東方死人録   作:nismon

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二章スタートです。遅れてすいません。


二章 神とか地獄とか
一話 理不尽からの救いを求める先が一番理不尽の塊って可笑しくない?


 

 ただひたすらに空を漂っていた。きっと傍から見たら私の目には何の表情も無いだろう。目だけじゃなく中身も空であると言われてもなんら可笑しくないなぁなんて思う。それでも雨は降り、風は吹くし時は流れる。でもそれら全てがどうでも良くて、それについて思うことすら何も無い。詰まることただの無。生きる意味も全て。

 今の私には何も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

一話 理不尽からの救いを求める先が一番理不尽の塊って可笑しくない?

 

 

 

 

 

 

 

 まあ生物的というか妖怪的にいうならまだ私は死んでいない。というより死ねない(・・・・)

意外、かもわからないが、アレ以来自殺を図った事はない。だって無理だから。

 

 私が自分の意志で死のうとするとその意志と逆の事象へと『向き』が変わる。

 

 謂わば不死の呪いみたいなもの。それが私が私である存在の根底に掛けられていた。ゲームとかだったら不死属性を喜ぶ人は居るかもしれない。

 しかし、私はもう死にたかったのだ。

 もともと逃げるために絶った命なはず。それなのに無様に生き返って、やっと見つけたと思った家族は居なくなって結局私だけが残る。

 そして、逃げ場のない迷路に立たされるというのはやはり罰なのだろうか。

 

 

 

 

 あの後何年? 何千年? とにかく時が経って各地は異常気象と大規模な地殻変動に見舞われた。きっとこれが前世でいう白亜紀の終わり、恐竜が絶滅した時期のことなのだろう。

 恐竜は死に絶え、元々少ない人間も死んでいったようだ。あの人里以外にも人の集まった場所はちらほら世界中に有ったようだがその半分は壊滅した。

 だが、全滅はしなかったようだ。その残った人の集落の大半が共通していることがあった。

 それはどの集落にも神がいた、ということ。

 神というのは前世の時とは違い実体を持っている神のことである。その神が集落の人々の信仰を受けて異常気象等から守ったのだろう。なるほど、もし前世をなぞるとするなら、これからは神代という訳である。探せばもしかすると天照大御神に会えるかもしれない。どうでもいいが。

 どこまで厭世的でいようと完全に思考を止めることはできない。五感、六感の情報からそんな考察ともいえない事をしながら、空を漂い続けていた。

 ああ、死にたい。

 

 現在漂っているのは前世でいうヨーロッパの辺りだろうか。ヨーロッパは一番神の存在が多かった場所だ。当然それだけにひとがたくさん居るしその分文明は発達している。しかし月へ行ったあの人里よりも発展している場所はなかった。今やあれから何百、いや数えるのをやめて久しいので、きっと何千年も経っているのに。

 あの人里が如何に異常だったかわかる。

 

(ん?)

 

 私の居る空に向かって飛んでいる存在を感じた。下の方に目を向けるといつの間にか人里の近くに来たみたいだ。そちらの方から気配を感じる。かなり大きな気配。当然ただの人間が空を飛べるわけも無いので恐らくは……

 

 あっという間にそれは私と同じ高度まで飛んできた。かなり高い位置に居たし、何より能力を使っていたのに、迷わずこちらへ向かってきたのは少し驚いた。

 

「……どうも?」

「……」

 

 声を掛けてみてもやってきた彼女は未だ無口を続ける。容姿は目映いほどの紅い髪に同様の色の輝く瞳。髪の長さは肩に掛かるくらい。服装はなんだろう……昔っぽい感じ。前世で博物館で見たどこかの民族衣装みたいだ。ただしそれと違って至る所に金色に輝くいくらかの装飾品がある。きっとそれはこの人物の高貴さを表しているのだろう。そして極めつけは頭の上に載せられた赤色の球体。めり込んでるようにも見える。普通の人はそんなものを頭に乗せない。……普通の人ならね。

 

「……あなたのその目」

 

 その赤い相貌で私を睨むようにじっと見て、ようやっとその口を開いた。そして私の方に手の平を向ける。

 

「その目すごくムカつくわっ!」

 

 そう叫び力の弾丸を私に向けて放ってきた。色は同じ紅。一気に眼前まで迫る。殺人的なまで威力のそれを私は能力で霧散させた。

 

