ご主人!ご主人!Playmakerって安直過ぎません?   作:エネミー

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4日 記憶

 

 

 

ご主人とハノイの騎士のリーダー、リボルバーを追いかけ、スピードデュエルをしている二人を見ていたが、凄いデュエルだったと言っておこう。

何せ二人ともスキル、ストームアクセスを発動し竜巻の中に突っ込んで行ったのだから。勿論自分も入ることは可能だが、デュエルの邪魔をしたいわけではない。SOLテクノロジー社の緊急回線で見ている草薙さんと連絡を取り合いながら見守った。だってご主人の大事なデュエルだからな。

しかし、しかしながら、そのデュエルが引き分けになったのは良しとしよう。だがしかし、 何故そのまま次のステージに案内しようとか言ってリボルバーが巨大な竜巻の中に消え、ご主人も突っ込んで行ったのだろうか。

 

『これはこれは……ちょっと私でも入るのを戸惑う程の規模のデータストームですねー。これ実際に現実で起きたら大災害ですよ』

「入るのを戸惑う?入れるのか?あの中に?」

 

草薙さんから疑問の声が上がる。確かに疑問に思うだろう。あの中に入ろうとしても、竜巻に流されて最終的に何処かへ打ち付けられるのは目に見えてる。

けれど、己は不死だ。精神だけではあるが、この状態は精神体。つまり死ぬであろう肉体はないので、強行突破はできるのだ。やろうとは思わないが。

 

『できると言えばできますけど、痛いから嫌ですね。あと吹っ飛ばされそうです』

 

こう突っ込もうとした瞬間にくるくるーっと巻き上げられ、LINK VRAINSの何処かに飛んでいくのを除けばね。迷子になりそうなので却下する。

 

「痛いってお前……まぁ良いけど」

 

何か言いたそうな草薙さんのため息を聞き流しながら、巨大なデータストームの周りをくるくると回る。途中でボードに乗ったゴーストガールを見つけた。どうやらあの人も入りあぐねているようだ。

大災害の竜巻に入る馬鹿ではないようだ。まぁ入ったら最後、今は大丈夫でも後でフラッシュバックが来るので精神的に死ぬかもしれない。己はその心配はないけれど、目の前で死なれても目覚めが悪い。

 

『草薙さん、草薙さん。ゴーストガールを誘導しましょう!彼女も入りたそうですし、何より今、彼女のカメラの回線を乗っ取っているのでは?』

 

良い事を思いついたと言うように袖の長いジャージの中で手を合わせる。

草薙さんは自分の提案を聞くと、良い案だ!と言って作業に取り掛かる。キーボードが叩かれる音である電子音が聞こえてきたことから実行しているのだろう。

己の提案を受け入れられたのは初めてかもしれない。今までは何言っても無視されるか、呆れられて却下と言われるかどちらかだったから。

 

『まぁこの場合、ご主人に協力者がいると匂わせることになりますけど』

「それはそれだ。遊作が最優先だよ」

 

良しできた!と草薙さんがエンターキーを押した。途端にゴーストガールの前に現れるゲート。流石草薙さんである。仕事が早い。

カモフラージュ用のプログラムが自身に適用されている事を確認してからゲートに入って行くゴーストガールの元へ飛んで行く。ぴったりと背後につくけれど彼女が気づいた様子はない。むっふっふーと笑う。

 

『(流石エネちゃんです!一流の情報屋にバレないプログラムを作ってしまうなんて!』」

 

自分で自分を褒めていると竜巻の中へと出た。中は台風の目の様に風が一切なく、外と変わって静かだ。数多ある瓦礫の中の一つにご主人とリボルバーを見つける。どうやらもうデュエルをしており、ルールはスピードデュエルからマスターデュエルへと変更されたようだった。

ゴーストガールにバレないように離れて、違う場所から観戦する。あのまま彼女についていても良かったが、それでは草薙さんと話ができない。音声データが届かない場所まで離れてから、ぷはぁと息を吐いた。

 

