「電車混んでるね……」
土曜日の夕方ということもあって、電車はなかなか混雑していた。空いている座席を一つだけ見つけたわたしは、かおりちゃんに座るよう言ってあげたんだけど、
「かなみちゃんと一緒に座るの!」
と言って、スケッチをする時と同じようにわたしの膝にかおりちゃんが座った。まぁ軽いからいいんだけど……なんか、さっきのクレープとは違ったかおりちゃん本来の甘い匂いと温もりに……知らず知らずのうちに鼓動が高鳴る。
電車移動の間、かおりちゃんが美術部のことをいっぱい話してくれた。部長さんがちょっと怖いとか、副部長さんがお菓子をよくくれるとか、同級生に絵が凄く上手い子がいるとか、校内でデッサンしてたら美人の用務員さんがいた、とか。すっごく楽しそうに話してくれた。ちなみに、美術部の副部長さんはクラスメイトだったりする。わたしも一度マカロンをもらったことがあるが、確かに美味しかった。
「着いたね、下りようか」
「うん!」
忘れずに荷物を持って、電車を下りる。駅のホームを出てバス停に行くとちょうど良くバスが来た。バスでの移動時間は短く、あっという間に学園に帰ってきた。
「寮まで送ってくね」
またひょっこり猫さんとかに出会って迷子になったらまずいから、かおりちゃんを寮まで送っていくことにした。
「ふふ♪」
手を繋ぐとご機嫌な様子のかおりちゃん。家に帰るまでがデート、なのかも。
「せっかくだから上がっていってよ!」
中等部桜花寮のかおりちゃんが暮らす部屋の前まで行くと、ドアを開けたかおりちゃんに引っ張られ、部屋に入ることになった。まだ玄関だけどね。
「お、お邪魔します……」
桜花寮の部屋に入るということは今までなかったなぁ。靴を脱いで上がる。シンプルなマンションみたいな雰囲気で、掃除は行き届いている。廊下の奥がリビングらしく、ドアを開けると……。
「意外に早かったわね、かお――え!?」
そこに居たのはセクシーなベビードール姿の紅葉ちゃん。え!?
「ひゃ、お姉様!? えっと、着替えてきます!」
急ぎ足で奥の部屋――多分寝室――へと消えてゆく紅葉ちゃん。そんな彼女を不思議そうに見送るかおりちゃん。……不意に二人の言葉が脳裏にリフレインする。
――ルームメイトは性格が幼いので、雰囲気が出ないんですよ――
――なんだか最近いそがしいみたい。パソコンに向かう時間が増えて――
繋がった。確かに二人とも雰囲気は違うけど中学生だし桜花寮に暮らしている……。なんで気付かなかったんだろう……。二人が同じ部屋に住んでいるって。