ロマンシングサガ 〜Diva of the last song〜 作:シズりん
まだ人間が、この世に生まれて間もないころ、
悪しき三柱の神がいた。
デス、サルーイン、シェラハ。
兄のデスは死を司り、
冥府の亡者を率いる、死者の王。
弟のサルーインは憎悪を司り、
邪悪な魔物を支配する、破壊の王。
妹のシェラハは暗黒を司り、
強力な魔力を誇る、闇の女王。
彼らは、恐ろしいモンスター達を率いて、
神々と人間達に戦いを挑んだ。
激しい戦いだった。
神々の王エロールはディステニィストーン
を作り、英雄ミルザに与えた。
悪しき神々は敗れ、サルーインは
ディステニィストーンによって封じられた。
ミルザは命を落としたが、彼と宝石の
物語は永遠に伝説となったのだ。
このマルディアスにおいて子供から老人に至るまで最も有名な昔語りを肴に酒でも一杯。
そう考えながらグレイが仲間と入った極東の島、リガウ島唯一の村ジェルトンのパブはいつになく大盛況だった。
「お、今日は歌姫が来ているのか。だから大盛況なんだな。」
仲間の聖戦士ガラハドに言われるままに人混みに目を向けると、なるほど確かに人混みの中心に一際輝く美しい女性がいた。
特に歌姫なんてものに興味があるわけではないのだが、あらゆる国のパブに現れては昔話しを語る謎の詩人同様、彼女もまたいろんな国のパブに現れては歌を歌い、それでいて誰も彼女に近くこともできないような絶世の美女という、マルディアスではちょっとした有名人なのだ。
「なぁにグレイ、あんたもああいう女が好みなの?」
もう一人の仲間である炎の魔術師ミリアムが白い目で見ているが、それはあまりにも誤解が過ぎるというものだ。しかし一々相手をするのも面倒なので軽く受け流しグレイは酒を口にしていた。
それにしても彼女の歌は不思議な魅力に溢れていた。
彼女の歌は、遠くへ行ってしまった者への自身の声、想いを伝えたいといったどこか物悲しく、それでいて美しい歌だった。
「グレイ、お前にしては珍しく歌に聞き惚れていたじゃないか。」
歌が終わるとガラハドが話しかけてきた。
「別に…そんなことはないさ。」
「そうか?でもお前まだ酒一杯目だろ?」
言われて見た右手に持つ酒の満たされた器には、並々とまではいかないまでも半分以上は残っていることに初めて気が付いた。
まさかこのオレが酒を飲むのも忘れて歌に聞き惚れていたというのか。
「フッ、まさかな。」
グレイは独り言をポツリと呟き何気なく歌姫の方に視線を向けると、深く静かな夜の色をした彼女の瞳と、ほんの一瞬視線が交わった…そんな気がした。