「貴方がシリカの言っていたシンね?よろしく頼むわ、アタシはリーダーのロザリアよ」
「ああ、こちらこそよろしく。突然の加入ですまないな」
「いいのよ、シリカの友達なら歓迎するわ」
次の日、俺は第35層の宿屋『風見鶏亭』でシリカとパーティメンバー達と合流した。つまりリーダーである彼女、ロザリアから承諾を得たという事だ。俺の事は友達と紹介したらしく、ビーターや攻略組である事は黙っていたらしい。
……それだというのに、他のメンバーからの視線がキツいのは何故だ?
「ところでシリカと同じ腕輪をしているようだけど?」
「え、えっと、これはその、偶然で……」
「ペアルック仕様の腕輪みたいだぞ、これは」
「ちょっ、シンさん!?なに言ってるんですか!!」
俺がそう言うと、シリカが顔を赤くして焦ったように俺を咎める。それに対して「本当の事だろ?」と言い返すと、ロザリアが笑みを浮かべている事に気付いた。
「……何だ?」
「いえ、アタシと違って若者は大胆と思っただけよ。もしかして貴方達、恋人同士だったりする?」
「こっ、こい────そ、そんなんじゃありませんから!!」
ロザリアの発言にシリカはさらに顔を真っ赤にして反論した。その光景をロザリア以外のメンバー達は面白くなさそうに見て……いや、何か困惑しているみたいだな。
「シ、シリカちゃんに恋人だって……?」
「そ、そんな馬鹿な話が……!」
「ファンクラブの1人としてシリカちゃんのその恋を応援しなければならない……だけど、だったらこの憎しみはどこにぶつければいいんだぁぁぁああっ!!」
「ああっ!?リーダーが血の涙を!」
……何だ、あれは。漫才でもしているのかあいつらは。
(あの人達、あたしのファンクラブの人達なんです……それであの泣いてる人がリーダーらしくて)
(ああ、なるほど……随分とおかしなメンバーが揃ってるんだな)
俺に小声で話してくるシリカの話を聞き、納得した。あいつらにとってはアイドルのシリカに恋人が出来たと知れば、ああもなるか。
「くっ……シンさん!ファンクラブのリーダーとして頼みます……どうかシリカちゃんを幸せにしてやってください!!」
「「「お願いします!!」」」
「何でそんな話になるんですかぁぁぁあああっ!!」
俺の前に土下座するメンバー達にシリカは今にも泣きそうな顔で叫んだ。この後、全員の誤解を解くまで時間が随分とかかったのは言うまでもない……。
「ふっ!」
「ニギャアッ!?」
第35層のフィールドに生息する猫型モンスターを刀で一刀両断した俺は相手がポリゴンとなった事を確認し、刀を鞘へと納めた。経験値と入手アイテムが表示されたウインドウを閉じ、背後にいるメンバー達の方を振り向く。
「この位でいいか?」
「……すっ……」
「?」
「すっげぇぇぇえええ!!」
メンバーの1人が発した言葉に他のメンバーも共鳴するかのように大声を出す。そしてすぐに俺を取り囲み、顔を寄せてきた。
「なぁっ、あんたどんだけ強いんだよ!?」
「強いってレベルじゃない……強すぎるでしょ!」
「うんうん!まさかこんな強い人が入ってくるなんて!」
新参者である俺がどれ程の実力を持っているのか知りたいという事で何体かのモンスターと戦ってきたが、どうやら俺の強さは予想以上だったらしい。シリカ、ロザリア以外のメンバーが興奮した様子で喋ってくる。
「嘘でしょ、あんな……!?」
「ロザリアさん、どうしましたか?」
「お、驚いていただけよ。まさかあんなに強いとは思っていなかったから……」
シリカとロザリアの会話が聞こえ、2人を見てみればロザリアは何故か焦っている様子だった。何に対してかは分からないが……どうも違和感を感じる。さっきまで俺に好意的に接していたのに今はどこか違うような……。
「ロザリア、そろそろ街に戻ってもいいんじゃないか?明日の為にも精神的な疲労は避けるべきだろ」
「そ……そうね」
「ロザリアさん、どうかしたんですか?どこか調子が────」
「っ、何でもないわよ!アタシの事は放っておいて!!」
ロザリアを心配するシリカであったが、その気持ちに反するように怒りを露にした彼女はシリカの前から立ち去ってしまった。シリカはおろか、他のメンバー達もあの様子のロザリアを見た事がなかったのか驚いている。
「な……何なんですかあの態度!?あたしはただ心配してあげただけなのに!」
「きゅるるっ!」
珍しく怒るシリカに同意するようにピナが鳴く。使い魔にそういったプログラムはない……が、こういった行動をピナはよく見せる。もしかしたら主人とも相棒とも言えるシリカとの生活の中で、AIのプログラムを越えた『意思』というべきものがピナの中に生まれているのかもしれない。
「確かに様子がおかしかったな」
「そうですよね!?それなのに……!」
おかしくなったのは……俺の戦闘を見てからか。だがそれだけで俺がビーターだと分かるとも思えないし、となると俺の強さがロザリアにとって何かまずかったということか……?
「シンさん、私達も帰りましょう!」
「あ、ああ……」
ロザリアに対して怒り心頭なシリカは俺の手を掴むと、街へとズンズンと歩き出した。その様子を他のメンバー……シリカのファン達が驚き半分、羨ましさ半分で見ていたがだったら交代してみるか?遠いから分からないと思うが、今のシリカには他人を寄せ付けない迫力があるぞ。
ちなみにこの後、無意識の内に手を繋いでいた事に気付き、シリカが赤面して騒ぎ出すのは別の話である。
原作・アニメではロザリアはパーティのリーダーではなく、シリカのファンクラブも存在してません。ただシリカの人気ぶりを見る限り、実はファンクラブとかあったんじゃないかなぁ、と思ったからです。