東方死人録   作:nismon

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一章 薬師とか穢れとか
一話 輪廻転生と言うかなんというか


 

 

 俺は死んだ。

 

 あれ、なんで?

 

 いや、死にたかった事は否定しない。

 そして色々と人生が詰んでたのも事実だ。

 

 ……いや、やっぱり死ぬべくして死んだんじゃん。

 

 いやいや、待てさっきまで確かにそう思っていたし、自分に厭世的なところがあるのも認めよう。

 だけど……いや……まあ、死にたくなる位の理由は有ったし、もう人生が詰んでる面も……まあ、有ったし。

 

 ああ、これだけ並べると考えるまでもなく死ぬべくして死んでるね?

 

 そう結論が出てしまった。やはり死にたくて死んだらしい。どこまで来てもどうしようもないのが俺らしい。

 

 しかし、である。

 この際その細かいところはどうでも良い。取り敢えず「死んだ」という事実が大事だ。多分。

 

 現にお分かりのように現在俺は思考(・・)している。この思考と言うのは人間であれば脳が活動していないとできないわけで。

 そういえばどこかの大学の研究で意識は生物的なものに依存せず空気中に漂う粒子のようなものだなんて研究結果もあったか。だとしたらもしかすると思考は脳に依存しない……?

 

 いやいや、そうだとしても、そうだとしなくても、言いたいことは変わらない。

 だって思考だけでなく俺は今視界を認識している。つまり物を、景色を姿を見ている。

 そこは眠る前とは異なり、蒼々とした木々に囲まれていた。

 さらに言えば足は地に着いている感覚があるし頬は風を感じている。青い香がほんのりした。空気が良い。木々の葉の擦れる音も聞こえる。

 

 さて、長々と回りくどく書いてきたが要約するとこうだ。

 

 俺は生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、死んだか否かなんて自分的にはもうどうでもよかったりする。物事に程よく無頓着なのが俺の長所である。そう自分に言い聞かせている。まさか生に無頓着になるとは思わなかったが、とりあえず生き返ったなら生きていくほか無いわけだ。

 当たりを少し見回す。どうも様子がおかしい。

 もし誰かが死に際の自分を見つけたのなら真っ先に病院に運ばれるはず。つまり、それがないと言うことは実際はちゃんと死ねた可能性が高いと言うこと。

 

 病院に送られ、治療され回復し、それからこの森に来た。そんな記憶は欠片も存在しない。

 じゃあこの現状をどう考えるか?

 ああ、安直に考えよう。

 

 もしかして転成したのでは?

 

 転生って言ったらなんかワクワクしてこない?自分はしてきた。少なくとも生前は高校生だった。

 ライトノベル物でありきたりな設定としては強い能力を手に入れて可愛い仲間達と共に俺TUEEE!!しながら悠々と過ごしていくのが鉄板。

 つまり、俺をこの先待つのはハーレム生活!!?

 ……だなんてテンションが上がったように思えるが、実際にはそんなに興奮してない。

 ハーレムと聞くとすぐ頭によぎる事が有る。 

 ハーレムは現実でやると本当に大変なのだから。生前、知人が複数人から好意を向けられて胃を痛めていたのを見ている。そして彼はそのハーレム要員以外を好きになったんだからもう悲惨。愛憎入り乱れる昼ドラ展開を避けられず大分バイオレンスになりやがってた。カッターナイフを持ち出すメンヘラ女子は実在するんだよ。そう、カッターナイフマジ向けられるとマジで怖いからな?

 人に刃物を向けるのはいけない事なのでマジで止めましょう。

 

 閑話休題。

 前世の話より今世の話の方が問題だ。

 

「しかし、全く分からないなぁ。ここどこだよ」

 

 転生開口一番、愚痴を漏らす。

 そう呟いた言葉は周りの森に吸い込まれていく。そういえば何か声が高い気がするけど気のせいか……?

 しかし、本当に人っ子一人居やしない。ハーレムどころの話ではないのである。

 周りを見渡しても森、森、森、たまに岩。

ここはどうやら森の中らしい。上は開けていて、空も見えるのでそんなに暗くはない。今は昼時だろうか?まだ日が高かった。

 

 キャオオオ

 

 と、その時上空を大きな鳥が飛んでいった。鷲なんかよりずっと大きい体躯。そして鋭い嘴《くちばし》。まだまともに生きていた幼少期、図鑑や恐竜キ○グで見かけたことのある姿だった。

 

 プテラノドンである。

 

 

 

 ……はあああああああ!?

 何が「……である」だよ!落ち着いてる場合じゃねぇよ!意味がわかんないよ??

 あれぇ、ああいう感じの生物って何千年か前に絶滅してなかったっけ?

 

 ああ、そもそも違う世界の可能性があるのか……?ここは恐竜の世界……?