『ふー、苦しかったぁ!何も喋らないのってとっても苦しいんですねー!』

「そりゃお前だけだと思うぞ」

 

えーそんな馬鹿な。

 

『だって話さないと私とか目玉AIとか無価値になりません?ご主人が喋らない分、話さないと賑やかになりませんて!草薙さんもあまり話さないタイプでしょう?』

「いや、そんな事はない……と、思うけど」

 

絶対そんなことある。この人フレンドリーに話ができると思いきや、親しみのある奴以外あまり話さないタイプだと思われる。一応接客業を営んでいるからか、コミュニケーションは取れるけど。まぁ自分以上に話さない奴がいたら話すがーてな感じだろう。自分の想像ではあるけれども。

 

『取り敢えずデュエルが始まった以上、私達に出来る事はありません!事の成り行きを見守りましょう』

「そうだな。遊作、頑張れよ!」

 

いや自分とは音声で繋がっているから聞こえるけど、画面の向こうじゃその応援はご主人に届きませんて。

大人なのにどこか熱い草薙さんとの会話もそこそこに、ご主人とリボルバーのデュエルへと視線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

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『じゃーん!これが俺様の真なる姿!どうだ?プリチーだろ?』

『ブサイクですね』

『……可愛いだろ?』

『不細工ですね』

『何だと!このなんちゃってAI!!』

『その言葉、そのままそっくりお返しします!!』

「あー、はいはい。帰ってきて早々喧嘩すんなよ、もう……」

 

溜息をつく草薙さんに免じて今日はこのぐらいにしといてやろう。目玉じゃなくなったAIに向けて、あっかんべーをしてやると仕返しをされた。現実空間に投影されていなければすぐさまこの袖で殴っていた所だ。普段口がないくせにこういう時だけ作るとか、どんなんだよ。意地っ張りか。

リボルバーからデータを取り返した目玉AIはついに本来の姿を取り戻し、目玉ではなくなった。デュエルディスクからデータを投影して本当にいるように見せてるのは何なのだろうか。自分にもできるか、と言われたらできそうではあるけれど……あの場所は目玉AIが人質として閉じ込められている場所なので確かめようもない。

 

『それで取り戻したのはその姿データだけなんですか?』

『おうよ!これで色々できるってもんだ!』

『……ご主じーん、目玉だけじゃなくなったくせにまだ馬鹿なんですけどー?このAI』

『まだバカってなんだ!バカって言う方がバカなんだぞ!』

「元からだ」

『遊作まで!?』

 

ふっふー、今回も私の勝ちですねー!と得意げにしてやると、くっそー!と両手拳を空に突き上げるAI。仕草がいちいち子供っぽいよな、AIのくせに。

 

「今回取り戻したデータはそれだけじゃないが……特殊なプログラムで解析ができない」

『解析ができない?どういうことです?』

「我々がよく知るプログラムと根本から違うってことだよ、エネちゃん」

 

成る程、特別仕様というわけか。イグニスとか呼ばれるこのAIは確かに他に類を見ない、意思を持つAI。ならばそのデータが解析、あるいは破壊されないようにと本来存在し得ないプログラムを一から作り出したということか。

既存のパソコンとかじゃ処理できないんだろうな、きっと。いやわかんないけどさ。

 

「だから、此奴に解析させる」

『えっ、俺!?』

「他に誰がいる?」

『そうですよー!元々は貴方のデータ、解析できないはずがありませんて!』

『いやまぁ、そうだけどさぁ……』

 

そんな事を言いながらデュエルディスクの中に沈んで行く彼に、首を傾げた。何か不都合なことでもあるんですかねー?と笑顔でも浮かべながら。

音声データを彼にだけ届くように設定する。あのデュエルディスクとはここのハードとリンクしている為にデータを送るのは簡単だ。ただスピーカーに出ないように、ご主人達に聞こえないようにしなければいけないが。

 