「へぇ、あなた思ったよりや……」

「あのさぁ」

 

 少しだけ驚いた様子の彼女はしかし毅然とした態度のままで話し始めた。

 ので、その話を遮ったら今度は不満げな顔をした。不満を持つべきなのはこの場では私の方だろう。避けなきゃ普通の人なら死んでたぞ。まあ、私は死ねないわけであるが。

 

「神様でしょ? あなた」

「ええ? そうよ」

 

 予想通り人間じゃあ無かった。というか溢れ出るその神の力が私の能力越しの肌にもひしひし伝わってくる。

 

「ならいきなり攻撃って凄く理不尽じゃあない?」

「そうね。でも無性にあなたの様子に腹がたったのよ。そのまるで全てを諦めたような目にね」

 

 ふむ。どうやら私の態度が気に入らなかったらしい。しかしそれだけで致死性の攻撃をしてくるのはどうなのだろうか。仮にも神様でしょ?

 

「人間相手にはそんなことをしないわ。こんな所を飛んでるってことはあなたもそういう(・・・・)者でしょ?あなたが何かはわからないけれども。上手いこと隠してるのね」

「まあ、そうだけども。でもなんでまた私の所に来たのさ?」

「目の良い神官があなたを見つけたの。それで気になったから見に来たのよ。わたしの国の上を無断です飛ぶ不敬な輩の顔をね」

 

 どうやらこんな上空まで、そして私の能力を突破して確認できるような神官が居るらしい。

 人間なのか?もしそうならやはり人間は侮れないね、本当に。

 

「で、どう?私としては何も危害を加えるつもりは無いんだけど」

「そうみたいね。その死んだ目をみればよく解るわ。でもね」

 

 彼女は両手を広げる。その背後からまるで後光が指すかのように紅の光の玉が浮かび上がる。

 

「その態度ムカつくから叩き直して上げるわよん!」

 

 その圧倒的なまでの力の塊が私に向かって襲い掛かってきた。

 ああ、戦闘開始だよ。

 ……私悪くなく無い?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほんの暇つぶし程度に空まで飛んできた。

 神であり国主である私はそれなりに仕事が有ったわけだが、すっぽかして息抜きをしたかった。

 そのついでに上空を飛んでいる不振な輩をさっくり処理してしまおうと思った。

 別に殺そうと思っていたわけではない。どうせ弱小の神が神界から降りてきて迷子になっているとかだろうと思っていたからだ。

 ここは私の土地だと威嚇して追っ払うなり、もし本当に迷子なら案内程度はしてやろう位の気持ちだった。

 しかし、実際はどうだ?

 

「あー、神様なのにそんな程度?」

 

 そのムカつく目で私に語りかけてくる真っ白な少女。

 先程からいくら攻撃しても一向に当たらない。まるで玉が避けるかのように軌道を取っている。きっとそういう類の力を持っているんだろう。

 

「期待はずれだなぁ。神様って言うんだからてっきりもっと凄いのかと思ったけど」

 

 凄くムカつく。攻撃も当たらないのもそうだし、恐らくは一妖怪の分際で私を愚弄していることも。

 そして何よりその全てを諦めたような目が気に食わない。

 

「そこまで言うなら見せてあげるわ」

 

 このままじゃ女神の名が廃るわ。

 とりあえずこいつをぶん殴って説教をかましてやりたい気分だった。

 上に飛び上がり相手より高く位置を取りそして頭上に手を突き出す。そうそう見せることのない全力を込め、その圧倒的な量の神力によってそれを形作る。そうしてできるのは巨大な三角錐の塊。

 

「トリニタリアンラプソディ!」

 

 そしてそれを投げつける。込めた力のせいで風が荒れ狂う。一直線に相手の元へと向かってゆくそれ。

 恐らく直撃すれば無事では済まない。そして先程みたいに避けようとその後に力が分裂して襲う仕組みになっている。この攻撃は避けることは出来ない。魔法の神を舐めるなよ。

 

 さあどうだ?これで少しはその腐った目に違った感情を呼び起こしてみろ!

