東方死人録   作:nismon

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一万UAありがとうございます。


三話 つり目は好戦的というテンプレが有るとか無いとか

<前回までのあらすじ>

 ピンクに喧嘩売られた。

 

 

 

「さあ、やりましょうか」

 

 キリッとした目に良く通る声。

 威勢の良いピンク髪の彼女は、短く詠唱をし魔法を発動。その手に赤い炎の玉を浮かべた。

 そしてその炎弾を私に向かって投げつけてきた。

 

「わっちょっとちょっと。ストップ、ストップ!」

 

 私がよけた炎弾は玄関前の石床に当たり弾ける。

 

「何よ? まだ言い訳するの?」

「そもそも泥棒じゃないから言い訳も何もないんだけどなぁ……」

 

 私の話を全く信じてくれないので非常に困る。

 ルイズを呼べればこの場は解決するはずなのだけど、どうにも彼女の家には特殊な結界が張ってあるようでドアが開かない。結界のせいで外の物音も伝わっていないだろう。そんなわけで、恐らくドアはルイズ以外には開けられないはず。

 何十年単位で家を空けるのだから、その位の備えは当然だろう。つまり、そもそもルイズ宅に盗みに入るなんて不可能なわけである。

 

「問答無用!魔族なんかにルイズさんの家は荒らさせないわ!!」

 

 でも、人が中にいるときくらい解除されても良いんじゃないですかね! そうすればこんな事にはならなかった。ないものねだりだけども。

 

 そんな事はつゆ知らないであろう目の前のピンクな少女は再び炎弾を構える。

 さっきの数倍の威力を感じるそれを手に、口の端を少し歪める。自分の魔法に自信が有るのだろうか。いやに不敵な笑みを浮かべている。

 彼女の得意気な顔は何処かヘカーティアに通ずる物がある気がする。闘争心が全面に出ている時の笑みだ。その迫力というか本物感は彼女にほど遠く及ばないけれど。

 

 うん、ルイズが整頓し終わるまで彼女は待ってくれなさそうだね。

 このまま戦闘になると辺りが火の海になりかねない。家が燃えないとはいえ、周りの草木が炭と化していたら流石のルイズもびっくりだろうし。

「ああもうっ、やるしかないか。」

 私はそこから飛び立つ。場所が悪すぎる。

「あっ!待ちなさいよ!」

 予想通り彼女は私に付いて来た。おまけに彼女の炎弾も付いて来た。いらない子ですね。

 幕を張るかの如し複数の炎弾を辛うじて避ける。

 そんな炎弾達に眼下の家屋に落ちる前に消えてくれよ、と祈りながら、湖畔の街の上を飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、やっと逃げるのを止めたわね!」

 

 私たち二人は湖畔に有る少し開けた砂浜まで来た。近くに来てみるとその綺麗さがよく解る。落ち着いて写真を撮りたいなぁ……

 

「さあ魔族!私と勝負よ!!」

 

 私の事を指差すと共に、声高らかに宣戦したピンク少女。その自信満々さがもはや羨ましくすら感じる。

 

「ていうかさ、私がルイズの家から離れた時点でもう良くない?わざわざ戦わなくてもさぁ」

「駄目よ! またいつ盗みを企むか知れたもんじゃないんだから!」

 

 企んでないから。頼むから聞く耳を持って欲しい……

 

「はあ……それにあなたさ、あんな街中で火属性の魔法使ってたけど燃え移ってたらどうしたのさ?貴女だって住んでるんでしょ。折角あんなに綺麗な街並みなのに」

「あっ」

 

 一瞬彼女の顔が青ざめる。やっぱり何も考えてなかったんだなぁ。何ともドジである。

 しかし、それを気にする位には常識が有るようだ。良かった良かった。

 ……ならなんでそんな好戦的なんですかね?

 

「……そ、そんなの今はどうでも良いわ! とにかくあんたはこのサラ様がここで成敗してやるんだから!」

 

 サラと名乗った少女は再び私に向かって指をピシリとさす。全く気乗りしない戦いが今火蓋を切って落とされる。

 ……ルイズ、早くかもーん。

 

「はあっ!」

 

 彼女が腕を振るうと、その軌道上から円形に炎弾が発射される。中々の威力だけど色々荒い。収束しきれていないし動きは単純、避けるのは簡単だ。

 

「ちょっとなんで避けるのよ!」

「いや避けなきゃ痛いでしょ」

 

 その言葉に呆れた私は何も悪くないはず。ひたすらに彼女の攻撃を避けまくる。それが酷く気に食わないようだ。

 いや避けないと本当痛いから。恐らく普通の人間だったら死ぬレベルだから。

 

「ちまちま逃げんなっ!」

 

