ロマンシングサガ 〜Diva of the last song〜   作:シズりん

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第2話

「なぁグレイ、今回の冒険でだいぶ懐も温かくなったしどうだろう、パーティを一度解散しないか?」

 

リガウ島を離れ、穏やかな大海原を渡りバファル帝国の首都メルビルに降り立つと唐突に聖戦士ガラハドが開口一番、解散を切り出した。するとそれに呼応するかのように

 

「そうね、アタイもそろそろ新しい炎の術法が欲しいし一度南エスタミルに帰 ろうかな。ねえグレイはどうするの?特に予定が無いならアタイと南エスタミルに行かない?」

 

炎の魔術師ミリアムが言うと

 

「オレはメルビルに残る。」

 

グレイは素っ気なく応える。

三人は旅慣れた仲間ではあるが馴れ合う仲ではない。普段は各々が自由に活動し、お互いの利害が一致したときにパーティを組むと言った自由な間柄だ。間髪入れずに断るグレイの返答に不満を現しボヤくミリアムと、それを高らかに笑うガラハド。

 

「あいつは帝国出身なのか?」

「分かんない。彼、自分の事なーんにも話してくれないんだもん。」

会話しながら歩く二人がメルビルを後にした姿を見送るとグレイはメルビルのパブへと歩を進めた。

 

 

 

「グレイ!久しぶりだな。同じ部隊にいたジャンだよ。」

都市の二階部にあるパブへの道すがら背後から声がかかった。振り向いた先にいたのは一人の白髪碧眼の青年だった。

「知らんな。」

「そんな事はないだろ、あの時軍を辞めたのはオレをかばうためだったんだろ?」

「記憶にないな。」

「キミは忘れていてもオレはしっかり覚えているぞ。」

突然話しかけてきておいて恩の押し売りとは迷惑な奴だ。そんなグレイの内心を知ってか知らずかジャンと名乗る青年は話をかってに進める。

 

「オレは今とある極秘任務に就いていてな、これから迷いの森に向かうところなんだ。ここだけの話なんだがな10年前に行方知らずになった皇女がいるかもって話しでな、オレはその先見調査ってわけだ。」

 

ベラベラと語るジャンを極秘も何もあったものではないなと白い目で見るグレイ。

「…ってわけなんだ。どうだグレイ、お前も一緒に迷いの森に行かないか?上手くすれば軍に戻る事だってできるかもしれないぞ。」

「オレには関係ないな。」

「でもよグレイ…」

「オレの事は気にするな。それよりもちゃんと極秘任務とやらをこなすんだな。あまり適当な事をやってるとモニカに嫌われるぞ。」

「なんだよ、お前やっぱり覚えているじゃないか。」

「ふっ。」

「まぁいい。オレは普段メルビルの警備所にいるから見かけたら声をかけてくれ。じゃあまたな!」

 

そう言ってジャンは颯爽とメルビルを後にする。

やれやれ、相変わらず騒々しい男だな。グレイは誰に聞かせるでもない独り言を呟くと改めてパブへと向かうのだった。

 

 

 

バファル帝国の首都メルビルの二階部には、神々の父である光の神エロールや海の神ウコムを祀った神殿や、マルディアス唯一の図書館。そしてバファル帝国の王宮がある。そしてそれらを囲むように商店などが点在し、グレイの目当てであるパブもそこにある。

グレイはパブに入るとカウンターで辺りを見回す。

昨夜のリガウ島と違いメルビルのパブは人気もまばらだった。時刻はお昼を過ぎて間がない。歌姫シェリルでもいなきゃこんなものかと杯を受け取ると壁際の依頼書一覧のクエストボードに目を移す。

 

 

娘を探してください。

 

呪いに興味のある方募集

 

どれも取るに足らないものばかりだ。

半ば諦めて宿屋にでも行こうとした時にグレイの目の端に一人の男が飛び込んできた。いかにも旅人と言った出で立ちなのだが、肩に掛けられた独特なフォルムの弦楽器を持つ。深くかぶった帽子から覗く青い瞳には何もかもを見通すかのような不思議な色を彩っている。このような人物はグレイの知る限り一人しかいない。マルディアスに住む者なら老人から子供に至るまで広く知られる男。

 

詩人と呼ばれる男である。

 

彼を世界中の人は認識しているが誰も彼の本当の名前を知らない。ただ、風貌から彼を人々は詩人と呼ぶ。世界中のパブに神出鬼没に現れては昔語りを詠う彼は、グレイが昨晩会った絶世の美女シェリルに並ぶ世界の不思議人物に挙げられているのだ。

グレイはまさか2日連続で怪人物に出会うとはなと何気なく見ていると、その視線に気付いた詩人は笑顔でグレイに歩み寄る。

 

「気楽な一人旅ですか?一曲いかがですか。」

「…今日は千年前の神々の話しを聞く気分じゃない。」

「そうですか。ではたまには別な昔語りを詠って聴かせましょう。」

 

そう言って詩人は弦楽器を奏でる…

 

 

 

 

三邪神の妹シェラハは、エロールの光の力をしのぐほどの

 

強い闇の魔力を持っていたといわれています。

 

エロールは闇の魔力を抑えるために、ディステニィストーン

 

「光のダイアモンド」を作ったといわれています。

 

エロールは自らシェラハの下におもむき

 

戦いをやめるように説得したといわれています。

 

戦いに飽きていたシェラハは、戦いを止める代わりに

 

いくつかの条件をエロールに認めさせたといわれています。

 

エロールはダイアモンドのリングをシェラハの指にはめたといわれています。

 

ダイアモンドの光の力と闇の力は打ち消しあい

 

シェラハは闇の魔力を失ったといわれています。

 

 

 

 

 

「…毎度思っていたのだが、よく見てきたかのような詩を詠うものだな。」

「ははは、よく言われますなぁ。」

「シェラハは力を失ってどうなったんだ?」

「魔力を失ったシェラハは人間となって世界を彷徨っているといわれていますよ。」

「ふっ、神の行方は神のみぞ知ると言うわけか。」

「どうでしょう、案外本人以外は他の神々さえもわからないのかも知れませんよ。」

 

詩人はそう言って微笑むと、グレイから渡された杯を受け取りお互いの杯をカツンと打ち鳴らした。

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