「なぁ、今日帰りにブック○フよらね?」
ホームルームが終わり荷物をまとめていると長身で細身の男子、城戸雅人(きどまさと)が古本屋によろうと提案してきた。彼は基本まったりとした感じだが芸人気質なところがあって、ネタをふって来たりする俺とかなり気が合う面白い奴だ。
「あー確か今日100円セールだったな、チラシに載ってた」
その言葉に反応した席に座っている痩せ型の男子は和泉健吾(いずみけんご)。普段は物静かだがツッコミもボケもこなすオールマイティーな奴で、趣味の幅も広く俺の趣味ネタにもついて来れる数少ない人物だ。
「俺は別に構わんけど…井藤はどうする?」
いじっていた携帯を閉じて俺に聞いてきた小柄な男子は織田勇治(おだゆうじ)。ほっとくと好き勝手な方向へ進もうとする俺達の手綱を握るブレーンでもある。回転が早く口も達者で好きな作品の批評議論では俺は一度も勝てた試しがない、話していて実に面白い奴だ。
みんな一年の時からの付き合いで休日や班決めとかはこの四人でつるんでいる事が多いが、だからと言って決して常に一緒にいるわけではない。それぞれが他のクラスメートと話したり、時には独りでふらふらする事もある。お互いを変に気遣う事もなければ常にいることを強要する事も無い、気楽で自由な集団だ。
「悪ぃ、今日はパスするわ。昨日から部活始めてさ」
「へぇー部活…ちょっと泰明さぁん、リア充の仲間入りっすかぁ?」
「リア充か。爆ぜねぇかな、死なねえかな」
「無理なら三人で行くし別に構わんが…お前が部活って珍しいな」
城戸、和泉、織田の順に三者三様の反応が来るが…約二名は酷くないか?絡む時は敬語とさん付けになるし…まぁいつもの事だけど。何かしらある時は俺を含め三人が冗談混じりで憎まれ口を叩き合い、収拾がつかなさそうになれば織田が無視して話を進める。毎回こんな感じだ。
「何で部活やるだけでリア充になるのさ…まぁ入ったのは成り行きって言うか、俺もぶっちゃけよくわかってないんだよなぁ…あ、そうだ。それよりもさ、この学校の生徒で雪ノ下さんって知ってる?」
昨日の雪ノ下さんとのやりとりでわかった事だが、どうやらあの人は学校でかなり有名らしい。俺は噂や流行の類に疎いので他の奴にも聞いて見ることにした。織田は「知らん」の一言で終わったが、先ほどまで部活については興味なさげに聞いていた城戸と和泉が食いついてきた。曰わく実力テスト学年一位で可愛いだとか、J組にいるすごい黒髪美人だとかそんな感じだ。やっぱ知ってる奴は知ってるんだな…と思っていると目の前にいる和泉と城戸がビクつきだし、後ろから相手を威圧するような低い声が聞こえた。
「おい、何の話してんだよ?」
後ろを振り向くとそこには我らがC組のリーダー的存在、矢車啓介(やぐるまけいすけ)がいた。着崩した制服から覗く豹や狼を連想させる引き締まった筋肉質の肉体に、雪ノ下さんを日本刀だとするならこいつはナイフの様な鋭さを持つ整った顔立ち。さらにまるで戦闘者のようなオーラを放っている奴だ。だがこの素で威圧的な態度とは裏腹に誰とでも気さくに話せる事から、先の二人のように若干恐れている奴もいる反面、男女問わず慕っている奴の方が多い。
カリスマ性とでも言えば良いのだろうか?俺もあまり気にしてはいない。実際話してみると良い奴だったし。ちなみに成績や身体能力もクラスでトップだ。
「あぁ矢車、ウチの学校の生徒で雪ノ下さんって知ってるか?って話しをしてたんだけどさ」
「雪ノ下?あぁあいつか…雪ノ下雪乃、国際教養科J組所属の定期、実力テスト学年一位常時保持者であり県議会議員兼、建築企業社長の令嬢でもある。おまけに容姿端麗ときたもんだ」
思ってた以上のハイスペックだな。そんな人現実にいるんだ…にしてもえらく詳しいな。知り合いか何かか?そう思い矢車に訪ねると急に不機嫌そうな様子で答えだした。
「別にそんなんじゃねぇよ。それだけ有名だって話だ。知らない奴のが少ない位にな…それよりもアキ、今度の土曜暇か?新しく出来たケーキ屋に付き合えよ。ひとりで行くのは何かやだからな」
「良いけどそれって、彼女へお土産に持ってくのいつもの下見だろ…今更だけど野郎二人で行く方のが気まずくないか?俺は気にせんけど」
「…一人よりは良いんだよ。並んでる時の暇つぶしにもなるしな。それに、お前の料理人スキルにも期待してるからよ」
「だから俺は料理人じゃないってのに…」
アキと言うのは俺のあだ名だが、考えてみたらこいつとは不思議な付き合いだと思う。確か一年の始めの時に一人暮らしで自炊が面倒とボヤいていた矢車に、某川崎支部将軍のレシピを参考にした実践済みお手軽料理の話をしたら「よくわかんねぇから直接家で教えろ」と言われてからだ。それ以来、月一位のペースで家に行き作り方を教えたり、残り物やあり合わせの材料で一品作ったりしている。おかげで元来食べる事が好きで、それが転じて趣味で嗜んでいたこちらの料理スキルもそれなりに上がった。
