぽい、が本人はかなり気にしてる。

 なので一応ちゃんと女の子扱いしてくれてリョーコと呼んでくれる若葉の事は結構好き。
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