やはり俺に青春はあってもラブコメはない   作:ナリマス

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 こんなにも長く、時間がかかってしまった…





男子に限ってではあるが彼は積極的だ

 空気の入れ換えの為に小さく開けた窓からは心地良い風と共に、吹奏楽部の練習であろう音楽が聞こえてくる。その曲は朝のニュースやCMで聞き覚えがあるがタイトルを思い出せない…確か最近の流行曲だったはずだ。その演奏をBGM代わりに聞き流しながら、俺達は読書と言う名の部活動に励んでいる。

 某ブチゲンさんが書いた黒珊瑚礁のノベライズ版を八幡に渡し、俺は勤労に励んでいる魔王様のラノベを借り、雪ノ下さんもカバーのついた文庫本を読んでいるなど一見先日と変わらない風景に思えるが一つだけ変わったことがある。それはこの場に追加戦士、もとい新入部員の由比ヶ浜さんがいる事だ。

 新たに加わった彼女はさっきまで携帯をいじっていたが、今は八幡と千葉横断ウルトラクイズなるものをやっている。痣を青なじみと呼んだり給食のお供は味噌ピーとか、更に雪ノ下さんも地名を聞いて横断ではなく縦断だと言ったりしているけど…千葉県民歴の浅い俺にとっては呪文を聞いてる感じだった。特に地名などは何とか理解しようと隣で聞いていても位置関係がチンプンカンプンだ。

 

 「さっぱり解らない…」

 

 つい溜め息混じりに呟いているとそれに気づいた八幡が「はぁ?」と少し強めな口調で絡んできた。

 

 「今のがわかんないとか千葉愛低すぎだろ…千葉人としての自覚あんのお前?」

 

 「いや、んなこと言われてもなぁ。俺の千葉県民歴なんてやっとこさ一年過ぎた位なんだけど。正確には去年の3月下旬から。それまでは東京の方に住んでたし」

 

 「あーはいはい出たよ東京の方、千葉人が地方に行ってどこから来たか聞かれた時に言う答え。市川市民かっての…まぁ東京っつってもピンキリだからな、千葉のがよっぽど都会らしい場所がある」

 

 「へぇー東京にいたんだ。どこ住みだったの?」

 

 千葉愛のせいか妙にテンションの高い八幡に軽く引きながらも由比ヶ浜さんは興味があるようで場所を聞いてくる。話は変わるけど『どこ住み』と『元住吉(もとすみよし)』の略称って響きが少し似てる…答えるのは別に構わないけど細かな説明が少しメンドイんだよなぁ。まぁさっきまでクイズをやってたから番外編といってみるか。

 

 「そうね、ではゲームをしま…」

 

 「それはいったい誰のつもり?不快だからやめてちょうだい」

 

 「すんません、はい渋谷区っす。しかもちょうどこの近辺」

 

 「結構似てたし…ってか渋谷って人住めんの!?」

 

 顎に手を当て先日の雪ノ下さんのモノマネをしてみたが、本人からの絶対零度の眼差しを受けて即座に答えてしまった。ついでに八幡から借りた魔王様のラノベをかざしながらである。クイズの意味無ぇ…

 由比ヶ浜さんは以前C組で話題に出た時と同じようなリアクションだ。まぁ確かに中継で映るようなスクランブル交差点やセンター街のイメージが強いとそうなるのだろう。八幡もマジかよみたいな顔してるし。

 

 「そんなに驚かんでも…まぁ真偽はご想像にお任せするとして、渋谷っても住宅地の方だったから人は住めたかなぁ…むしろ新宿や下北沢、中野のが近いからそっちのが詳しい位だし。今は駅と学校の間にある千葉街道に近いマンションだけど、夜は比較的静かで空気もいい方だからこっちのが住みやすくて良いかなぁ。

 あ、でも小さい頃はランドやバンダ○ミュージアムでよく遊んだし、水元公園には今でもたまに行くんで千葉と縁が無い訳じゃないから」

 

 ランドも楽しかったがミュージアムは本当に素晴らしかった。展示物やショーにはテンションが上がりまくりだったし。閉鎖して他県で再開したときは絶望のあまり魔女化やファントム化しそうだったけど…

 

 「ちょっと待て。前二つはともかく水元は千葉じゃねぇぞ。つーかあそこまで何しに行くんだよ?」

 

 「正確には江戸川を挟んで松戸市と隣接している状態ね…管轄も葛飾区だった筈よ。それと由比ヶ浜さんが驚くのも無理は無いわ。井藤くんの様な垢抜けていない男子との関連性なんて微塵も見いだせないもの」

 

 「さいですか…」

 

 二人とも詳しすぎだろ…俺だって旧地元のネタだと魔王様が働いてるマックは本来地下にあってあの場所は実はモスだとか、アニメ版最終回で勇者から傘を受け取った交差点に出るには甲州街道と反対に行かないと遠回りになる位しかすぐに出てこないぞ。てか魔王ネタばっかじゃねーか…

 そして雪ノ下さんからのコメントに一瞬眼鏡がずり落ちそうになったのを直すが、それはまぁ仕方ない。天パな髪は寝癖を直した程度のセットで、制服もネクタイや襟元をゆるめている以外は普通に着ているだけだ。クラスでも散々ネタにされてたし、自分でもこの状態はイケてない方だと重々承知している。

 一応春休みに中学の友達と向こうで集まった時に勢いで買ったモノは何点かあるけど、福袋やバーゲン品ばかりだし着る機会も滅多にないだろう。つーか八幡も驚いてたのにナチュラルに省きませんでした?

 

 「まぁ俺のオサレポイントの低さはこの際置いとくとして…水元には主に趣味やバイト関係とかでね。それに千葉と無関係でもないでしょ。昔マツドドン騒ぎがあった時、正体はマスクラットでその生息地だったんだからさ」

 

  マツドドン。それは千葉県松戸市を流れる江戸川の古ヶ崎水門付近に現れたアザラシのような生き物と言われている…いわゆる未確認生命体、危険度で言ったらズやベの集団以下である。

 生物やUMA関係が好きで新参者な俺もこの話を知っていたが千葉愛溢れる三人はやはり知っていたようで、さっきから新宿や下北にも人が住めるかどうかで考え込んでいた由比ヶ浜さんも再び参加してきた。

 

 「あ、それ知ってる!!UMAでしょ、パパから聞いたことあるよ。でもマスクラットって何!?」

 

 「マスクラット。ネズミ科マスクラット属に分類される雑食性の齧歯類。つまりネズミの一種ね。国外では堤防を決壊させるなどの被害例があることから、2006年に外来生物法により特定外来生物に指定されたそうよ。

 確かに一時は騒ぎになって調査隊も編成されたそうどけど…幽霊の正体見たり枯れ尾花 、実際は普通の生物よ」

 

 ネズミの仲間だと言う前に雪ノ下さんからポケモン図鑑さながらの説明が入った。途中までは普通の口調だったが横井也有の『俳家奇人談』の言葉(最近読んだので覚えていた)を引用した諺を言った辺りで少し冷めた言い方になっていた。幽霊など馬鹿馬鹿しいと言ってたしオカルトネタはお気に召さないのだろうか。まぁそんな感じはするけど…由比ヶ浜さんもへぇーと感心している。

