「永琳、こっち向いて~」
出会った頃に比べたらかなり伸びた白銀の髪。
いやぁ凄く似合っている。ていうか可愛い子は大体どんな髪型でも似合う法則って有ると思うんだ。
そんなTHE美少女な後ろ姿に向かって私は声をかけた。
「?何かしら……」
パシャッ
永琳がこっちをふり向いた瞬間にシャッターを切った。子気味の良い音がする。
いやぁまさに見返り美人って感じだね。むふふ、現像するのが楽しみだ。
「また何か変なもの買ったのね」
「変とは失礼なっ!今回のはちゃんとしてるんだよ」
いやね?確かに私は偶に、あくまで偶に変なものを手に入れてくる。
例えば一振りで全てを吹き飛ばす扇子、弾がまるで弾幕を張るかの如く発射される銃、etc....
いや、それはそれで面白いのだけども。しかし今回は一味違うぜ!
「カメラ?」
「そうそう。これで写真を撮れるの。あ、写真ていうのは……うん、見てもらった方が早いね」
そういった私は能力を使って私の中の
「……毎度思うけれどその能力本当に便利よね。その空間は一体どこなのよ」
「どこかの空間の大きさを弄ってるだけだよ。ま、私もよくわかんないんだけどね。我ながらかなりチートだと思ってるよ」
最近発見した使い方。あまり詳しいことは言えない(わからない)けど、近頃は形の無いものにまで能力が使えるようになってきた。最早なんでもありである。その分結構燃費が悪いのが玉に瑕だけどね。
「これが写真だよ」
私は以前現像した写真をその空間から取り出した。
「へぇ……そのレンズで像を作って、それを紙に焼き付けるのかしら?なかなか面白いわね」
「でしょ?」
永琳も興味を持ったようだ。……というかそれよりも、写真を見ただけで仕組みを悟る辺りマジ永琳。
「あら、この湖綺麗ね」
私から受け取った写真の束をペラペラと見ていた永琳はそう言って束から一枚取り出した。その永琳が取り出したのはいつだかの湖。まるで硝子かの様に透き通る水に映り込む光と緑。この前そう言えば撮りに行ったんだっけ。
「こんな所近くに有ったかしら?」
「ああうん。そこ結構遠いよ。それこそ歩くと数年掛かるくらい」
「数年……?」
実際直線距離はそこまででは無い。ただし妖怪的感覚の話。
そこでこの世界に生まれて以来、実際に森の中を数年間さ迷い、やっとの思いでこの人里を見つけたのだ。
なのでこの時間はなかなかどうして正確な時間である。
「どうやって行ってきたのよ」
「そりゃ能力で……あ、そうだ!」
良いこと思いついた!と私は手のひらにグーの手を打ちつけた。きっと傍目から見たら私の頭に眩い電球が見えるはず。
「……あなたのそういう思いつきは大抵ろくなことが無いんだけど」
「まあまあそう言わずにさ」
ニンマリ顔の私に対し呆れ顔の永琳。だけども結局は付き合ってくれるのだから何だかんだ優しいよね!
ってことで今回は永琳に犠牲になってもらうよ!
「せっかくだし今から行こうよ!」
「散々な目にあったわ……」
いつも通りのクールビューティーではあるけれど、疲れを隠し切れていない永琳。
「いやいやあんなに楽しんでたじゃん。キャーッて可愛い叫び声出しちゃってさ。集団でジェットコースターに乗るJK顔負けだよ」
「JKって何よ。というか違うわ。言いたくないけどあれは悲鳴よ」
実際永琳はJKになるかならないかくらいの年齢なわけだし顔負けというのは少し違うのかな?
というわけで人里から出た私は永琳を抱えてここまで飛んできた。因みに今出来る私の安全な全速力(ただし人外による)を出してみた。
「大体この距離を数十分でで飛ぶのが有り得ないのよ。振動は無くても風景だけで気持ち悪くなったわ」
遠い目で語る永琳。普段クールな顔が少し青くなっている。有る意味クールさ倍増?あんまり青くなるとツートンの服とのバランスが崩れちゃうね。
「下らないこと考えてないかしら?撃つわよ」
「いやー気のせいだよ。うん」
永琳の矢は人外だったとしても洒落にならないから向けるのは勘弁して欲しい。いやマジで。
「そんな事よりどう?この湖」
少し露骨だけども話をそらす。そもそもそんなことよりこちらの方が本題なのだ。
「……ええ。凄く綺麗だわ。写真で見たよりもずっとね」
そう言って軽く微笑みながら湖を眺める永琳。天気もいいのでいい感じに光が入っている。湖畔に吹くそよ風に、心地良さそうに目を細める
……そう!こういうのだよ!こういうのを待っていた!