『何か不都合な事でも?』

『うっ』

『あるみたいですねぇ。無理に話せとはご主人も草薙さんも、もちろん私も言いませんが……いつかは話した方がいいですよ?』

『そりゃ、わかってる……けどさ』

 

ごもごもと口を噤むAI。意思を持つという事は感情を持つという事、データであること以外は人間となんら変わらないモノを持っているのだろう。プログラミングされているモノ以外のはわからないが。

けどと言いながら、続きを話そうとしない彼にため息を吐いてから首を振る。別に良いと、無理に話さなくて良いと言ったばかりだし。

 

『ま、貴方のデータを解析するという事は貴方のプライバシーを侵害するという事。AIとしてデータとしてしか今はご主人は見てませんが、いつかはちゃんとAiとして見てくれますよ、きっと』

『エネ……』

『けどそんな事エネちゃんにとってどうでも良いことです!データよこしやがれください!!』

『んな殺生なー!?』

 

あーれーーー!とわざとくるくる回るそれから今回得られたであろうデータを引っ張り出す。気分はお代官様。

というかこのデータ、もう解析されてるじゃないか。しかも動画とは……このハードで再生できるのだったら良いが、特別仕様のモノだ。バグが起こらないように細心の注意をしなくてはならない。

 

『もう!このツンデレさん!デレるなら最後までデレてくださいよ!バグでも起きたらどうするんですか!』

『いやだって俺、こっから出られないし?そこのハードの事知らないし?しかたなくなぁい?』

『動きも相まってウザさ倍増ですね』

『褒めてくれちゃってまぁ』

『ま、今回は水に流してあげます』

『お?』

 

片眉をあげるAiは言い争いに乗ってこなかった事を怪訝に思っているのだろう。そんな彼にため息をついて、袖の付いた服をご主人に向けた。データもそっちに流れて行く。

 

『ご主人に丸投げしますので』

『丸投げすんのかよ!?』

 

驚くAiを余所に、データに気づいたご主人と草薙さんの目の前の画面に移動する。ヤッホー!と腕を振った。

 

『私が彼から取ってきましたよ!けど解析済みとは言え、このハードで見るにはもう少し手を加える必要があります』

「何?」

『私にもできないことはありませんが、面倒なのでパース!ご主人と草薙さんの腕の見せ所ですよー!』

「そこは最後までやってくれよ……」

『文句は全て元目玉AIちゃんに宜しくお願いしますね!』

『とばっちりが過ぎる!!』

 

なんなのもー!と叫ぶ‪Ai‬を放っておいて、素早くキーボードを叩く二人を見る。やはり凄腕のハッカーだな、と感心する。自分がこれをしたら腕というか、指が攣る自信がある。この姿ならそういう作業も必要ないので、攣るなんて事にはならないと思うけれど。

 

「よし、これでどうだ?エネ」

 

草薙さんが先程のデータを見せてくる。ふむふむ、良くできてる。これならば拒絶反応的なのも起きないだろう。しっかりと隅々まで確認してから、OKサインを出す。よし、と草薙さんは握り拳を作った。

 

『あ、でもでも!元々高度なプログラムを無理矢理落とし込んだからか、画像解像度は粗いですねー』

「問題ない」

 

ご主人は一言だけそう告げて、再生ボタンを押した。途端に流れる画質の粗い映像。わかるのは映像が忙しなく左右に動いているのと、その先にはハノイの騎士と思われる人物がいる事。というかあの、特徴的な仮面ってさっきまで嫌と言うほど見てた奴だ。

 

「リボルバー!」

 

めでたくご主人がライバルに認められた相手である。全然めでたくも何ともないが、引き分け続けているとは言え、実力で言えば彼方の方が少し上で、運命力で言えばご主人の方が上だ。まぁ運も実力のうちともいうので、実力は拮抗しているのだろう。ライバルと言っても良いけれど、たった二回しか戦ってない事をわかっているのだろうか。

そんなご主人のライバル、リボルバーがクラッキング・ドラゴンを此方に嗾しかけ、口を大きく開けたと思った瞬間に映像が途切れた。どうやここまでのようである。

 

