恋は芽吹いて百合が咲く   作:楠富 つかさ

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第五話 紅葉とデート(後編)

「デートの定番といえばお茶ですよ」

 

そう言いながら彼女が飲んでいるのは抹茶ラテ。ちなみにわたしはアイスココアを飲んでいる。抹茶系以外の甘いものは苦手だと言う紅葉ちゃんは他に注文しなかったけど、わたしはシュークリームを追加で頼んだ。

 

「さっきまでは雰囲気に呑まれて言えなかったけど、今日はコンタクトなんだね。髪もストレートだし、可愛いよ」

「まぁ、気付いてくださって嬉しいです」

 

そう言って笑顔を浮かべる紅葉ちゃん。ずっと大人びた雰囲気を感じていたけど、今だけは年相応の感じがして何となくだけど嬉しくなった。

 

「それで、この後はどうするの?」

「はい。デートの定番といえば映画ですよ。何を見るかは二人で決めようと思っていたのですが、何か見たい映画はありますか?」

「映画だったら……来週公開の作品が見たいんだけど」

 

そう言うと紅葉ちゃんは内容について聞くこともなく頷いた。

 

「なるほど……。では映画は来週にしましょう。お姉様と出かけられる機会は残しておきたいですから」

「じゃあ、これからどうする?」

「むぅ……どうしましょう」

 

せっかくだし何か記念になるような……。

 

「ねぇ、お揃いのヘアピンでも買わない?」

「いいんですか!? 嬉しいです」

 

決まりだね。フードコートを後にした私と紅葉ちゃんは、二階にある雑貨屋さんへと向かった。女の子向けの可愛いアイテムを揃えたお店で、アクセサリーの類いも充実してる。

 

「これなんてどうですか?」

 

紅葉ちゃんが見せてきたのは、星もモチーフにした二つセットのヘアピン。色はゴールドとシルバー。

 

「色違いもいいかなって、どうでしょう?」

「うん、可愛いね。じゃあ、私お会計してくるよ」

「あ、そんな」

 

ごそごそと財布を取り出そうとする紅葉ちゃんを制して、ヘアピンを持ってレジへ向かう。

 

「わたしがお姉さんなんだから、これくらい気にしないで。高いものでもないし」

「は、はい。お姉様。ありがとうございます」

 

お会計を済ませて紅葉ちゃんのところに戻る。

 

「紅葉ちゃん、どっちにするの?」

 

ヘアピンを開封して、聞くと紅葉ちゃんはシルバーを手にした。

 

「どう? 似合う?」

 

さっそくヘアピンで前髪を留める。

 

「はい、似合います。私も、どうですか?」

「うん。いい感じ。ね、このままプリ撮ろう?」

「え、あ、私……プリクラ撮ったことないです」

 

少し戸惑いを見せる紅葉ちゃん。私にはよく懐いてくれているけど、彼女が誰かといる姿を見たことがない。とは言え、私もそんなに多く撮ったわけでもないけど。

 

「私もあんまり撮ったことないよ。でも、ここの四階にゲームセンターがあって、その奥に機械があるってのは知っててさ。行こう」

 

紅葉ちゃんの手を取ってエスカレーターへ向かう。紅葉ちゃんもすぐに普段通りの雰囲気に戻ってくれた。

 

「そう言えば映画館の反対側がゲームコーナーでしたね。ガヤガヤ感が苦手で入ったことないんです」

「確かにねぇ。流石に土曜日は混むね」

 

店内にかかる音楽やゲームの音、人の声、流石に大きくてちょっとつらいものがある。そんな一帯を抜けると、プリクラの機械が並ぶエリアがある。

 

「これがいいかな」

「何がどう違うのか分からないんですけど……」

「これは、シンプルに写真に文字とかスタンプが押せるタイプでね。お化粧したようになったり、肌がめっちゃ白くなったりっていうタイプじゃないやつ。本当に記念に撮るって感じなんだ」

 

最近のプリクラって“盛れる”タイプが人気だけど、わたしはどうにもアレが苦手だ。自分が自分じゃなくなってる感じがして。ちょっと大げさなのは分かってるけどさ。

 

「じゃ、撮ろうか」

「はい!」

 

三種類写真を撮るのだが、その三種類目に、

 

「大好きです。お姉様」

「ふぇ?」

 

ほっぺに柔らかな感触がして、紅葉ちゃんの方を向くと顔を真っ赤にしている彼女が。

 

「えへへ、今日は楽しかったですし、嬉しかったですし、それで、その……お礼みたいな。うぅ、恥ずかしくなってきました。あ、私、エスカレーターの辺りで待ってますから!」

 

筐体からダッシュで逃げ出す紅葉ちゃん。取り敢えず、プリに今日の日付を手書きして、星と……ちょっとだけハーとのスタンプを押して完成させた。ゲームコーナーを抜けてエスカレーターの方へ行くと、紅葉ちゃんはベンチに座っていた。

 

「お待たせ」

「あ、えっと」

「はい、これ」

 

おどおどする彼女に、プリクラのシートを渡す。

 

「ありがとう、ございます」

 

まだ頬を紅く染める彼女に、少しだけ悪戯心が湧いてきた。紅葉ちゃんのすぐ隣に座り、彼女の頬に

 

「ちゅっ」

 

軽くキスをした。

 

「お、お姉様!?」

 

驚く彼女に、わたしからもお礼だよと言ってあげる。

 

「お姉様は少し意地悪です」

「そうかな?」

「はい。でも、そんなお姉様も大好きです。さぁ、帰りましょう」

「うん。あのさ……ううん、何でも無い」

 

二度、わたしに大好きだと言ってくれた紅葉ちゃん。百合は物語の中だけだと言っていた彼女の大好きは、恋愛感情を含むのだろうか。もし、含まれているとしたら……。わたしは……。

 

「お姉様、電車の時間を確認したら、もう少しで電車来ちゃいます。少し急ぎましょう」

「う、うん!!」

 

モールは半ば駅直結だけど、ちょっと走らないと厳しいかも。まぁ、行きに往復の切符を買っていたことが幸いして間に合ったのだが。その後、学園前の駅で降りて紅葉ちゃんとは寮生用の通用口でお別れした。

 

「私、今日のこと絶対忘れません」

「大げさだよ。でも、わたしも楽しかった。ありがと、紅葉ちゃん」

「そんな、私こそありがとうございました。では、お姉様。失礼します」

「うん、じゃあね」

 

こうして、わたしと紅葉ちゃんのデートは無事に終わったのでした。

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