ドラゴンクエストⅠ ラダトームの若大将   作:O江原K

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旅人よ (ラダトーム)

勇者ロト―彼とその仲間たちは、史上最悪の大魔王と呼ばれた『ゾーマ』を

滅ぼした。その後ロトと彼の妻はどこかへと退き、やがて『ボルガード』という

男の子に恵まれた。そのときロトはよほどうれしかったのか、普段は感情を

表にしない男であったのに、『俺の子どもだ!俺の息子だ!』と絶叫しながら

辺りを走り回ったので、妻からその死ぬ日までからかわれたのだという。

 

だが、勇者ロトとその妻、更にはボルガードに関しての記録は、その後

ボルガードが立派に成長したこと以外には何もない。ボルガード以降に

至っては、家系図に名前が記されているだけで情報は全く得られない。

というのも、世界が平和になった以上、彼らのチカラはもう不要だったのだ。

 

こうして激しい戦いの時代が過ぎた後、緩やかに人間は、そして生き残っていた

魔族もまたチカラを失っていった。そんなとき竜王が魔王として君臨したのだ。

 

 

竜王。その名の通り、竜の王。彼がどこから来たのか、またその生態など

詳しいことを知る人間はいないが、実は彼の存在自体は昔から確認されている。

何も害をもたらさず、警戒する必要もないためラダトームの先の海峡を挟んだ島に

彼の居城が建てられたところで、それを問題視する声は少なかった。ところが

現在、ラルス16世の支配するいまになってアレフガルドの侵略を始めたのだ。

長い時を経て準備された精鋭の魔物相手にもはや城の軍隊ではどうしようもなかった。

 

 

実はラルス16世の先祖たちは、竜王はもしかしたら危険な魔族かもしれないという

考えはあった。勇者ロトが後世に伝えていた数少ない遺言、『新たなる闇』が

竜王なのではないか、そう思い密かに彼を殺してしまおうという計画があった。

 

ところがその時代のロトの子孫たちは残念ながら『期待外れ』だった。

『ロジ』という男は戦いに興味が無く、またラダトームから出ようともせず、

その一生を農耕に費やしていた。また『ブリランテ』という別の男は、

やる気こそ人一倍あったものの、すぐに大怪我をしてしまいリタイアしてしまった。

それにより竜王殺害の計画は流れ、まあ実害はないのだしと放置していたところで

いまこの時代にその災厄が降りかかってきたのだった。

 

 

とはいえロジやブリランテは全くのどうしようもない者ではなかったと言える。

ロジのおかげでラダトームの食糧事情は劇的に良化し、それ以降一度も飢饉は

起こっていない。さらに人々の寿命が延びてもいるのだ。またブリランテが

大きく負傷してしまったので、ラダトームの人々は古代の回復呪文を

蘇らせようとした。その結果、『ホイミ』、そして『ベホイミ』という

肉体の損傷を癒す呪文が現代に復活した。さらに、彼らはその血を残した。

だから竜王がその本性を明らかにしたいま、『ブライアン』という希望が

この地にはいる。彼はすでにラダトームの誰よりも戦闘力があったのだ。

 

 

 

 

 

王から直々に勇者と呼ばれ、王の愛娘ローラを竜王から奪還するための

旅が始まったブライアン。王が言うには、城には竜王の仲間が潜んでいる。

よって、城の者たちにはこの使命を伝えないまま旅立ちの日を迎えた。

 

 

「ン、ブライアン、どうしたんだ、その格好!どこか行くのか」

 

「ええ。ちょっと世界を見に・・・まあ見聞を広めるためですよ。

 でも料理長のおいしい料理としばらくお別れなのは寂しいですけど」

 

剣の訓練の後に出される肉と魚の料理がブライアンは大好物で、このために

欠かさず訓練に参加していると言っても過言ではなかった。激しい稽古の

せいで食事すらとれない者たちの分まで彼は平らげてしまっていたのだ。

 

 

「あら・・・とうとう兵士になったのですね?行先は?」

 

「・・・まだ決めていませんよ。ぶらりと旅をしてくるだけですから。

 でもだいぶ留守にします。魔術師さんもお元気で」

 

「そう・・・。外は魔物が大勢いますから・・・何かあったら無理せずに

 すぐにラダトームに戻ってきたほうがいいでしょう。死んだら元も子もないもの。

 どんな回復呪文でも死んだ人間は生き返らせることは叶わないのですから」

 

城で魔法の研究をしている魔術師の女性とも別れを告げた。なかなか美人では

あるが、自分よりも少し年齢が高いな、ブライアンはそれくらいの気持ちだった。

彼は剣術や体術を磨いてはいたが、呪文に関しては一切の修行を積んでいなかった。

 

