無限と身勝手 作:戦闘狂(書く方)
───落ちる───墜ちる───オチル。
泥のように執着に、けれど水よりも軽く、深く深く暗い空にオチテユク。
オーフィスのオーラに対しドラゴン波の放出をバリアのように変え防禦に回したことで難を逃れたが、
正真正銘、全身全霊を込めた大技。己の力を総て叩き込んだ。
おかげで体はピクリとも動かない、“身勝手”の波動もなりを潜めていく。浮遊する力も術も持たないオレは、重力に従い只々落下していく。
思えば、初めてオーフィスと戦った時もこんな感じだったな。
身勝手の全力行使の疲労と戦闘のダメージに動かなくなった体、息をするのがやっとで大の字に広がり寝そべっていた。
初めてだった、勝負で負けたのは。安堵した、己と同等ましては格上が居ることに。手を伸ばした、同じ孤独者同士なら手を取り合わせられると思って。おそらく10の歳を超えて初めて心の底から笑えたと思う。
そして俺は漸く唯一の理解者を得られた。
『何でも出来る』オレと、『出来る事しか出来ない』他者。
ガキでありながら出来損ないの同僚を見るようなオレの視線。それを自覚しそれでも辞める事の出来ない己自身への嫌悪。
こんな俺にも家族への情はある、産み落とし愛を持って育ててくれた両親、血を分けたいつも後ろから追い、縋り、慕ってくれる兄妹、自分と違う普通の人。それを理解し尚且つ“普通の人”というのも理解していたが為に自ら命を絶つ事も出来ぬ憂鬱。
それに終止符を打ってくれたのがオーフィスだった。
そのオーフィスが自身の為に不変の存在といった道理を壊して進化した。その事実が嬉しくて堪らない。
オーフィスは、俺の限界を超えてくれてる───。
ドクン、と体が大きく跳ねた。目の奥で銀色の閃光が弾けた。胸の奥に太陽のような強い熱が生まれた。
───
動けないと思っていた体に力が灯る。溢れ出さん勢いでどんどんと湧き出てくる。
───
拳を握る、大きささえ揃えば星だろうと握り潰すだろう握力で、
歯を喰いしばる、何故なのか己自身ですらわからない腹立たしさに嚇怒する。
───俺の……ッ!
プツンッ、と悟ったように理解した。
───バカヤロウッッッ!!!!
オレは身勝手にも、
───何を喜んでやがる、此処が
俺にオレが憤怒する。
───まだ見ぬ先を!新たな領域を…ッ!!
重い衝動を魂にぶつける。
───
「ォォオ、おおぉ……ッ」
「ッッッ雄オオオォォあああっ!!!!!」
吼える、強く激しく。
熱く、圧く、世界に匹敵する重みを放ち。体の奥にぐっと力を込めて先の自分を叱咤するように鼓舞するように喉の奥から咆哮する。
「イクサ」
燃え尽きたと思った瞬間の再燃、より一層激しく燃え上がる姿にオーフィスは目を離せない。
大好きな人の雄姿、輝きを見せる魂、最愛なる友が放つ濃密なオーラにオーフィスの胸が熱くなる。
オーフィスがイクサへ向ける感情、それは愛である。
それが恋愛としての愛なのか親愛としての愛なのかそれとも友愛なのか、それは本人もよくわかってはいないが、それでもれっきとした愛である。
愛する者の煌然とした神秘的な蒼と銀。夜天に輝く星のように歴然と、“此処に我は在る”と主張する。
イクサがオーフィスへ向けて降下する。オーフィスは墜ちるイクサに拳を振るう。手加減など一切含まない大砲の拳、前転してオーフィスの拳に両足で添え衝撃に抗わず後ろへ跳躍。
一度回転し両足大地に立ち、即座に駆け抜ける。逃げも隠れもしない、後退などあり得ない。選択肢は“進む”ただそれだけ。
瞬間加速、初動で最速、光追い越し天翔る流星。
オーフィスをもって回避させる突進、背後の巨岩を貫通、時間差で粉砕。それを七つ行い漸く減速。体を捻り反転、岩に足を立て大煙を穿ち現るオーフィスに翔ける。
激闘。
右突きを左手甲で逸らし左手で手刀、拳と拳をぶつけ裏拳を弾きフックを打ち、拳を受け止め流し左拳。白刃取りに双拳撃ち込む。身を回して避け肘打ち半身逸らしてチョップ。左拳を右手で流し左肘で弾く、打ち技突き技打ち技突き技打ち技突き技打打突打突打突打打突打突打突打突打突打打打突打突突打突打打突突打突突打突突突打突打打突打打打突突打打突──────殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。