あとはお互いに味覚の嗜好が合ったのかどこの店の菓子が旨いとか、あそこの料理屋は値段のわりに美味しいとかでたまに一緒に出かけたりもする。そのせいかこいつの中で俺は料理人という扱いを受けている。でも俺の調理法は調味料が目分量だったり、切り方が雑なので料理人と言われるのもおこがましい気もする。それにこの役目もそろそろお役御免となるだろう、矢車に彼女が出来てからはこいつの家の調味料の品数が増えてたからな。まぁこんな感じでたまに他のグループに混ざってショッピングやカラオケに行ったりもするが、休日でも会う程の深い付き合いとなるとこの三人と一人が主だ。
「言ったからな、じゃあな」
「あぁお疲れ…っと悪い、そんな訳だからオフに寄るのまた今度な。それじゃお疲れ!!」
矢車が去った後に俺もみんなに挨拶をして部室へと向かう。「死ぬなよー」とか「頑張って来いよ」とかの言葉が後ろから聞こえてきたが、さっきまで憎まれ口を叩いていてもなんだかんだでエールらしきものを送ってくれる辺りやっぱり良い奴らだなと思う。
そして今は部室へと向かっているが、ただ歩いているだけというのも退屈なので考え事でもしながら行くとしよう。そうだな…まずは今のC組についてだ。俺のクラスには余所のクラスであるような明確なスクールカーストというものがない。確かに矢車がクラスの頂点に立ち何かある時はリーダーシップを発揮するが、あいつ自身は常に集団で群れる事を好まないために特定のグループを作ってはいない。興味を持ったグループにその都度混ざり、気づけば他のグループを渡り歩いている。加えて男女比率が7:3~6.5:3.5と昨今では珍しく男子のが多い。そのことを嘆いている男子も多いがおかげで多少の力関係はあれど、男子間では横の交流が広く和気藹々としていて、人によっては男子校のノリに近いという。本物を知ってる身としてはちょっと違う気もするが、居心地が良いのは確かだ。
詳細はわからないが女子の方も比較的理解のある人が多く、今の状態を容認していると言うか諦めていると言うか…男子同士の様子を見て楽しむ等をしてとりあえず上手くやっているようだ。
この状態が一年の時から続き、進級してクラス替えもあったが三割程度の入れ替わりしかなかったために雰囲気は相変わらずだ。新しく入ってきた人でまだ馴染めてない人がいたりもするがそれも時間の問題だろう。中には新規組で、テンションが高すぎて皆がどう関わったら良いかわからず戸惑っている奴もいるが…あいつも良い奴だしもう少し落ち着けば溶け込めるのになぁ等と考えていると後ろから何かを訴えるような叫び声が聞こてきた。
「理由が最低ですね、これが愛なら愛などいらないです!!」
「さっきの言い訳といい、君は全く捻くれているなぁ…っと井藤か、さっき君のクラスにもよったのだがな。逃げずに来るとは中々見所があるじゃないか」
「こんちわっす先生、それと八幡も。いったい何の騒ぎっすかこれ…?」
突然の大声に驚いた俺が振り向くとそこには平塚先生に右腕を抱えられ連行されている八幡がいた。少し遠いからよくわからないが…肘に当たってません?珍しくちょっと羨ましいと思ってしまったぞ。俺、星人だからさ…何のとは決して言わないが。言わせんな恥ずかしい。
「なに、比企谷は少し素直になった方が可愛げがあるぞって話だ。世の中を斜めに見ていても別に楽しくはないだろう?」
「楽しいだけが世の中じゃないですよ。楽しきゃいいって価値観だけで世界が成立してたら全米が泣くような映画は作られないでしょ。悲劇に快楽を見出すこともあるわけだし」
「まぁ、そうだわな。斜めに見ようが悲劇や鬱作品を見ようが楽しみ方は人それぞれだし…何であれ工夫して楽しんだ者勝ちさ。世の中、楽しい事が多いにこしたことは無いしな」
確かに世の中は楽しい事だけじゃない。でも嫌なことは少なく、楽しい事は多い方が良いに決まってる。そう思って言ったことだが、先生の締め付けから解放され手をさすっていた八幡は気に入らなかったようだ。
「意味分かってないだろ。楽しいってだけで世界は成立しないって言ったんだ」
「いやぁ、だから言ってんじゃん。楽しいだけが無理だからこそ楽しい事は多く、嫌な事は少ない方が良いって。誰が好き好んでわざわざ楽しく無いような事を増やすのさ?まぁその『楽しい』や『嫌』が何かは人それぞれだけど」
「お前はまたそうやって中途半端な言い方でわかった様なこといいやがって…」
続けて言った俺の言葉に八幡はうんざりしたように答える。何がそんなに気にいらないのかさっぱりわからない…いや、本当マジで何なのか教えてください。俺が悪いのかやっぱ?
