オリジナル展開が続きますが何卒よろしくお願いいたします。
目をさますとそこには知らない天井が有った。
ってこの表現、結構色々な小説で見たけれど一体始まりは何なんだろうね。しかし上手いものだと思う。この一行で割りかし色々なことがわかる。
先程まで寝ていたこと。天井が眼前にあるということで現在横になっていること。そして知らない天井ということでから知らぬ場所にいることを示唆している。
……とまあ色々言ったものの私は前世では理系男子だったので、文章表現には乏しい。だから果たしてこの考察が合っているのか分からない。
「というか本当にここ何処……?」
ようやっと意識がはっきりしてきた。上半身だけ起き上がり周囲を見渡す。周りは細かく文様の意匠が凝らされた壁に天井。素材は石。私が今寝ているベッドと反対側には窓がある。まるで古代の遺跡みたい。いや、きっとそれそのものなんだろう。どうやらその中の部屋の一つに居るみたいだ。
「起き上がられましたか。お体の調子はいかがでしょうか?」
声のする方に目を向けると編みカゴを持った女性が部屋の入口から入ってきた。格好は文様の意匠の凝らされた上下のつながった服に白いエプロン。袖は膨らんでいてまるで中世の映画に出てくる王城の侍女みたい。
……というよりやっぱり本物の侍女なのだろう。
「あーうん。もう大丈夫だよ」
「そうですか。それでしたら申し訳ありませんがこちらへ。王が王間にてお待ちです」
そういって促される。いまいち状況がわからないが、私は彼女に連れられるまま部屋を出た。
「ほぇ……」
思わず間抜けな声がでる。そこは部屋と同様石で出来た廊下だった。まるでファンタジー小説に出てくる王宮みたいな感じ。見回すとやっぱり複雑な文様が至る所に描かれていて、その整った様がとても芸術的に感ぜられた。圧巻だ。窓があまり見当たらないので一体どこから光を入れているのかわからないが術か何かを使っているのか、廊下は明るい。
しかし明るいはずなのに先の方はよく見えない。つまりそれだけ長く広い。これだけの建物を有するというのは疑いようもなくかなりの権力者ないしそれに準ずるものだけだろう。
そこそこ距離を歩いた後私たちは壮厳な、恐らくは金属の扉の前に来た。その扉の前には二人の騎士が左右対称に構えていた。とここで今まで前を歩いていた次女は私の方を振り返る。
「この先で王がお待ちです」
そう言ってその侍女は一礼した後横側へと掃けていった。それと共に騎士が扉に手を掛ける。そしてその扉からがチャリと音がしてゆっくりと開いていく。そ空気がガラリと変わったのを感じる。
徐々に中の様子が解ってきた。そこは円上の広間だった。その真ん中に周りよりも数段高い台座があり、そこまでは紅い絨毯がひかれている。そのレッドカーペットの両端には鋼の鎧を着た騎士が左右対称に並んでいた。天井にはやっぱり色々な意匠が施されており、また一部吹き抜けになっていて、そこから入る光が台座を照らしていた。
その台座の中心には大仰な椅子があり、そこに彼女は座っていた。
「やっと起きたのね」
ピリピリと醸し出される圧迫感。まるで空気自体が重くなったかのように息苦しくなる気がする。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。」
ただ、その右頬にはガーゼらしきものがある。なんとも間抜けさを感ぜざるを得ないが雰囲気がそれすらも威厳に感じさせる。……嘘、ちょっと盛った。何せアレは私がつけた傷なのだから。笑いを堪える。
「私はこの国の王でありこの地を治める神」
そんなに大きな声と言うわけでもないのにやけに響く声。
「ヘカーティア・ラピスラズリよ」
紅い女神はそう名乗った。
二話 目をさますとそこには知らない天井が有ったというテンプレなアレ
数時間後……
「あはははっ!儚ちゅあーん!」
「ぎゃ!やめろ!この駄女神ッ!」
私は酔っ払いに絡まれていた。
……どうしてこうなった。
私が気絶した後、ヘカーティアはすぐに起きたらしい。流石と言ったところか。結構全力で殴ったのになぁ……あの後2日も寝ていた私とは大違いだ。というわけで起きた後、地面に転がってる私を見つけたヘカーティアは、私を担いで自分の
いや、なんで。
「あのさ、私が言うのも可笑しいんだけどさ。放っておこうとかトドめ刺そうとか思わなかったの?」
あれだけ死闘を繰り広げた相手を普通自分の家に上げ、尚且つ看病までするだろうか?