 この後も松戸と言えばラーメン屋がたくさんあるから行ってみようと由比ヶ浜さんが提案したり、不明瞭な説明を聞いて雪ノ下さんが不安を感じたり、八幡がウルトラクイズの続きで外房線からダチョウが見えると言ったり、こちらも対抗して幡ヶ谷と新宿の間にはスマートブレイン社があると言ってみたりと他愛のない話を続けていく。ちなみに由比ヶ浜さんは学校の近所らしく、この近辺の美味いラーメン屋情報を色々教えてくれた。今度自分で試した後にクラスの連中も誘ってみようかな。

 今日は特に依頼もなく、平和な一日が過ぎていった。願わくば勝負とか面倒くさいいざこざとは関係無い、こんな楽しい日がずっと続いて行けば良いと思う。

 

 

 

 

 だがそんな平和な日々は続かない。翌日の事であるが事件が起きた。いや、蓋を開ければ事件でも何でもないけどこの時は ヘイ!ヘイ!事件だッ!ヘイ!事件だッ!とガチで思っていた。

  部活へ向かう途中、八幡と合流して部室に着くと他の二人が扉の前で立ち往生していたのだ。由比ヶ浜さんに至っては箒まで持っている。八幡が何事かと声をかけると二人はかなり驚いた様子で振り向いた。

 

 「びっくりした…い、いきなり声をかけないでもらえるかしら」

 

 「悪かったな。で、何してんの?」

 

 「部室に不審人物がいんの」

 

 「え、マジで?」

 

 つい声をあげてしまったが不審人物と聞くや否や俺はすぐに対応を始めた。扉のすぐ横にある壁に背を預けると鞄から滅多に使わないコンタクト用のコンパクトを出し、先ほどから様子を見るために開いてたであろう隙間にかざした。

 鏡越しに見た中の様子は不鮮明だ。電気もついてない上にカーテンまで閉めてある薄暗い部室…でも確かに誰かがいるのだけはわかった。

 シルエットしかわからないが俺よりも大柄でコートらしきモノを羽織った多分男、右手には棒状の何かが握られている。はっきり言ってかなり怪しい…でも出入り口のセキュリティが厳しいこの学校で注意を促す校内放送すら流れないあたり内部の人間、もしくは外部の客人という可能性も考えられる。その場合は通報するのも少し気が引けた。

 とにかく中に入らないことには事態は進展しない。だが相手の持っている物も気になる。突入するにあたり念の為由比ヶ浜さんから箒を借りると2、3回振って手への馴染み具合を確認していく。

 ヒュンと風を斬る音を聞きながら、無言のアイコンタクトとジェスチャーで八幡に『俺、先行く。マズいとき、援護頼む』と伝えるとコクリと頷いてもらえた。そして最後に呼吸を整えてから腕時計で時間を確認しカウントを始める。3、2、1、0!!

 

 勢い良く扉を開けて入ると風の流れが出来たせいか、窓際にあったプリントの束が吹き上げられ部室中を舞った。その様子はアンデルセン神父の聖書さながらである。それに紛れた相手はこちらに気づくと即座に距離を詰めて手にした得物を左上段から振り下ろしてきた。とっさに箒の柄で防ぐと、ポスンと柔らかい物が当たった時のような音が響く。

 

 「井藤っ!!」

 

 「来んなっ、二人を頼む!!」

 

 そう叫ぶと同時に相手も防がれたとわかるやすぐに得物を引き今度は横薙ぎに、それも防がれれば下段からの振り上げを仕掛けてくる。その後も連続で繰り出される攻撃を扉から離れるように後退しながら全て防ぎ、逸らし、時には箒を回転させて弾いていく。

 相手の動きは確かに速いが普段なら捌ききる事など造作もない。だが薄暗い中でさらにプリントが舞っているとなると話は別だ。Gガンでドモンがサイサイシーのビームフラッグに手こずった様に、空中のプリントにも目がいき反応が少し鈍ってしまう。それでも何とか凌いでいるのは中学時代の経験の賜物だ。

 だが相手も痺れを切らして勝負に出るのか半歩下がると線の攻撃を止め点の攻撃、突きを繰り出して来た。そのタイミングを合わせて右下へと逸らし脇に挟んで拘束すると、相手もすぐに得物から手を離して顎へ掌低を打ち込んで来る。それを空いた左手で掴んで防ぐとお互いに動きが止まり膠着状態となった。

 両者が一瞬にらみ合うと電気がつき部室が明るくなる。どうやら雪ノ下さんが扉の横のスイッチを押してくれたらしい…腕時計を見ると突入から一分もたっていなかったようだ。

 そして急な明るさの変化に一瞬目が眩んだが相手の全貌が明らかになる。動きから何となく途中で検討がついていたけどこいつは…

 

 「不意打ちたぁやってくれるじゃねぇか…剣豪将軍さんよぉ?」

 

 「クククッ、何を言うか泰ノ字よ。前世では松永久秀の策により鹿島新当流の奥義すら出せず果てた身。もはや戦に法などあるまい。それにいつでもかかってこいと言ったのはお主であろう」

 

 相手の正体がわかり、ついノリで焼け野原ひろし風に答えていたが、呼ばれ慣れない名で呼ばれてつい素に戻ってしまう。

 

 「まぁそうだけど。つーかそれ買ったのか…ってそれよりもどうしてここにいんのさ、義輝?」

 

 「うむ、中々に良いぞこれは。何より軽くて振りやすい。そして我が魂に刻まれし名を口にしたか…いかにも我が剣豪将軍、材木座義輝だ。む、そこにいるのは我が相棒、比企谷八幡ではないか!?これも八幡大菩薩の導きか…」

 大柄で恰幅の良い体格にロングコート羽織った男子、名は材木座義輝。彼は先ほどまで振るっていた得物、小太刀護身道を基にしたスポーツチャンバラのエアーソフト剣を竹刀袋にしまうと見栄をきってポーズを取り始める。次いでさっきから静かだった三人を見やると…何やら話ながら冷ややかな視線を俺達に送っていた。そして義輝に名前を呼ばれてからは向けられる側となった八幡が三人を代表して話しかけてくる。

 「あー何やってんのお前ら?」

 

 「何って結局の所ただ遊んでたって言うか、じゃれてたって言うか…てか義輝の事知ってるのか?」

 

 「体育の時間に俺とペアを組んでるだけだ。最近は頻度減ってるけどな」

 

 「左様、八幡とは一年の頃から苦楽を共にした仲よ。クラス替え以降は泰ノ字やその盟友と組むことも増えたがな」

 体育の時間とかは今まで織田達と組んでる事が多かったが、俺を含めて基本は手近な人と組んでいるだけなので二年になってからは義輝と組む機会も出てきた。たまにいつの間にかいなくなり、どこにいるのかわからない時があったけどきっとその時には八幡と組んでいたのだろう。なんだよ、友達やっぱいんじゃん…なのに友達扱いされてない俺ってのも大概だけどな!!

