艦ムスと深海棲艦と時々BETA   作:fire-cat

14 / 21
第9話:拠点改装―内装編―

「提督、起きてください。提督、提督ってば。大変なんですよ」

 熟睡している提督を揺さぶる蒼い髪が印象的な影。

「……後3分待って。ラーメン……」

 寝ぼけている提督。

「て、い、と、く。お、き、て」

 その声に薄らと目を開ける提督。揺さぶる影を見つめ、

「夢か……」

 手をつかみ布団に引きずり込む。

「きゃ。ちょ、はなして……」

 布団の中で一頻りもがくも、次第におとなしくなる。

「……提督(あ、でも暖かいかも、私も眠くな…)」

 暖かい存在を抱きしめ再度眠りにつく提督と五月雨。

 

「提督! 起きなさい!」

 黒髪の女性が怒気を孕む声と共に布団をめくりあげる。

「!! なっ! 五月雨ちゃん! 大丈夫!?」

 抱きしめられたまま身動きできない態の五月雨。

「う……ん。あ、大淀さん、おふぁようございますぅ。どうしたんですか?」

 寝ぼけながら体を起こす五月雨。大淀が素早く服装を観察する。

 大きな乱れもないようですし、暴行されていた訳ではないようですね。と安堵する。

 同時にもう一つの理由に思い至り、沸々と怒りが沸いてくる。

「……五月雨ちゃん、貴方、何しているのかしら? 私は提督を起こす様にお願いしましたよね」

 その怒りを孕み震える声に五月雨の意識が戻ってくる。

「あ……」

 次第に青ざめる五月雨。

 五月雨を寝室から連れ出す大淀。

「良いですか、五月雨ちゃん。貴方が『お嫁さん達』の一人であったことは昨日に説明を受けています。そのことには何も言いませんが、早速提督の布団に潜り込むのは如何なものでしょうか? そもそも――」

 涙目で五月雨が大淀の説教を受けている最中に提督が目覚める。

 隣から聞こえる声に気付き部屋を出る。

「あ、提督」

 五月雨が気付く。

「提督! これはどういうことですか。五月雨ちゃんのような少女を布団に連れ込み抱いているなんて、憲兵事案ですよ。大本営に発覚したらどうする御積りですか!」

 大淀の声に心当たりがある提督。

「あ~。寝ぼけて引きずり込んでしまったのか。道理で温かく眠れたわけだ」

「提督!」

 火に油を注ぐ言葉に大淀がヒートアップする。そこに更に

「ところで、うら若き女性が朝から男の部屋に入り込むのは感心せんな」

「――――!!」

 大淀が真っ白な感情になったままに提督の頬を張る。

 

 真っ赤に腫れ上がる頬に水に濡らしたタオルを当てる提督。

「申し訳ありません。上官の頬を張るなど、軍人に有るまじき失態でした。どのような処分も覚悟しております」

 大淀がひたすら頭を下げる。

「勤務外の事だ。むしろあの時は此方が謝罪せねばならぬ立場だった。大淀が怒るのは当然だ」

 改めて姿勢を正し、深く上半身を折り曲げる提督。

「2人とも済まなかった」

 その様子に

「私は気にしていませんからね。……暖かかったし」

 五月雨が多少慌てながらも、気にしていないと伝える。

「え、えっと、その件につきましては、謝罪を受け入れます。ですが、私の行為は……」

 自分の非については、謝罪の態度を崩さない大淀。

 その頑なな態度に呆れかえるも好ましく思う提督。

「頑固者が。そこまで言うのなら処分を受けてもらう」

 はいと頷く大淀と止めようとする五月雨。

「提督」

 手を挙げ五月雨を制し、大淀に向かう。

「大淀、五月雨が自分から潜り込んだと説教していなかったか? その誤解について五月雨に謝罪してほしい。あれは私が引きずり込んだのだから。それと、この子に手出しはしていない。五月雨はまだ生娘だ」

 その言葉に五月雨が顔を染める。

 ああ、そう言えば、と全ての元凶を思い出し、

「五月雨ちゃん、貴女は提督の被害者でしたね。誤解からお説教して本当にごめんなさい。今まで随分苦労したのでしょう?」

「いえ、そんなことはありませんでしたよ。彼方此方突かれたりしただけ……あっ」

 賑やかな時間が過ぎる。

 