「まぁ待て、いったい君達は仲がよいのか悪いのか…比企谷の発言は斜に構えてる若者にはよくあることだが、井藤の発言もな…そうだな、君達はマンガやアニメは好きかね?理由も答えてもらおうか」
平塚先生が間に入りなにかを考えていると、妙な質問が出てきた。今必要な事なんだろうか?どうやら答える事は決定事項らしく、八幡の方から淡々と述べられた。
「まぁ、嫌いではないですけどね…日本の文化の一形態ですし、世界に誇れるポップカルチャーとして認知されてますから認めないのも不自然な事でしょう。市場も大きくなってるから経済面でも無視しちゃいけない」
「普通に好きですよ。好きな作品を見れば心が躍ります、魂が震えます、血がたぎります!!熱血バトル物から冒険ファンタジー、SFロボットアクションに青春ラブコメ、ほのぼの日常系にカオスなギャグ物。ここには無いもう一つの世界が広がってるんだから楽しくない訳がないでしょう」
「前々から思ってたけど典型的なオタクじゃねぇか…」
「へっ、オタクで結構。好きな物を好きと言って何が悪いのさ?だいたい人間ってのは趣味を持った時点で何らかのオタクなんだよ」
八幡が小馬鹿にした感じで言ってくるが流石にこれは譲れない。だいたい文学を極めれば文学オタク、音楽を極めれば音楽オタク、歴史を極めれば歴史オタクと言うように好きな事に没頭すれば何だってその趣味のオタクになる。なのになぜアニメやマンガの類になるとバカにされなければならない?そう言う狭了な奴程たかがしれてると思う。そもそもこれはあの時の俺にとって大事な『支え』の一つだ。バカにされたら穏やかではいられない。それと平塚先生が拳を震わせていて目も怖くなってるんですけど。
「そうだ、その通りだっ!!なのにあいつらと来たら…思い出すだけで腹が立つ。っと脱線したな…では一般文芸ではどうだ?東野圭吾や伊坂幸太郎は好きかね?あと好きなライトノベルレーベルも」
「読んじゃいますけど、正直売れる前の作品のが好きですね。ラノベはガガガと講談社b○xです」
「面白ければなんでも、特に誰とかは決めて読んでないですね…ガリレオシリーズとか好きですよ。ラノベの方も気に入れば何でも…あ、ノベライズ版読むの多いからメインはスニーカーになるんですかね?」
何か嫌な思い出でもあったのか…急に熱弁しだした先生は俺達の答えを聞くと呆れたような、納得したような顔になった。
「君達は予想を裏切らないな…特に比企谷は立派な高二病だ。ちなみに高二病は捻くれてることがかっこいいと思い、マイナーな物を褒め称える。そのうえ同類のオタクをバカにし、変に悟った雰囲気を出しながら捻くれた理論を持ち出す。一言で言えば嫌な奴だ」
「嫌な奴って…だいたい合ってるから否定できねぇ」
「いや、誉めたぞ?近頃の生徒は実に器用で上手に折り合いをつけてしまうからな。教師としては張り合いが無いのだよ…井藤にはその傾向も多少あるからな、その点を危惧している」
高二病の下りは知っていたが八幡がそれに当てはまるとは思っていなかった。まぁ俺がこいつを良い奴だと思っている事に変わりは無いけど…そして俺についてそんな指摘が来るとは考えていなかったのでつい「へっ?」と間の抜けた返事をしてしまった。
「さっきも捉え方は人それぞれと言っていたが、その様に何事も受け入れようとする姿勢は確かに誉められる点だろう。だが君の場合その範囲が大きすぎる気がしてな…分別なく受け入れていけばいずれ破綻するぞ?まぁ先ほどの比企谷とのやりとりを見ていると一定の基準は設けている様だからな、杞憂に終わるかもしれない。だが今の話は心に留めておいて欲しい」
言いたいことは何となくだがわかる。あまり深く考えていなかった事だが大事な事だと思う。それにここまで俺の事を考えてくれているとは嬉しい限りだ。
「なんつーか、ありがとうございます。あんま小難しいこととかは考えていなかったもんで…」
「なに、教え子の問題点を指摘するのも教師の務めさ。それに君とて自覚が無いだけで何も考えていない訳ではあるまい、まとめずに結論を先に出してしまう傾向はあるがね…比企谷も何か言いたそうだが勘違いしないで欲しい、私はわりと本気で君達の事を誉めている。捻くれていようが纏めてなかろうが、考える事を放棄しない人間は好きだ」