 にしても相変わらず世間って狭いな…三人目がまた面識のある相手だとは。誰かしらの知り合い以上じゃないと来れないジンクスでもあんの?もうⅣまでいくんじゃね?そして次はコアファイター搭載型やⅤとか。

 

 「それで結局彼は何者なのかしら?二人のお友達みたいだけれど」

 

 「そうだった、不審人物でも何でもなくて俺と同じC組の材木座義輝。あいつとは今年一緒のクラスになって…」

 

 「どうせお前から話しかけて意気投合したって所だろ。それと俺は材木座と友達でもなんでもない、ついでに言えば井藤ともな。つーかさっきの動き何なの?魔戒騎士のつもり?」

 

 雪ノ下さんへの答えを途中で遮られてしまったがだいたい合ってるので特に異論は無い。動きやら言動やらで趣味が合いそうな気がしたので話しかけたらドンピシャだったのだ。義輝の方は弱冠戸惑い気味な所があったけど今はそんな感じは特にない。ちなみに名前呼びなのは苗字より呼びやすいからた。

 友達じゃない云々は置いとくとして八幡の言うさっきの動きとは義輝とやってた大立ち回りの事だろう。なら答えは簡単だ。シュッとある人物の敬礼のようなポーズを取りながら答えた。

 

 「鍛えてますから!!っとまぁ冗談はさておき…あれだ、中学時代はヤンチャ揃いだったんでそれで慣れてるだけだって。いやぁ懐かしいなぁ、休み時間になるとじゃれ合いという名のバトルファイトが始まって…格闘技が好きな奴と組み手紛いの事をしたり、階段ではタックルで落とし合い、冬場にマフラーをして油断していると背後に回られて意識が飛ぶ奴がいたり、体育館裏ではエアガンでの狙撃とかもあったなぁ」

 

 「かなり危険な行為も聞こえた気がするのだけれど…よく事件にならなかったわね」

 

 「問題ありまくりだ。どこの世紀末だよ…ヤンチャどころじゃねぇ、それ一歩間違えりゃあイジメじゃねぇか」

 

 「って言うか普通に危なすぎじゃん!?やっちんそんなことばっかやってたの?」

 

 腕を組んで懐かしむように説明していると、三人とも何とも言えない表情をしていた。確かに今思い返すと結構過激だったなぁとは思う。でもあれはあくまで遊びの延長であってイジメでもなんでもない。あいつらの名誉の為にもそこは断言しなければならない。

 

 「いや、誤解のないように言っとくけどさぁ…本当にじゃれ合いの延長で、皆最低限の手加減はしてから。そんなに危なくないし大怪我とかも無かったよ。それに基本は良い奴らばっかでガチンコもした仲だからなぁ…もうエクシードでドラフトな魂の兄弟達よって感じだし。

 あ、あと俺自身はそんなに強くなかったからガードとカウンターに特化させて…まぁお陰様でさっきみたいに視界にさえ入っていれば大抵の動きは防げるってわけ」

 

 「ふむ、聞けば平塚教諭の一撃をも防いだとか…言うなればC組の守りの要よ」

 

 「マジかよ、そこだけは普通にすげーと思うわ」

 

 ロイヤルナイツのマグナモンとかそこまで大層なものでも無い気がするけど…寧ろネタ臭がしてくるレベル。こちらとしてはかなり真面目に言ったつもりだったが中学時代の楽しかった出来事を思い出すとつい頬がゆるんでしまう。そんな俺の様子を見て、雪ノ下さんは呆れ気味に溜め息を吐きながら難しい顔をしていた。

 

 「比企谷くんの時もそうだったけど、男子限定とは言え井藤くんのそのコミュニケーション能力の高さはそこから来てるのかしら…それであの剣豪将軍ってなんなの?」

 

 「どうだかな、積極性は認めるが井藤の場合は興味さえあれば誰彼構わず話しかけてるだけだろ。無神経な所もあるから一概に高いとも言えねーよ。ちなみに材木座のあれは中二病だ」

 

 「え、病気なの?」

 

 「いや病気ではなくてだね。なんと言うかなぁ…ごっこ遊びの延長?的な感じ」

 

 俺の診断はさておき、俺や八幡にしか話しかけず様々な構えや型を取っている義輝を指して雪ノ下さんが尋ね、由比ヶ浜さんも聞いてくるが…如何せん概念として理解していても口頭で説明するのは難しい。八幡も交えて身振り手振り、最終手段としてスマホで邪気眼保管庫まで検索して解説をする。こちらとしても自信は無かったが、雪ノ下さんは何とか理解してくれたようだ。

 

 「つまり、自分で作った設定に基づいてお芝居をしているようなものなのね。それであなた達を仲間とみなしているのは何故?」

 

 「ええっとまずあいつは室町幕府13代将軍の足利義輝。ほら、死ぬ前の戦いで畳にコレクションの剣を刺し並べてリアルUBWやった人…じゃわかんないか。まぁとにかくその将軍から設定持ってきていて、俺は名前の一部から戦国武将の甘利虎泰や朝比奈泰朝とか考えてもらってたんだけど…何かお互いにしっくりこなくて目下キャラメイク中」

 

 「それで泰ノ字か。しかも候補が武田二十四将や今川軍の弓の名手かよ。ま、材木座は自分と名前が同じだったからベースにしやすかったんだろうな。俺の場合は名前から八幡大菩薩を引っ張って来ているんじゃないか。清和源氏が武神として厚く信奉しててな、鶴岡八幡宮って知ってるだろ?」

 

 「二人とも詳しいのね」

 

 雪ノ下さんは目を丸くして言っていたが、昔からま○が日本の歴史とかを何度も読み返しているおかげで日本史は得意科目の一つだ。まぁ足利義輝以外は八幡みたいにポジションがわかる程ではなく、義輝に教わってから調べたけど。

 そして剣豪将軍よりもっとひどい例があるのかと言う雪ノ下さんの問いに、さっきの邪気眼保管庫の体験談ページを見せようとしたがその前に八幡が色々と設定を語りだした。

 

 「そしてその七柱の神の中でも最も重要なのが、未だその能力が未知数である永久欠神『名も無き神』であり、それこそがこの比企…ってお前誘導尋問超うめーな!うっかり詳らかに喋るとこだったわ」

 

 「いやでもさ、自分を主人公にするのは別として話自体は面白そうなんたけど…俺はアニメや特撮のなりきりばっかだったからさぁ。設定資料集(黒歴史ノート)とかまだあるんなら見せてくんない?」

 「何一つ誘導していないのだけれど…とにかくあなた達はあれと同類ってことね。剣豪将軍だのなんだのに詳しいわけだわ」

 「どっちも気持ち悪い…」

 

 「いやいやいや、何言ってんの雪ノ下。詳しいのはアレだよ?日本史選択や『信長の野望』やったからだよ?由比ヶ浜は言葉に気をつけろ。うっかり自殺するから。井藤も本当にやめろ、俺を痛さで殺す気か?」

 

 二人からの少し距離を置くような態度に八幡は普段とは違った感じで必死に弁明をする。殺す気も何も普通に興味があったから聞いただけで、別に必死になって否定する程でも無い気がするんだけどなぁ…それに今更キモいの一つや二つくらい、平常時の精神状態ならばなんとも感じない。

 義輝みたいに全力で常に振る舞ってるとしたら疲れるだろうが、かと言って一概に否定したり嫌悪するのもどうかと思う。妄想するぐらいなら自由な筈だ。信号や電車が間に合わない時にはついトランザムやクロックアップなどと思って走り出してしまう時もあるだろう、何かしら手に持てばモーフィングパワーと称して武器となり、ガンプラだってブンドドはしなくても躍動感のある展示の為にSEが出るような動きをイメージする。では何故そのような思考や振る舞いをするのか?ブレイブポリス警視総監のお言葉を借りるなら『かっこいいからだっ!!』

 確かに中にはありきたりなテンプレ設定過ぎて頭が痛くなるようなモノもあるが、世にある面白い作品には中二要素が盛り上げていくモノだってある。要は匙加減の問題であって、伊達や酔狂…遊び心も時には大切だ。特に恥じる事でも何でもない、と思う。

 