「そんなこと思わないわよ。元々ちょっと暇つぶしに出ただけだったし」
とのこと。あの死闘は彼女にとって暇つぶし以外の何物でも無かったらしい。
えええ……確か私一回殺された気がするんですけど。
「あれは貴女がわざと受けたんじゃない。それに結局死ななかったし。」
まあ確かにそうだけど……ねえ? そんなサクサクころころしてしまって良いのか。相手が妖怪だからそんなもんなのか?
「まあ楽しかったから良いでしょ?」
全然良くないんだけど。しかし神は傲慢。そんなことをお構いなしだ。
「さてと……皆の者下がれ」
打って変わって声に威厳を含ませ声を放つ。それで脇に控えていた騎士や侍女たちが下がっていく。
「……この様な異形の者と貴女様を二人きりにするわけにはいきません。」
ん?一人だけ残ったみたい。それはへカーティアと似たような服を着た青年だった。当然いくらか彼女の物より豪奢さは落ちるが、地位的に結構高そうな感じ。そして何より目立つのはその目の色だった。それは何処までも見渡せるような透明さを持っていてかつ虹色だった。
「私が問題無いと言っているのよ。それに口答えするのかしら?」
目を細め鋭い視線をその青年に送るへカーティア。それに青年は少しだけ肩をふるわせた。
「……出過ぎた真似をしました。失礼致します」
そう言い残しその青年もこの間から出て行く。そして扉が閉まる。その扉の閉まる音がやけに重くてまるでここに閉じ込められたように感ぜられた。
「さてと……邪魔者は居なくなったわ」
「……何をするの?」
彼女はそう言い王座から立ち上がった。そして懐から何かを取り出す。思わず少し警戒してしまう。が――
「飲みましょ?」
彼女が取り出したのは大きい酒瓶だった。
「女神の癖に悪酔いするなっ!」
と言うわけで先ほどの続きに戻る。さっきの威厳はどこへ行ったのか。
「んもう。アレはアレで結構無理してるのよ?でも周りの皆が格好が付かないからちゃんとしてくれって煩いのよ」
彼女には彼女なりの不満があるらしい。
「……飲み過ぎじゃない?」
でもその気持ちはわからなくも無かった。私たちの周りには空になった酒瓶がいくつも転がっていた。しかし私はほとんど飲んでいないのだ。つまりこの殆どがこの女神のものということ。
「まだまだこんなの序の口よ。儚ももっと飲みなさいよ」
「いや私は……」
見た目は少女でも言っていることは酒を強要するオヤジ上司と変わらない。
「はい、どーん!」
「う、ごぼっ」
酒瓶を口に突っ込まれた。
その細い腕から想像できないが、しかしそこは神。純粋な腕力で私が叶うわけもなく、為す術ないまま大量の酒が体内に流れていく。
……いやいやいや死ぬ!死ねないけど死ぬから!
「ん! んん! げほっ、ちょ、ギブ、ギブッ!!」
「あら? まだ半分残ってるわよん?」
「誰が一気飲みするって言ったよ!ここは地獄か!」
「地獄が何処かは知らないけど、こんなにお酒を飲めるところならきっと良い所ね♪」
などと的はずれなことを言う女神様。フフフと聞こえるその笑い声と無邪気な顔がとっても恐ろしや。女神じゃ無くて魔女なんじゃない?