そう言った平塚先生の顔はすごく優しい、柔らかい笑顔だった。八幡もぐっと言葉につまり、少し照れてるような感じがする。
「そこでだ、そんな君達から見て雪ノ下雪乃はどう移る?」
「嫌な奴」
「少し、と言うかかなりキツくておっかない所はあると思いますけど…良い人だとは思いますよ。そうじゃなきゃ誰かを救いたいだなんて思わないだろうし」
八幡は即答だな、まぁ昨日あれだけ言われていたらそう思うのも仕方ないか。そんな俺達の答えに先生は苦笑していた。
「そうか、非常に優秀な生徒ではあるんだが…まぁ持つ者は持つ者でそれなりの苦悩があるのだよ。けれどとても優しい子だ。きっと彼女も問題を抱えているんだろうな。優しくて往々にして正しい。だが世の中が優しくも正しくないからな、さぞ生きづらかろう」
「雪ノ下が正しいかどうかは置いとくとして、世の中についちゃ概ね同意ですね」
「よくわかりませんけど…正しい奴や優しい奴がまともに生きられない世の中ってのは、なんか嫌ですね」
「君達は捻くれていたり曖昧だな…うまく社会に適応出来るか心配だよ。だからかな、一カ所に集めておきたくなる」
さっきの不条理な事っていうのは、何だか嫌な気分になる話だ。最後に楽しげに笑って言う平塚先生に対して八幡は「隔離病棟かよ」とぼやくと、先生は気にせず穏やかに返した。
「そうかもな、けれど君達のような生徒は見ていて面白くて好きだよ。だから手元に置いておきたいだけかもしれんな…さて、私はこの辺りで良いだろう。井藤、比企谷が逃げないように頼むぞ」
特別棟の入り口まで来ると、先生は踵を返して去ってしまった。俺は先生の去り際に「はいっ!!」と元気よく返事をし、言葉通り逃げないように八幡の肩に腕をまわし肩を組んだ。
「おい、逃げねぇから離れろよ。そういうのが鬱陶しいんだよ本当に…」
「あぁわかった」
逃げないと言うなら大丈夫だろう、仮に逃げ出したら捕まえれば良いだけだし。俺が離れると嫌そうな顔で俺の方を見ていた。
「…昨日もそうだけどよ、さっきもあれだけ言ったのによく俺と一緒にいようなんて思うな。普通あんな事があったら顔を会わせるのも嫌だと思わないのかよ…」
「いやぁ特に思わないなぁ…言われたにしても自分と違う価値観とか意見を知る良い機会だし、実際お前の青春についてのレポートを見たときは目から鱗だったからなぁ」
俺がそう言うと隣を歩いていた八幡はピタリと足を止めて固まってしまった。表情も嫌そうな顔で固定されたままだ。
「お前、見たのかよ…」
「ごめん、不可抗力だったんだけどさ…でもあれだな、青春って悪さをするのとか色々あるんだな。俺はてっきりルールを守って、他人様に迷惑かけない範囲で楽しむんなら大丈夫だと思ってたわ」
「いや、その程度ならまだ問題ないんじゃないか?それこそお前が言う人それぞれって奴だ。話がズレたが俺が言いたいのはだな…昨日も友達じゃないと言ったり、さっきもお前の趣味をバカにした俺を嫌な奴だとは思わないのか?って話だ」
「多少凹んだりショックだったりはしたけど、そんなには思わないなぁ。昨日の話はケリがついてるし、趣味のことも今回が初めてじゃないし…俺にとって一番嫌な野郎ってのは自分のやった事を棚上げして、被害者面して、相手を傷つける奴くらいだ」
何だか嫌なことを思い出した…後半は言葉も強くなってた気がする。こいつも驚いた感じで見ているし。
「意外だな、てっきり嫌な奴なんていないとでも言い出すと思ってた。それにえらく具体的だ」
「まぁ、昔ちょっとね…あ、後は理不尽な理由で言いがかりをつけたりする奴も嫌だな。まぁ結局、俺だって付き合う人間を選んでるって事さ。だから八幡は俺の中で嫌な奴には入らないな、趣味も合うし」
気がつくとまた歩き始めてはいるが先程よりも速度は遅い。そしてもうすぐ部室につく頃かと言うところで「その趣味のことだけどな…」と八幡は呟きだした。
「井藤、お前は見た目で俺のことを『にわか』とか『嘘非モテ』とは思わないのかよ?」