その後も自分の旅の目的について真実を誰にも告げないまま城を出た。それは

町でも同じで、人気者であるラダトームの若大将との別れを惜しむ人々を

どうにか振り切りながら町の出口まで来ていた。すると、そこには一人の

女性が立っていた。彼が昔から知る幼馴染だった。

 

 

「・・・アマゾンじゃないか。こんな街はずれでどうしたんだ」

 

 

「それはこっちの台詞。ブライアン、あなたとうとう王から言われたのね、

 竜王を倒すために旅立てって。そうでしょう?」

 

 

彼女の名前は『アマゾン』。鋭い口調でブライアンに迫る。彼はすぐに、

 

「違うよ。王様はローラ姫を救えって・・・あっ、まずい!これは言っちゃ

 いけないんだった・・・頼む、ここだけの秘密にしてくれ」

 

「ふふ・・・そうだったのね。まあいいわ。それは誰にも喋らない。約束する。

 でもね、ここから出るんだったら結局いっしょよ?あなたは王に厄介払いされて

 殺されようとしている。あのドラ息子の王座を守るためにね」

 

「そんなわけないだろう。それに王様を侮辱するなよ。いまはこんな場所だから

 いいけれど町中だったら大変だぞ。言葉には気をつけたほうがいいな。

 お前以外だったら報告しているところだけれど貸しがあるからな、今回は見逃す」

 

こうなったらブライアンは止められない。アマゾンは彼の後ろについた。

諦めてくれたか、と思ったがそうではないようだ。

 

 

「仕方ないわね。じゃあ私・・・ついていっちゃおうかしら」

 

「何だって!?できるわけないだろう、そんなこと!」

 

「いいじゃない。一人が二人になったって大して変わらないわよ。

 それにあなたはステキだからきっといろんな町の女性の誘惑があるわ」

 

「ええっ、ぼくが?まさか。大食らいのブライアンって陰口言われているくらいなのに」

 

 

自覚がないぶん厄介だ。とはいえそれはいまは置いておくとして、やはり

ブライアンにとってアマゾンを連れていくことには抵抗があった。危険な

旅になることはわかっている。何を言われようが譲るつもりはない。

 

 

「・・・わかった。なら・・・あなたが安心してここから送り出すのにふさわしい

 実力を見せてくれるのなら私ももうあきらめる。でも少しでも不安なところが

 あったなら・・・・・・」

 

「そうまで言うならわかったよ。ぼくの戦いぶりを見て納得しなよ」

 

 

 

ブライアンは町の外に出た。彼の強さを理解した賢明な魔物たちは

彼に近寄らなかったが、その判断ができない魔物が襲ってきた。

彼はそれを全く問題にせず次々と撃退していった。スライム、

スライムベス、ドラキー・・・さすがに相手ではなかった。

 

「どうだっ!楽勝だろう!そろそろ諦める気になったか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

ただし、これは一対一で、しかも万全の状態で戦える場合なら、だ。

 

 

「ピキ――――――ッ!!」  「グギャ―――――ッ!!!」

 

 

「・・・・・・参ったな・・・こんなに集まってきたか。これは・・・」

 

 

いかにこの辺りの魔物たちが雑魚に過ぎないとしても、あまりにも数が

多ければ全ての攻撃には対処できない。彼の持っている棍棒では大勢の敵を

一掃するのは難しい。一人旅の危険を早くも思い知っていた。だが、ここが

まだラダトームに近かったのが助かった。一部始終を見ていたアマゾンが

颯爽と登場し、大量の魔物たちを相手にブライアンの前に立ち、

 

 

「・・・燃やし尽くせっ!ギラ―――っ!!」

 

 

「ピギャアア―――――・・・」  「ウガァァ――――――」

 

 

『ギラ』という呪文を唱えると、魔物たちは次々と焼き尽くされていった。

それを逃れた魔物も、もう勝ち目などないと背中を向けて駆け出した。

所詮はスライムやドラキーだ。ブライアンたちもそれを追いはしなかった。

 

 

「・・・・・・だから言ったでしょう。いつかあなたは・・・」

 

「それでもお前を連れてはいけないよ。そんな呪文が使えるなんて驚いたけど

 その様子じゃ・・・長い旅にはとても耐えられないだろう」

 

 

アマゾンはただの町娘だ。もしものときに身を守るためギラを習得したものの

どうやら一回か二回が限界だ。現に今の彼女はかなり体力を消耗している。

大量の汗、病気の人間であるかのような息切れ。ブライアンは彼女を支えた。

 

 

「・・・悔しいけどそうね。あなたといっしょに外へは行けないみたい。

 せいぜいラダトームのなかだけ・・・。でもわかったでしょう?

 いま旅立ってもローラ姫のもとにはたどり着けないわ」

 

 

「ああ。それは認めるよ。呪文が使えるようになるまでは・・・」

 

 

ブライアンの最初の冒険は彼自身の予想よりも早くに終了した。

後に伝説となる男もはじめから全てがうまくいっていたわけではなかった。

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