私はパシャリとシャッターを切る。
「いやぁやっぱり美少女は絵になるねぇ」
不思議そうな顔でこちらを見る永琳。
「私より湖を取った方が良いんじゃないかしら?」
「チッチッチッ、わかってないなぁ」
勿論湖も綺麗だけれど、それに美少女を掛け合わせたなら……
「そう、可能性は無限大なのだよ。まさにビッグバン」
「意味がわからないわ」
まあまあそう言わずにさ。
「休憩したら撮影会だよ!」
「はい次これ着て!」
「一体何着あるのよ……しかもこの服何か変じゃないかしら?異様に裾が短かいし、ピンク色だし……」
「まあ細かいことは良いじゃん!付き合ってくれたら後でお茶おごるよ!!」
「……はあ。まあ良いわ」
ため息つきながらも着てくれる永琳やっぱり優しいね!
「いやぁ豊作、豊作ぅ~!」
めちゃめちゃホクホク顔である。今日一日で十分すぎる美少女成分を摂取したよ。
「私は疲れたわ」
付き合ってくれた永琳には感謝感激雨あられである。
「そんなもの撮って一体どうするのかしら?」
「私のコレクションに加えるの。ちなみに永琳は第二弾」
カメラマン儚プロデュース、美少女コレクションである。
「第二弾ってことは一弾があるのね。」
「そうそう最初の犠せ、ごほん……モデルはケモ姉だよ」
「彼女に同情するわ」
いやいや、最初こそめんどくさいって嫌がってたけど割りと最後の方ノリノリだったし。永琳も沢山写真を撮られて楽しくなってきたり……
「しないわ」
「えぇ即答ですかい」
「カメラが珍しかったから付き合っただけよ」
せっかくの永琳モデルデビュー計画が頓挫してしまった。彼女の写真集を売り出せばそれこそきっと、飛ぶように売れると……
「撃つわよ」
「いやいや冗談だって」
「はあ、でも本当に里に変な写真を流すのは止めてよね。嫌よ」
私のプロデュースによる永琳のモデルデビューの野望は残念ながら数秒で打ち壊された。
まあ流石に嫌な事はしないし、里の人々も永琳の変な写真を見せられても戸惑うだろう。
「そろそろ帰りましょう。まだ昼食も取ってないし。お腹が空いたわ」
時刻は昼時。私の思いつきで文字通り湖まですっ飛んできたので何も食べてないわけで。お腹も空いてきた。
「あ、そうだ。せっかくだし昼飯ついでに寄りたいところがもう一つ出来たよ」
良いことを思いついた。せっかく出かけたのだしついでならもう一枚写真を取りたい。
「またちょっと一っ飛びしない?」
永琳は物凄く嫌そうな顔をしていたけど気にしない。
「ふぁあ、今日はまた一段といい天気だねぇ」
ようやっと起きた私は伸びをしながら軒先へと顔を出す。ほとんど雲は無く、きっとこんな空を見たなら、あの色々と謎な妖怪少女は「写真日和だねっ!」とか言いそうだ。そういえばこの前やたらめったら写真を撮られたときもこんな天気だった。
「おっ?」
噂をすれば件の少女がこっちへ来るようだ。珍しく気配を隠していないらしい。
「ん?」
思わず眉をしかめる。なぜならその気配の移動が法外に速いからだ。これだと数百倍位……
「けぇーもぇーねーええええー!!」
そんな中不自然に大きい声が私の耳に入ってきた。もう大分聞き慣れたその声の主の姿は未だ見えない。積もる疑問の中また声が聞こえた。
「そこどい」
彼女が言い終わる前に途切れる。そして衝撃とともに視界が白くなる。
「ったく。いきなり突っ込んでくる馬鹿がいるかってんだ」
「いやぁごめんごめん。永琳の気配隠すのに手間取って、つい止まるがの遅れちゃってさ」
現在ケモ姉宅で昼食中。普段からボロボロな小屋だけども先の衝撃でより一層ボロさが増している。ドアとか締め切れてない。
どうでも良いけど私の頭には二つほど大きなたんこぶが出来ている。別段消せるけど意識して消していない。反省という意味で。
その2つは今小さな食卓を囲んでいる他の二人による物。
「付き合わされる私の身になって欲しいわ」
「ははっ永琳も災難だねぇ」
そんな軽口を叩き合う二人。思ったより仲が良さそうで良かったなぁ。なんてのんきなことを考えているとケモ姉が少し苛立った様子で小言を漏らす。
「しかし儚。前に言わなかったか?あんまり永琳をここに連れてくるなって」
実はこれより以前にも何回か永琳をここに連れてきたことがある。ここは妖怪の集落。いわば周りは皆人間の敵と言って過言では無い。確かにケモ姉が言う通り永琳にとって良いところでは無い。もし頻繁に人間が出入りするようになれば、当然ながらそれをよく思わない連中も居るわけで。
「う~ん、次から気をつけるよ」
「前もそんなことを言ってた気がするんだが……」
とは言うもののここに来ても結局話をするのはケモ姉くらいだし。あんまり問題無い気もする。
「余り良くはないとおもうけれど別にわたしは大丈夫よ?」
「いや永琳が良くてもだなぁ…。…うぅむ。」
永琳の言う『大丈夫』というのはか『別段襲われても大丈夫』ってことだろう。永琳のスペックならそれこそ大妖怪レベルでも太刀打ちできるんじゃ無いだろうか?