 

 恐竜が人を食うのかどうかわからないが、もしここがそういう世界だとするといきなりハードモードである。

 

 生き返ってすぐ美味しく頂かれるのは頂けない。俺は男な訳だからそもそも食らう方だるぉ?なんてくだらないツッコミを入れつつ。

 取り敢えず見晴らしの良いここに突っ立ってるのはまずい気がした。木々に身を寄せ隠れよう。そして人を探そう。まずこの世界を知らなければならないを

 

 夜になる前に見つかると良いなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰も居ねぇ!!」

 

 虚しき叫びが草木に吸い込まれていく。ひたすら歩くこと二時間くらい。時計はないので正確な時間はわからない。今の場所も周りは森でわからない。というか何もわからない。覚醒してから今まででわかったことは二つだけ。

 その1、人が全く居ない。

 その2、体が子供。

 

 一つ目は言わずもがな。未だに誰にも会っていない。というより恐竜がいる時代に人類って居なくないか……?

 いや待て待て、流石に早計だ。うん、きっと居る。

 

 二つ目は歩いてみて気がついた。まず背が低くなっている。普段もより目線が低い、気がする。でも、この体に最適化させられてるのか余り違和感は感じない。

 あとやっぱり声がやたら高い。成長期前なのであろうか。喉仏もない。

 あとは髪が伸びている。色も白い。肩に掛かるくらいだ。鏡がないのでわからないがきっと見た目は中性的になってるのか?

 そして、体力が以上に増えていた。前世の体力は平凡な物だったが今世は何か違った。

 正確な所は解らないが数時間歩き続けても全く疲れていない。足も痛くないし、汗の一滴もかいていない。現状にはありがたいけど何か人間離れしていたを

  取り敢えず以上が今までにわかったことである。

 ……何も解決してないよ。

 

 ふと思い出す。これまた幼少期にやってた某ポケットなモンスターなゲーム。

 あれのシナリオでひでんマシンがなくて大きな岩が動かせなかった時の気分に似ている。

 ゲームは好きだったがそう上手くは無いし、RPGのフラグの管理も苦手だ。最後は大体攻略本に縋る。

 

 しかし、こちらは現実。攻略本なんてありはしないわけで。

 ちくしょう。全然異世界転生物じゃねぇじゃんか。トントンってヒロイン現れる物だろう?普通。

 

 八方塞がりだけども歩く以外にやることはないのでひたすら歩いていく。

 

「……ん?」

 

 その時耳に微かな音が入ってきた。さっきまでは草木のすれる音や、たまに空を切る恐竜の音ではない。

 今まで聞こえなかった明らかに違う音。そして聞き覚えの有るような音。

 

「水の音だ……」

 

 その音に引き寄せられるように足取りが早くなる。もしかしたら水辺に誰か居るかもしれない。そんな淡い期待を持ちながら。

 

 

 

 

 結果としては結局人はいなかった。

 ただここに来たのは無駄ではなかった。

 

「きれい……」

 

 森を抜けるとそこは清々しい程に開けていた。眼前に広がるのはありえないほど透き通った湖。日の光をキラキラ反射させていて少し眩しい。

 そう大きい湖ではない。むしろ泉といった方が近いかもしれない。

 その透明さと周りを囲む木々のお陰か、とても神秘的に感じられた。

少しの間その光景に見とれて呆けていた。

 

 

 

 

「……そうだ。水でも飲もう」

 

 そういって湖に歩を進める。これだけ綺麗ならそのまま飲んでも大丈夫だろう。それに長く歩いてのどが渇いた。

 湖畔を沿って歩き、水の近くまで行けるところを捜して下りていく。

 ちょうど良いところを見つけたので水際まで降りていく。そこだけ若干草が踏まれているような後が有った。もしかすると他にもこの湖へ来る人が居るのかも……?

 

「しかし綺麗だなぁ……」

 

 硝子のように透き通っている水は表面に空を映し出す。雲の凹凸まで解る。ぱっと見地面に鏡ができたのかと見間違うほどだ。

 

「さてお味の方はどうかな~?」

 

 水際に座り込んだ俺は手を差し出し水を掬おうとする。

 

「って、は……?」

 

 そこで手が止まった。

 何故かって?

 その理由は湖面に映り込むものにあった。

 先程まるで鏡と評した湖面。そこをのぞき込むような形になった今、当然自分の顔が写り込むはずだ。

 実際写り込んでいる。顔らしき物が。

 何故「らしきもの」と表現したのか疑問に思う人も居るかもしれない。

 

 が、わかってほしい。

 だってそれはあまりにも「俺」の顔じゃあなかったのだから。

 

 そこに写っていたのは少女の顔だった。

 

 十代前半だろうか。顔つきと体系からしてランドセルを背負ってても可笑しくない年頃の子供。

 大きな目に柔らかそうな唇。それらが整ったバランスで配置されている。髪は肩口で切りそろえられていて、その髪の色は湖面に写る雲達に負けないくらい透き通った白。目は紫と桃色を混ぜたような少し怪しい色。こちらもまた透き通っている。

 服装は真っ白なワンピース。先程までは何故気づかなかったのか。

 現実離れした目と髪の色も相まって妖精とか人形とか言われても全くもって疑わないような外見である。

 

 めちゃ可愛い。

 だが、しかし……

 

 中身は男子高校生だ。

 

 

 

「意味わかんないんだけどおおおおおお!?」

 

 

 

 俺……いや、 ()の叫びは湖面をほんの少しだけ揺らし、虚しく湖畔の森に響き渡っていったのだった。

 

 

 




2021/03/11 改稿
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