天災兎と猫博士   作:四季の歓喜

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前書きで書いたネタを、色々と改良しながら仕上げてみました。

ただ、暫く原作漫画読んで無かったら上に、彼の年齢設定を変えたから、口調が違和感だらけかもしれない…;


プロローグ

 そいつは、唐突に現れた。

 

「ふーんふふーん、るるらら~♪」

 

 いつも訪れる近所の公園の、いつも座ってるベンチ。いつも自分以外は誰も居ないので、自然と特等席扱いしていたその場所に、奇妙な奴が居座っていた。

 

「たらりらら~、る~ららら~♪」

 

 間の抜けたメロディーを口ずさみながら、膝に乗せた黒い猫マークが描かれたノートパソコン、そのキーをリズミカルに叩くその男。外見はニ十代前半、顔つきと体格は可も無く不可も無く至って普通のそれ。ただ、まだ春とは言えそれなりに温かいこの時期に白衣を身に着け、頭には猫の耳を思わせるヘッドギア。更に肩には、何故か子猫サイズのライオンのぬいぐるみを乗せていた。

 自分も小学生にして、家族を含む周りの人間に変人だの化物だの言われているし、それを気にしたことなんて一度も無かったが、この男よりはマシだと思う。

 

「おい、お前」

「ん?」

 

 声を掛けると、そいつはこっちに顔を向けた。ただ、その手は休まることなくキーボードを叩き続けたままである。まぁそれはともかく、こいつが座っているこのベンチは、自分のお気に入りの場所。退屈な学校をこっそり抜け出し、このベンチでパソコンを開いて時間を潰すのが最近の自分の日課になっている。勝手に決めた事とは言え、やはり見ず知らずの奴にその場所をとられるのは癪である。故に…

 

「邪魔」

「あぁ、ごめんよ」

 

 一言謝ると、そいつはベンチの真ん中から端っこに移動した。そして、それっきり視線を自分のパソコンへと向け直し、それっきりこっちには見向きもしなかった。

 

「ちっ」

 

 本当はベンチからどけと言ったつもりだったけれども、これ以上目障りなだけの有象無象に声を掛けるのは面倒だ。この公園にはベンチは目の前の一つしか無いし、今から他の場所を探すのは面倒だ。仕方ないから、妥協して反対側に隅っこに座ることにした。

 持参したパソコンを取り出し、電源を入れる。改造した愛用パソコンは一瞬で起動し、並の人間では処理しきれない大量のデータが一斉に表示される。だが自分はその全てを把握し、理解することが出来る。自分の頭脳、それら用いて集めたデータ、その全てをつぎ込んで作ろうとしているモノがある。それを完成させることこそが、退屈なこの世界に生まれた自分にとって唯一の…

 

「へぇ、面白いもの作ろうとしてるね」

 

 ふと聴こえてきた声に、思わず手が止まる。

 

「うんうん、良いね、素晴らしいよ。しかも、夢を夢だけで終わらせないだけの頭脳も腕もあるみたいだ。少なくとも、無駄に食い続けたご飯と年の数以外に誇る物が無い馬鹿な大人達よりも、実に面白いよ」

 

 まさかと思いつつもデータの整理を中断し、自分のパソコンを徹底的に調べてみる。すると、本来なら気付かないであろう僅かな痕跡だったが、見つけてしまった。

 

 一流のハッカーですら侵入不可能な筈の自分のパソコンが、ハッキングされた形跡を…

 

「極めつけに、ネーミングセンスも良いね。インフィニット・ストラトス…無限の成層圏とは、考えたね」

「ッ!?」

 

 咄嗟に顔を向けると、件の男が黒猫マーク入りのパソコンの画面をこちらに向けていた。そこに映し出されていたのは、まさに今、自分のパソコンに表示されていたデータの数々。それを理解した途端、思わず目の前のとぼけた顔をした男に殴り掛かっていた。

 

「おっと、危ないなぁ」

「お前ッ…!!」

 

