のんびり口調の可愛い妹   作:ブリザード

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姉貴と書いてますが、モカとラテの姉じゃないですよ。
姉貴気質なあの子の事ですよ。


第6話 喧嘩する兄妹と頼りになる姉貴

「あのさ〜、お兄ちゃん?」

 

「んー?」

 

「冷蔵庫に入ってたプリン知らない〜?」

 

学校から帰ってきた平日の夜。晩御飯を食べた後リビングでゴロゴロしていると、モカがそんなことを聞いてきた。

 

「あぁ、それならさっき俺が食ったぞ」

 

「えっ……?」

 

「いやー、手前に普通に置いてあるから食っていいものかと思って食べちまった」

 

「酷いー」

 

いつもと口調は変わらない。でも俺にはわかる。モカは少し怒っている。そう聞こえる。

 

「あれ、ひーちゃんがあたしのために買ってくれたちょっと豪華なやつだったのに〜」

 

「え、あ、ごめん。そうとは知らなくて…」

 

「サイテーだよ。人の物を勝手に食べるなんて〜」

 

「本当に悪かったよ。でも、モカだってそんなに大切なものなら、それがわかるように名前とか書いておくべきだったんじゃないのか?」

 

「でも、それを言うならプリン食べていい?って聞くところじゃないの〜?冷蔵庫にプリン1個しか入ってなかったんだから」

 

「うっ…………」

 

返す言葉もない。確認を怠らなかった俺が悪い。

 

「ごめんなさい……」

 

「許さないー。お兄ちゃんのばーか」

 

モカが暴言を吐くなんて珍しい。こんなの滅多にない事だ。相当怒ってるみたいだ。

 

「ごめんって!今度同じやつ買ってやるから」

 

「そうしたら許してもらえる、みたいな感じもなんか気に入らない〜。お兄ちゃんのあんぽんたん」

 

今回のことは全部俺が悪い。それは認める。でもそこまで言われるのはなんというか腹立たしくなった。

 

「………おい。確かに勝手に食べたのは悪かったけど、そこまで言わなくてもいいんじゃないか?」

 

「だって勝手に食べたお兄ちゃんが悪いんだもん〜」

 

「そうだよ。その上で俺はちゃんと謝ってるだろ。何が気に入らないんだよ」

 

「さっきみたいな同じものを買ってきたら許してもらえると思ってるところだよ」

 

「仕方ないだろ!食後になんか食いたくなったんだから!」

 

「ほらまたそうやって言い訳する〜」

 

「モカが根に持って許してくれないからだろ!」

 

「だって事実だもん〜」

 

俺たちの言い合いはどんどんヒートアップしていっている。それこそ止まらないレベルまで。

 

「それにしたってだろ。たかがプリン1個食べただけでそんなにネチネチ言うモカもどうかと思うぞ!!」

 

「ひーちゃんが買ってくれたものだもん。お兄ちゃんがプリン食べなかったらあたしもこんなに怒ってないのに〜」

 

「ほら。そんなに大切なものだったんだろ?だったらやっぱり自分のって名前書かなかったモカも悪い!」

 

「あたしは悪くないもん。悪いのはお兄ちゃんだよ」

 

「そんな事ない。全部の全部俺が悪いわけじゃない。4割くらいはモカの責任だ!」

 

「む〜。お兄ちゃんの分からず屋〜」

 

「あぁ。分からず屋で結構だ!」

 

「もういい。お兄ちゃんがちゃんと悪いのを認めないまで、お兄ちゃんと口聞かないから〜」

 

「あぁそうかい!じゃあ俺だってモカがちょっとでも非があるって思わない限り、俺も口聞かないからな!!」

 

モカはそれだけ言うと、部屋に戻っていった。俺もイライラしているせいか、その日はシャワーだけ浴びて自室に戻りすぐに寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていう事があったんだよ。どうしよう、巴〜」

 

「いやまぁ、なんというか……」

 

その次の日。朝起きて、怒りが冷めた俺はちゃんとモカに謝ろうとしたが、モカは自室から出てこようとせず結局朝は何も話せなかった。

 

「どうしよう……このままモカと一生話せない日々が続いたら。俺の癒し……いや、俺の全てがなくなってしまう」

 

「気に病みすぎだ。そこまでになる事なんてあるわけないだろ」

 

その日の放課後。俺はある人物に相談に乗ってもらうために、その人物を電話で呼び出し、今はファミレスにいる。

 

「だって……モカがあそこまで怒ってるの俺初めて見たし……もうだめだ。どうしたらいいのかわからない」

 