「失礼ね私は女神よ。確かに魔法は得意だけれど。それより最後にあんな不意打ちを食らわせる貴女のほうがよっぽど魔女よ」
そうでもしないと殴れなかったのだから仕方がない。
「最後どうやって移動したのかしら? あんな魔術見たこと無いのだけれど。」
「ああ能力でこう、ね」
私は空間を開いてみせる。
「なにそれすごく便利じゃない!」
「まあね、ただ疲れるんだよ」
ただ開くだけだったりものを出し入れするだけならそれほどでもない。けれど私そのもの通すくらいに大きくするとゴッソリ体力が持って行かれるのだ。大きさというのは物理的な大きさじゃ無くもっと概念的な物。
「なんて能力なのかしら?」
「『あらゆる大きさと向きを操る程度の能力』らしいよ」
「らしいって、なんだか他人事ね?」
自分でも能力の有効範囲が分からない位には得体の知れない能力。無理をすれば概念も弄れるような私にはかなり過ぎた代物。
「能力はその人の捉え方次第で割と色々変わったりするからもっと色々出来るかもしれないわよ」
「へぇ。そうなんだ?」
意外と適当なのね。つまり私が操れる『向き』が徐々に増えているのは私の中の能力の捕らえ方が少しずつ拡大しているせいなのかもしれない。まあ変わると言っても限度があるのだろうけど。例えば私が相変わらず死ねないようにね。
「でもなんでそんな力持ってるのかしら?」
「私も知らないよ」
生まれ変わったときから持っていたので何故かは私には分からない。謎だ。
「一妖怪には勿体無いくらいの力ね。どう? せっかくなら神にはならない?」
「だからなりたくないって言ってるでしょ」
神というのは信仰を集めることで成るもの。既にいくらかの信仰を集めたことのある私は、なろうと思えば神様になれるらしい。
……神ってそんなに適当でいいの?仮にも私は正反対に位置する異形の者、妖怪なのに。
「そんなもんよ。……そうだ、儚が力を見せてくれたのだし、せっかくだし私も見せようかしら?」
「あれ?ヘカーティアも何か能力を持ってるの?」
と言うか能力無しであれだけ馬鹿みたいに強いのに…能力要る?この世界の神様力の配分間違ってない?あ、神様目の前にいたわ……
「あんまり
そう言って立ち上がったヘカーティアは両手を広げる。その両の手のひらに何かが集まっていく。それは黄色と青の球体。そして少しだけ光に包まれた後……
そこには三人のヘカーティアが立っていた。
「分身の術?」
軽い分身くらいなら私にもできる。昔妖術を研究していたときに私も身につけたから。しかしこれはそうじゃない。
「違うわよ。私の能力は『三つの体を持つ程度の能力』よ」
「三人で出るのは久しぶりね」
ということらしい。ヘカーティアボイスがステレオで聞かされるのでとっても落ち着かない。
つまりこの髪色だけ違う三人は全員ヘカーティアそのものということだ。
ん?それはつまり……
「…ちなみに力は?三分の一づつ?」
ヘカーティアは不敵に笑う。
「残念、そのまま三倍よ」
ですよねぇ。能力の名前的にそうだと思った。と言うか…
「やっぱり私の完敗じゃんかぁ。」
あの三倍の強さで戦われたらもう、一発殴ってやるぜ!とかそういう次元じゃない。瞬殺である。つまり精一杯の私に対して彼女はこれだけの余裕を持って対決していたわけだ。
「ふふ、でも一瞬でも私を倒したんだから大したものよ」
褒められても嬉しくないなあ。
「さて気を取り直して飲みましょ。……そうね。」
そこで何か思いついた様子のへカーティア。
「よっと」
「へ?」
と気づいたら私の後ろに回られていた。そしていつの間にか私は彼女の膝の上に座っていた。
否、拘束されていた。
「ずっと気になってたのよね。うふふ、やっぱり髪サラサラね~♪すんすん。」
「ひゃっ!嗅がないでよっ!うわっ臭い!?」
彼女より体の小さい私は抱えられる。そして後頭部に息のかかる感触がした。酒臭い。
