ソードアート・オンライン 絶速の剣士   作:白琳

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どうも、現在刀スキルをどの辺りで習得させればいいのか悩んでいる作者です。
習得するのにどうしたらいいのかは分かるんですが、どのくらいかかるのかは実際にゲームをやってみるしかありませんよね……。


第16話 パーティ結成

その後、士気が上がったプレイヤー達によって、迷宮の20階は驚く程の速さでマッピングされていったらしい。そして翌日の午後にはディアベルのパーティがフロアの最も奥で扉を発見したんだとか。さらには扉を開け、その部屋にいたボスと対面したという。

 

「……イルファング・ザ・コボルドロードか」

 

それがボスの名前らしい。他のボスの名前はどうなのか知らないが、長いな。イルファングと呼ぶ事にしよう。このイルファングは、身長は約2m、武器は俺と同じく曲刀だったと聞いた。加えてイルファング以外にもルインコボルド・センチネル────センチネルという金属鎧を着込み、斧を持ったモンスターが3匹いたらしい。

 

「……キリト。今までベータテストの時と違っていた事はあったか?」

「うん。と言ってもほんのちょっとした違いだよ。ベータテストをやり込んでいないと分からない程の……そういえばシンはもうこれを見た?」

 

キリトが俺に差し出してきたのは、3枚の羊皮紙が綴じられた薄い本。タイトルには、アルゴの攻略本・第1層ボス編と書かれている。

 

「それは……アルゴの攻略本か。ボスの事まで出ていたとはな」

「うん、いつの間にか販売されていたんだ。値段は0コル。ボスのHP量や使用してくるソードスキルの他にも、間合いや剣速、ダメージ量まで書き込まれてる。取り巻きのセンチネルについてもね」

「ふむ……ん?」

 

キリトから受け取った攻略本を開き、確かに凄まじい情報量だと感心していると、裏表紙に真っ赤な一文を見つけた。

 

「情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります、か」

 

……ベータテストの時、このゲームは第6層まで攻略されている。それ以降のボスがどんな風に変わっていようと分かるわけないが、逆に言えばそれまでのボスは倒されているという事だ。初心者にとってはともかく、ベータテスターが倒したボスをまた同じ様に出してくるか?

俺ならば、教えにある「その1 誰よりも強くあれ」を守る為に、一度負けたら次は必ず勝つ為に自分を鍛え直す。さらに強くなり、再挑戦の時には必ず倒す。今まで俺はそうしてきた。

茅場晶彦。このゲームをデスゲームへと変えたあいつが何を考えているのかは分からないが、ベータテストの時に倒されたボスを何も変わる事なく出してくるか?

 

「────みんな!こいつが正しければ、ボスの数値的なステータスは、そこまでヤバイ感じじゃない。もしSAOが普通のMMOなら、みんなの平均レベルが3……いや、5低くても十分倒せたと思う。だから、きっちり戦術(タク)を練って、回復薬いっぱい持って挑めば、死人なしで倒すのも不可能じゃない。や、悪い、違うな。絶対に死人0にする。それは、俺が騎士の誇りに賭けて約束する!」

 

第2回目のボス攻略会議が開かれている中、ディアベルの宣言に掛け声が飛び、盛大な拍手が続く。

つまり、ディアベル達はこの攻略本を元に戦術を練るという事だろう。ベータテストの時とは変わっているかもしれない相手に対して。また、本来ならばするべき偵察はこの攻略本がある事、死人が出る可能性が高いという理由から省略されるらしい。

 

「…………」

 

昔を思い返す。幼い時に開かれたとある剣道の大会、登り詰めた決勝戦で俺は呆気なく敗北した。相手の動きや間合い、詰め方、僅かな癖────あらゆる情報を事前に記録や現場で予習した。

だが、それにも関わらず俺は敗北した。それは何故か。当然と言うべきか、相手も俺の事を調べていた。そして突いてくるであろう自分の弱点を克服し、俺はまったく違った動きに反応する事も出来なかったのだ。

 

「…………相手をどこまで知れるかが勝敗を決する」

「ん?シン、何か言った?」

「いや、何も言っていない」

 

今から偵察をしに行こうにも、おそらく明日にはボス攻略を始めるだろう。そうなると、時間はほとんど残っていない。偵察をする事を進言しても、あの2つの理由からそれは叶わないだろう。

ならば、もしもベータテストの時とボスの動きが違っていた場合──────戦いながら、さらに強くなったイルファングについて知っていくしかない。

 

「それじゃ、早速だけどこれから実際の攻略作戦会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担も出来ないからね。皆、まずは仲間や近くにいる人と、パーティを組んでみてくれ!」

 

…………レイド?パーティというのは分かるが、レイドというのは何だ?

