無限と身勝手   作:戦闘狂(書く方)

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無限と身勝手の日常
日常回なので今回、“身勝手”の影が薄いがご勘弁を。





身勝手の日常

朝7時、起床。

 

既に習慣になり目覚ましを使わなくてもこの時間に自然と起きる。ベッドから降りようとして体の上の重みと暖かさを感じベッドの中を覗く。

 

「………」

「…ぅ…っ」

 

ベッドの中を覗くとそこには、左側から抱きつく様にして眠っているオーフィスが。オーフィスがイクサのベッドに潜り込む様になって月日が経ち既に慣れた。まあ、初めての時も余り動じなかったが。──せいぜい眉がピクリと揺れた程度──

別の部屋の別のベッドにいる筈なのにベッドに潜り込んでいるオーフィスを起こして共にリビングへ行き朝食を作る。

胃に優しく腹持ちいい健康も考えた朝食───なんてものは作らない。オーフィスにはそもそも空腹という概念が在るようで無い。オーフィスの感覚は興味のそれに近い。なんだか幸せそうだから自分も食べたい、相手にあるから自分も欲しい、そんなモノが始まりでそれがルーチンと成っているだけ。人間のそれとは違うが彼女にとってそれが幸せなのだろうだから問題はない。

だから彼女が望むもの好きなものを作る。最近のオーフィスのブームは和食。炊きたての白米に味噌汁と焼き魚、つくだ煮に沢庵を少々。

 

桜色のオーフィスの茶碗を山盛りの米を盛り、具が沢山入った味噌汁をよそい、今日の焼き魚はシャケの切り身。一番大きなものを皿に乗せてオーフィスの前に並べる。戸棚から醤油のような調味料をいくつか取って机に置く。オーフィスはその場の気分で調味料を掛けるか掛けないか決めるのでいつでも取れる場所に用意しておく。

ここまでしてようやく朝食の準備が終わる。

はよ、はよ、と視線で語るオーフィスに急かされオーフィスの対面席に座り一緒に朝食をいただく。

 

「〜〜♪…美味」

「そうか」

 

リスのように頬を膨らませて満足気に朝食を頬張る。よく噛んで食べるオーフィス。最低限の作法は教えているのでがっついたり貪るように食べたりはしない。一番苦労したのは箸を持つ力加減。上手く使えずイライラしてぽっきり逝ったこともしばしば。

オーフィスよりも量が少ないので早く食べ終わり食器を台所に持って水につけ、その後一度自室へ戻り学校の制服に着替えて鞄を持ってリビングに再度来ると自分でおかわりを盛っているオーフィスがいて、「行ってきます」「ん。行ってらっしゃい」と一言ずつ会話してイクサは家から出る。

 

 

 

 

 

駒王町の駒王学園。

そこがイクサの通う学校。

 

「おはよう」

「ああ、おはよう」

「なあ、郁沙(イクサ)課題見せてくれ」

「まったく、次から気を付けろ」

「すまねぇ」

 

何事も無く教室に入り席に着いて“身勝手”を使い良い人柄を作り瞬時に実行する。手助けはするがなんでもはしない。“絶対に頼れる存在”にはならない。深い味方は作らず、かといって敵も作らない。そんな人柄を“身勝手”は演じる。100%完全にとは言えない寧ろ20%ぐらいだが、その程度なら意図的に扱える。ただ、ひどく頭が痛くなる。それも既に慣れたものだったが。

 

授業を終えて放課後になる。別校舎のオカルト部の隣。来たい時に来て帰りたい時に帰ればいい、とかなり自由な部活に所属しているイクサ。

特に決まった目的もなく、その場にいる人間で何をするか決めるような適当な部活。そんな部活に三日ぶりにやってきた。

 

「うん?やぁ、よく来たね」

「はい」

「金曜日は来なくて土日は無いから三日ぶりだね」

「そうですね」

 

ロングの黒髪に金の瞳に眼鏡、大きすぎない胸と尻に腰はキュッとくびれているといった整ったプロポーションと誰しも一度は視線を釘付けにさせる美貌を持つ先輩。

 