大妖怪というのは明確な基準は無いが要するにくっそ強い妖怪の事を指す時に使われる語である。
というかそんなのと渡り合えるかもって言う時点で永琳が人間なのか怪しいんですがそれは……今更そんなことを考えても仕方が無いね。
「まあほら永琳。ケモ姉は優しいからねぇ。心配なんだよ。うんうん」
「なっ!?……べ、別にそんなんじゃ……」
照れるケモ姉。ピクッと動くその頭上の耳が、心を如実に現しているのでおもしろい。
あああ!ケモ耳は正義だッッ!
「……ふふっ」
「なんだよ永琳……」
突然笑い出す永琳にムスッとした面持ちなケモ姉。
「いえ、まるで姉妹みたいだと思って」
それを言われて思わず目を丸くする。それはケモ姉も同じだったみたいで私達二人は一瞬だけ顔を見合わせる。
そして……
「「ぷっ…ぷははははは!」」
そして二人して笑った。
「なんで笑うのよ……」
今度は永琳が不満げになる。いや確かに二人で一斉に笑ってしまったのは悪いなぁと思ってる。
けれども、決して馬鹿にしてるわけじゃあない。
「はぁ……私達が姉妹だったら。そうだなぁ?」
そう。
「うん、そうだねぇ。」
ただ……
「ケモ姉が長女で」
「儚が次女で」
ただ単に……。
「「それで…」」
嬉しかったから。
「「永琳が末っ子だよ!!」」
永琳はすこしだけ目を見開いた。
そして今度は目を瞑って柔らかく微笑んだ。
「この面子の中で私が末っ子なのは納得いかないわ。長女でも良い位よ」
「なにを~!」
「意地張らずにお姉ちゃんって呼んでくれても良いんだよ?」
今日はそんな感じでいつも通り賑やかな昼食だった。
そう、ただ単に……
こんな「家族」の他愛ない会話がやけに暖かく、すこしだけむず痒く、そして嬉しく感じられただけなのだから。
私達は再びあの湖に来ていた。今度はケモ姉もいる。
「よっし!撮るよ~」
三脚に立てたカメラ、そのタイマーをセットして私は二人に駆け寄った。
「自動でシャッターも切れるのね。ぜんまいかしら……。?」
「考察は良いから早くはいはい並んだ並んだ」
「ポーズはチーズって奴で良いのかい?」
「?チーズって何かしら?」
「こうやって二本……あ、もう時間だよっ!」
パシャリ
◇◇
「せ……じゃなかった。儚さん、これって何の写真です?」
緑色の麗しい髪をなびかせる彼女は私に問いてきた。こちらに来てそんなに経っていないのにその巫女服で飛び回り弾幕ごっこを仕掛けまくる彼女は単に抜けているのか大物なのか。
「うん?……ああその写真はね」
彼女が聞いてきたのはとある写真。
紆余曲折、折折あって、最近ようやっと定住するようになった私の家。
そんなこの家の窓辺の一番目につく所に飾ってある写真。
そう、とても大事な私の宝物。
「私達三姉妹の写真だよ」
種も見た目もぜんぜん違う。
けれどやっぱりそこに映っていたのは私の本当の「家族」だった。