 「いや、同類も何もねぇ…男ってのは程度の差はあっても基本中二ソウルを持ってるもんでさ、いくつになっても忘れたらいかんモノなのよ。あれだ、痛さは強さってやつ」

 

 この発言に八幡と由比ヶ浜さんが「うわぁ…」と呟いているが、雪ノ下さんは何故か不思議そうにこちら見ていた。俺の顔に何かついてたっけ?一瞬、昼食に食べた海苔でもついてたのかと思ったがどうやら違うらしい。少し気になったが尋ねる前に八幡が言葉を発した。

 

 「井藤の話はともかくとしてだ…まぁなんだ。昔は同じだったかもしんない。けど今は違う」

 

 「どうだか」

 

 もうこの話は終わりだとでも言うように八幡が告げると、雪ノ下さんはそれに対して悪戯っぽく笑い義輝の方へ向かう。つーか八幡さんや、いつぞや言ってた『どうして今や過去の自分を肯定してやれないんだよ』て言葉はどうしのさ。あれ、スッゲー良い言葉だと思ったんだけど?俺なんかには到底出来ない真似だからさ…

 少しの間、そう考えていると雪ノ下さんは義輝と対峙していた。由比ヶ浜さんは「ゆきのん逃げてっ!」と言っているが、さっきの騒動があったとしてもあいつは誰彼構わず襲うような奴じゃない。

 あれは先日屋上で剣術の鍛錬をしていた義輝に遭遇し混ざらせてもらい、その時に攻撃を全て防ぎきったことで調子に乗った俺が「いつでもかかってこいっ!!」といってしまったのが発端だからだ。まぁ後はスポチャンの存在を教えたりとその原因を作って驚かせてしまった事については奉仕部の皆に悪かったとは思う。

 そして雪ノ下さんと接している義輝に起こった出来事は…あいつにとってはかなりの災難だったと思う。依頼は心の病気の治す事かと言う問に始まり、口調の矯正やさらにはロングコート、指ぬきグローブの設定の指摘・矛盾の追求にまで及んだ。簡単に言ってしまえば、『特に悪意も無き疑問が義輝を襲う!!』状態だ。今こちらから出来るアドバイスとしては…ここではリントの言葉で話せ、とかせっかく剣豪将軍と言う和のキャラでやってるんだから神器も横文字は使わない方のが統一感が出て良いんじゃないか?って位しか思いつかない。

 あと解った事と言えば恐らく雪ノ下さんには『細けぇこたぁ良いんだよ』な理論が通用しないって事だ。多分今○作品とは相性悪い気がする。

 俺や八幡を介して話そうとする義輝が襟首を掴まれ素に戻ってる辺りで少しデをジャヴを感じつつ、涙目になっている姿に流石にやり過ぎだと思ったので声をかけようとすると足元でクシャリと何か乾いた音がする。ふと目をやるとさっきまで舞っていたプリントが床に散らばっていて、その一枚に上履きが触れたみたいだ。

 

 「それ何?」

 

 「んー何かの原稿?」

 

 「あぁ、それも小説のだな」

 

 散乱している原稿を手分けして集め、ナンバー毎に纏めるとかなり厚めな束になった。よく見てみれば文字がびっしりと書いてある。それに気づいた義輝が渡りに船と言わんばかりに調子を取り戻してやっと依頼内容にまで話が進んだ。

 「ふむ、言わずとも通じるとはさすがだな…ご賢察傷み入る。いかにもそれはライトノベルの原稿だ。とある新人賞に応募したいのだが、見せる相手がいないのでこちらで感想が聞きたい」

 

 「何か今とても悲しいことをさらりと言われた気がするわ…」

 

 ライトノベルの原稿だったのか…この分量を書くとしたらかなりの時間と労力がかかってるはずだ。つーか見せる相手なら俺らとかいんじゃねぇの?確かにクラス全体では義輝の剣豪将軍モードにどう接すれば良いか戸惑ってる状態だけど、最近じゃ体育で組む以外にも俺を通じてそういうのを気にしない連中…主に織田達とも少しずつ話せるようになってただろ。矢車が話し掛けてきた時はかなりビビってたけども。

 

 「俺達に言ってくれりゃあ普通に読んだのに…あいつらだって感想言う位は出来るぞ?」

 

 「それよりも投稿サイトやスレとかに晒せば良いんじゃねぇの」

 

 「無理だ、彼奴は容赦が無いからな。それに泰ノ字やその盟友らは口が悪い上に本音全開ではないか。一瞬考えたが容赦の無さではぶっちゃけネットに晒すのと差ほど変わらん。酷評されたら死ぬぞ、我」

 

 どんだけ豆腐メンタルなんだよ…だいたい感想を言うなら下手にお世辞を言う方のが失礼な気もするんだけど。酷評されたならそれまでの出来だったって訳だし、その意見を踏まえて直していけばいい。まぁ少しとは言えSSを書いてる身としては心配になる気持ちもわからなくはないけども。

 

 「ダチ相手におべっか使ってどうすんだよ…それに酷評でも感想がつくだけまだいいんじゃね?本当にお粗末な出来だったらその酷評すらつかないか、オチスレで適当に愚痴られる位だし。つーか結局は今俺に見せることになるじゃん」

 

 「ぬぅ、それはこの際致仕方あるまい。泰ノ字ならばまだ大した事を言わぬからマシだ。それよりも執筆に関して随分と知った口を叩くでわないか…もしや貴様、我と同じく新人賞を狙う作家志望かっ!?」

 

 「いやいやそんな大層なもんじゃ無いって。精々趣味で二次創作の短編やネタ書いてるしがない職人だっての」

 

 義輝は何やら威嚇するように身構え、後ろからも「うわぁ」と言う複数の声が聞こえてくるがそんな大したモノでもない。こう言ってはアレだが俺は一次創作のような『0からの構築』が苦手だ。もしやるとしてもある程度テーマの方向性を貰わなければ思いつかない。何も無い状態だと自己認識や定義と同じように、思いついても客観的にみて『その設定って本当に面白いか?蛇足だったり単なる自己満足になんじゃないの?』などと考えて漠然としてしまう。

 その変わり二次創作のようにある程度骨組みの出来てるモノならかなり捗る。料理と同じ様に元からあるものに手を加えたりしていくのは楽しいし、その際はキャラ崩壊やコレジャナイにならぬよう設定などを徹底的に調べ上げたり原作を読み込んでから書くように心がけている。好きな作品を題材にするなら当然の行為であり礼儀だ。

 だからこそこれだけの分量の、しかも応募するからには恐らく一次創作を書き上げた義輝は凄い奴だと思う。

 ただ一つだけ言いたいことがあるとすれば…雪ノ下さんから感想を貰うのならネットの人々や俺達に対する以上の『覚悟』が必要だと言うことだ。義輝に対して苦言を漏らしている八幡と同時に視線をやり、何事かと首をかしげている雪ノ下さんと目が合いながらそう思った。

 

 

 

 

 

 「あ"ぁ"~やっと終わったぁ…」

 

 「随分とだるそうだな。FXで有り金全部溶かす人みたいな顔になってるぞお前」

 

 帰りのホームルームを終え某イライラしているお方の様な、溜め息とも呻き声ともわからない声を出しながら机に突っ伏していると前の席の和泉が読んでいた本を閉じて声をかけてきた。

 

 「徹夜してかなり眠い…で、鉄人28号がなんだって?」

 

 「あ、やっぱいつもの井藤だわ。そっちのFXを知ってる高校生なんて今時いないぞ。その様子だと徹夜で地雷SSでも読んでたのか?」

 

