ソードアート・オンライン 絶速の剣士   作:白琳

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本日、日間ランキング8位にこの作品があって朝から( ; ゜Д゜)としていた作者です。
まさかランキングに載っていたとは……これからも良い小説を書いていけるよう頑張っていきたいと思います!


第9話 恐怖

クラインとは俺の判断に理解を得られずとも一旦別れ、俺は始まりの街を歩く。ログインした時の活気があったのは嘘のようで、どのプレイヤーも悲しみ、絶望に満ちた表情をしているのが分かる。

 

「こっ、これからどうすればいいんだよぉ……!」

「だっ、誰か助けてくれよぉぉぉぉっ!」

「わ、私達、どうなっちゃうの……?」

「パ、パパ……ママァァァァッ!!」

 

「俺、まだ死にたくねぇよ……」

「あ、あはっ、あはは……なん、で……」

「ね、ねぇ……もしも家族がナーヴギアの事を信じずに無理矢理外そうとしていたら────」

「んな事言うんじゃねぇよっ!」

 

「な、何でこんなゲームを買っちまったんだっ!」

「おいっ!お前が俺達を誘うからだぞ!」

「え、ええっ!?ぼ、僕のせいなの!?」

 

「うえっ、うえええええんっ!!」

「うるせぇんだよっ、ガキがっ!」

「しょうがねぇだろっ!こいつはまだ子どもなんだよ!」

 

「…………」

 

これからの事を不安に思う者、現実世界で動けない自分に誰が何をするのか分からない恐怖、この状況になった事への罪の擦り付け合い──────デスゲームとなってしまった以上、間違いなく起こるだろうと思っていたが……なかなかに酷いものだな。今はまだ口論しか起こっていないが、今後はどうなるか分からないな。狂ったプレイヤー同士による殺し合いが行われないとも限らない。

 

「ぐすっ……すんっ……」

「ん?」

 

足を進め、人気がなくなってきた辺りでどこからか悲しむ声が聞こえてきた。声からして……女の子か?

 

「……大丈夫か?」

「ぁ……」

 

声のする方へと向かうと、壁に寄り掛かりながら座る女の子がいた。立っていない為に大体でしか分からないが、少なくとも中学生という年齢ではない。

 

「ぐすっ…………はい」

「……こんな事になって、大丈夫なわけないだろ。嘘をつくな」

「……はい。ごめんなさい」

 

俺が隣───若干の間は空けてある───に座ると、女の子は驚いた表情を見せた。が、すぐに先程までの悲しみに満ちた表情へと戻ってしまった。

 

「何故こんな人気のない場所で泣いていた?」

「……みなさんの泣き叫ぶ声を聞きたくなかったんです。どうにかなっちゃいそうで……それでここまで走ってきたんですけど、急に涙が出てきて……」

 

……この周囲にはプレイヤーもNPCもいない。ここまで来たのはいいが、傍に誰もいなくなってしまった事で不安や恐怖で折れかかっていた心がさらなる恐怖によって折られてしまった────と考えてもおかしくないか。

 

「一緒にログインした友達やこっちで知り合いになったプレイヤーはいないのか?」

「……いません。あたし、初心者なのでどうすればいいのかも分からなくて……」

「……そうか」

 

この女の子が抱えている恐怖を共有してくれるプレイヤーがいればと思ったんだがそれは無理みたいだな。ベータテスターならともかく、初心者がこの状況を1人で乗り越えられるとは到底思えない。

 

「あの……」

「どうした?」

「貴方は……怖くないんですか?」

 

怖くない────とは言えない。俺も今の状況が怖い。このゲーム内で死ぬという事が、どれだけ重い意味を持っているのか────それを考えるだけでも怖い。

…………だが。

 

「正直言うと、怖いな」

「なら、どうして……そんな平気そうに……」

「こんな事になって平気な奴は少ない。そのほとんはこのゲームを事前に経験してるベータテスターだろう。俺も少しだけベータテストをやっていたが……俺が平気な理由はそれじゃない」