 男は飛び退くようにして立ち上がり、拳はあっさりと避けられ、代わりに叩き落とされたベンチにへこみを作った。男は、女子小学生にしては随分と凶悪な威力に少し驚いたようだが、逆に言えばそれだけのようで、相変わらずヘラヘラしている。

 

「まぁまぁ落ち着いて、勝手に見たのは謝るよ。本当にゴメンね」

 

 自分がパソコンに施したセキュリティーシステムは世界中を探しても、自分以外の者には絶対に破れないと自負していた。それを目の前のコイツはほぼ一瞬で破り、誰にも立ち入ることを許していない自分の聖域に土足で踏み込んできた。誰が何と言おうが、自分のプライドと夢を踏み躙ったコイツを、許す気は無い。

 取り敢えず、まず手始めに、そのとぼけた顔面を原型留めないくらいに殴打して…

 

「ここに居らっしゃいましたか、ご主人様」

 

 飛び掛かろうとした刹那、突如として響いた第三者の声。振り返ってみると、そこには…

 

「なに、そいつ…」

 

 思わず、そう呟いてしまった。一見すると、身長は自分より一回り以上小さく、下手すると幼稚園児な黒髪ショートの女の子。ただし、頭には猫耳。そして身に着けているのはメイド服なのだが、袖とスカートの端に小さな電灯のようなものが付いていた。なんだか全体的なフォルムもあって、小さなシャンデリアに見えなくもない。

 

「やぁニニちゃん、良くここが分かったね」

「私はあの不出来な姉とは違うのです。一流のメイドたるもの、何も言わずに行方をくらませたご主人様を探し出すなんて初歩中の初歩、造作も御座いません。ところで…」

 

 そう言って、主人と呼んだ件の男からこっちに目を向ける謎の猫耳メイド。暫しこちらをジッと見つめたかと思うと、視線を再び男に戻して口を開いた。

 

「ご主人様、幼女趣味にでも目覚めましたか?」

「ちょっと待とうか」

「貴方が犯罪行為に手を染めるなんて今更過ぎることですし、人の性癖に口を出すつもりはありませんが、私、ぺド野郎に仕えるのはちょっと…」

「いや違うから、そして君も露骨に距離を取らないで…」

 

 これが俗に言うロリコンなのだろうか。成程、確かに気持ち悪い。大抵の人間は興味が湧かないので邪魔に感じる時はあれど、居ても居なくても気にならない。コイツはむしろ消えて欲しい。て言うか、近寄らないで欲しい。

 

「とまぁ、冗談はここまでにしましょうか」

「本当に冗談って思ってる? 少なくとも、その子は本気にしちゃってるっぽいんだけど…」

「それよりもご主人様、お気づきですか?」

「え、何に?」

 

 猫耳メイド…ニニと呼ばれた少女の言葉に男が首を傾げた、その時だった…

 

「私達、囲まれております」

 

 スーツとサングラスを着用した、いかつい男達が複数、どこからともなく現れた。そしつらが一斉に、自分ごと男を無言で取り囲み、睨み付けてくる。

 

「これはこれはアメリカ政府の皆さん、こんにちわ」

 

 物々しい雰囲気とは裏腹に、男は依然とヘラヘラしたままだった。それどころか、この状況にも関わらずパソコンの操作を再開する始末。顔を彼らに向けたまま、キーボードを叩き始めた。ニニに至っては、暢気に欠伸をしていた。二人とも、緊張感の欠片もない。

 

「あれ、無視? 酷いなぁ、挨拶は大事って教わらなかったの? まったくもう、これだから最近の若い人ってのは…」

「ご主人様、まだ20にも満たない貴方は、若者通り越して青二才のガキです」

「そう?」

 

 そんな二人の態度に苛立ったのかは分からないが、スーツの男達は一斉に拳銃を取りだし、それらを突きつけた。これには流石に焦ったのか、男は目に見えて動揺していた。

 