 苛立った彼女は今度はさっきよりも隙間のない攻撃を仕掛けてくる。炎弾で幕を張るかの如し質量だ。見た感じ凄く効率の悪そうな魔法なのにあれだけ展開出来るのは少し驚いた。

 これはメディア直伝、魔法の盾を使って防御するか、いや……魔力の消費が多いか。

 ……仕方ないや、能力を使おう。

 

「な!? な、何で弾の方が逸れるのよ!?」

 

 私は弾幕を能力を使い避ける。いや避けるというより退けるの方が正確だろうか。用は私の近くまで来た弾の向きを変えただけだ。

 ……少しフラリと目眩がくる。

 

「サラって言ったっけ?」

 

 私はじっとりと額に浮いた汗を手の甲で拭う。……思ったより余裕無いね。

 

「もう止めない?私が泥棒って事でも良いからさ」

 

 先程まで避けてばかりだったのは、面倒くさかったのだけが理由ではない。私の体力の方に難が有った。

 ぶっちゃけ全く回復していないのだ。この世界に来るときに気力も体力も根こそぎ持っていかれた。それから二日間寝ただけ。

 一応この世界は魔力の回復が速い。漂う空気の魔力が濃いからだろうか。だから回復は早いのだ。

 だけど、それすら追っ付かない程に私はすっからかんだった訳で。元の世界なら一、二週間は気絶したままだったかも知れない。

 そんな訳で動けるようになったとは言え本格的な戦闘はきつい。いや木っ端魔族なら何ら問題はないのだけど彼女は魔法使いだ。

 術の練度や威力を見るに恐らく魔法使いになってからそう長くは経っていないようだが、今の私に彼女を無傷で止めるのは難しい。

 

「嫌よ! 魔族は私が退治するっ!!」

 

 なぜなら彼女は純粋に私を倒しに来ている。それも本気で。魔族に何か恨みでも有るんだろうか。

 けれど恐らく覚悟は……無いんだろうなぁ

 さっきのガバガバなところといい何処か温い。

 誰かを徹底して殺す覚悟……そして殺される覚悟。もしそれが有ったら今の私は既に一回殺されてるかもしれない。

 だから彼女にそれは無い。

 私がそんな彼女を万一殺すわけにもいかないし、殺されるわけにもいかない。

 彼女が激昂と共に放ったレーザーのようなものを私は再び能力で消し去る。

 

「っ!?」

「なんでそんなに必死なのさ?」

 

 彼女は何故か必死だ。必死に何かのために足掻いている。それは私に似ているようで…いや、やっぱり似ていないや。あんなに私は必死じゃない。

 

「あ、あんたには関係ない! さっさと退治されなさい!」

 

 いやぁ私としては退治されたいんだけど、呪いが有る限りそれは叶わないわけで。

 うーん少し手荒だけどルイズが来るまで眠っててもらおうか。多分同時に私も眠っちゃうけど。

 

「私じゃない魔族に会ったとき無闇に喧嘩を売らない方が良いよ」

「っるさいわね!! アンタのそのすかした態度、気に入らないのよ!!」

 

 どうにも私は酷く敵対視されているらしい。

 必死な彼女は、サラは何処か非常に危うく感ぜられた。

 

「魔族なんか片っ端から」

「若いんだから無茶しちゃ駄目だよ。」

 

 そんなこと言うほど私は年をとってないけどね。実年齢じゃなく精神的な話。

 短い詠唱と共に魔法を発動する。私だってこの数百年ヘカーティアやメディアに教えを受けてたわけで、これでも立派な一魔法使いなのだ。

 

「なっいつの間に!? こんな奴が転移魔法を!?」

 

 私は彼女の後ろに移動した。魔力の枯渇で私自身そろそろ気を失いそう。けれどその前にやることがある。さあ私はその首に手刀を落とす――

 

「二人共何をしているの!?」

 

 ――必要も無くなったみたいだ。

 

「あとは頼んだよルイズ」

 

 そこで私の視界は真っ暗になった。元々少ない魔力、体力諸々が底をついたのだ。

 病み上がりに無理するもんじゃないね。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 私の恩人であり、憧れでもあるルイズさん。そんな彼女の留守中の家に怪しい少女が近づいていた。

 全身真っ白な少女。色々な髪色はあれどあんな白銀の髪は見たことがない。確か神綺様がその様な色と記憶している。そんな風に神様と同じ色をしているなんてますます怪しい。

 彼女からは全くと言って良いほど魔力は感じないが、同時に人間としての気配も感じない。

 つまり魔族……!

 よりにもよって魔族がルイズさんの家に来るなんて!

