――ピンポ~ン♪――
呆然とするわたしの意識を呼び戻したのはチャイムの音だった。かおりちゃん、だろう。
「今行くね!」
慌てて玄関を開けると、ぶかっとしたチュニックにスカート姿のかおりちゃんがどこか心配そうな表情で立っていた。
「くれはちゃん、女の子の日だから部屋にいるって。わたしだけお泊まり、いいのかな?」
「あ、えっと。大丈夫、ほら、上がって」
かおりちゃんを部屋に通して、わたしはローテーブルに置きっぱなしだった紅葉ちゃんが飲んでいた抹茶ラテの入ったマグカップを下げて、またココアのしたくを始めた。
「かおりちゃんもココアでいいよね? 冷たいの」
「うん! ありがとなの」
自分の分とかおりちゃんの分、二つのマグカップを対面するように置いたら、
「かなみちゃんの隣に座る」
そう言ってわたしに寄りかかるように座った。
「かなみちゃんは、わたしのこと好き?」
「ふぇ? えっと、うん。好きだよ」
かおりちゃんが言う好きは多分ライクの方、だから――――
「かなみちゃん、こっち向いて」
言われるがまま、かおりちゃんの方を向くと、ふにゅっと柔らかな感触が唇に触れた。すぐ目の前にかおりちゃんがいて、少し色素の薄い瞳や整ったまつげがはっきりと見えた。つまりこれって……。
「えへへ、キスしちゃった。かなみちゃん、大好き」
「あぅ、え、え!?」
「もし大好きな人を見付けたら、こうしてあげなってママが言ってたの。イヤ……だった?」
そのあどけない顔は少しだけ憂いを帯びて、いつもより年相応に見えた。かおりちゃんだって、14歳だもんね。子供じゃ……ないんだよね。そっと、彼女の華奢な身体を抱き寄せた。
「かなみ、ちゃん……泣いてる? ほんとにイヤだったの?」
「違う……違うよ」
いつの間にか、わたしは涙を流していたらしい。
「わたし、紅葉ちゃんもかおりちゃんも好きなのに……二人から好きだって言われて……どうしたらいいか分からなくて……。ごめんね、ごめんね……」
今まで恋なんてしたことなかったくせに、いきなり二人の女の子に恋しちゃうなんて……わけわかんないよ。キスだって、紅葉ちゃんの時は挨拶みたいな感じだったのに、かおりちゃん凄く真剣な表情で……。
「大丈夫だよ。かなみちゃんは自分の気持ちに素直になって大丈夫だよ」
「ふぇ?」
わたしの背中に腕を回すかおりちゃんが、優しい声音で呟いた。
「くれはちゃんも分かってくれるよ。だって、かなみちゃんのこと大好きなんだもん」
その甘く優しい声にわたしは大げさだけど……救われたような気がした。わたしが抱いたこの感情は間違ってなかったって、教えてもらえたような気がした。
「いこ、くれはちゃんのところに。かなみちゃんの気持ち、伝えてあげなきゃ」
「うん……うん!」
差し伸べられた手を取って立ち上がった時には既に涙は引いていた。今なら言える、そんな勇気が湧いてきた。
「ありがと、かおりちゃん。行こう!」