ソードアート・オンライン 絶速の剣士   作:白琳

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随分と長い期間を空けてしまい、すみませんでした!
最近はこういった事が多い為、タグに不定期更新を加えておく事にしました。


第37話 謎のスキル

第33階層のサブダンジョンでルクス達がPoH率いるラフコフと遭遇、そしてパーティが解散された日……俺はルクスに自分を強くしてほしいと頼まれ、それを俺は()()()()。一度襲われたルクスが再び奴らに狙われるという可能性がないわけじゃない。

ただし俺にも最前線といういなければならない場所がある。その為、短い期間だけだがその間にルクスを強くする事を約束したのだ。

 

「────シン、待たせたね」

「準備は出来たのか?」

「うん、バッチリだよ」

 

俺と同じ宿屋から出てきたルクスに問い掛け、準備が終えた事を確認する。少し前までは「シンさん」と呼ばれていたが、ここはゲームである上に俺と年齢も近いはず。故に敬語を使わずに喋ってくれて構わないと言ったんだが、特に問題はないようでよかった。

 

「……その割には装備は変更していないみたいだが」

「えっ?ああ……その、そこまでする必要がないというか……」

「その装備で挑んだらクエストに失敗したって言ってなかったか?」

 

俺がここまで強くなれたのはフィールドや穴場、ボス戦などで大量の経験値を得てレベルを上げた他、多くのクエストに挑んでそれらをクリアしたからだ。それによって希少なアイテムや装備を手に入れる事に成功した。

特に何の変哲もない方法だと思うだろうが、他のプレイヤーと違うのはそれに掛けた時間、クエストのクリア数だ。おそらくここまで無茶しているのはソロでもパーティでも俺とキリトくらいだろう。

ルクスにも同じ事をやってもらっているが、俺と同じでは心身ともに辛くなる。故にルクスのペースで俺が手助けしながら順調にレベルを上げていたんだが……。

 

「実は……私のレベルが低かったとか、装備が悪かったとかじゃないんだ。ただ気持ちの問題というか……」

「気持ちの問題となると……何か戦いづらいモンスターでも現れたのか?」

「そうだね……うん、あの時は思わず攻撃を止めちゃったんだ」

 

ルクスが前に途中まで進めたものの、やめてしまったクエストがある……その事を昨日言ってきたのだ。別にルクスが俺に手伝って欲しいと頼んできたわけではないが、このままクリアせずに放置しておくのも嫌だろうと思い、手伝う事を決めたのだ。

 

「なるほどな……それでどんなモンスターだったんだ?」

「う、うん。そのモンスターの()()()が──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なんという事かしら、本当に乗り越えてしまったの?でもまさかこれ位で絆なんて不確かな物を信じて貰えるなんて思ってないわよね?はい、次。《打ち捨てられし塔》に住まう魔獣を倒してきて。そしてさっさとあたしに絆とやらを見せつけてみなさいよ」

「…………」

 

俺とルクスの前にいる背中に白い翼を生やした美しい女性──────クエストNPCの天使。ルクスが諦めたクエスト、《天使の指輪(リング・オブ・エンジェルズウィスパー)》とやらはこの天使からの試練をクリアしていくという内容みたいだが……見た目だけだな、天使っぽいの。

 

「あはは……人に裏切られたって設定みたいだけど、スレ過ぎだよね……」

「こいつに期待していたプレイヤーにとっては残念だっただろうな」

 

天使という以上、穏やかであったり厳かなイメージを誰もが持っているだろう。実際、俺もこいつに会うまではそうだったが……まぁ、こういう天使もいると考えればいいか。

 

「《打ち捨てられし塔》にいる魔獣だったな?ルクス、この天使の言う通りさっさと倒してこよう」

「そ、そうだね……」

 

どこか迷うような声を返してくるルクス。何だ?と思っていたが、そうか。そういえばルクスがこのクエストを諦めるに至った試練……それが()()だったか。

 

「心配すんな、例の魔獣は俺に任せろ」

「すまない……本当にあの魔獣は攻撃できないんだ……」

 

ルクスから聞いた限りの情報では……おそらく彼女でなくても魔獣を攻撃する事も倒す事にも躊躇うプレイヤーはいるだろう。モンスターの見た目とは、時にプレイヤーへの心理的な攻撃となる。恐ろしい見た目なら怖がるし、 醜ければ気持ち悪いと思うはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なら──────倒すモンスターが()()()場合はどうなるか?

 

「いた……あれが天使が言っていた魔獣、ウィング・ラブリーラビットだよ」

「通称、羽うさぎ……か」

 

《打ち捨てられし塔》に入った途端、部屋の隅に出現した羽うさぎは俺達に襲い掛かる様子もなく、ただモソモソと動いているだけ。これとは別のクエストであの羽うさぎを倒した事があるが……こいつはプレイヤーに敵対する事がない珍しいモンスターだ。

だが大人しい代わりに、かなり大きい体格を持っている。攻撃される心配はないが、油断して踏まれてしまえばそれ相応のダメージを受ける事となるだろう。

 

「ルクス。これから羽うさぎを倒してくるが……見たくないなら塔の外に出ていてもいいぞ」

「えっと……なら、そうさせてもらおうかな」

 

クエストは進行しているし、ルクスが出てしまっても俺が残って戦えば問題はないだろう。羽うさぎはそんなに強いわけでもないし、苦戦する事はないだろうしな。

 

「さて……」

 

ルクスは塔の外へと移動し、扉は閉められた。俺は羽うさぎの目と鼻の先まで接近するが、羽うさぎに動きはない。

ルクスのように倒せないわけではないが、襲ってこない上に愛くるしい見た目をしたこいつを倒すというのは正直心が痛い。故に──────後の攻撃が躊躇う事のないよう、一撃で倒す。

 

「現れて早々に悪いが……消えてもらうぞ」

「うきゅ?」

 

羽うさぎは首を傾げながら俺を見つめている。だがその綺麗な瞳に惑わされる事なく、俺は柄を握り締めた。放つのはソードスキル……だが今まで使用し続け、熟練度が限界に達した刀スキルではない。少し前にいつの間にか入手していた、()()()()()()である。

 

 

俺が刀を引き抜いた瞬間、それと同時に『カチン』という柄に納める際の音が部屋中に鳴り響いた。周りから見れば抜いてすぐに戻したように見えるだろう。実際、そうである。

──────ただ、『その間に相手を攻撃した』と付け加える必要があるが。

 

「っ!!?」

 

羽うさぎは訳の分からぬまま、首を斬り落とされた。そして体は崩れ落ち、倒れると同時にポリゴン状の粒子となって消滅していく。

 

「……」

 

砕桜(さいろう)──────俺が入手したスキルにより使用可能となる技の1つである。見た目が居合い斬りという事から辻風に似ているかもしれないが、それは見た目だけだ。刃が振り抜いた瞬間に当たらなかった場合、視認不可能な衝撃波が放たれる。羽うさぎを倒したのはそれによるものだ。

ただ……強力ではあるが、それ故かこの技も含めてほとんどは硬直時間が長いものだ。1対1ならともかく、1対多数の時は使う時を慎重に考えないとな。

 

「しかし……本当に謎だな。一体いつから使えるようになっていたんだ?」

 

このスキル────────絶速剣(ぜっそくけん)は。




ALOでの《天使の指輪》の内容はガールズ・オプスで分かっていますが、SAOではどんな内容になっていたんでしょうかね?羽うさぎを倒す試練から変わっているのは確実でしょうけど。

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