「うわわ、ちょっとちょっと危ないなぁ、いきなり過ぎでしょ!? こういう時は普通、銃を向ける前に降伏勧告とかするもんじゃないの!? 挨拶とお約束は大事だよ、ねぇ分かってる!? そもそも、無関係な通りすがりの女の子巻き込んじゃってるじゃん、プロ失格だよ君達ぃ!!」

「無関係な人間を巻き込むことに関しては、ご主人様に何かを言う資格は無いと愚考致します」

「ニニちゃん辛辣ぅ!!」

 

 その時だった。明らかに物騒な奴らに囲まれたこの状況で、コントみたいなやり取りをしつつ、オーバーなリアクションを見せ続けるこの変人と一瞬だけ目が合った。

 そこに来て漸く自分は…篠ノ之束は、気付くことが出来た。否、気付いてしまった。そのことに向こうも気付いたようで、ヘラヘラとしていただけの表情が、更なる笑みを浮かべていた。しかし、すぐに視線を周囲を戻し…  

 

「あぁもう、そりゃあ勝手にペンタゴンから機密情報を抜き取ったのは悪かったよ。でもさ、別に良いでしょ、あんな玩具以下なガラクタの設計図ぐらい見たって。むしろ、こっちは最新型の試作機とか銘打ってるもんだから期待してたのに、いざ入手してみたらクソ過ぎて凄くガッカリしたんだから、無駄にした労力と時間を返して欲しいくらいなんだけど」

「それは心外だな」

 

 新たな声と共に、スーツの男達をかき分けながら誰かが出てきた。そいつは、白衣を身に着けた、初老の男性だった。

 

「誰?」

「君がガラクタと称した兵器の、開発責任者だよ。まぁスミス博士とでも呼んでくれ、坊や」

「へー、そうなんだ」

 

 傍から見れば、大人らしいとても穏やかな口調だが、頬が若干引き攣っている辺り、男の言葉に相当腹を立てているのだろうスミス博士。けれど、男は大して気にした素振りも見せない。その事に、余計腹が立ったのだろうか、先程よりも幾分大きな声で博士が言う。

 

「ハッキングの腕は認めよう。だが、ド素人の分際で我々の作品にケチをつけるのはやめて貰おうか。あれは、アメリカ合衆国の未来を背負う傑作なのだ。本来なら名前を知るだけでも重罪な代物だが、しかしバカと鋏は使いようと言ってな、政府は君の腕を買っている。もしも我々に協力すると言うのなら、君の犯した罪は不問に…」

 

 パタンと、博士の言葉を遮るように閉じられたノートパソコン。男は先程と変わらない、ヘラヘラとした笑みを浮かべたまま、ただ一言、こう告げた。

 

 

「笑わせるなよ、アメ公」

 

 

―――その瞬間、スミスの身体が浮いた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「な、なん、だぁ!?」

 

 驚愕に目を見開き、ジタバタと宙を浮きながら暴れるスミス博士。突然のことに、彼らを取り囲んでいたスーツの男達もポカンとした間抜け面を晒しながら固まっていた。大抵のことに動じない束でさえ、目の前のことには空いた口が塞がらなかった。

 無理も無い、天災的な頭脳を持つからこそ、一目で彼女には分かってしまったのだ。目の前で繰り広げられるこの光景は、トリックの類では無い事に。 

 

「友達にエスパーの女の子が居てね、再現してみたんだ。使ってみて良く分かったけど、超能力って本当に便利」

「ッ、うわああああぁぁぁ!?」

 

 言うや否や、立ち上がって軽く手を振るった途端、スミス博士はまるで何かにぶん投げられたかのように勢いよく遠くへと飛んで行った。そして、絶叫しながら飛んで行った先にあったゴミ捨て場に派手に突っ込み、静かになった。

 

「コイツ、何をした!?」

「ふ、ふざけやがって!!」

「クソ、やむを得ん。負傷させても構わん、捕らえろ!!」

 

 我に返ったスーツの男達が、彼を取り押さえようと一斉に飛び掛かる。しかし…

 

「ニニちゃん」

「かしこまりました」

 