てかなんかスキンシップが激しいんだけど!なんだかイケナイことしてる気分になってくる。
「肌も真っ白ですべすべじゃない。羨ましいわね~」
「いやへカーティアも……というか黄色のへカーティアまだ酔ってないよね?」
「足もさらさら」
「いや、そっちのも……ちょ!触るなぁ!」
三対一。敵うわけも無く。私はこのあと盛大に彼女三人に弄ばれることになる。ああ、確かにこんな様子を周り人々に見せられない。人払いしたのは正解だ。
「このエロ女神いぃぃ!」
というか王であり神である者がこんな奴でいいのかな……
あの後激しく交わり有った後(ただ私がへカーティアに良いようにされただけ)更に気の遠くなるほど酒を飲んだ私達。ようやっと満足したへカーティアは私を解放したのだった。
「頭がふわんふわんするよ……」
何とか先の寝床に戻ってきた私。廊下で何回躓きそうになったことやら。
当然前世では当然ながら酒を飲んだことは(ほぼ)無い。今生でもあの二人に少し付き合う程度でしか飲んだ事は無かった。こんなに飲んだのは初めてだ。
「……二人と言えば。永琳元気かなぁ」
ごろんと真っ白なシーツのベットに横になった私は窓から遙か遠くに見える月を見つめる。もうあれから人の身にとっては悠久とも言える時間が経っている。けれど月夜見の計画が成功しているなら彼女たちは今もあの月の何処かで生きているのだろう。しかしあの最後のアレが月夜見の計画だとしたら永琳は向こうで衝突しないだろうか。心配である。
ああ、へカーティアに振り回されたせいで大分心の中が落ち着いた気がする。こうして過去を見返せる位にはね。妖怪は精神的な生き物、だなんて永琳は言っていたっけ。もしかしたらこれを見越してへカーティアは私を飲みに誘ったのかなぁ……
なんて考えたけどあの酔っ払いは全然そんな事は考えてないね。
「これからどうしようかなぁ……」
だんだんと迫る眠気の中ぼんやりと考える。
私は今何もない。やらなきゃいけないことも無ければ、生きる意味も無い。でもやっぱり死ねないわけで。
「やっぱりこの呪いかなぁ……」
精々この呪いを解くために色々調べるぐらいだろう。死ぬために自ら動くというのは随分おかしな話だけど、元々私はそうやって死んだはず。当面の目標をこれに定めよう。
(当分へカーティアに振り回されそうだけどね……)
どうにも彼女に気に入られてしまったらしい。それに私も彼女のことはなんだかやっぱり憎めない。まだ出会って数日しかたってないのに妙な信頼というか何というか繋がりがあった。
(まあ今は寝よう)
考えても仕方が無い、か。とりあえず寝よう。頭はぼうっとしてて体は火照っている。お世辞にも体調が良いとは言えないけど久々に穏やかな気持ちで寝れそうだった。
きっと次起きるときは人生初の二日酔いに苦しむだろうなぁ、なんて思いながら微睡みへと落ちていった。
殺気を感じた。
ガキンという、金属が私の能力を纏った首とぶつかる硬い音が響く。
「何ッ!?」
そして誰かが驚愕する声。私はゆっくりと目を開ける。その音の元は私の首元に振り下ろされた剣、そしてその持ち主のものだった。私をまたいでベットの上に立っているのは先程ヘカーティアに一言申した青年。
「ヘカーティアの指示じゃ……無いよね。」
当然だ。よくよく考えれば彼女は徹頭徹尾私に殺意を向けたことはない。私は能力で剣を止めつつその相手に語りかける。
「主に内緒で客人を暗殺なんてしても良いの?」
「……お前は客人などでは無い。私には見える、隠しているその膨大な力がな!」
殺気を隠そうとしないその青年。私はその目を見つめる。その両の目は虹色に光っていた。そこに映る私の薄紫が薄れるくらい。
場違いながらそれを綺麗だなと思った。
およそ人間の目とは思えないくらいに。
絡み上戸(物理)なヘカちゃん。
批評・アドバイス有れば是非。