 

 そして私のその力を目の当たりにした彼女は私の予想通りようやっとその顔に感情を見せた。

 

 

 彼女は笑った。笑って喜んでいた。

 

 

 そしてその直撃を受けた。

 

「なっ!」

 

 さっきまでの曲芸じみた力でアレだけ避けていたのに、それを一切使わずに私の一撃を甘んじて受けたのだ。

 何故?アレをまともに食らったらただじゃ済まない。それだけの力を込めた。

 それを彼女だってわかっているはずなのに……

 そのまま遥か下にある地面へと私の放った三角錐の塊は突き刺さって行った。腑に落ちない感情を胸に私はその後を追っていった。

 

 地面へと降り立つ。そこは先程の衝撃で恐らくは元草原だった場所がその面影を残していなかった。

 

(街から離れた場所じゃなかったらまずかったわね)

 

 つい夢中になっていた。もしもっと街の近くでやってたら被害は出なくとも、神官にグチグチ叱られる。それは非常に面倒くさいのだ。

 出会った頃とは打って変わって面倒くさい大人になってしまったものだ……と街で待つ神官に思いを馳せながら、辺りを探索する。

 

 砂埃が舞い、今ひとつ様子が確認できない。一体彼女はどうなったのか。それが非常に気になった。どうしてあの妖怪少女は笑ったのかも。

 徐々に晴れていく煙の中その様子がはっきりとしていく。

 

「!」

 

 今日だけで何度驚かせられるのだろう。私の全力を直接受けた彼女はその体をその血で赤く染めていた。一瞬前までは。

 その少女は今、全てを巻き戻していた。

 圧倒的な力の流れを感じる。それによって彼女に刺さっていた三角錐も無残にも破壊される。

 そうしている間にも彼女の体は薄い紫色の光に包まれ見る見るもとに戻っていく。回復の術式では無い。あれはそんなものじゃない。明確に元へと戻っているのだから。

 あれだけの術を施すのにどれだけの思い(・・)が込められているのか推し量るに足らない。

 しかしその思いの籠もった術式で生き返った少女の顔は……そう、酷かった。

 

「……ああ、やっぱ駄目だったかぁ」

 

 その白い服まですっかり元に戻った彼女はぼんやりと空を見上げてそう呟いた。

 不気味だったが……ぼやいた彼女の顔を見て私は胸を締め付けられた。

 彼女の事は何も知らないが、その表情には見覚えが有った。

 彼女はこちらを見て私にこういった。

 

「他に何か無い?私を殺せそうな技」

 

 それは壊れてしまいそう(・・・・・・・・)な人がする顔だった。それはどこまでも儚い物で酷く人間的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一つこの戦いが勃発した時に思いついたことがあった。それは神の力なら私は死ねるんじゃないか、ということ。

 自殺が無理なのは当然以前確認したことだけど、他人に殺される事は確認していなかった。ならもしかしたらが有るかもしれない。ましてや神のその理不尽なまでの力ならば尚更逝けるのじゃないか。

 結果は駄目だった。やっぱり私の死への道は直前で『向き』を捻じ曲げられたのだ。

 

「……あぁ、やっぱ駄目だったかぁ。他にない?何か私を殺せそうな技」

 

 正直結構期待していた。だって神様だよ?それで無理ならもう無理じゃんって話。

 

「あなた……一体何なのよ?」

 

 その神様が私に問いかけてきた。

 

「私はただの妖怪だよ」

「ただの妖魔風情がそんなことできるはずないわ」

 

 そう言われても私には解らないのだから仕方ない。理由が解るなら既に死んでいる。

 

「で、あるの? 私を殺せる?」

「あら、当たり前じゃない。私は魔法を司る女神よ。他に幾らだってあなたを殺す力は有るし、殺せる自信も有るわ」

「おお、それなら……」

「でも、私は貴女を殺さないわ」

「は?」

 

 殺せるというなら殺してくれよ、いや本当に。

 

「多分、正確には解らないけれど。貴女は生きないといけないわ。誰かがそう強く願っている。だってそんな大仰な術が掛かってるんだもの」

「私は今死にたいんだけど? 女神様は願いを聞き届けてくれないと」

「貴女の願いよりその術を掛けた人の願いを尊重するわ」

 

 どうして、ねえ。どうして殺してくれないの?私はこんなにも死にたい、この女神はそれが出来る。ああ、どうして。

 

