ダンまち×刃牙道   作:まるっぷ

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腹が減った………。

 

もう何日も喰ってねェ………。

 

どっかに居ねぇかな……餌…………。

 

…………?

 

 

 

…………おッ!

 

 

 

居たッッ餌ッッ!!

 

おおぉ~~~………。

 

美味(うま)そぉ~~~………。

 

喰い応えもありそうだ………。

 

 

こっちに来た!!

 

………?

 

……なンだよ、その態度は?

 

俺とジャレようってのか!?餌がッッ!?

 

おいおい()けぇよッ、来ンじゃねェって!!

 

喰うぞテメェ!!!

 

 

 

 

 

――――――――。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~ッッッ!!?

 

………あ………?

 

何で俺……逆さまになって………?

 

……ぁ……なんだよ………。

 

あんなとこにも居たのかよ………餌…………。

 

…………(ラク)そうなの…………。

 

……………………………。

 

 

 

 

 

「ふむ」

 

びっ、と武蔵は血振りを行い納刀する。

 

澄んだ音と共に斬り落としたモンスターの頭部と胴体は灰へと還り、胴体部分には魔石が埋もれる。

 

灰へと還った頭部、その目が見ていた先にいたのは白髪の冒険者、ベル・クラネルだ。

 

「す……すごい……ッッ」

 

ベルは素直に称賛した。

 

武蔵と共に降りてきたダンジョン第6階層。ここまで武蔵は全て手刀でモンスターを屠って来たが、そろそろ帰ろうとした時に、大型のモンスターが現れた。

 

肉食獣を彷彿とさせるフォルムを持つモンスターに気圧されてしまったベルを尻目に、武蔵はごく自然な動作でモンスターに近付いて行った。

 

そこまでは理解(わか)る。

 

問題はその後だ。

 

武蔵は確かにモンスターの首を斬った。しかしその過程がまるで見えなかったのだ。

 

腕が一瞬ブレたかと思えば、気が付けばすでに納刀されていた。

 

抜いてから斬り、再び納刀されるまでの間は一秒の半分にも……あるいはそれ以下にすら満たなかった。

 

「まずまず……と言ったところかの」

 

そう言って武蔵は、灰の中から魔石を取り出してベルの元へと戻って来た。

 

「ほれ、帰るぞ“べる”」

 

「え、アッ、はい!」

 

拾った魔石を持参した風呂敷に包み、それを背中に背負ってもと来た道を引き返す武蔵。

 

その大きな背中に、ベルは付き従うしか無かった。

 

 

 

 

 

数日後。

 

武蔵は武器屋の前にいた。

 

場所はバベル内部、【ヘファイストス・ファミリア】が営む工房。

 

ショーウィンドウに並べられた数々の武器を眺めつつ、武蔵は目的の物が無いか物色する。

 

「ふむ……」

 

今日はベルとは別行動をしている。

 

別にいつもダンジョンへ行くわけでは無い武蔵は、こうして今日は武器屋を見て回る事にした。

 

「それにしても………」

 

バベルに設けられた窓からオラリオの街並みを見下ろす。

 

そこにはいつにも増して活気のあるオラリオの姿があった。とりわけ闘技場付近には多くの人が集中しており、何らかの行事が行われているようである。

 

「祭りでもやっているのか」

 

「なんでぇアンタ、フィリア祭を知らねぇのか?」

 

武蔵の呟きに答える声があった。

 

振り返ると、そこには背が低く髭を蓄えたドワーフの男がいた。恐らくはこの武器屋の鍛冶師だろう。

 

「“ふぃりあ祭”とな?」

 

「あぁ、アンタ最近オラリオに来たのか?なら知らねぇのも無理ねぇか」

 

そう言うと、男はフィリア祭について語り始めた。

 

何でもダンジョンから輸送してきたモンスターを闘技場に出して、冒険者がその場で手懐ける……つまり調教する催しらしい。

 

「ほう、そんな催しが……」

 

「まぁ俺ら鍛冶師にゃあ関係ないがな。祭りに引かれてやって来た連中がここに武器を買いに来てくれりゃあ御の字ってところよ」

 

ドワーフの鍛冶師は腰に手を当ててそんな事を言い、再び武蔵を見る。

 

「そんで、アンタは何が欲しいんだ?何か探してるからここに来たんだろう?」

 

そう言いながら、鍛冶師は武蔵を店内に招き入れる。武蔵もそれに従い、店内へと足を踏み入れる。

 

「ほう」

 