「いや、わけがわからないんだけど…まぁ、話せばにわかかどうかなんて一発だし、お前がモテようがモテまいが俺には関係ないし…だいたい顔で趣味が決まるわけじゃないだろ、『イケメンはオタ趣味を嗜んじゃいけません』って法律も無いしな」
こいつの方から色々聞いてくるのは初めてだったが、流石に最後の質問は意味はわかっても意図はよくわからない。誰かに言われたことでもあるのか?別に気にするような事でも無いと思うけどな…俺の言葉を聞いてから八幡は昨日の別れ際と同じ様に「そうか」と言い、こちらを見ずに前の方をを見ている。基本的に感情の機微に疎い俺には、じっと廊下の先を見据えるこいつの考えがいまいちわからなかった。もうすぐ部室につくとはいえ急に静かになるというのも何か気まずいんだけど…
「あ、そうだ。八幡のおすすめの本とかマンガとかあったら見せてくれよ。今度俺も持ってくるからさ」
「…お前が気に入るかどうかはわからんぞ」
会話のつなぎと自分の興味も兼ねて提案してみたがどうやら応じてくれたようだ。ついでにアドレス交換も頼むとそれも了承してくれた。俺のスマホに赤外線はあるが八幡のには無かったので、SMS(電話番号でやりとりする簡易メール)にメアドを添付して手短に済ますとちょうど部室へと到着した。話しながら来たせいか、何だか昨日より道のりが長く感じられる。
しかし何というか、昨日の今日で少しは緊張する…意を決して軽くノックをすると「どうぞ」と声が聞こえ、俺はそれを確認すると扉に手をかけた。
「こんちはー」
「あら、こんにちは。ノックや挨拶が出来るあたり、そこの男よりは礼儀の心得があるみたいね」
勢い良く挨拶をして入ると雪ノ下さんは昨日と同じ様に本を読んでいた。顔だけこちらに向けて挨拶をしてくれたけど、初っぱなから八幡への口撃かい…軽いジャブどころか最初からクライマックスじゃないすか。そもそも俺と同時に軽く会釈してたじゃん。それでも隣にいる八幡は小さく舌打ちすると「コンニチハ」と片言で挨拶をした。
「こんにちは、二人とももう来ないかと思ったわ」
八幡の挨拶に満足したのか、雪ノ下さんは笑顔になっていた。昨日のような冷たさも無い、自然で優しい笑みだ。不意打ちとかずるいわ…某悪逆皇帝並みに不意打ちには弱いんで勘弁してくださいよー、眩しすぎて直視出来ないし。少しフンワカした気持ちになっていたが、それも次の言葉ですぐにクールダウンしてしまった。
「あれだけこっぴどく言われたら普通は二度と来ないと思うんだけど…マゾヒストかストーカーなのかしら?それとも私の事が好きとか?」
「どれもちげぇよ、その自信過剰ぶりには流石に俺も引くぞ」
「全部違うし…なんか雪ノ下さんの事を好きって事で話が進んでるけどそれは無いな。俺、気になってる人がいるし」
「…二次嫁は論外だぞ」
「いや、普通に三次なんだけど」
オタ=嫁がいると思ったら大間違いだ!!今期は特にキタの無いしな。雪ノ下さんは俺達の反応が意外だったのか「違うの?」とキョトンとした顔をしてるし。そんな顔も出来るんですね…昨日よりも良い意味で表情が豊だ。
「はぁ…お前さ、そんなんで友達いんの?」
「いきなり何言ってんのさ…」
椅子を用意し腰掛けながら、八幡はため息混じりに失礼な事を言いだした。でもそれってブーメランになるんじゃないかな?自分で友達はいないって言ってたし…それに雪ノ下さんの場合はそれは無いと思う。確かに性格は少しキツくて毒舌っぽい所はあるけど、仮に雪ノ下さんが男子で同じクラスにいたら俺はほっとかないレベル、面白そうだし普通に話しかけてるわ。しかも矢車達の話を聞く限りだとかなりハイスペックで有名みたいだし、それだけに慕う人も多いだろう。だが俺のそんな予想とは裏腹に、雪ノ下さんはふいっと視線を逸らした。
「…そうね、まずはどこからどこまでが友達なのか定義してもらっていいかしら」
「えっとそうだなぁ…俺の場合は一緒にいて楽しい奴とか話していて面白い奴とか?」
「こいつの基準は置いとくとして…その台詞は友達いない奴の台詞だわ」
距離はあるが雪ノ下さんの対面に位置する八幡の左側に俺も椅子を用意して腰掛けると、雪ノ下さんはジト目で俺達を見ている。俺、睨まれることしましたっけ…?