 「それを知ってるのはお互い様だろうに。んー別に地雷って程でもないけどだいたいそんな感じ…」

 

 水筒を取り出し家で煎れてきた濃いめのコーヒーを飲みながら、俺は物静かに話している和泉に答えるが意識が朦朧としてかなりキツイ。

 昨日のあの後、俺達奉仕部は義輝から原稿をそれぞれ預かって持ち帰ることになった。読んでみると内容は学園異能バトルもので勢いと部分的に盛り上がる所はあるけど文章がかなり読みづらく、読み落としがないかと何度か戻って読み返している内に外が明るくなっていた。

 このまま寝たら絶対遅刻すると思い徹夜に踏み切り、それからはずっとコーヒーが手放せない。もう嗜好品を飲んでると言うよりカフェインを摂取している状態だ。トイレとか臭いが半端ない。おかげで授業中は何とか寝ずに済んでノートもちゃんと取ることが出来た。でもその代わり休み時間はずっと寝ていて、昼休みも滅多に飲まないゼリー飲料で食事を済ませて残りを睡眠に当てた位だ。今日は体育や教室移動が無くて本当に助かった…朝よりは楽になったけどやっぱりまだ本調子じゃない。今日、人とまともに会話したのも今が初めてだ。

 

 「そう言や義輝は?織田と城戸もいないけど」

 

 「あぁずっと寝てたからなお前…織田は早退、城戸は遅刻指導で呼び出し、材木座は知らん。朝からそわそわした様子だっけどいつの間にか消えた」

 

 マジかよ、織田が体調を崩しやすかったり城戸が遅刻常習犯なのはいつもの事だけど義輝は先に行っちゃったのか…一緒に行こうと思ってたのに。まぁ俺もそろそろ向かうか。

 

 「んしょっと、じゃあ俺部活行ってくるわ。そいじゃお疲れ」

 

 「ん、いってら」

 

 残っていたコーヒーを飲み干し荷物を纏めると、本を読みながら城戸を待つと言う和泉に挨拶をして俺は教室を出た。

 

 

 「どーこへー流さーれーるーのー 、ぼーくのー正体を突ーきー止ーめーろー…たった一いちど、与えらーれーたーいのーちはチャンスだーからー…っと」

 

 部室まで覚束ない足取りで歩き、何とかテンションを上げようと好きな歌を口ずさんでみる。やっぱ特ソンは良い、魂の底から力が込み上がってくるようだ。そう言えば義輝はこれが処女作という事になるのだろうか?初めては痛いと言うし感想を貰って筆を折るとかにならなければ良いな…ってあれ?男だったら童貞作とでも言うのか?そっちは痛いのかどうか知らんけど…ってヤバイな。やっぱまだ調子が悪いのか普段からズレておかしい思考がより変な方向に飛躍してる。

 

 部室についてノックをしても反応がない。一番乗りかと思って力なく扉を開けると雪ノ下さんが窓際の椅子に腰掛け静かに寝息を立てていた。

 やっぱり雪ノ下さんも徹夜だったんだろうか?本当にお疲れ様っす。しかし部活が始まるまではそっとしておくにしてもこのままの状態ってのもなぁ…春先とは言え何もかけてないと風邪を引くかもしれない。毛布の類いは無いしあまり大きな音は立てられないからカーテンを剥がして使うってのも難しい。

 何かないかと思い鞄を探ってみると今朝いれた未使用のスポーツタオルが出てきた。ちと小さいけど何も無いよりはマシか。肩にかければ良いし。

 そう思いタオルを両手で広げふらふらになりながらも起こさない様に抜き足、差し足、忍び足で近づいていく。距離を縮めて行くとだんだん雪ノ下さんの顔がはっきりと見えてきた。普段は大人びた感じの美人ってイメージだけど、こうして見ると何だか年相応って言うか幼さを感じるな…等と考えていると雪ノ下さんの閉じていた目が急に開かれ、同時に睨むような鋭さが宿る。突然の出来事に驚き俺はとっさに飛び退いてかなりの間合いを取ってしまった。

 

 「井藤くん、その凶器でいったい何をするつもりだったのかしら…?」

 

 「へっ!?いや何って…つか凶器ってえっ?」

 

 「とぼけてるの?東南アジアのサロンや護身術だけど布槍術、水布術みたいに布は使い方によって武器となるわ。タオルだって立派な凶器よ」

 

 布を使った武術があるのは知ってるが名前なんて流派東方不敗や小姫筧流布衣術、 鎧布閃術位しか知らないんだけど…つーかこの状況はかなりマズいと思う。何か勘違いしている上にすげー怖い。

 

 「ちょ、ちょっと待って凶器とかわけわかんないし!!そもそも武器があっても俺が雪ノ下さんに勝てるわけ無いじゃないか!!」

 

 「それで私が意識の無い状態を狙ったと…事と次第によっては国家権力に引き渡す必要があるわね。もう一度聞くわ。いったい何をしようとしていたのかしら?弁明があるのなら聞いてあげるけど」

 

 雪ノ下さんは席から立ち上がると癖なのか腕を組み、こちらに最後通告を突きつけてくる。蛇に睨まれた蛙とはこの状態のことを言うんだろうか…?もうゴゴゴゴッやドドドドッみたいなのが見えそうだ。

 気がつくと部室の隅まで無意識に後ずさっていたのか背中に壁の硬い感触が伝わってくる。何をするつもりも何も…真実はいつも一つな訳だから普通に答えれば良いんだろうけど、何かすげー怒ってるっぽいし果たして信じて貰えるのだろうか。

 

 「な、何ってその、肩にタオルをかけようとしただけで…」

 

 「…?意味がわからないのだけれど」

 

 予想とは違った答えだったのか一瞬きょとんとし『結局何が言いたいの?』みたいな顔をしている。とにかく俺は教室を出てから先ほどまでの経緯や出来事を順を追って話していく。

 動揺のあまり途中で噛んだり片言や言葉足らずになった所もあったが相手は中二病すらすぐに理解した雪ノ下さんだ。だいたいの内容は理解してくれたらしい。

 

 「つまり…毛布の代わりにタオルで代用しようとし、気配無く近づいたのは此方を刺激しない配慮だったと。おまけに表情が虚ろだったのは疲労と睡眠不足からと言いたいわけね?」

 

 雪ノ下さんからの確認に言葉を発する余裕もなくなり、首を上下に激しく振って肯定の意を表明する。それはもう眼鏡が外れそうな勢いでだ。その様子をしばらく観察していた雪ノ下さんは口元に手を当て、少し考え込む仕草の後に疲れた様子で溜め息をついていた。

 

 「見たところ嘘って様子でもなさそうね。ついたとしてももう少しマシな嘘をつくでしょうしあなたの場合は表情にも出やすいもの。

 それに比企谷くんと方向性が違うけど井藤くんも普通とは少し違う思考の持ち主のようだし…不本意ではあるけどそれを私が把握しきれていなかったと言うことなのかしら?一応、今回の件は不問にするわ」

 

 「た、助かったぁ…」

 

 何とか信じて貰えたみたいで表情を見る限り険しさも無い。プレッシャーから解放され気が抜けて、その場に膝をついてへたり込んでしまった。だがそんなこちらの反応など気にせずに雪ノ下さんは話を続けていく。

 

 「でも緊急事態ならともかく、毛布が無いからカーテンやタオルを使うって発想は効率的にもどうかと思うわ」

 

 「う、確かに。保温性を考えたら肩よりも首や腹のが良かったかも。いっそ携帯用のブランケットでも常備しとくか…あると便利だろうし」

 

 「そういう話でも無いのだけれどね…」

 

 壁に手をついて何とか立ち上がりながら答えると、雪ノ下さんはやれやれと言った様子で苦笑混じりに軽く肩を竦めていた。お陰様で眠気は吹き飛んだけど別な疲れがどっと出てきた気がする。よく考えたらタオルから凶器を連想するってのもかなり物騒じゃないかと…やっぱ疲れてるのか?