 なんだか妙にムカついてきた。この女神は私を殺せると豪語するくせに殺さないと言うのだ。

 いきなり私に攻撃を仕掛けた挙句、結局私を殺してくれなかったのだ。いや、後者は言いがかりかもしれないけど、それでもいきなり殴られたようなもんな訳で……

 そこで私は気づく。久しぶりに私の心に感情が宿ったのだ。

 

「……あら、やっとまともな感情が顔に宿ったわね」

「お陰様でね」

 

 その感情は怒り。道端で突然殴られたら当然の感情だが久しく忘れていた。

 

「ねえ、あのさ。やっぱり私のこと殺してくれないの?」

「ええ」

「そっか。じゃあさ」

 

 そんなことよりも私は今無性に。

 

「一発殴っていい?」

 

 こいつを殴りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、やれるものならやってみなさい!」

 

 そんな顔もちゃんとできるんじゃない。それを見た私はなぜだか無性に嬉しくなった。少しばかりこっそり手助け(・・・)したものの、まだこの子は壊れてはいない。

 感情を思い出した彼女はようやく私のことをちゃんと認識したようだ。女神を前にして無視なんて不敬過ぎるわよ。

 

「妖怪風情が私に勝てるならね!」

「妖怪……ねぇ」

 

 そういった白い少女は目を閉じそして力を開放した。

 

「これは神の……あら、そんな不安定な(なり)でよく神になれたものね」

「煽ってくれるね。やっぱり一発殴りたいや。なりたくてなったんじゃない」

 

 そう彼女がまとっている力は神力。それは本来妖怪が持つはずのない力。

 

「……ふふ、はははっ!」

「なに? 急に笑って。私今凄い気が立ってるから今すぐにでもぶん殴りたいんだけど」

 

 正体不明の力、神力。彼女の事は気になる。それにあの絶望を貼り付けた様な顔は女神として庇護欲をそそるものでもある。

 でもそれとは別に抑えられない感情も有る。

 いったい何時ぶりだろうかこんなにも……

 

「いいわ! 受けて立とうじゃない! 殴れるものならやってみなさい!」

「そっちが先に手を出して来といて何が受けて立つなんだか。ああ、でも一発殴らせてもらう」

「死なない程度しか取り柄がないのにできるのかしらん?」

「やるんだよ。こんなにプチンと来たの久しぶりだよ」

 

 私も久し振りよ。こんなに楽しいのは。

 最近ご無沙汰だった内なる闘争心に火がつく感触がした。

 

「貴女は私に喧嘩を売った、それだけの理由で貴女を地に沈める!」

「沈めてくれると助かるよ。生き埋めは嫌だからしっかり殺してね。

 てか先に喧嘩を売ったのはそっちでしょ。良いから黙って殴られろ。そして私を殺せ」

 

 最近は事務仕事ばかりで鈍っている。

 だから、少しくらい羽を伸ばしても良いわよね。そう宮殿で待つ神官たちに心中で言い訳をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は再び空中。紅の女神がその膨大な力で弾幕を張る。私はそれを能力ですべて払い最大限に加速したまま突っ込んでいく。それで一気に彼女に近づき腕を振りかぶる。

しかしその腕は空を切る。そして直後に再び襲いかかる弾幕。それを能力で避け、飛んできた方向に先程の真似をして作った弾幕を放つ。初めてやったけど意外にうまくいった。しかし彼女は前に突き出し紅の半透明な壁のようなものを張り弾幕を防ぐ。

 

「移動速すぎない? 神って皆こんな理不尽なの?」

 

 彼女は普通に私の拳を避けたのだ。その身体能力はもはや可笑しい。

 

「神だからそんなもんよん。それより私と互角にやりあう存在、しかも妖魔なんて初めて見たわ」

「全然互角じゃないけどね。というかまるで妖怪じゃなかったら居るみたいだね」

「そうね。西方の神々なんかと大昔にやりあったことが有って、ね!」

 

 先程見たあの三角錐を投げてきた。私はそれを避ける。直後それは背後で弾け光のたまになって私を襲う。

 

「くっ!神のくせにこんな卑怯なことしても良いのかな!」

 

 その弾丸の向きを操りすべて彼女の方に返す。幾つか直撃してしまったので痛い。自分の攻撃を返された彼女は何ということは無いように再び盾を張って防いだ。

 