「いないだなんて言ってないでしょう?もし仮にいないとしても、それで何か不利益が生じる訳ではないわ」
「…まぁ一人だって楽しい時間は過ごせるし、むしろ一人でいちゃいけないなんて価値観がもう気持ち悪い。好きで一人でいるのに勝手に憐れまれるのもイラッと来るもんだよな」
「確かに…逆に誰かとずっと一緒にいるってのも不可能なことだし、自分がそれで良いって思って楽しめるんなら一人だろうが誰といようが問題無いと思うなぁ」
「非常に腹立たしい事だけど、好きで一人でいることには同意出来るわ。癪な上に程度な違いもあるけど」
そう言った雪ノ下さんは笑顔だった。でも先程の挨拶をした時や昨日のとは違う、力の無い笑みだ。その表情を黙って見ていた俺の横で、八幡はボッチマイスターとか一家言あるとか何か格好いい事言っている。要は程度が違うと言う事の意味を聞きたいらしい。
「私って昔から可愛かったから、近づいてくる男子はたいてい私に好意を寄せていたわ。小学校高学年くらいからずっと…」
今度はうんざりしたような表情だ。しかしなぜ急にその話が出てくるのか…脈絡がわからない。でも確かに雪ノ下さん程の美人なら昔もさぞ綺麗だったと思う。女子にトラウマを抱えて無かった頃の俺なら速惚れて袖にされ、恐らく撃沈したであろう猛者たちの仲間入りをしていただろうな。
「まぁ嫌われまくるよりいいだろ…甘えだ甘え」
「そもそも、1人でいる事とモテることが何で関係あるのかがわからないんだけど…」
「本当に誰からも好かれるなら、それでも良かったかもしれないわね。仮の話として…あなた達の友達で、常に女子に人気がある人がいたらどう思う?」
何だか謎かけのような言葉だ。俺の周囲にはあまりいないな…あ、矢車がそうか。でもあいつ男子からの(憧れ的な意味で)人気も高いけど…等と考えていると、八幡がやや食い気味に即答した。
「愚問だな、友達がいないからそれは杞憂だ。だが仮にと言うなら…殺す」
「ちょっと格好いいと思ったけど最後は物騒だなおい。んー俺は別に…それって本人の能力なり努力なりの結果なんだから、関係無い俺達外野が騒いだって意味無いでしょ?まぁそれを鼻にかけて周りを馬鹿にしたりするんなら、面倒で関わらないようにすると思うけど…」
ちなみに例えるならまる子のハナワ君やうる星の面堂クラスなら問題無いレベルだ。俺達の答えを聞いた雪ノ下さんは満足したようにうんうんと頷いている。
「ほら、拒絶したり排除しようとするじゃない?理性の無い獣と同じ、それこそ禽獣にも劣る…私がいた学校もそういう人達が多くいたわ。そういった行為でしか自身の存在意義を確かめられない、哀れな人達だったのでしょうけど」
鼻で笑った雪ノ下さんの続ける話は衝撃的だった。犬率が高いとか教師が買い取った事はよくニュースにならなかったな…とも思ったが、問題はそこじゃない。容姿が優れている、異性に人気がある。ただそれだけで責められる事が現実にあると言うことだ。いや、もしかしたらあの時は自分の事で精一杯だったから知らないだけで、実際は何かしらあったのかもしれない。雪ノ下さんはさっき「自分は可愛かったから」と言っていたが、あれは事実を言っているだけで別に他人を貶めていた訳ではない筈だ。
小学校高学年…その単語を聞いてから、今まで殆ど忘れかけていた当時の出来事がフラッシュバックして脳裏を駆け巡る。気がつけば、拳を固く握りしめていた。怒りの感情が沸々と込み上がってくる。でもそれは自分のやられた事を思い出してでは無い。聞く限りでは雪ノ下さんに非は無いのに、それを排除しようとした周囲に憤った。やらかしてしまった自分とは違うのに何故?と。
「大変だったんだな」
「ええ、大変よ。私、可愛いから…」
八幡の同情する言葉に雪ノ下さんは自嘲気味に笑っていた。その顔を見ていると色々な疑問が頭の中で渦巻く。
なんで、そんな顔が出来るのだろう。
なんで、何も悪くない人がひどい目にあわなくちゃいけないんだろう。
なんで、そんな事がまかり通ってしまうのだろう。
そんな世の中、間違ってるだろ…
「なんでだよ…雪ノ下さん、全然、悪くないじゃねぇか」
白くなる程拳を握り、歯を食いしばりながら漏れた言葉は自分でも驚くほど乱暴で、震えていた。そんな俺の変化に驚いたのか、二人とも目を見開いてこちらを見る。
「なんで、ね…それは仕方がない事よ。人はみな完璧ではないから」
「そうじゃない、そうじゃないんだ…自分が悪くも無いのに仕方がないなんて、言わないでくれよ。俺なんかと違うんだからさ…」
「それはどういう意味かしら?」
諭すような雪ノ下さんの言葉を遮り俺は続ける。それが不服だったのかはわからない。だが最後に放たれた質問には、弁明に虚偽は許さぬといった感じの凄みが感じられた。
昨日の平塚先生の言葉じゃないが、雪ノ下さんの話を聞いておいてこちらが何も言わないのもフェアじゃない。別に自分の事については話しづらい内容でも無いし。震えも収まり、幾らか落ち着きを取り戻した俺は深く、深く息を吸いゆっくりと吐き出した。
