ゴールデンウィークも明けてしばらく経ったある日、私はクラスメイトで寮の同じ階に住む同級生のもとを訪ねた。チャイムを押すと少しして、彼女は淡い水色のネグリジェ姿で現れた。時刻は午後八時、まぁ、入浴後でも当然か。
「どしたの? こんな時間に部屋まで来るなんて珍しいじゃん」
「いや、学校じゃ叶美と話す時間なかなか取れないからさ」
「まぁ、そうだね。ほら、上がって」
以前より幾分きれいに片づけられている彼女の部屋に入り、座布団に座る。
「ココアでいい?」
「ああ、待って。飲み物とお菓子はあるから」
トートに入れていたバウムクーヘンと缶のココアと紙パックの豆乳を取り出す。
「ふふ、恵玲奈ってばまだ豆乳飲んでたんだ」
「おっぱいが大きくなるまで飲むの。くぅ……叶美、また大きくなったでしょ?」
「ふぇ? そんなことないって!」
「まぁいい。本題はそっちじゃなくてさ」
そことも関係性があるのかもしれないけど、と前置きしてから本題を切り出す。
「率直に聞くよ。叶美、あんた恋人出来たでしょ?」
「な、なんで分かったの?」
「記者の勘ってやつ。で、で、相手はどんな人? 男? 女?」
「お、女の子……」
「やっぱり……中学生の?」
「そう、城咲紅葉ちゃんと――――」
「と!?」
ちょっと待ってと左手を前に出してアピールする。
「待って、前に話していた女の子いるでしょう? それってば複数人なの?」
「二人なの! 中三の女の子と中二の女の子で、二人とも好きでいいって言ってくれたから……その、そういうお付き合いをしてます……はい」
「そっかぁ。色恋沙汰の噂がないなぁって思ってたら、まさか年下趣味とは……そっかぁ……」
「ち、違うの。その、年下だから好きになったわけじゃなくて、好きになった女の子がたまたま年下だったってだけなの! そりゃ、わたしだって最初は悩んだもん」
普段はハーフアップにした髪を今は下ろしていて、その艶やかな髪が首を振る度にはらはらと揺れるのが可愛くって、やっぱり叶美はいい女の子だよ。
「いやぁ、私も叶美のこと好きだったんだけどねぇ。射止めたのが中学生か……そっかぁ」
「え? ま、待って、え?」
「ふふ、でもさ、私が惚れた叶美より今の叶美の方が可愛いし、その可愛さを引き出してるのが、叶美が好きな二人なわけでしょ? 私はじゃあ今まで通りの関係でいさせてもらうわ」
「う、うん?」
少し意地悪が過ぎたかな? ま、いいか。
「やっぱり高校二年生って華って感じだよね。恋の噂が絶えないよ。ほら、生徒会副会長の江川さんとか、2組の赤石さんとか、あと2組といえば転入生の太刀花さんね。やっぱ二年生は恋の季節だよねぇ」
「ちょ、その辺を新聞とか放送でオープンにしたりしないよね!?」
「大丈夫。その辺はすっぱ抜かないからさ。私は新聞記者希望であって、別に週刊誌染みた記事を書きたいわけじゃないからね。まぁ、ちょっと不思議な機関に流すことはあってもね」
「何それ、怖いんだけど!?」
おっと、あんまり言ってはいけないことまで口にしてしまった。てへへ。うっかり。
「まぁ、叶美の恋が実って良かったよ。私も私で、新しい恋……見付けるからさ。アディオス!」
幕間にも登場した西恵玲奈の視点でのエピローグです。次回作、《君の瞳のその奥に》は11月26日より連載いたします。