『ふむ、どうやらAiさんの記憶らしいですね。途切れてるって事は気を失ったか、記憶データがここまでって事ですね』

「Aiがリボルバーにやられる瞬間か。よく生き残ったな」

『ふっふーん!俺様は優秀なAIだからな!運良く残った目玉に記憶以外の大部分を移動させたんだぜ!多分!』

『それ、自信満々に言う事じゃないですよ?それにAIは運には頼らないんでしょう?』

『頼らないけど、起こったラッキーに便乗しても良いだろ!朝の星座占い信じるわけじゃないし!!』

『え、私は信じますけど?』

『信じるのかよ!?!?』

 

AIの癖に!?と何故か嘆いているAiにくすくす笑いながら、ご主人が見ているモニターの前へと躍り出る。さっきから映像を繰り返し見ているご主人をやめさせる為だ。ったく、よくハッカーなのに目が悪くならないものだ。ハッキングする時は、草薙さんもご主人も画面を食い入る様に見ているというのに。

 

『ほらほら!もう!お子様はおネムの時間ですよ!』

「俺は子供ではない」

『はいはい、高校生も充分子供です!草薙さん、運転よろしくお願いします。私はシャットダウンさせておきますので』

 

勿論、ファイル整理はお任せください!と笑顔で言うと、頼んだと言った後に草薙さんは運転席へと移動した。それを確認してから

まだ見ようとするご主人の抗議の声を遮ってシャットダウンした。まぁそうすると自分がここにいられなくなるので、ダウンさせたのはご主人が見ている画面だけだが。上の画面に移動して、画面の向こうにいるご主人に視線を向ける。

 

『そんな不貞腐れないでください。ご主人は明日も学校でしょう?ハノイの騎士にかまけて留年になったら、草薙さんに申し訳ないないですよね?』

「…………そうだな」

『そうです!そうです!それに、寝不足で倒れてもいざという時に動けなかったら本末転倒。休めるときは休み、働けるときは働く。それが大人ってものですよ?ご主人』

 

体調管理は基本中の基本です、と腰に手を当てて怒ったように言えば頷くご主人。彼は草薙さんには大概甘いが、最近自分にも甘くなってきてくれたようで嬉しい。最近っても、Aiが来る前からだが。

仮眠の体勢に入るご主人を見届けて、一画面以外のディスプレイをシャットダウンさせる。いつまでも起動していると、容量が悪くなる。ハッカーなんだからスペックの低いものを使っているわけではないが、その分排熱量が高くなるというものだ。車ということもあってそれは大きい。同時に動かせば尚更。

最後の一つで今回会得した情報を整理してまとめておき、ロックされておりカモフラージュが完璧なハノイの騎士関連のファイルに入れる。うんうん、これで大丈夫だろう。

 

『ご苦労様なこって』

『貴方と違って表に出ませんからねー。こうする事しか役に立てないんですよ、私は』

『表に出たら良いじゃねぇか?Playmaker様のAIとしてさ』

『それは貴方の役目でしょう?イグニスさん?』

『俺にはAiって素敵な名前があるんですぅ!』

『おや、そんなに気に入ってたんですか?それ。少しは可愛げがあるんですね?』

『うるせぇ!!このポンコツAI!!』

『盛大なブーメランですね!!それ!!!』

『俺は優秀なんですぅ!何処の馬の骨と分からない相手とは違うから!』

『むむむむ!!それは貴方の方でしょう!突然現れた意思を持つAIだなんて怪しさ満点です!!疑う余地ありありです!突然現れて協力しますとご主人に言ったエネちゃんぐらいですね!』

『いやそれ、お前も怪しいじゃねえか!!ブーメランじゃん!?』

「五月蝿い、黙れ」

『『アッハイ』』

 

寝惚けてるご主人怖ーー!!!

 

 

 




気まぐれ更新にもほどがある、一年ちょっと遅れて更新。
もう第2シーズン終わってんじゃねぇか!!!!
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