「俺、小学校の時は騒がしくて、相手がどう思おうが気にしなくて、思いつきで行動する事が多くてさ…」
「いや、今もそうだろ」
「…今よりももっと酷かったって事さ」
今まで静かだった八幡がツッコミを入れてくるが今はそれが心地よかった。普通に接してくれてる方が話しやすくて助かる。雪ノ下さんは目で「続きを」と促しているけど。
「高学年の時に親の都合で転校してさ、新しいクラスに早く馴染もうとして色々な事をやったんだ…面白いと思ったことは授業中でも構わず大声で言い出したり、皆がやっていることを無視して目立つからって勝手な行動をしたりさ…自分でやっておいて言うのもアレだけど、授業妨害以外の何物でも無かったね。その癖、自分の成績は良いときたもんだ 」
「何か自慢が入ってないか?」
「小学校のテストなんて、教科書さえ読んで頭に入れておけば殆ど満点とれるだろ…?」
「そうね、そこは同意するわ」
最後に「私は満点以外なかったけど」と付け加えて不適な笑みを浮かべる雪ノ下さんに、八幡は顔をしかめる。そのしかめ顔に少し申し訳なさを感じるが多少落ち着いたとは言え、精神的な余裕はまだ余り無いのでそのまま話を続けた。
「加えて少しでも悪口を言われれば、すぐ怒ってケンカになるくらい沸点も低かった…そんな奴がどんな目にあうかなんてわかるだろう?席を離れれば何かしら物が壊されていたし、保護者にあること無いこと吹き込んだり、授業参観でわざと挑発して怒らせた姿をPTAに見せつけるなんてのもザラだった。まぁ今思い返すと中立だったり、俺に優しかった奴もいた…のかもしれない。でも当時の俺にとっては、皆が敵に思えたよ」
改めて思い返すと本当に酷いな。突然現れた新参者が急にふざけだして授業を妨害し、場を乱し、手出しをすれば激昂して暴れ出し、妨害する癖に成績だけは良かったのだ。そんな奴、排斥されて当然だ。何をされても文句は言えない。
「でも、だからと言ってその事であいつらを恨んではいないんだ…火種を持ち込んで、炎上させたのは俺自身な訳だしね。おかげ様で沸点も格段に上がったし、前よりは自制が出来るようになった。少しは相手の気持ちと言うのも考えられるようにもなった…それにある考えにも至れたよ」
「その考えと言うのは何かしら?」
確かにやられた事は辛かったし嫌だった。でもそれは自分に原因があるんだから仕方のない事だ。因果応報、自業自得って奴だな。だから罪悪感以外、本当に何も思っちゃいない。あるとすれば俺の後に起こった事だが、今は関係のない話だ。雪ノ下さんの質問に答える方が先だ。
「簡単さ、悪意には鈍感になれば良い。少なくとも自分に向けられるモノには。まぁ元から鈍いってのもあるけど、それを突き詰めて行けば良いかなって。肩の力を抜いて気楽に楽しく生きてさ…一々反応して感じてたんじゃキリがない。そんなの、疲れるだけだ」
自分でも意外な程、気取った言い方だ。俺は今、どんな顔をして語ってるのだろう。
「それがお前の言う『楽しい事は多く、嫌な事は少なく』カラクリなのかよ…はっきり言ってやる。そんなのはを虚偽妄言だ。都合の良い部分だけ切り取って、それ以外を無視する。自分を騙し、偽り、虚勢を張って強がっているにすぎないんだよ」
「それだけじゃない。感じなくなったとしても決して無くなった訳ではないのよ。無痛症と同じ、そんな事を続けていけばいずれ身を滅ぼすわ。それと自分の非を認めるのも良いけど、連中が下劣な行為に及んだのもまた事実。全て自分が悪いと判断するのどうかしら…あなたのそれは『自責』ではなく『自傷』の域よ。愚かを通り越して、最早哀れね」
この構図はまるで昨日の焼き直しだ…とも思ったがそうでもない。二人とも怒るでもなければ諭す訳でもない、ただ淡々と事実を…俺の考えの裏側にある現実を突きつけているだけだ。さっき先生にも言われたけどやっぱ良くないよな、こんなの…
「その、別に強がっている訳じゃないさ。たんに弱くて、バカで、鈍いだけだよ。そしてもういっそ自分が壊れた事すら気づかない位に鈍くなれば良いとかも少しは思った…
ごめん、馬鹿なこと言ってたけど…本当は実践出来てる訳じゃないんだ。正確にはあれ以来、そういう事に出くわして無いというか…中高は本当に良い奴らばっかりでさ、その点は恵まれてたし運が良かったんだと思う。それに今が楽しいってのもマジなんだ。すっげぇ楽しくて、ずっと続いていけば良いと思う。俺だけじゃない、周りもさ…
でも、これから先どうなるかわからない。その時が来たら多分、それを選んでしまうんだと思う。正しくないってわかっていても、それ以外に思いつかないから」
楽しいと思える事で満たされれば良い。これは嘘偽りの無い本心だ。でも他から見れば綺麗事で、鈍くなり痛みを感じないようにすると言うのは自虐的で、総じて妄言に聞こえるかもしれない。だが二人は何も言わず俺の言葉を推し量るように見るだけだ。よくよく考えてみたら何をやってるんだよ俺は?雪ノ下さんの話を遮って、つまらない自分語りをしだして…