 その予想もあながち間違って無かったようで雪ノ下さんが小さく欠伸を噛み殺していると、丁度扉が開き八幡と由比ヶ浜さんもやってきた。

 

 「オッスお二人さん。八幡悪い、ちょいと掴まらせて…」

 

 「あら驚いた、比企谷くんの顔を見ると一発で目が覚めるのね」

 

 「開口一番にそれかよ…って肩に手をかけるな井藤。俺に掴まる位なら椅子にでも座ってろよ」

 

 「どしたー、何かみんな元気なくない?」

 まだ若干腰が抜けていたので八幡の肩に掴まろうとすると嫌そうに身をよじらせて避けられた。由比ヶ浜さんは元気ハツラツといった感じだ。仮面の戦士たち御用達のオ○ナミンCでも飲んだのだろうか?どうしたら徹夜明けでもそこまで元気になれるのか秘訣を知りたい…と思ったらどうやらまだ読んでいなかったらしい。

 八幡に指摘され由比ヶ浜さんが渋々読んでいる間に自分の椅子を用意し、前後を反対にして背もたれに寄りかかると大きな溜め息が漏れた。

 

 「その様子じゃおまえ等も相当苦戦したみたいだな」

 

 「あぁ、徹夜なんて一人桃鉄100年プレイや受験勉強以来だわ。すっげー疲れた、俺の体はボドボドだ」

 

 「私も徹夜は久しぶりね。この手のものを全然読んだことが無いけど…あまり好きになれそうにないわ」

 

 「あーあたしも絶対無理」

 

 雪ノ下さんの苦言に由比ヶ浜さんもパラパラと原稿を読みながら同意する。速読してるならかなりの技量だが見た限りだとダイナミック斜め読みだ。

 なんだかラノベ自体が受け入れられてない流れだけどそれは如何なものだろうか?ラノベだって他にも様々なジャンルの面白い作品はたくさんある。本人の趣味趣向もあるだろうが、まずは食わず嫌いや先入観に囚われず色々なモノを見てほしいとは思う。好きになれないかどうかはそれからでも遅くは無いはずだ。

 

 「でもまぁ今回は作家の卵が書いたのだから、それだけで判断されてもねぇ…ラノベだって乱暴に言っちゃえばSFやファンタジーの一種がメインみたいなもんだし、作品の質がピンキリなのはどのジャンルにも言えた事でしょ?中には良作もちゃんとあるからさ」

 

 「そうだな、別に材木座の原稿がラノベのすべてじゃない。面白いのはいくらでもある」

 

 「あなた達がこの間読んでいたような?」

 

 意外にも八幡がこちらに同調してくれた事が功をそうしたのか雪ノ下さんが聞いてくる。興味をもってもらえたのだろうか?ならこれを機に勧めてみるのも良いかもしれない。すると同じ様に考えていたのか八幡の方が先に話を始めた。

 

 「あぁ、面白いぞ。俺のお勧めはガガガ…」

 

 「機会があればね」

 

 「あ、それじゃあさ今度お勧めを見繕って来るんで食指が動いたらで良いから読んでみる?」

 

 「…気が向いたらね」

 

 よし、溜め息混じりの素っ気ない返事ではあったけども雪ノ下さんはOKをしてくれた。早速お勧めを持ってくるとして何が良いだろうか?

 ドラまたな魔導士の話や終わクロを全巻纏めて持ってきても良いが、流石にそれは相手にも負担になるだろう。となると少ない巻数で完結している作品…最高にハードでロックなデビルハンター4やイグルー、第四次スーパー英雄大戦なんか良いかもしれない。

 やっぱ美味いモノや面白いモノは周りにもどんどん教えていきたいしな…鼻歌交じりで指折りに作品を考えていると口に出ていたのか、それを聞いた八幡が「また予備知識が必要そうなものを…」と呟き哀れむようにこちらを見ていた。その点は抜かりは無い、必要なら設定資料集も用意しておこう。

 そうこうしている内に由比ヶ浜さんも原稿を読み終え、義輝が「頼もう」と言って現れる。先に行ってた筈なのになぜ今?とも思ったがどうやら屋上で禅を組んで精神統一をしていたらしい。その甲斐あってか昨日とは違い物怖じもせずに雪ノ下さんの前の席へ勢い良く腰掛ける。それはもう腕を組んで自信に満ちた表情でだ。

 

 「ごめんなさい。私にはこういうのよくわからないのだけど…」

 

 「構わぬ。凡俗の意見も聞きたい所だったのでな。好きに行ってくれたまへ」

 

 珍しい事もあったもんで雪ノ下さんが遠慮がちに前置きをすると義輝は迷い無く返事をする。それを聞いて踏ん切りがついたのかいよいよ感想を聞く段階となった。

 

 「そう…つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ」

 

 「げふぅっ!」

 

 何という直球ドストライク…率直な意見である意味良いかもしれないけどかなりのダメージだ。体勢を立て直した義輝が詳細を聞くと、それはもう聞いてるこちらが「おぅ…」と声が漏れるくらいに情け無用だった。

 文法の使い方から漢字のルビ、展開の安易さ、何故ヒロインが突然脱ぐのか?という点まで指摘されている。それに対して義輝は要約するとウケるから、最近の流行りだから、売れるからと弁解をするがその尽くを論破されてしまった。

 

 「そして地の文が長いしつこい字が多い読みづらい。と言うか、完結していない物語を人に読ませないでくれるかしら。文才の前に常識を身に付けた方が良いわ」

 

 「びゃあっ!」

 

 「お、おい大丈夫か!?白目になってるけど!!」

 

 「ほっとけ、単なるオーバーリアクションだ。でもその辺で良いんじゃないか?あんまりいっぺんに言ってもあれだし」

 

 痙攣までしだした義輝が流石に心配になり立ち上がってしまったが、どうやら派手なリアクションなだけだったらしい。それに少し安心し、雪ノ下さんの容赦の無さに圧倒されながらも内容そのものには感心していた。

 俺が抱いた感想をより具体的に、より辛辣に表現しているのもそうだけど…こちらがもうラノベでは『お約束』や『当たり前の事』だと思ってしまっている表現も、初見の人から見れば疑問に感じるのだと言うことが何だかとても新鮮な気がしたのだ。

 そしてまだ言い足りない様子だった雪ノ下さんは八幡のフォローで交代し、お鉢が回ってきた由比ヶ浜さんはなんとか褒められる点を絞り出そうと考え込んでいる。まぁ、由比ヶ浜さんならそこまでキツイ言い方はしないだろう。

 

 「えーっと…む、難しい言葉をたくさん知ってるね」

 

 「ひでぶっ!」

 

 「え?今のどこにダメージを受ける要素があったんだよ!?」

 

 「アホか、今のはそれしか褒める所が無い…遠回しに『面白くない』って言われているに等しいんだよ」

 

 そうだったのか…普通に言葉通りに受け止めてしまったんだけども。だからそう言うのはわかりやすく言って貰わんとわからないっての。

 次は由比ヶ浜さんに押し付けられる様な形で八幡の番になった。ガクガクと体を小刻みに震わせていた義輝は縋るように八幡に向き直る。

 