「まぁ、今日はモカ、学校にも来なかったしな。あいつも相当気にしてるんじゃないのか?」

 

その人物の名前は宇田川巴。モカの幼馴染にしてモカの組んでいるバンドのドラム担当。お姉さん……というか姉貴気質な性格で、幼馴染5人をよく引っ張る頼りになる人物。俺も悩みがあるときはいつも巴に聞いてもらっている。

 

「あぁもう!なんで俺昨日モカに怒ったんだろ。どう考えても悪いの俺なのに………」

 

「アタシはあまりあことは喧嘩しないからその気持ちわからないな」

 

あこ。というのは巴の妹の宇田川あこという女の子だ。巴と同じくバンドを組んでいてドラムをしているらしい。

 

「モカ……モカー!こんなダメな兄貴を許してくれ……」

 

「落ち着けって。ちゃんと自分の気持ちを伝えたらモカもわかってくれるはずだ」

 

「そうかな………昨日みたいに喧嘩になるだけじゃないかな?」

 

「モカだって昨日言いすぎた、ってなってるはずだ。ちゃんと話し合えばあいつも許してくれるよ」

 

「だといいけど」

 

モカと話さずに……いや、モカの顔を見る事ができずに学校行くのがどれだけ辛いか身にしみた。モカがいるから俺は学校に通えている。俺にとってモカはそこまでの存在なんだ。

 

「アタシからもあとでモカにメールして聞いといてやるから元気出せ。なっ?」

 

「うぅ…………巴。ありがとう」

 

巴がいて本当に良かった。こんなに頼りになる姉貴文は絶対いないよ。俺より年下だけど。

 

「そういえば、ひまりちゃんがモカに買ったっていうプリン。どこで売ってるか知らない?物で許してもらおう、なんては思ってないけど、やっぱり食った俺が悪いし、誠意は見せないとって思ってるんだけど」

 

「ん?あぁ。それならモカのバイト先のコンビニで売ってるぞ。そこにある1番高いやつだ」

 

「モカがあれだけ言っていたプリンの売ってる場所がコンビニかよ。なんか拍子抜けだな」

 

「まぁ、ひまりセレクトだからな。ひまりはコンビニのスイーツ大好きだし」

 

ひまりの好物はコンビニスイーツだ。俺は食っていると飽きてくるのでその気持ちはわからないが。

 

「そもそもなんでひまりちゃんはそのプリンをモカに買って行ったんだ?」

 

「モカが昨日頑張ってたんだよ。バンドの練習。ライブの日が近づいてるからだろうな。それを見たひまりがモカにご褒美だ、って」

 

「…………つまり俺はモカの頑張りをも破壊したって事になるのか?」

 

「え?いや、えっと」

 

「だってそうだよな。モカの頑張ったご褒美に買ったプリンを俺が食べたんだぞ。つまり、モカの頑張りは俺が食べたって事だ」

 

「いや、それはなんか違うと思うぞ」

 

「ごめんモカー!!許してー!!!」

 

「ファミレスで叫ぶな!店に迷惑だ!ていうか、こっちが恥ずかしくなるんだよ!!」

 

周りを見ると、なんだなんだという感じで俺達が座る席をじっと見る客がたくさんいた。

 

「す、すいません」

 

「ったく。とにかく、今日は帰ったらちゃんとモカと話し合う事。モカ自身も昨日のこと絶対気にしてるから許してくれないわけがない」

 

「は、はい!」

 

「だから、ちゃんも誠意を見せて、モカに謝る!いいな?」

 

「り、了解です姉貴!!」

 

「誰が姉貴だ!!」

 

いつも思う。巴は誰よりも姉貴をしているなと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

その後も巴としばらく話し、帰るのは19時くらいになった。俺がずっとモカの話を聞いてもらっていただけだったが。家に帰ると、いるといつも出迎えてくれるモカがいない。いない日もあるけど、いるとわかっている日に出迎えてもらえないのがこんなに辛いと思わなかった。

 

「落ち着け。落ち着け俺。一応ひまりちゃんが買ったっていうプリンも買った。反省文も考えた。だから大丈夫。大丈夫なはずだ」

 

荷物を置いて2階に向かう。目指すはモカの部屋へ。階段を上る足が重たく感じる。1段1段にズシン、ズシンと重みが感じるようだ。

 

「よ、よし」

 

なんとかモカの部屋の前までたどり着き、深呼吸する。唾を1度ゴクリ、と飲み込み部屋のドアをノックした。

 

「も、モカ?いるか?」

 