「ごめん、話の腰を折っちゃって。とにかくさっきの話だけどさ…雪ノ下さんは俺みたいに何かをやったわけじゃない、悪いのは百パーそいつらじゃん。なのにさ、仕方がないってなんて…そんなのおかしいだろ」
最後に言ってから、少しだけ間が開いた。八幡はその間なにも言わずただ無表情に見て、雪ノ下さんは目を閉じて何かを考えている。そして雪ノ下さんはスッと目を開けるとゆっくりと立ち上がった。
「あなたがどう捉えようと、現実は変わらないわ。本当に人はみな完璧ではないから…弱くて、心が醜くて、すぐに嫉妬し蹴落とそうとする。不思議な事に優れた人間ほど生きづらいのよこの世界は。確かにそんなのおかしいじゃない。でもだからと言って私はあなたみたいに諦めて、鈍化しようとはしない。変えるのよ。人ごと、この世界を」
腕を組みながら宣言した雪ノ下さんの目は本気だった。人ごと世界を変える。自分を曲げてしまう方が楽なのに、あえて難しい方の道を進もうとする。本当に真っ直ぐで強い人なんだと思う。そして、彼女ならそれを実現させてしまいそうな気がした。俺の中で何かが晴れていく感じがして、少し手がふるえている。先程までの怒りとは違う、これは言うなれば武者震いだ。自分も彼女のように強くありたい、少なくとも自分の嫌な部分を変えられる位には。その為にはまず何をすれば良いか…考えた俺はいてもたってもいられず、席から勢いよく立ち上がった。
「雪ノ下さん俺も、俺も手伝う!!具体的に何をってのは浮かばないけど、とにかくやる!!頑張って自分も、そして世界を変えていく…この奉仕部でっ!!」
「い、いきなり何を言い出すのかしらこの男は…まずあなたの場合は自分自身で答えを見つけなさい。話はそれからよ」
「雪ノ下、お前狼狽え過ぎだろ…拒否しきれてねぇ。井藤も落ち着け、感化され過ぎだ。勢いで言ってるけどな、奉仕部から世界なんてスケールがデカすぎなんだよ」
急に立ち上がった事に驚いたのか、少し後ずさる雪ノ下さんを後目に八幡が注意をする。俺も我に帰り「あー確かに言われてみれば…」と呟くと二人は呆れたように溜め息を吐いた。
「ったく…努力の方向が明後日にぶっ飛びすぎだろ」
「そうかしら?それでも、二人のように諦めてぐだぐだ乾いて果てるより随分とマシだと思うけど。あなた達の…そうやって弱さを肯定してしまう部分、嫌いだわ」
雪ノ下さんはそう言うと窓の外に目をやった。何だかさっきまでの重い空気が嘘みたいだ。そして改めて思う。二人とは上手くやっていけそうだし、これからも楽しくなってきそうだ。そうやって考えていると座ったままの八幡は雪ノ下さんへ何かを言いたそうにもぞもぞとしだし、決心がついたのか口を開いた。
「なぁ、雪ノ下。なら、俺が友」
「ごめんなさい。それは無理」
昨日は不発に終わった動輪剣の縦一文字斬りが炸裂したようだ。えー雪ノ下さん、ここって一致団結して俺が、俺達が…奉仕部だっ!!となる展開じゃないんですか?八幡が「まだ最後まで言ってないのにー」と軽く落ち込むのを見て、雪ノ下さんは「うへぇ…」と嫌そうな顔をしている。ところで八幡さんや、俺には言ってくれないんですかね?ちなみに俺が雪ノ下さんに言うのはその、女子にそう言うのは少し恥ずかしいので保留だ。普通に仲良くなりたいとは思うけど…
そしてこの光景を見ていると何だかこれも奉仕部らしいっちゃらしいかなと思えてきて、気がつけば自然に声を出して俺は笑いだしていた。
「え、何?そんなに俺が滑稽だったの?普通に傷付くんだけど」
「ごめんごめん。何つーかその…この空気が可笑しくってさ。ついそのハハハ、笑っちゃって」
「コレがいったいどんな思考をしているのか、わからなくなってきたわ…」
八幡は口を引きらせながら俺をジト目で見て、雪ノ下さんは額に手を当て難しそうな顔をしている。なんだかこの人からコレ扱いで格下げされた気もしなくはないが、そんなことは別に構わない。辛気臭い雰囲気よりこっちのが性に合っている。やっぱり楽しい事は多い方が良い。
そして少し笑いすぎて息が切れ、一息ついた所で弱々しいノックの音が響く。雪ノ下さんが「どうぞ」と声をかけると「し、失礼しまーす」と緊張気味な声と同時に、一人の女子がおっかなびっくりとした様子で入ってきた。お、早速相談者が…これは幸先が良い、でも女子かぁ。等と思って見てみると…
そこにいたのは、俺が朝下駄箱で見かける度にその元気さで癒してくれた女子。ユイさんだった。
今回はこれにて投下終了です。
前半は説明が多くなりましたがクラスに関しては材木座が修学旅行などでいくらか溶け込めていたようなのでこんな感じになりました。
友人達の名前は平成ライダー歴代変身者の方々から。序盤の出番はあまりありません。
やっと最後にガハマさん出せた…ちなみにイジメ云々の内容はその場で思いついたフィクションです。
次話の更新は来週を予定しています。