暴虐的な力の金剛。
数千の攻が一撃で交わる。
加速する闘志、限りなき成長、意地でも終わらせないとどんどん強くなる波動。
───どうすれば勝てるかではなく、なにがなんでも敗けないように戦う二人。
顎を狙う蹴りを躱し、しなる腕の鞭を防ぎ、まっすぐ突かれる右拳が交差する。互いに同時にジャンプ。
力と技を競い合いながらイクサは実感していた。
一撃一撃打ち込むごとに研ぎ澄まされていく本能、今迄届かなかった場所に手が伸びる感覚を。今この時、一秒一瞬で高まる純粋な衝動。
オーフィスも感じ取っていた。
段階を超えて強くなるイクサのオーラを。視認できないオーラが広がりオーフィスすらも呑み込んで外界を染め上げる。難しい事は関係無い、分割された“身勝手”が戦いのみに集束されていく。無駄な感情を薪に変え、やがて自我すら灰に変える程に燃え上がらせる。
「!?」
「ッッ!」
驚愕するオーフィス。つい数十秒前なら防ぐしかなかった攻撃をイクサは弾いた。それどころ『お返し』にと膝蹴を腹に打ち込んできた。
「ッッてぇ!」
オーフィスも負けはしない。更なる“蛇”の恩恵、無限大がより強くなり体が悲鳴をあげる。不変の
───それでも我は、イクサに勝ちたい…!
強い感情による力の上昇、想いのチカラがオーフィスに。両手を突き出し黒のオーラを放ちイクサを押し退ける。
吹っ飛ぶイクサの先、その更に上位置に転移魔法で移動。両手を掲げ漆黒の小太陽を形成、投げ放った。漆黒の小太陽はイクサを呑み込み降下する。
すぐに漆黒の小太陽が爆散、上着が焼け落ちたイクサが姿を現わす。体を捻り浮岩の一つに着地する。一直線にイクサへ飛行するオーフィスの目が閃く。己の中に潜在する漆黒の龍気を捻り出し結集させ
ブワッと噴き出す龍の息吹。焼き尽くし圧し潰すオーラが波状放出されて降りかかる。
「……っ」
ブレるイクサの両腕。イクサは己の頭上に両腕で防禦する。
浮岩の端々からオーフィスのオーラに朽ちて砕けて塵すら消されていくなか、防禦がまるで傘のようにイクサの場所だけ遮っている。
が、これじゃ動けない。
なんとか安全圏を作りだしているのが今の状況。この状態から動く事は不可、逃れる術も掻い潜る隙もない。そしてこの防禦法は地に足ついた事により成せる技。けれど足場にはどんどん負荷がかかる。
このままでは足場が砕け中に投げ出された瞬間。オーフィスのオーラに晒されるだろう。
今、ここで、なんとかしなければならない!
結構前から何とも言えない不快感があった。
あと一歩、あと少し、ほんの少し、その僅か少しが届かない感覚。手をどれだけ伸ばそうとも空を切る。そんな、スッキリできないもやもやを感じていた。
今、少しわかった。俺は“身勝手”を使えはするが
人は窮地に追い込まれた時真価を発揮するという。今がその
今、俺はとてもピンチだ。崖っぷちとも言ってもいい。だというのにとても心象は静かだ。冷静───と言ってもいいのかわからないが、特に焦燥とかは感じない。余分な感情が削られていくのを実感する。そして削られる感情に比例してより強くより鋭く、更に精密になっている。
───
───
───其処が頂か!!
龍の波動を突き破り進む一条の昇星。オーフィスすら見切れぬ超技巧の一撃が腹を穿つ。
「ぐぁ…!!」
吹き飛ぶオーフィス。なんとか翼を羽ばたかせ勢いを殺して着地する。一撃を受けた腹部を片手で抑え顔を上げると───
「!?」
ゾクリと悪寒、驚愕、背後へジャンプして距離を取る。
反射的な行動に、そして感情に困惑する。今味わったのはこれまで経験したことのない『恐怖』だ。
「……」
心を落ち着かせ改めてイクサへ見向くオーフィス。
「……、それ、なに?」
「……」
返事は無い。表情すら確認できない程の濃色のオーラを纏った姿。
白銀の
より鮮明になった銀色の瞳。純黒の髪すら銀色に染まり輝きを放っている。
銀閃の煌き、“身勝手”此処に極まる
注意。
イクサの“身勝手”とドラゴンボール超の『身勝手の極意』は設定がわずかながら違います。
「独自設定」タグもありますので予めご了承ください。
次話は今日中は多分無理です