「お姉様、今日は楽しみましょうね」
私服姿の紅葉ちゃんとやってきたのは、空の宮市北部にある大型ショッピングモール。四月の第二土曜日。けっこう混んでる。
「これなら、はぐれませんしデート感も増しますね」
わたしの右腕に柔らかな膨らみを押しつける紅葉ちゃん。そう、今日は彼女とのデートにやってきたのだ。……えっと、どうしてこうなったんだっけ?
一昨日のことだ。いつものように図書室でカウンター業務をしていると、紅葉ちゃんがわたしを訪ねてきた。
「お姉様、実は相談がありまして」
どうやら紅葉ちゃんの小説の中のイベントとしてデートがあるらしいが、自分はデートなんてしたことないから、どういう風に書いたらいいのか分からないとのこと。そして、
「私、お姉様とデートしたいですわ」
「ふぇ!?」
「北にあるモール、一緒に行ってくれませんか?」
「ま、まあ……いいよ。いつ?」
「そうですね、土曜日で」
「分かった。でも、同室の子じゃダメなの?」
紅葉ちゃんは桜花寮に住んでいると聞いた。ルームメイトと一緒に……あ、趣味を隠して……うぅん、そんな風にも見えないけれど。
「ルームメイトは性格が幼いので、雰囲気が出ないんですよ。それに、お姉様がいいんです、私には」
という訳でやってきたんだけど。なんだか視線が集まってる気がする。紅葉ちゃん可愛いからなぁ。赤と黒を基調としたワンピースに小さなハット。白い肌をけっこう晒して、胸元もけっこう開いてる。視線を少し右下にずらせば、本当に年下なのかの疑いたくなるような悩ましげな果実が……なんだか思考がおじさんみたいになっちゃった。
「お姉様も、スタイルいいと思いますよ?」
不意に呟く紅葉ちゃんに、思考を読まれていたことを察した。
「あはは、ありがと。それで紅葉ちゃん、ぶらぶら歩くのもいいけど、これからどうするの?」
デートが何をするものなのか、私だってよく知らない。
「取り敢えず、服を見てまわりましょうか」
それなら友達とのお出かけとあんまり変わらない。緊張する必要もなさそう。ということで、ブティックの並ぶモール二階へとエスカレーターで移動したんだけど……。
「これもお姉様に似合うと思うのですが、あぁ、こちらも捨てがたい」
……えっと、あれ?
「どうなさいました? お気に召しませんでしたか?」
「あ、いや、そんなことないよ? ただ、紅葉ちゃんの服は見なくていいのかなって?」
テナントに入ると、紅葉ちゃんはわたしにあれこれ服を見せて、似合うと思う可愛いと思うとオススメしてくるのだが、ちょっとお値段が張る。
「試着だけでもして行きましょう。ね?」
これが一番と渡された服を持って試着室へ。にしても、渡されたアイテムが多い。全身フルコーデになってる。取り敢えず、今着ているピンクのブラウスとオフホワイトのスカートを脱ぐ。で、渡されたスカートを穿く。私が穿いていたのはプリーツだけど、こっちはフレアだ。それから同じく白のカットソーを着て、その上にフリルのついた透け感のあるパフスリーブのトップスを重ねる。こちらはピンクで、重ね着した時に色合いがちょうどいい感じになる。胸元にはボルドーのリボンが付いていて、いいアクセントだ。この上に少しゆるめのカーディガンを重ねて、完成。ガーリーにまとまっていて、紅葉ちゃんの見立ての良さが分かる。紅葉ちゃんに見せるべく、試着室のカーテンを開ける。紅葉ちゃんはすぐ目の前にいた。
「どう、かな?」
「すごく可愛いですよ、お姉様」
「えへへ、ありがとう紅葉ちゃん。まぁ、高いから買えないんだけどさ」
そう言って再び試着室のカーテンを閉める。一点ずつ丁寧に戻して、着てきた服に戻る。
「お待たせ。春物の売り尽くしをやるようだったら、狙ってみようかな」
「その時はまた、ご一緒しますね」
「うん、ありがと」
次は紅葉ちゃんの服を見に行こうと言おうとした矢先、
「少し休憩にお茶しましょうよ」
今度はお茶のお誘いを受けてしまった。まぁ、紅葉ちゃんに誘われたわけだし、エスコートは任せるしかないのかな。