Apokaiypse des Gott der Unterwelt 作:ムリエル・オルタ
その願い、叶えよう。
「ココか…」
目の前には大図書館より下にある地下へと続くドア。その先にレミリアの言っていた実の妹フランドールが待っているのだろう。僕はドアに手をかけ、押す。すると、見た目は木で出来ているにもかかわらず重く、錆びたように『ギ……ギギギ………ギィ』と不快な音を立てて開いた。中に入ると其処は薄暗く、最低限の照明に留められていた。
「照明が殆ど無い上に階段とは…………。もうコレ罠でしょ。はぁ、Mコード:炎」
愚痴りながら発動したMコードによって辺りが見えやすくなった。そもそも今回のMコードは用途が違う。今回のMコード本来の使用目的は害虫駆除だ。地獄でもある時期になると毛虫やら何やら、とにかく虫が大量発生する。前世僕が考えていた地獄とは異なり、ある程度景観を気にするので葉を食べる虫は害虫その物だった。それを一気に駆除するために生み出されたのが今回使ったMコード。て言うか、そもそもMコードって日常生活を便利にするために創った魔法であって本来は攻撃等の戦い目的では無いんだよなぁ。オーディンが調子に乗って攻撃系も創ったけどさぁ。
そうこうしている内にフランドールの居る部屋の前に居た。
「っと、ココがフランドールの居る部屋か。中は明るいと良いなぁ」
等と希望を述べるが多分位だろう。ココまでの道のりよりは明るいだろうけど、結局暗いだろう。そんな事を考えながら中に入る。中はむき出しの岩で創られたレンガばりの壁、至る所に血のような跡が付いている。
「またココは……………。随分と血の匂いがする」
「新しい
ぽつりと呟いた僕の言葉にかみ合わない返事が返ってくる。返事が返ってきた方向を向くと其処にはレミリアと似たり寄ったりの格好をした少女が居た。暗くて分かりにくいが羽はまるで枝に色とりどり結晶を付けたようだった。そして僕はそんな彼女の物騒な言葉を指摘する。
「出会い頭に玩具は酷いな。僕は君と話しに来ただけさ」
「ふーん。どうでも良いよ、お話なんて。どうせすぐに壊れちゃうんだから」
そう言って彼女は楽しそうに口を歪め、呪文のように言葉を発する。
「きゅっとして」
「壊れる…………ね……………」
「どかーん」
彼女の言葉と同時に僕の頭がはじけ飛ぶ。脳漿が飛び散り壁にへばり付く。肉片が散乱し影を落とす。新しい血の匂いが部屋に充満する。僕の体が重力に従い地面に倒れる。
「はぁ、やっぱりすぐに壊れちゃった。積まんないの」
『つまんなくて悪かったね』
「え!?」
彼女は驚いたように声を上げ辺りを見回す。しかし、周りには地面で倒れている僕以外居ない。混乱している彼女をよそに僕は立ち上がった。頭蓋骨は修復させたから大丈夫。まぁ、喋れないけど。そんな訳で僕は彼女の脳に直接語りかけている。
『君は狂気に染まりきっていない。まだ、助かる』
「何を言っているの!?もう、訳わかんない!」
その言葉と同時に彼女は手に炎を纏った剣を出した。アレは魔力の集合体だろうか?それにしては質量があるし…。面白い。
彼女は混乱して剣を振り回す。その混乱ッぷりは僕の頭が頭蓋骨だけである事を指摘しないくらい混乱している。その所為か剣は狙いが定まっておらず壁や床を傷つけてゆく。
『このままではココが崩壊してしまう。話し合いは精神世界で行おうじゃないか』
「え?――――――――」
それと同時に全てが暗転した。
~精神世界~
真っ白な世界だった。上も下もなく、重力すら感じない。そんな世界の中、僕は彼女を見つけた。彼女はうずくまり、泣いているのか時々啜り泣く声が聞こえる。そしてそんな彼女の周りを何か黒い霧状のモノが纏わり付いている。
「成る程、それが君の狂気の原因と見た」
「貴方は誰?」
僕の呟きが聞こえたのか、彼女は泣いた所為で腫れた目で此方を見ていた。
「僕かい?僕はアダム・タルタロス、しがない人外さ」
「そうなの、私はフランドール・スカーレット。長いからフランで良いよ」
「そうか、フラン。それで、君はいつまで閉じこもっている気だい?」
僕の言葉に彼女――フランの方がビックッと震える。
「何時までも閉じこもっていられるわけがないだろう。フランがこのままで良いなら良いけどいずれその狂気はフランを蝕みフランドールとしての人格を飲み込んでしまうよ」
「いいの。私はもう見たくない。お姉様や咲夜、パチェが頑張って居るのに、私の意思で動かない体。見ているだけなんて辛い。だったら消えた方が良い」
そう言ってフランはもう一度蹲った。長年狂気に犯され続け精神が摩耗しておらず、そして他者を気遣う事が出来る。そんな君が消えるのは惜しい。
僕はフランに近づき頭を撫でる。フランの狂気が僕に纏わり付く。それと同時にフランの狂気を伝い色々な記憶が流れてくる。幼くして地下に閉じ込められたこと。理性では納得しても心では納得できず何ヶ月と涙したこと。意識が戻れば手は血で汚れ、誰のか分からない血肉がそこら中に散乱していたこと。覗覚以外が全て狂気で支配され、大切な人に牙を剥く辛さ等など、様々なモノが狂気を経由して流れてきた。
それを認識すると同時に視界にもう一人のフランを見つけた。見た目形はフランだが、色は黒塗りで黒曜石で出来た彫刻のようだ。
「君がフランに巣着く狂気かな?」
「えぇ、私は彼女の狂気。いわばもう一人の彼女。彼女は覗覚以外を私に明け渡した。でも、私が許さないわ。だから覗覚だけは絶対に彼女の手の中に有らせた」
「ほう………」
どうやらこの狂気にも感情があり、思考することが出来るようだ。そんな狂気は一体何用で僕の前に姿を現したのだろうか?
僕がそう考えていると狂気が先に口を開いた。
「私を殺して」
「ほう、してその理由は」
僕は地獄の神にして奈落の神。理由もなく感情、しかも能力による産物だろうと殺すことは許されない。いや、許してはならない。だからこそ、理由を聞かなくてはいけない。
「私は彼女に現実を受け入れて、能力と向き合って欲しいが為に覗覚を彼女に分け与えていたわ。でも、それが原因で彼女の心は崩壊寸前。そして、飢えてしまった」
「食事は記憶を見る限り貰っているが?」
「違うわ。食の飢えではなくて、
愛、生前から僕が唯一理解できなかった感情。それに飢えていた。いや、考えようによってはそうか。
「確かに、生まれて殆どすぐに地下牢に閉じ込められ、まともに愛されるわけが無いな。それで、愛に飢えていると」
「えぇ、だからお願い。彼女を救って。確かに貴方はこの感情を理解できていないのかもしれない。でも、良いの。彼女のそばに寄り添える。そしてもしもの時は止めることの出来る貴方だからこそ私は選んだの。お願い、
はぁ、ココまで言われてしまえば断る事は出来ないな。
「分かった。僕で良いならその役引き受けよう」
「そう、ありがとう。介錯をお願いするわ」
そう言って狂気は巣の場で目を閉じた。それに合わせ僕は手の中にガーベラストレートを出し、狂気の首を切った。
それと同時に役目を終えた精神世界も消えてゆく。
「フラン、次に目が覚めたら君は自由だ。そして、僕が寄り添ってあげよう。君が一人で………いや、君たちが笑顔で僕を見送ってくれる用に」