「神は何処までも傲慢で有るべきなのよ。そうしないと人々に信仰されないわ」

「私は謙虚だから神には成れないね」

「すでに半分神様みたいなもんじゃないかしら?」

「だからなりたくてなったんじゃないって」

 

 わたしは手のひらに力を集め1つの炎弾を作り投げつけた。それを紅の女神はその光の盾で防ごうとするが

パリンッ

 

「なっ!」

 

それは盾を破りその向こう側の彼女に激突した。狙いはボディ。ナイスヒット。

 

「ふぅ、やっと当たったね」

 

 顎まで垂れる汗を手の甲で拭う。

 能力で盾に弾かれるという『向き』無効化するように炎弾に仕組んだのだ。しかしこんな能力の使い方だときっと長く持たないなぁ。

 

「こうでもしないと当たらないって……理不尽な」

「うふふ、攻撃を貰ったの一体何年ぶりかしら?」

 

 ようやっと直撃を当てられたが、しかし私の苦労を嘲笑うかのように彼女はピンピンしている。多少服が傷付いていてもそれ以外余り効いた様子はない。

 

「一体殴れるのはいつになるやら」

「その時が来ると良いわね」

 

 

 

 

 

 

 あれから一体どれ位経ったのだろうか。正確な時間はわからないけれど随分と長い時間戦っていた気がする。

 

「やるわね。久しぶりに楽しいわ!」

「ゲホッ……私は、全然楽しく無いよ。大体戦いは好きじゃないんだ。家でのんびり過ごしてたほうが性に合うの」

「それだけの力を持っていながら何を言うのかしらん?」

 

 何だ。この女神バトルジャンキーかよ。

 

「悠久の時を生きる神は偶にやんちゃしたくなるのよ」

 

 そんな子供みたいな可愛いもんじゃないよね。

 

「でも残念ね次で終わりだわ」

「そうだね」

 

 なんとか継続して来たこの戦いも私の息が切れてきたしもう長くは続かない。次の一手で何が何でも終わりになるというのは直感的にわかっている。

 

「私を楽しませて頂戴!」

 

 そう言って振り上げた右手。その先にあの破壊の三角錐を無数に創り出す。アレはさきほど見た技。しかし力の総量はさっきと比べ物にならない。というか攻撃用の技がある時点で女神として可笑しい気がするんだけど。

 

「トリニタリアン、ラプソディッ!!」

 

 その莫大な力の弾幕を私に浴びせる。対する私も炎弾の弾幕で応戦する。紅と薄紫が空中でぶつかり合う。

 

「くっ…!」

 

 やっぱり押され気味だった。それも仕方がない。なにせ地力の時点でかなり差があるのだから。

しかし今はそれでいい。

 

「この戦い私の勝ちみたいね!」

 

 その様子を見た女神は勝ち誇るように笑う。そうだろうきっとこの戦いは私の負けだ。

けれど私の目的は勝つことじゃあない。

 

「そうだね……でも」

 

私の眼前に力の壁が迫ってくる。しかしそれはもう関係ない。

 

「勝負は私の勝ちみたいだよ」

 

何故なら私はもうそこに居ないから。

 

「なっ…!」

 

 私は既に紅い女神の眼前に居た。

 驚きでその紅の双眸が見開かれる。そして動きの止まる女神。

 

「歯食いしばれこのクソ女神!」

 

 スキだらけのその顔面に振りかぶった私の左拳で殴りつけた。精一杯力を込め尚且つ能力を最大限使ったその拳は女神を高速で地面に叩きつけた。沈み込む地面に舞う砂に石。地形を湾曲させたその中で女神は動きを止めていた。きっと全然死んでないだろうけど効いているようだ。

 

「うっ……」

 

 一仕事終えた私にも限界が来たみたいだ。酷い目眩と頭痛。大体あんな能力を酷使して余力なんて有るはずない訳で。全身に力が入らなくなる。

 

 さあっと感情の波も引いていく。やりきった余韻と共にふと思う。私あんなに怒りやすかったっけ?

 でもとりあえず、一発殴れたので満足かな……

 

 地に落ちていく途中で私は気を失った。

 

 




戦闘描写って難しくないですかか


今日か明日に次話投稿します。
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