「へっ、どんなもんだい。なかなかの逸品揃いだろう?」

 

店内には鍛冶師が作った作品と思しき武器が、ところ狭しと並べられていた。

 

剣に槍、斧にメイス、斧槍まで様々な武器がある。武蔵は店内を見渡して、そしてある武器に注目する。

 

「これは……」

 

「お?アンタなかなか見る目があるじゃねェか」

 

武蔵は飾ってあったそれを手に取る。鞘に納められていたそれを抜くと、窓から入ってくる光をクンッ、と反射した。

 

「どうだ、見事なモンだろ。俺が作ったんだぜ」

 

武蔵はその武器……刀を手にし、まじまじと見つめる。時折くるりと向きを変え、刃、峰、鍔、柄とを、じっくりと観察する。

 

「それは精製金属(ミスリル)で出来てんだ。その気になりゃあ深層のモンスターだって斬れる代物だぜ」

 

「ふむ」

 

はっはっは!と笑う鍛冶師。しかし武蔵はしばらく刀を見つめていたかと思うと、不意にこう言った。

 

(かね)非道(ひど)い」

 

「………あ?」

 

武蔵の呟きに、鍛冶師の動きがピタリと止まる。嘆息しつつその刀を鞘に納める武蔵を睨み付けながら、鍛冶師は口を開いた。

 

「おいアンタ。非道(ひど)いってのはどういう意味だ?」

 

「その通りの意味だ。辛うじて包丁(がわ)りではあるが、魂が注入(はい)っとらん」

 

「………ンだとぉ……?」

 

鍛冶師の顔に怒りの色が浮かぶ。厳めしい顔に青筋が浮かび、唇が捲れあがる。

 

「ふざけンじゃねェ!!」

 

そして吠えた。

 

彼にとって武蔵の言葉は、鍛冶師としての矜持を否定されたようなものだ。よって、彼の怒りも尤もである。

 

「魂が注入(はい)ってねェだぁ!?冗談抜かせッ、こちとらコレで飯喰ってンだよ!!テメェみてぇな野郎にその刀の何が分かるってんだッッ!!!」

 

「……ふむ」

 

激昂する鍛冶師に対し、武蔵はそれでも無表情のままだった。しかし不意に、収められ、鞘に入ったその刀を近くの机に立てかける、

 

「あァ……?」

 

意味が分からないと言った表情の鍛冶師。武蔵は彼を差し置き、その立てかけた刀の前へと移動し、そして―――――。

 

 

 

キンッ。

 

 

 

―――――抜刀し、刀を斬った。

 

 

 

 

 

「今でも信じらんねェよ」

 

その時の鍛冶師は、後にこう語る。

 

「自慢じゃねェが、俺はここでも結構質の良い武器を作れる鍛冶師なんだ。その腕を買われて、多くの顧客も抱えている」

 

「あの刀だってそうだ。ああいうのはあんまり作りはしねェが、それでも手なんか抜いてねェ。間違いなく自信作の一つだ」

 

「でもよォ………それも今となっちゃァ怪しいモンだよなぁ」

 

「あんな光景、見せられちゃあよォ………」

 

 

 

 

 

「~~~~~~~~~~ッッッ!!?」

 

「ふむ」

 

静かに納刀する武蔵。

 

その目の前には、鞘ごと斬られた刀があった。切り口は滑らか、まるで豆腐のように斬られたそれに、鍛冶師は言葉を失う。

 

「見てくれは美しく仕上がってはいるものの……」

 

武蔵は斬られた刀を拾い上げ、まじまじと見ながらこう言った。

 

「これは刀では無い。ただの鉄の延べ板だ」

 

 

 

 

 

「……堪んねェよなァ………」

 

「精魂込めて作った刀を“延べ板”呼ばわりだぜ………?」

 

「ホント………堪んねェよ………ッッ」

 

 

 

 

 

鍛冶師の咆哮を背に、武蔵はバベルを後にした。

 

向かうはオラリオの街中。

 

バベルより見下ろした際に人だかりが出来ていた闘技場を目指し、武蔵はひた歩く。

 

と、そこで。

 

「………」

 

ぴたり、と武蔵の歩みが止まった。

 

未だ人波の絶えない街の中、人々の目には立ち止まる武蔵は異様に映ったのだろう。

 

しかし武蔵はそんな事など気にも止めない。

 

「………」

 

やがて、武蔵の口角が僅かに吊り上る。

 

「ふむ―――それも一興か」

 

武蔵の視線が、まっすぐ先へと向けられる。

 

「白昼堂々の妖怪退治だ」

 

 

 

 

 

アイズは残党狩りをしていた。

 

先程までティオネ、ティオナ、そしてレフィーヤとで奇妙なモンスターの対処に当たっていた。負傷を負ったレフィーヤを二人に任せ、アイズはこうして単独行動をしている。

 

(被害が広がる前に、早く全部倒さなくちゃ……)

 

風を纏って街を跳躍するアイズ。その耳が、市街地からの僅かな喧騒を捉える。

 

(―――あそこ!)