 「は、八幡。お前なら理解出きるな?我の描いた世界、ライトノベルの地平がお前ならわかるな?愚物どもでは誰一人理解する事が出来ぬ深遠なる物語が」

 

 義輝の懇願するかのような言葉に八幡は静かに頷くと真摯な態度で優しく声をかけた。

 

 「で、あれって何のパクリ?」

 

 「ぶふっ!?ぶ、ぶひ…ぶひひ」

 

 うん、真摯なのは態度だけであって言葉自体は突き刺さるものだった。どこかで見た感はあったけどオマージュではなくあえてパクリと言いきるのか…雪ノ下さんも結構な勢いで引いてるが俺としては彼女がパクリと言う言葉を知っていた事に驚いた。スラングではなく盗用とかそんな感じの堅い言い方をするイメージがあったもんで。

 

 「まぁ、大事なのはイラストだから。中身なんてあんまり気にすんなよ」

 

 「おうっふ」

 

 「おいぃぃぃっ!!ラノベ自体全否定ぃっ!?しっかりしろ、気をしっかり持て義輝っ!!」

 

 由比ヶ浜さんにどうにかしろと小突かれつつ八幡は義輝の肩に手を置いて、慰め所か追い討ちの一言を放つ。思わず声を上げてしまって複数の『五月蝿い』と言った感じの視線を浴びてるけども、イラストより中身派としては流石に今のは納得しかねるぞ。

 この一言で床でのたうち回っていた義輝はガクリと力が抜け燃え尽きていた。過呼吸気味の呼吸すら聞こえなくなったので慌てて上半身を抱き起こすと、義輝は震えながら俺の手を掴み掠れた声で呟き出した。

 

 「泰ノ字よ、どうやら我はここまでのようだ…ガハッだがお主なら、畑は違えど同じ物書きであるお主ならばこそわかる筈だ。グフッこの物語の本質が。お主が、最後の希望なのだ…」

 

 息も絶え気味だが握り締める手の力は強くなっていく。グローブ越しでもわかるその熱と湿り気が、ここに至るまでに感じていたであろう緊張感の度合いを伝えてくる。

 最後の希望と言われてもウィザードより555派なんだよな…にしても相変わらず良い声してる。わざとらしい咳き込みがなければこのまま雰囲気に呑まれて絶賛していたかもしれない。だが今の俺がするべきは自分の感じたことをありのまま伝えることだけだ。

 

 「…最初に言っておく。まずはアリかナシかで言えば、俺の中ではアリって感じだった。でもさ」

 

 「おぉ、おぉ…やはりわかる者はいるのだな。我の物語の面白さが、奥深さが!!

 波は来ているっ!この瞬間を待っていたぞ、我の時代のぉ幕開けなりぃっ!!フハハハハハハッ!」

 

 初めて出た肯定的な意見に息を吹き返した義輝は、俺が最後まで言い切る前に突如起き上がると拳を上へ突き上げて高笑いしだす。何だか早合点してるようだけど俺の話はまだ終わっちゃいない。 

 

 「いやいやちょいまて、面白いなんて一言も言ってないぞ俺。アリってのは世界観や設定の話であって内容自体はかなりキツかったんだけど。

 主人公が余裕勝ちばかりで盛り上がりに欠けるわ、いざ勢いが出てきたかなぁと思えば急に無駄なお色気挟んで萎えてくるわでさ…スコップは欠けなかったけど商業誌ならこのクオリティで続きを見たいかどうかはちと微妙だな、うん。

 仮にイラスト頼りでアニメ化しようもんなら一話、いや頑張っても三話で切る自信があるぞ。せっかく土台は良さげ何だからさ、一度話を練り直してみるってのも…ってあれ?え、ちょっと…これでもいかんの?」

 

 ただ面白くないとだけ言うのもどうかと思ったのでどのような感じで面白くなかったのかを説明していると、先ほどまで生き生きとしていた義輝は力無く床に膝をつきコアを抜かれたゾイドの如く微動だにしていなかった。

 「トドメ刺してるっぼいし…何気に言ってることも結構ヒドいからね」

 「あのなぁ、土台や世界観は良いのにってのも作家志望には禁句だろうが…あと具体例が生々しいんだよ。それと上げて落とす落差だな。つーかお前スコッパーだったのか」

 

 「意図してやっていない分より質が悪いわね。それで何故そこでスコップが出てくるのかしら?」

 

 「マジか…感想を直接言うってのも難しいなホント。えーっとスコップだ何だってのは物の例えで…読んでて精神的なダメージのある作品を読み漁ることを『スコップで掘る』って言うんだけど、それが欠けるかどうかで苦痛の度合を表す感じ。でもってめげずにそれらを読み続けて精神が鍛えられちゃった人をスコッパーと呼ぶんだわ」

 

 普通に言ったつもりだったけど、どうやら俺の感想もアウトな部類だったらしい。どうしたものかと首の後ろをかいているとスコップについて聞かれたので簡単に説明する。すると雪ノ下さんは数歩下がって怪訝そうな表情をしていた。

 

 「マゾヒストと同義と言う事ね。どうりで私が何か言っても反応が薄い訳だわ」

 

 「いや、もうこの際マゾヒストでもドMでも何でも良いけどさ…それよりも義輝をなんとかしないと」

 

 確かに雪ノ下さんが怒ったりした時は結構おっかないけども、それ以外で何か言われる分には余り感じる事は無い。まぁ友人達や家族…特に母親が猿岩石の有○以上に毒舌なので慣れてるってのもあるけど。

 それはさておき先程からダメージポイント100を超え機能停止している義輝に声をかけるが反応が無い。それでもしばらくするとラマーズ法で呼吸を整え、震えながらも何とか立ち上がりだした。

 

 「…また、読んでくれるか?」

 

 「いや、俺は別に構わないけど…大丈夫?」

 

 「お前、あんだけ言われてもまだやるのかよ」

 

 結構なダメージをくらってたけどもこれが続くようなら結構キツいんじゃないの?と思ったが、義輝は俺達の言葉に構わぬと言った様子で真っ直ぐと見据えていた。

 

 「無論だ。確かに酷評されもう死んじゃおっかなーどうせ生きててモテないし、とも思った。寧ろ我以外みんな死ねと思った」

 

 「そりゃそうだろうな。俺でもあれだけ言われたら死にたくなる」

 本気で言ってる訳じゃ無いんだろうけど別に死にたくなる程でもない気が…死にたくなる状況ってのはもっとドギツイ時だろうし。まぁ、今は別に良いか。そんなどうでも良いことを考えている間も義輝は真っ直ぐな眼差しで話を続けていく。

 

 「だが、それでも嬉しかったのだ。自分が好きで書いたものを誰かに読んでもらえて、感想を言ってもらえるというのはいいものだな。この想いに何と名前を付ければ良いか判然とせぬのだが…読んでもらえるとやっぱり嬉しいよ」

 

 いつもの高笑いとは違う、義輝自身も少し照れた様子の笑顔。これが剣豪将軍モードではない、素の義輝なんだろうか?