 

「キリト、ディアベルが言ったレイドとは何だ?」

「複数のパーティを1つに束ねた物だよ。SAOはパーティの最大メンバーは6人、それを8つまで束ねてレイドが出来るんだけど……今の人数じゃレイド1つの上限にも満たないね。あっ、シンは私と組んでよね?」

 

どうやら俺とキリトが組むのは確実らしい。まぁ、こいつを1人にすれば誰とも組めずに終わるというのも確実だ。嫌がらせのように組まないという事をする気は────

 

「……あれは。キリト、少し待っていろ」

「えっ!?も、もしかして私と組んでくれないの!?」

「違うから安心しろ。ただ、あいつも誘うというだけだ」

「あいつって…………まさかっ!?」

 

キリトが何やら驚いているようだったが、俺はそれを無視して少し離れた場所に1人でいる彼女────アスナに近寄った。

 

「……アスナ、誰かと組んでいるのか?」

「…………突然何よ」

「質問に答えろ」

「……組んでないわよ。ただ、周りがみんなお仲間同士みたいだったから遠慮しただけ。そう言う貴方も誰とも組んでないように見えるけど?」

「そう見えるだけだ。俺はキリトと組むつもりでいる」

 

背後に見えるキリトを指差すと、アスナは納得してくれた。さて、俺はアスナに誰とも組んでいないのはお前だけだぞと見下しに来たわけではない。むしろその逆である。

 

「誰とも組んでいないなら、俺達と組まないか?今、6人のパーティが7個出来ているがレイドに入れるのは8個のパーティだ。俺達と組まなければボス攻略に参加できないぞ」

 

脅したわけではないが、どうやら「参加できない」というのが効果的だったようだ。アスナは一瞬だが、悩んだ表情を見せた後にふんと鼻を鳴らした。

 

「そっちから申請するなら受けてあげないでもないわ」

「ああ、それでいい────」

「その言い方はないんじゃないかな?」

 

「シンがわざわざ声を掛けてあげたんだよ?申請はそっちが────」

「固い事を言うな、キリト。ほら、お前とも組むぞ」

 

俺がアスナとキリトにパーティ参加申請を出すと、双方ともOKを押した。アスナは素っ気ない態度で、キリトは機嫌を悪そうに。

視界の左側に小さい2つのHPゲージが出現し、その下にはそれぞれの名前であるAsuna、Kiritoと表示されているのを俺は確認した。

 

 

 

 

 

 

 

ディアベルの指揮によって、それぞれのパーティは目的別の部隊へと編成された。相手を引き付け、攻撃を防ぐ───これをタゲと言うらしい───(タンク)部隊が2つ、イルファングとセンチネルへの攻撃が主な攻撃(アタッカー)部隊が3つ、長柄の武器を装備し、様々な援助を主とした支援(サポート)部隊が2つ。

そしてパーティの人数が3人しかいない俺達はそのどこにも入れられず────

 

「君達は、取り巻きコボルドの潰し残しが出ないように、E隊のサポートをお願いしていいかな」

「了解。重要な役目だな、任せておいてくれ」

 

……ふむ。言い方はいいが、つまりは邪魔にならないように後方で大人しくしていろという事か。ベータテスト時にボスと戦っているキリトや何か文句を言おうとしているアスナはともかく、俺にとっては別に悪い事ではない。

ボス戦がどのようになるのか分からない以上、遠目で戦闘を確認できるのはありがたい。どう動くのか分からない部隊に入るよりも、どう動くのか知る事の方が大事だ。

アインクラッドは100層まである。この層でボスと戦えなくとも問題はない。

 

「……どこが重要な役目よ。ボスに1回も攻撃できないまま終わっちゃうじゃない」

 

ふと気付くと、どうやらディアベルは去ってしまっていた。声が聞こえてきた方へと視線を向けると、アスナがキリトを睨んでいた。

 

「し、仕方ないでしょ、3人しかいないんだから。スイッチでPOTローテするにも時間が全然足りないよ」

「……スイッチ?ポット……?」

「俺も聞いた事がないな。どういう意味だ、キリト」

「ああ、そういえばまだ教えてなかったね……いいよ。2人共、後で全部詳しく説明してあげる。この場で立ち話じゃとても終わらないから」

 

ふむ、そうなのか。キリトがそう言うんなら、そうしよう。アスナもそれでいいらしく、小さく頷いているしな。

 

 

 

 

 

会議はそれぞれAからGまで名付けられた各部隊のリーダーの挨拶、ボス戦でドロップした金やアイテムは手に入れたプレイヤーの物という事を確認して終えた。

 

「……壁役のB隊リーダーはエギル、攻撃役のE隊リーダーはキバオウか。E隊の目的はセンチネルの殲滅役、そして俺達はその手伝いか」

 