 

喧騒の場所を特定したアイズが一直線にやって来る。周囲には人だかりが出来ており、てっきりモンスターから逃げ惑っているのだと思った。

 

しかし、それは違っていた。

 

よくよく見れば、人だかりは円を描くようにしてなっている。

 

それはまるで何かの催しをしているようにも見えるし、人々の目もそれに似た、どことなく好奇心を感じさせるものだ。

 

そしてその中心、そこには虎に似たモンスターと相対する一人の男の姿があった。

 

ざんばらの髪に無精ひげのその男は戦闘態勢のモンスターを前にして、何の構えも取っていない。無造作に佇み、目の前のモンスターを見据えているだけだ。

 

「あの人は……!」

 

一方のモンスターは牙を剥き出し、敵意を露わにしている。数秒の睨み合いの後、遂にモンスターが動く。

 

『ゴルルルァァアアアアッッ!!』

 

突進してくるモンスター。周囲の人々から悲鳴が上がる。

 

(ッ、ぶつか―――)

 

アイズもそう思った、刹那。

 

 

 

斬ッ!!

 

 

 

と、モンスターの身体が両断される。

 

ずっしゃぁああっ!と地面に泣き別れるモンスターの身体を背に、その男―――武蔵はびっ、と武蔵は血振りをする。

 

モンスターが灰へと還り、納刀すると同時に。

 

「うおおおおぉぉぉおおおおおッッ!!」

 

「すんげェェェッ!!」

 

「どうやって斬ったンだ!!?」

 

どっ!と歓声に沸く人々。

 

まるで一つの見世物でも見たかのような反応を示す彼らの歓声は、口々に武蔵を讃える。

 

人々の目にはどうやってモンスターを屠ったのかは見えなかったようだが、アイズはその正体を見破る事ができた。

 

「………居合」

 

納刀した状態からのあの剣術。アイズは日頃の鍛練で得た知識から、武蔵の剣術が何なのか理解(わか)った。

 

理解(わか)った、が―――――。

 

(ほとんど、見えなかった………ッ)

 

Lv5であるアイズの目でさえ、辛うじて(・・・・)その残像を追う事が精一杯。

 

並みの冒険者との水準(レベル)の差にアイズが戦慄する中、武蔵は彼女と目が合った。

 

「ン…………おぬし」

 

「……ムサシさん、ですよね」

 

いつもと変わらない調子の武蔵と、若干困惑の色を見せるアイズ。

 

両者の数日振りの邂逅は、こうして相成った。

 

 

 

 

 

「………確かに何か情報があれば教えてくれとは言ったけど……」

 

フィンを含めその場にいた者達は皆、目の前の光景に言葉を選んでいた。

 

アイズが街中で暴れていたモンスターの処理をしていたのは、ティオネ達と一緒に帰って来たロキから聞いていた。アイズが撃ち漏らしが無いか確認する時間も加味し、遅い時間に帰ってくる事も。

 

しかし、まさかこうなるとは予想しなかった。

 

「立派な屋敷だのぉ……ウチとは大違いだ」

 

「………アイズ」

 

「………ごめんなさい」

 

帰ってきたアイズの傍らには【ロキ・ファミリア】の間で噂の冒険者、宮本武蔵(ムサシ・ミヤモト)の姿があった。

 

突然の来訪(?)に戸惑う一同であったが、団長であるフィンが代表して口を開く。

 

「アイズが連れてきたんだろうけど……まぁ立ち話も何だし、中に入ってくれ」

 

本当はあまり良くはないんだけどね、と言い、フィンは武蔵を本拠(ホーム)へと招き入れる。本音はどうあれ、その振る舞いは客人に対するそれだ。

 

「もうすぐ夜だ。夕食を用意するよ」

 

「ふむ、もうそんな時分か……(かたじけな)い、馳走になる」

 

そう言うや否や、ぐぅ、と武蔵の腹の虫が鳴く。

 

「いやァ~~~……腹減ったァ~~~………」

 

 

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