部屋の前で尋ねるが返事はない。あれ?おかしいな。家に靴はあったから絶対いるはずなんだけど。

 

「モカー?入るぞ…………っておうわっ!!」

 

確認のために部屋のドアを開けようとした瞬間、俺はドアノブに触れる前にドアは開いた。そして、何かの衝撃に襲われて俺はそのまま尻餅をついて倒れた。

 

「いつつ………なんだいきなり……ってモカ?」

 

「…………………」

 

どうやらモカが俺に飛びついてきたようだ。モカは倒れたままの俺の体をぎゅっと抱きしめて離してくれない。

 

「おーい、どうしたんだ?モカー?」

 

「……………………」

 

「お、おい。まさかお前、今ので頭打ったんじゃないんだろうな?おい!」

 

「あ、だいじょーぶ〜」

 

「大丈夫なんかい!ていうか、意識あったのかよ!!」

 

本気で意識失ったんじゃないかと心配したその時、モカはいつも通りの表情で俺に答えた。無駄に心配させるやつだ、本当に。

 

「それよりお兄ちゃん、何かあたしに用があったんじゃないの〜?」

 

「あ、あぁ。そうだった。とりあえず1回離れてくれないか?」

 

「いや〜」

 

「えっ?」

 

「話しならこのままでもできるでしょー?」

 

「いや、まぁそうだけど。このまだとちゃんと言えないから」

 

「あたしは気にしないからだいじょーぶだよ〜。お兄ちゃん、どうぞ〜」

 

そう言ってモカは俺の胸板に頭を乗せた。後ろに回したても離してくれない。本当にこのまま話をしろっていうのかこいつは。

 

「はぁ……………モカ」

 

「なーに〜?」

 

「昨日は悪かった!俺が勝手にプリン食ったのに、俺を罵倒するモカを見て、イラっとしたせいでお前に逆ギレしちまった。本当にごめん!!」

 

「いいよ。許してあげる〜」

 

「あれ、お前がひまりちゃんに買ってもらったものなんだろう?それなのに、俺勝手にたべて……………………って、えっ?今なんて?」

 

「許してあげるよ〜。あたしもプリン勝手に食べられて、ちょっと態度悪くしちゃったし、ごめんなさい」

 

「へ、あ、うん。でさ、これ。昨日俺が食べたっていうプリン。これで許してもらおうなんて思わないけど」

 

「わ〜い、ありがとうお兄ちゃん。あとモカちゃんはもうお兄ちゃんのことを許したんだよ〜」

 

ようやく起き上がったモカはプリンを手に持ってそれを机の上に置きに行って、俺を手招きした。

 

「お兄ちゃん〜」

 

「なんだ?」

 

「仲直りの印に、あたしのことギュッてして〜?」

 

「ギュッ?抱きしめてってことか?」

 

「そう。あたしからはさっきしたから、今度はあたしにお兄ちゃんがする番〜」

 

「…………あぁ。もちろんだ」

 

両腕をいっぱいに広げて待つモカを俺はゆっくりと抱きしめた。手の片方を後ろに回して、もう片方はモカの後頭部に当てて。そのまま頭をゆっくりと撫でる。

 

「しあわせ〜」

 

「そうだな。俺もだよ。たった1日なのにモカに会えない日がこんなに辛いなんて思わなかったよ」

 

「あたしはそんな事なかったよ〜」

 

「へぇ、そうなのか。じゃあさっきなんでモカは俺に飛びついてきたんだろうな?」

 

「何のことー?モカちゃんそんな事してないよ〜」

 

「いーや。俺の頭の中でもう記憶したから」

 

おそらくモカも同じ気持ちだったんだろう。たった1日なのにその1日が会えないのがこんなに辛いんだと。だからモカは飛びついてきたんだろう。

 

「知らないよー。ねぇねぇ、お兄ちゃん〜?」

 

「なんだ?」

 

「あと30分くらいしたら、ご飯作ってね〜。お腹すいた〜」

 

「俺はあと1時間くらいしたらがいい」

 

「それはながすぎるよー」

 

いや、30分でも十分長いと思うんだが。

 

「あとはー、今日は一緒に寝る事〜」

 

「あぁ、わかった」

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「やっぱりなんでもない〜」

 

「なんだそりゃ」

 

無事に仲直りできたよかったが拍子抜けだった。俺の今日の葛藤は一体何だったんだろうか。

 

「まぁいいか」




モカちゃんメインのイベント来ないかな〜。と最近思うブリザードです。
感想と訂正があればお待ちしております。
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