「さて、今日は何をする?」

「……他には来てないのですか?」

「うぅん、こんな時間だし来ないんじゃないかな?」

「わかりました」

 

二人だけの部室、しかも男女。

だが、二人の間に恋愛事情は無い。友情ならあるが。

 

「そう言えば君、知ってるかい?」

「……」

「あはは、これじゃわかるわけないか。実は最近行方不明事件が増えているようだ。怖いなぁ」

「そう、ですか」

「おや、あまり気にならないかい?けどそうやって自分は大丈夫だと思って油断するからいざって時に大変な事になるんだぞ」

「……気をつけます」

「うむ。ボクも部活仲間が減ると気分が悪いからね」

 

その後もたわいのない会話をして解散。

帰路につく、先輩に言われた通り周りに気をつけてみるが特に何もなく───。

 

「………む」

 

謎の威圧、未知の存在に身構えるイクサ。どしんどしん、と地響きが鳴り何かがこちらにやってくる。

 

「にょにょにょ〜♪今日は悪魔さんとミルキー鑑賞だにょ〜♪」

 

それは異様な格好のバケモノだった。

高校生(イクサ)が見上げる程の巨漢。全身が巌のように筋骨逞しく、獅子すら臆する存在感を誇る。世紀末の世だろうと生きていけそうだ。そしてその漢が身に付けている衣服は、日曜の朝、或いは深夜のアニメに出てくる少女が着るようなひらひらした服で、明らかにサイズが合っておらずぱっつんぱっつんになっている。

 

「にょ、にょ、にょ〜♪ミルたんはっにょ!!」

 

地ならし(スキップ)をしながら進み変な呪文を唱えながら時折可笑しなポーズをとるその怪物。オーフィスが自分と同等の実力を持つ事を知った時と種類は異なるが近い程の驚愕を感じ立ち止まった。

もしや先輩の言っていた事件の犯人はこいつで行方不明になった人達はこのバケモノに喰われたのでは!?

 

「にょ?」

「───っ!」

 

気付かれた!?

臨戦態勢になり“身勝手”形態へ移ろうとして───

 

「学校帰りかにょ?こんな時間まで大変にょ」

「──……、…???」

「最近は物騒な事件も多いから気をつけるにょ」

「あ、はい。心配、ありがとうございます」

「気にしなくいいにょ。魔法少女は町の人々を守るものだにょ♪それじゃ気につけてにょ」

「はい。……さようなら」

「さようならにょ〜」

 

未だ処理が追いつかず茫然とするイクサ。今の会話の返しも“身勝手”が無意識のうちに行ったものだった。

十数秒棒立ちしていたイクサは、

 

「───帰ろう」

 

思考を放棄して帰える事にした。

 

 

 

 

 

「ただいま」

「ん、おかえり」

「………」

 

家に着きリビングへ行く。ソファにちょこんとオーフィスが座ってこちらを見ている。手にはおやつ用のチョコスティックが入った箱がある。そして周りにチョコバーの袋が捨てられている。

 

「片付けろ」

「………んぅ」

「オーフィス」

「わかった」

 

一瞬不満気にしたオーフィスも二度目には言うことを聞き片付け始める。その間に自室に向かい学生服から普段着に着替え終えリビングへ戻る。

 

リビングに戻るとお菓子のゴミは既に無く、代わりにオーフィスが少し自慢気な顔でむふー、と胸張っている。

 

「ちゃんと片付けた。我を褒めて」

 

自分で散らかしてそれを片付けたら褒めろと言われ微妙な表情を浮かべながら頭を撫でる。

むふー、と目を細め猫のように甘えるオーフィス。実は計画通りだったりする。まあ、オーフィスを撫でるイクサも何気に楽しんでいたりするのだが。

長年共に暮らしてきた二人、互いの癖や性格は二人共よく知り合っている仲なのだ。

 

「ほら、夕食を作るぞ。何がいい?」

「ラーメン」

「ああ、うん。そうか」

 

インスタントじゃないのだろうな、とオーフィスの難題に頭を悩ませるイクサだった。

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