ソードアート・オンライン 絶速の剣士   作:白琳

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今回より第3章、開始です。

シリカとの関係について意見を貰った為、一部ストーリーが修正されています。


第3章 竜使いシリカの希望
第28話 ビーストテイマー


2023年、2月────────とある階層にて

 

「あっ、シンさん!こっちですこっちー!」

「待たせたな、シリカ」

 

この階層の主街区の噴水前で待ち合わせをしていたのは、第1層の始まりの街で別れた少女、シリカである。俺がビーターと呼ばれるようになってから1ヶ月後が経ち、彼女も他のプレイヤー達から聞いた話で俺がロクでもない人間だと知っているはずだ。

しかしシリカはキリトやアスナのように俺が『そんな人間ではない』と言い張り、俺とこうして顔を合わせる事に否定などしない。それどころか会えるとなると喜んでくれる。

これも再会の腕輪がもたらした効果だったりしてな。

 

「そいつが話していた()()()()ーか」

「はい!ピナって言うんです!」

「きゅるるるっ」

 

俺はシリカの肩に乗っているモンスター────フェザーリドラに視線を移した。全身がふわふわとした綿毛で包まれ、尻尾の代わりに2本の大きな尾羽を伸ばした小さな竜はアルゴ曰く、レアモンスターらしい。

何故モンスターが街の中にいるのか……それはここに呼び出したシリカがこのフェザーリドラもといピナを使い魔にしたからだ。

 

「一体どうやったんだ?アルゴ……情報屋に聞いたらごく稀と言われたんだが」

「えっと……メッセージでも送りましたけど、本当に偶然なんですよ。気まぐれで入った森の中で出会って、前日に買ったナッツを与えたらなついちゃって……」

「……なるほどな」

 

このようにモンスターを飼い馴らしたプレイヤーをビーストテイマーと呼ばれる。システム上で規定されたクラスやスキルの名前でなく、通称であるが。

 

「でもモンスターを連れていたら目立たないか?」

「は、はい、それはもう……初めて連れ帰った時は皆さん一斉に駆け寄ってきて、何十回もビーストテイマーなのか尋ねられました……」

「大変だったな」

 

プレイヤーがモンスターを飼い馴らすチャンスがあるイベントがごく稀にしか発生しない以上、ビーストテイマーの人数も少ない。同じく姿を見る事が少ない攻略組と同様に幻の存在と言ってもいいだろう。

 

「それにファンクラブなんて出来ちゃってますし……」

「……ファンクラブ?」

「『シリカちゃん大好きクラブ』?とか言ってましたけど」

 

モンスターを連れて歩くだけでそんなにも人気が出るものなのか?まるでアイドルみたいだな……いや、シリカがビーストテイマーとなって注目され始めた事で、シリカというアイドルがいる事に気付いたのか。

 

「特に何かされたりは?」

「パーティには頻繁には誘われますけど、みんな優しくてとってもいい人達ばかりですよ。最近はそれ以外の人からも勧誘されたりしてるんですよ」

 

そういった奴らが怖いんだよな……全員ではないが、初めは優しくして後から本性を表すという輩もいる。シリカはまだ子供だし、騙されたりする可能性もなくはないんだよな……。

 

「シリカ」

「はい?」

「パーティに誘ってきた奴らが少しでもおかしな言動や行動を見つけたらすぐ俺に言え」

「えっ、でも……たぶん大丈夫だと思いますよ?」

「一応だ、一応」

 

シリカの年齢だとおそらく人を疑うという事を知らないだろう。しかしこのSAOには疑わなければならない奴らもいる。他人の不幸を喜ぶ奴やアイテムを奪う奴、殺しまでする奴らがここには多くいるのだ。

 

「……分かりました!何かあったら、シンさんに一番早く連絡しますね!」

「ああ、頼むぞ」

 

その後、俺はシリカと共にピナを可愛がった。撫でる度に気持ち良さそうに鳴くピナを見て、俺達は微笑ましい気持ちになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024年、2月──────最前線、第55層

 

「これが第55層のマップデータだ」

「あア、確かに受け取ったヨ」

 

現在攻略中の階層にある街にて、俺は人通りの少ない裏道を選んでアルゴと再会した。理由はこの階層の迷宮区のマップデータを渡す為である。ベータテストの時よりも上の階層ではベータテスターが持つ情報は役に立たない。それはアルゴもであり、配布されている攻略本も第1層の時のと比べれば随分と情報量が減った。

戦闘を得意としないアルゴにとって、迷宮区の情報を手に入れるには攻略組に提供してもらわなければならない。しかし全員がそうしてくれるわけではなく、俺を含めてほんの数人のようだ。曰く、『自分が偶然見つけた情報などを全員に渡してしまう情報屋に教える方がおかしい』だそうだ。

 

「ところでシー坊。最近、シーちゃんとメッセージのやり取りをしてるカ?」

「シリカとか?まぁ、メッセージのやり取りはしてるぞ。攻略も忙しいから会うのは少ないが」

「そうカ……じゃあ、シーちゃんの違和感にも気付けないのも無理ないカ」

 

違和感……?まさかシリカに何かあったというのか。だがそれなら俺に何かしらメッセージが届くはず……。

 

「どうすル?800コルで情報を売ってやるゾ?」

「買ってやる。だから話せ」

「まいどありだヨ。違和感というかナ、シーちゃんは最近調子に乗り過ぎてる所があるんだヨ。自分が色んなパーティから誘われてるから舞い上がってるのかもナ」

 

……なるほどな。自分で自分が調子に乗っているという事に気付くというのはなかなかに難しい事だ。それがまだ年齢の低いシリカでは無理もない。アイドル気分で自分の事を過剰意識しているのかもしれないな。

 

「だったら……ちょっと危ないかもな」

「もしかしたら取り返しのつかない事をしてしまう可能性だってあるんダ、気にかけた方がいいんじゃないカ?」

 

アルゴの言う通りだな。シリカに対して期待を抱く奴は多くいるだろうが、心配や不安に感じている奴は俺くらいだろう。なら俺がしっかりしていないと、シリカを危険な目に遭わせてしまうかもしれない。メッセージを送って、近い内に出会えないか聞いてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シリカとメッセージでやり取りをしてみた結果、今は第35層にいるらしい。1週間とちょっと前にその階層に広がる森林地帯、迷いの森を冒険するパーティに誘われたと聞いているからその為にだろう。予定している日は明後日だと言うし、準備の為にも会うのはそれが終わってからでもいいと言ったんだが────そのパーティに俺も加わらないかと提案してきた。

攻略組のほとんどは迷宮区にしか挑まない為、サブダンジョンは手付かずのまま残されている。俺はかつて迷いの森に挑んだ事があるが、あそこは地図がなければ必ず迷う事で有名だ。挑む以上、誰かが地図を持っているだろうが……状況によってはパーティが分断される可能性もありえる。そうなれば予定外の事に戸惑い、ミスをしてしまうかもしれない。

思い浮かぶ嫌な光景から俺はそのパーティのリーダーに参加してもいいか尋ねてもらう事をシリカに頼む事にした。

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