 

夜天流道場の教え『その7 救いを待つ者には手を差し出せ』

 

「救いを待つ人に手を差し出す為だ」

「手を……?」

「そうだ。今回の場合、生き残っているプレイヤーをこのゲームから現実世界へと返す事だが……今はそれよりも寄り添うべき存在がないプレイヤーの為に動く事だな」

「…………凄いんですね。あたしはゲームクリアしようっていう勇気なんてありませんし、誰かを助けるなんて……そんな事、出来っこないですから」

 

ああ、そうか。この女の子は────きっと、とても優しい性格なんだろう。そうでなければ、自分の力では他人を助けられない事にそこまで落ち込む必要はないからな。

 

「……そうでもないぞ」

「えっ?」

「確かに俺のようにモンスターとの戦闘で誰かを助けるというのは難しいかもしれない。だが、元気付けるという事は出来るかもしれないぞ」

「元気付けるって……どうやってですか……?」

 

俺は隣にいる女の子を見る。小柄で、まるで人形のように可愛らしい見た目をしたその姿を見れば、多くの人達の心を和ませるだろう。

 

「……可愛いな」

「ふぇっ!?」

「君の容姿から考えると、いるだけでも多くの人を明るくさせるかもしれない」

「ほ……本当ですか?」

「まぁ、そう思っただけだ。無理に信じる事はないぞ。……さてと」

 

俺はそう言い、立ち上がる。この女の子の事は気になるが、いつまでもここで喋っているわけにはいかない。しかしだからと言ってここに1人で置いていくわけにはいかないな。

 

「とりあいず今日は宿に行って休め。色々あって疲れてるだろ?」

「宿……ですか?でも、その……」

「場所なら案内してやるから」

「お、お願いします……」

 

女の子が立ち上がり、俺は手を繋ぐ。この辺りはまだいいが、宿の方に行くとなると多くのプレイヤー達がまだ混乱しているだろうからな。宿の場所すら知らない以上、はぐれたりしたらまずい。

 

「あ、あの……?」

「そういえばまだ名前を教えていなかったな。俺はシンだ」

「シ、シリカです。それより手は別に繋がなくても……」

「はぐれて1人になっても行けるなら離すが?」

「……お願いします」

 

ならばよし、と俺は答えて女の子────シリカと共にこの街の宿へと向かっていった。

 

 

 

 

シリカを宿へと連れていき、どうすればいいのかを伝えてから俺は再び街へと出た。一応俺は3日間はこの街に残る為、明日も午後からシリカに付き添うつもりでいる。

今の時間は……19時か。キリトは今頃ホルンカの村に辿り着き、宿に泊まっているんだろうか?それともすぐにあのクエストを受けにいった……とも考えられるな。

 

「ん?」

 

メッセージが来てるな……キリトクライン、どちらだろうか?そう思い、見てみると相手はキリトであった。何かあったか、とメッセージをすぐに開く。

 

『私、現実世界に戻りたいよ。お母さんとスグに会いたいよ……』

 

「…………」

 

キリトに何があったのかは分からない。だがおそらく何かがあって、心を折られたんだろう。本来ならば俺はあいつを支えるようなメッセージを返さなければならない。

だが、あいつには────キリトには俺がいなくなったとしても生き残ってもらいたい。その為には俺が死んだとしても前へと進められる心を持ってもらわなくてはならない。

 

『私を1人にしないでよ……』

 

「……っ」

 

再び送られてきたキリトからのメッセージ。俺はそれを見てしばらく考えた後に返信用のメッセージを送った。

 

『いずれ会える。それまでは1人で生き抜け』

 

今はこれしかない。あいつに俺と会えるという希望を与えるのは、俺がそれまでに死んでしまうという可能性がある以上あまり気が進まないが……このままだとさらに心を折られるに違いない。そう考え、このメッセージを送ったのだ。

 

「……行くか」

 

俺はそう呟き、暗くなった街を再び歩き始めた。




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