 横から飛んできたニニのドロップキックが、彼らを一人残らず吹き飛ばす。小柄な体躯からは欠片も想像できないその威力に、大の男達は悲鳴を上げながら地面へと叩き付けられた。

 

「私には、自慢の特技が3つあります」

 

 そう言ってニニは、メイド服のポケットに両手を差し込む。

 

 

「一つ目、お姉さまに教えて貰った編み物 (ただしマフラー限定)」

 

 

 ゆっくりと抜き出した右手には、小型のガトリングガンが装着されていた。

 

 

「二つ目、ミー様に指導して頂いた料理、そして三つ目…」 

 

 

 続いて抜き出した左手には、自分の小柄な体躯よりも数倍は大きい大剣が握られていた。

 あの小さなメイド服の、更に小さなポケットには明らかに入りきらない、見るからに物騒な二つの凶器。それを前にしてスーツの男達は、驚愕と恐怖で軽くパニック状態に陥り、血の気が失せたかのように顔色が真っ青になっていた。だが、そんな彼らに対して、歯を剥き出しにした凶悪な笑みを浮かべながら、彼女は告げる。

 

 

「お義兄様に仕込まれた、ケンカです」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 嗚呼、本当に凄い。こんなにワクワクしたのは、いつ振りだろう?

 

「ねぇねぇ、お兄さん」

「ん?」

 

 最初は、ただ他の有象無象よりも面倒でウザったい、気持ち悪いだけの変態かと思ったけど、とんでもない間違いだった。

 

「私の名前は篠ノ之束」

 

 良く考えればハッキングの腕もそうだし、さっきの念力モドキだってそうだ。あんなの、世界中探しても誰にも作れない。自分なら作ろうと思えば作れるが、逆に言えばそれこそ自分レベルの…本物の天災レベルでなければ作れないだろう。

 それに、どさくさに紛れて解析してみたのだが、さっきから縦横無尽に暴れまわってスーツの男達を蹴散らす猫耳メイド。アレは、人間では無かった。自分なら、アレと同じような性能を持つ代物は作れると思う。だけど先程の会話と言い、雰囲気と言い、あそこまで人間染みた言動をさせることが、あそこまでリアルな人間の心を持たせることが、果たして自分にできるだろうか。

 いや、悔しいがやはり今の自分では無理だ。

 

「お兄さんは名前、何て言うの?」 

「僕の名前は…」

 

 妹、親友、親友の弟。自分が心を向けていたのは、この3人だけだった。この3人さえ居れば、後はどうでも良かった。だけど自分に匹敵、あるいは凌駕する頭脳を持つであろうこの男を前にして、そんな考えは一瞬で吹き飛んだ。

 それに何より先程目が合った時に気付いたのだ、彼の目に宿る狂気の光に。自分の欲求に従い、それを満たす為ならば常識も、倫理も、道徳も、あらゆる全てを蹴散らし、やりたいと思ったことは最後までやり遂げる。無邪気で狂気的な、強固な意志。

 

 

「コタロー、ただのコタローだよ」 

 

 

 彼は間違いなく、私の同類だ。

 

 




○コタロー(高校生)
 滅茶苦茶な奴らに囲まれ、波乱万丈な幼き日々を過ごし、たくましくなった今も自重することなく好き放題やってます。成長した現在、体力は人並み程度に、頭脳は輪を掛けて凄いことに。青春チックなとある目的の為、旅をしてる最中。

○ニニちゃん
 ナナちゃんの妹として、コタローがゴミ捨て場のシャンデリアで作ったお世話ロボ。素材が素材故にサイズはお姉さんより大きく、お姉さんの時より真面目に作ったので、お世話ロボとしての性能は完璧。ついでに周りに影響されまくった結果、戦闘能力もツンデレ属性も完備。宝物は、お姉さんにプレゼントしてもらったマフラー。因みに、萌え系獣人チックなデザインは、最近のコタローの趣味。

○ライオンのぬぐるみ
 彼です、寝てるんです、ボディがバイオメタルに変わってるんです。出番はその内…
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