 魔力を感じられないほどアイツは弱い。そんなちっぽけな奴が留守中の家に近づく理由と言ったら盗み以外に有り得ない。そんなのを当然私が許すはずがない。

 そもそも魔族のことを私が許せる訳なんてないんだから。

 私はコイツを退治することに決めた。魔族の退治なんて近くの森のしょぼい奴らしかやったことないけど、コイツはそれよりも魔力が弱い…気がする。

 コレくらいならきっと私でも退治できる。そう考えた。

 

 ……それは間違いだったんだけど。

 

 炎弾とレーザーを容易く無効化された時点でようやく私は悟った。目の前の魔族は私の数枚上手で有ること、少しバテているようだけど、その気になれば私をいつでも殺せること。

 そして、私を殺す気が欠片もないこと。

 

 ふざけるな。

 

 怒りかまたは悔しさか。私は奥歯を噛み締める。

 先程から向こうから攻撃する事は無い。それどころか私を怪我させないことに気を割いているようにさえ感じられる。

 完全に舐められてる。それが酷く勘に触った。

 自分でも少しちぐはぐなことを言っている自覚はある。でも止められなかった。

 きっと彼女は悪い魔族じゃないのかもしれない。ルイズさんに仇を成すつもりは無いのかもしれない。

 でも止まれない。止まっちゃいけない。魔族と言うだけで私は許せない。

 

 私は魔族を許しちゃ駄目なんだから。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 目を開けるとそこは知らない天井が……

 いや、もうこのくだり良いよね。うん。

 どうやらここはルイズの家の中のようだ。窓から白い街並みと湖が見える。外壁は真っ白だったが内装は木を感じられる温かみの有る造りだ。

 私はのそりと起き上がりふわぁと一つあくびをする。この一つ一つの動作を取っても随分と女らしく……いや、女の子らしく成ったものだなぁと、まるで他人事のような考えが頭に浮かぶ。

 別段しみじみとしてる訳じゃなくただ単にそうぼんやりと思っただけだ。もう前世の体がどんな風だったか余り覚えてな……無くもないか。一体何千年経ったか解らないが割と記憶は確かだ。妖怪の記憶力なのだろうか。

 しかしそんな記憶力をもってしても、転生直前のことは何故かイマイチ朧気なのだが……

 自殺の理由に心当たりは有るから大体の予想は付くけれど。

 そういえば私が女に転生したことに何か理由が有るのだろうか? こればっかしは転生させた神にしか分からない話だが。

 考えても仕方ないので眠気を取るため私は伸びをする。少し心地の良い痛みとともに少しずつ眠気が晴れてゆく。

 

「ふぁあぁ……げぇ、やっぱり怠い」

 

 回復はやはり普段より早い。寝ているベッド近くの窓から差す光は、少しオレンジ色を帯びている。照らされたタンスの伸びる影は長い。ピンクの少女サラと闘ってたときは日は高かったはずだから、時間にすると五時間くらい?

 それだけの時間で目が覚めるのはやはりこの世界特有の何かのせいか。

 それでも怠いのはそれだけ世界の移動が負荷のかかる事だったのであろう。

 

「あら起きたのね」

 

 柔らかな声と共に現れた金色の髪のお姉さん。室内故に白い帽子は外している。

 

「ごめんなさい、無理させてしまって。やっぱり頼らずに私がやればよかったわ」

「いやいや、ルイズが謝ること無いよ」

 

 道中の木っ端魔族くらい取るに足らないものだ。そのことで彼女が気に病む必要はない。そもそも無理だったら引き受けてない。

 それよりやっぱり、あの喧嘩っ早い少女サラが話を聞いてくれれば良かったわけで。

「ごめんなさいね。彼女、サラはちょっと魔族に色々あって……きっと貴女のことを悪い魔族だと思ったんだわ」

 

 まあ、そうだろうね。あの少しちぐはぐな態度と攻撃を見てれば何となくわかる。激しい恨みの籠もった攻撃だったよ、あれは。

 

「根は良い子なの。悪く思わないであげて……っと言っても難しいかもしれないけど」

「いや良いよ。何となくわかるし。彼女が悩んでること」

 

 いきなり攻撃された訳だけどどうにも彼女を憎む気にもならなかった。

 彼女の激しい葛藤がそうさせるのかもしれない。もっとも私がそういった激情に疎いというのも有るかもしれないが。

 

「……貴女優しいのね。」

「いやそんなんじゃ…」

 

 ただ無頓着なだけだ。

 

「ふふっ、貴女との旅が楽しみになってきたわ」

 

少しだけ悪戯っぽく頬を綻ばせるルイズ。なんだかなぁ……

 

「ああ、そうそう思ったより元気そうだから少し手伝ってほしいんだけど……」

「何を?」

 