自分の役割やそれぞれの部隊のリーダーが誰なのかを口に出して確認していると、その間にプレイヤー達は解散を始めていた。集団は何人かに分かれて酒場やレストランへと消えるように入っていく。結果、広場に残っているのは俺とキリト、アスナだけとなった。

 

「……で、さっきの説明はどこでするの?」

「酒場は────やめるか。男性プレイヤーの中に女性プレイヤー2人だけというのは酷だろう」

 

どちらとも多くの男性プレイヤーの目を引くだけの可愛らしさや美しさがある。先程の会議で調子に乗った輩が声を掛けてくるという事もなくはないだろう。

 

「当たり前よ」

「うん、私も嫌かな。どこかのNPCハウスの部屋は、誰か入ってくるかもしれないし……宿屋の部屋なら鍵がかかるけど……」

「嫌よ。この世界の宿屋の個室なんて、部屋とも呼べないようなのばっかりじゃない」

 

確かにそうだ。宿屋の個室は6畳もない一間にベッドとテーブルがあるだけだ。そして一晩だけで50コルは取られる。低層フロアでの宿屋は、最安値でとりあいず寝泊まりできる店という意味だとキリトから前に聞いた。

しかし環境は悪いが、他の条件のいい所では50コル以上は取られる。寝泊まりさえできれば別にいい俺にとって、宿屋は最も安く泊まれる場所だ。

 

「え……そ、そう?探せばもっといい条件の所もあるよ?多少、値が張るかもだけど……」

「探すって言っても、この町に宿屋なんて3軒しかないじゃない。どこも部屋は似たようなものだったわ」

 

……なるほど、そういう事か。アスナは初心者だ、ならばINNという宿屋の意味を表している看板が出ている店にしか泊まれないと思っているのは当然か。

 

「キリト、アスナはお前が泊まっているような所を知らないようだ」

「あっ、そうだったの?それじゃしょうがないか」

「……?どういう事よ」

「えっとね、コルを払って借りられる部屋は宿屋以外にも結構あるんだよ」

 

ちなみに俺はその事もキリトから教えてもらったが、その上で宿屋に泊まっているのだ。自分が気にしていない所で、金を無駄にするわけにはいかないと考えた結果である。

 

「なっ……そ、それを早く言いなさいよ……」

「キリトがこの町で借りているのは、農家の2階だったな。確か一晩80コルだったか?」

「うん。部屋が2つあって、ミルクが飲み放題なんだ。ベッドも大きいし、眺めもいいし……それにお風呂までついてて────」

 

キリトがそこまで口にした瞬間、いつの間にかアスナの右手がキリトが着ているコートの襟元を掴んでいた。突然の事に俺は一体何だと思ったが、アスナの次の言葉で彼女に伸ばそうとした手を止めた。

 

「…………なんですって?」

「えっ、えっと……?ど、どうしたのいきなり……」

「今、なんて言った?」

「な、なんてって……あっ、もしかしてお風呂の事?」

 

……なるほど。汗を素振りなどでかき、周囲から臭いなどと言われれば入っておく俺などとは違い、キリトやアスナは女性だ。ここがゲームの中とはいえ、入浴というのは重要な事なのかもしれない。だからこそキリトはそこに泊まっているのか?

 

「そうよ。その宿、あと何部屋空いてるの?場所はどこ?私も借りるから案内して」

「ふむ?キリト、お前が借りている農家の2階……丸ごと借りてると言ってなかったか?それに1階に貸し部屋はないとも」

「なっ……!そ、それ、本当……?」

「…………うん」

 

俺が言った事が本当だと知り、アスナは崩れ落ちそうになりながらもどうにか耐えていた。諦めが悪いのか、それとも泊まれる方法があるのか。

 

「…………そ、そのお部屋…………」

「えっと…………申し訳ないんだけど、実は借り部屋システムの最大日数……10日分の宿賃を前払いしてるんだ。まだ残り日数が3日間残ってて、しかもキャンセルが不可で……」

「…………」

「なかなかに悪いタイミングだな」

 

キリトが泊まっている農家以外にも、風呂つきで泊まれる場所はあるだろうがほとんど……いや、全部埋まっていると考えてもいいだろう。この町には多くのプレイヤーがおり、いい部屋から無くなっていくだろうからな。

1つ前の村まで戻るという方法があるが、そんな事をするのであれば止める。夜に出てくるモンスターを決して侮ってはいけない。

ならば、どうするか。パーティメンバーである他にも、教えの「その3 女性を悲しませるな」を守らなくてはならない。…………よし。

 

「キリト、風呂をお前以外のプレイヤーが使うというのは出来るか?」

「うん、出来るけど……って、もしかして」

「なら説明はキリトの部屋でしよう。それとアスナ、お前はそこの風呂を貸してもらうといい。それで全て解決だ」




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