 そして先程まで打たれ弱く、打ちひしがれていた義輝は自分の足で立ち上がり進んでいくと決意したのだ。八幡もそれに応えるかのように「あぁ、読むよ」と返事をする。なら俺はどうするのか?答えは最初から出ている。あいつが全力で進んでいくと言うのであれば、それをこちらも全力で応援するまでだ。

 

 「あぁ、その意気だぜ義輝。いつでも読むからさ…作り手にとって感想は心の栄養だ、活力剤だ。それを糧に書いて書いて書きまくれっ!!」

 

 「ではまた新作が書けたら持ってくる。だがその前に、だ。一応参考までにご教示願いたいのだが書く上で泰ノ字はどの様に取り組んでいるのだ?

 わ、我の魂に火をつけたのだ…責任取ってよねっ!!」

 

 何故そこでそっぽを向いてツンデレ風に言ったのかはよく分からなかったけど、まぁ照れ隠しか何かだろう。教えると言っても特別なやり方とかは特に無いんだけどな…

 

 「あーそうだなぁ、大した事はしてないけど…とりあえず書き上げてから一度、いち読者になって読み直してるかな。で、改めて読んで気になった点を修正していく。その時も粗探しする位の勢いで客観的に見るって言うかあれだ、『自分を疑ってかかる』って感じ?一発で良いのが書けるなんてまず無い訳だし。

 まぁ、俺のやり方が良いなんて事はないからさ。とりあえず売れるとかウケるってのは一旦抜きにして、まずは義輝のやりたいように書いてみるのはどうよ?そうやって魂込めて丁寧に作ったもんなら、誰かしら人は着いてくるだろうからさ…」

 

 「なるほど。己を疑う、即ち己との内在闘争か…何それかっこいい!あいや参考になった。礼を言うぞ泰ノ字よ」

 

 「いや、礼は良いって。それより色んな意見が欲しいってんならアイツらにも見せるってのはどう?みんな色んな本やネットSS読んでて目が肥えてるから、俺なんかよりもマトモな感想やアドバイスが貰えると思うぞ?まぁ、容赦の程度は保証出来ないけど」

 

 「ふむ、今はそれもまた一考の価値があるな。世話になった皆の者。改めて礼を言おう。ではさらばだ」

 

 満ち足りた表情の義輝は去り際に扉の側でサムズアップをしていた。あれは古代ローマで満足、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草とも言われている。 つまり、今回の依頼であいつは満足してくれたと言うことだろうか。

 これからの事は義輝次第だけどこれは夢への第一歩の筈だ。俺は前払いだと言わんばかりに未来の大作家へ力強くサムズアップを返す。後ろから距離を置くような視線をまた向けられてるがそんなものは気にしない。

 さっき義輝と話してる時に八幡が一瞬睨んでいたような気もするけど…多分気のせいだろう。

 

 

 

 「八幡、泰ノ字よ。流行の神絵師は誰だろうな」

 

 「いや俺名前はよくわかんないけど…何だっけ、『石』って字に『恵』って書く人とかどうなの?読み方知らんけど。まぁ書き上がる頃には流行が変わってるかもしんないから今は意識しなくても良いんでない?」

 

 「気が早ぇーよ。賞取ってから考えろ。井藤はちょっと待て、その名前をどこで知った?」

 

 奉仕部の依頼から数日が過ぎたある日の体育の授業、この日は珍しく三人一組で組むことになり俺は八幡と義輝と組んでいる。今は柔軟の片手間にラノベ談義をしているけど内容自体に進展は無い。捕らぬ狸の何とやらな状態だ。

 

 「何って…ガルガンティアの最終回でイラスト書いていた人だろ?」

 

 「ぬぅ、八幡よ。泰ノ字を甘く見るでない。彼奴のメカ好きは筋金入りだぞ」

 

 「メカ好きって…まぁアイマスと言ったらゼノグラシア、守護騎士と言ったらNG騎士、イェーガーと言ったら巨兵が浮かぶ位には自覚はあれけどさぁ…」

 

 「ラムネ&40とかマニアック過ぎるだろお前。それで、材木座は井藤のオトモダチ?とやらにもあの原稿を見せたのか?」

 

 「あぁ~それは…」

 

 こちらの答えに顰めっ面になっていた八幡はその表情のまま片言気味に聞いて来る。あの依頼を終えた翌日、善は急げと言った勢いで義輝は三人にも思い切って相談してみたのだ。

 アイツらも特に驚いた様子も無く俺が読んだのと同じ原稿を受け取り、その次の日には何事も無かったかのように読み終えてきた。そして昼休みに屋上で感想を伝える事になったけど、結果は奉仕部の時とあまり変わらなかった。

 

 『なぁあんさん、マジでこの出来で受賞するつもりだったん?せめて文法だけでも何とかしよ。な?』

 

 普段おっとりとしているが幼少期に関西にいたせいか、今でもたまに関西弁の漏れ出る城戸から真顔で言われ。

 

 『どんなに過大評価しても中の下、だな。せめて中の中になるよう目指してみろ。どれが正攻法かはお前次第だが色んな書き方を試してみるのもどうだ?』

 

 続けて物静かな様子を崩さずに無表情のまま淡々と和泉は述べていき。

 

 『感想自体は他と大して変わら無い…そこら辺は割愛するが幾つか気になった事がある。

 まずは前世の記憶設定だけどな、記憶を持ってる奴が多い割には話にあまり反映されてないからわざわざ出す必要無かったんじゃないのか?

 あとは秘密組織の筈なのに何故外部の、引いては無所属の連中が内情を主人公に語れる位に情報がダダ漏れなのはどうかと思うんだが?もと組織の一員なりと一言二言書いて補完しておけば問題ないとは思うがね…』

 

 最後に眉間を寄せてる事の多い織田が設定の矛盾や抜けなどを指摘していき、義輝は奉仕部の時と同じ様に床でビクンビクンしていた。それに対してノーリアクションで話を進めていくアイツらも、今更だけど結構な変わり者の気がする。まぁ俺も含めてか。

 事の顛末を掻い摘まんで話し、聞き終えた八幡は「お前の周りも大概だな…」と顔をひきつらせていた。件の御三方の方を見ると気怠げにダラダラと柔軟をしている。ついでに遠くの視界に入ったけど…矢車、柔軟が終わって暇だからってバック宙を披露するの今はやばいんじゃ。いや確かに盛り上がってるしカッコいいけども…あ、案の定厚木先生に注意されてら。

 

 「問題はどこからデビューするかだが…あとはアニメ化したら声優さんと結婚出来るかな?ふむ、そうだ泰ノ字よ。また手合わせ願いたいのだがこの後時間はあるか?今宵こそは一本入れてみせよう」

 

 「あぁ良いよ。でも俺放課後は部活だから明日の昼休みね。あと勝つ気でいるようだが…俺を、舐めるなよ?」

 

 「いや、時間が夜じゃないって事に突っ込んでやれよ…そう言うのいいから。そんな暇あんなら原稿書け。な?」

 

 周りの様子など意に介さず、「ククク」、「フフフ」とお互いに不敵な笑みを浮かべて対峙していると八幡は呆れた様子で注意する。

 確かにこの調子だと続きはいつ書き上がるのかはわからない。でもそれを待つのもまた一興だ。いったいどんな物語が出来上がるのか、いろいろ考えているとそれが待ち遠しくて何だかんだと…

 

 

 楽しみだ

 

 

 




 八巻が切な過ぎて生きるのが辛い…
 
 続きを待って頂いていた方々には本当に申し訳ありませんでした。

 忙しくなってきたので続きの次期は未定です。

 タグについてお伺いしたいのですが後に和解する、または今後関わりの無いような登場人物に対して攻撃的な態度をとることもアンチ・ヘイトに含まれるのでしょうか?
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