「処で二人とも、何用があって私室まで来たのだ」

 二人が朝から私室にまで押し掛けた理由を訝しむ提督。

「そうでした。大変なんです。鎮守府がすごく大きくなっていて、それは知っているんですけど」

「明石の話では見慣れない設備と見慣れない妖精たちがいるとの事で、副長と工廠長からは提督の仕業だろうから話を聞いてくるようにとの事でした」

 その話に訝しむ提督。

(寝て目が覚めれば、当然のように受け入れてしまう筈だったのだが)

 内心そう思うも

「わかった。すぐに行こう。大会議室に招集してくれ」

 

 ********************************************************************** 

 

 大会議室――。

「提督。昨夜から今朝にかけての事態の説明を求めます」

 入室するなり副長と工廠長に詰め寄られる提督。

「説明? 私は昨夜、【海上要塞型移動鎮守府 高天原】の改装を行うと伝えたが?」

「確かにそう聞いた。此処にいる皆はその言葉は覚えておる。じゃが!」

 窓から外を指す工廠長。

「ここまでの大改装とは聞いておらん!」

「それに!」

 後を副長が受け継ぐ。

「あの妖精達は! 提督の仕業とは分かりますが、一個大隊の陸戦妖精に加えて医療妖精に――」

 増えた妖精を挙げていく副長

「――と、今までは1,225名だったのが、合わせて5,435名と大幅に増員されています! 組織と体制を見直す必要があります。そうでしょう、工廠長!」

 最後は叫ぶような声を上げる副長。

「まあ、そうじゃのう。わしも部下に見慣れない者がおるようでは、ちと困るでな」

 周囲も皆頷いていることを確認した提督は予定の変更を余儀なくされる。

「内装がまだ終了していない。そうだな……本日1400迄各自自室待機を命じる。副長、放送を流せ」

「本日1400迄各自自室待機。放送流します」

「以上だ。解散」

 

 解散後、提督は新たに設けた内郭の農園・果樹園に来ていた。

「見事なまでに何もないな。あるのは土だけか」

 何もない――作物や樹木がない区画を見て愕然とする。

 これにはタブレットは使用できるのか。と疑問を抱く提督。

 試しに翳してみるも反応はない。

 さてどうするかと考え、取得していた能力の一つに気付く。

 植獣召喚――自分が扱った植物や動物を求めた時に取寄せられる能力――。

 能力を発動させる。果樹や野菜を揃える心算であったが、何故か苗木と種しか現れない。

 疑問に思い再度能力を確認する提督。

 注意事項がある事に気付く。

「成程。気が付かなかった私が間抜けだったか」

 これは妖精達に手伝わせよう。と、一か所に苗木と種を集めて保管する提督。

 そのまま足を娯楽施設に向け、こちらは設備が整っていることを確認する。

 執務室に戻り、居住区の内装に取り掛かる。

(待機中の妖精達には悪いが寝ていてもらおう)

 調理などを行っていないことを確認した提督がハロタン系の睡眠ガスを流す。

 各部署のモニターから全員休まった事を確認し、改装準備に入る提督。

(各居室は25.1平米で統一する。シッティングエリアとベッドルームを設けるか。ベッドはダブルで良いな。シャワーに、トイレか。バスタブは士官以上の居室に適用しよう。設備は冷蔵庫・テレビ・電話・金庫・ラジオ・化粧台・クローゼット・室内温湿度調節器で良いな)

 タブレットを操作しながら、間取りと設備を画面に配置する。インテリアスタイルの項目に気が付く提督。

(インテリアスタイル? 部屋のイメージか。どれどれ……アメリカントラディショナルにアーリーアメリカン、ヴィクトリアンカントリーにイングリッシュカントリー、フレンチトラディショナル、イタリアントラディショナル、スウェディシュカントリー、ヨーロピアンクラシック、和風モダン、アジアンエスニック、シノワズリ。マニアックなものも多いな)

 何度か操作し、悪戯気な表情を浮かべる提督。

(共用部はヨーロピアンクラシック、幹部の部屋はフレンチトラディショナル、艦娘の部屋はイタリアントラディショナル、一般用はアーリーアメリカンでいいな。長官私室は和風モダンで良い。執務室は……アメリカントラディショナルにするか。暖炉は好みだ。……皆、目覚めて吃驚だな)

 忍び笑いを隠せない提督。

 

 暫く後、目覚めた妖精や艦娘が自室を見回し、驚愕の声をあげる光景があった。




幹部部屋のフレンチトラディショナルスタイル、ものすごく豪華に見えます。
主人公の嫌がらせw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。