 体力は空だし殆ど役に立つことは無いと思うのだけど…

 

「夕飯の準備よ。私より貴女の方が美味しく仕上げてくれるでしょう?」

 

 なるほど、それなら手伝わなきゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 私が寝ている間にルイズは食材を街のお店から調達していたようで、特につつがなく支度は終わった。

 もし食材が無かったらヤバかったので良かった。今の私に貯蔵空間を開く余力はないのだ。

 そのことをルイズに伝えたら「ならまた蟻を」とか言い出したので一悶着あったりなかったり。

 

 まあそれは今はいい。

 今はいいのだ。

 

 無事夕飯は用意できたし、ちゃんと器具も有ったのできちんと調理できたから満足だ。器具は電気でなく魔力を使う物だったのは興味深い。

 しかしそんな事より今は問題がある。

 

 じいぃぃ……

 

 という擬音が漫画でもないのに私には見える。敵意丸出しの目線をひたすらに受けているので凄く居心地が悪いのだ。

 その目線の発生源は前の席に座るピンクの少女サラ。

 

 そんなにしかめっ面で見つめないでほしい。せっかく綺麗な顔なのに皺がついちゃうよ!

 

 なんて事は言わない。なんか触れたら爆発しそうな感じがする。触らぬ神になんとやらという奴である。

 

「サラどうかしら?キチンとした料理作るの久しぶりでちょっと不安なのだけれど」

 

 そんな事を知ってか知らずか、ルイズは暢気にサラに話しかける。

 

「はい! 凄く美味しいです!! 流石ルイズさんです!!」

 

 そしてこの変わり様である。おい、なんだその澄み切った笑顔は。可愛いじゃないか。

「このスープ野菜にによく味が染み込んでいて最高です!!」

「あらあら嬉しいわ」

 

 超居心地が悪くてせっかくの夕飯をよく味わえない。ルイズへのその愛嬌の良さを私にも幾らか割いて欲しいものだ。

 

「それにこの魚のフライとか凄くサクサクで……」

「あら、それは儚が作ってくれたのよ」

「やっぱり不味いです。なんでもないです」

 

 割いてほしいです切実に、はい。でも私のアジっぽい魚フライは気に入ってもらえたらしい。うんうん良かった良かった。

 

「それにしても大きくなったわねサラ。あんなに小さかったのに」

「もう!止めてくださいよルイズさん! 私はもう子供じゃないんです」

 

 いやぁ十分子供だと思うんだけどね。見た目通りの年齢なら大きく見ても15、6歳位だろうか。まだまだ子供の年齢だろう。

 

「随分と魔法も使えるようになったのね。誰かに教えてもらったの?」

「いえ、殆ど独学です。この街に魔法をちゃんと使える人はルイズさん以外に居ませんから」

 

 ほう、独学とな。なるほど道理で荒い魔法な訳だ。それでも独学であれだけの魔法を使えるなら才能は有るんじゃないだろうか。

 

「それでルイズさんお願いがあるんです」

「何かしら? 私にできることかしら?」

 

 そこでサラは一息つき、何か決心したように一度口を閉じる。唾を飲み込む音が聞こえ、そしてゆっくりと口を開く。

 

「私、捨虫の魔法を使いたいんです。それでルイズさんみたいに旅をしたいんです!!」

 

 捨虫の魔法。

 

 それは不老の魔法。使ったものの姿はそれ以上老いることがなくなる。それは即ち人間を止めるということ。

 魔導を極めるには人の生の時間程度では足りない、故に探求のために時間を得る手段として使うのだという。

 不老に成るのは良いことばかりではない……らしい。

 ヘカーティアの国は割とその辺がルーズだったし、それに私は妖怪になってしまったのでその辺の感覚が狂っている気もするからいまいち分かっていない。

 けれど想像は出来る。前世の漫画作品に出てくる人を逸脱し生を得たキャラは大体悲惨な結末に終わる。苦しんだり別れに気が狂ったり――

 

「本気なのサラ? どういうことか解って言っているの?」

 

 だからルイズが真剣にサラに問いかけるのも当然のことだろう。ルイズはその魔法によって何が起きるか知っているはずだから。

 この世界も割と魔法が浸透しているようだけど、捨虫の魔法を使う者はそんなに居ないはず。

 だから人間を止めるということにはそれなりの覚悟が必要だ。

 

「本気です。どうか私に教えて下さい!!」

 

 サラがそう言って頭を下げる。結構真剣なんだろうなぁ。

 数瞬食卓に沈黙が訪れる。私が静かにスープを啜る音だけがやけに響くので止めて欲しい。

 顎に手を当て考え込んでたルイズが顔を上げる。

 

「無理ね」

 

 と一言言い放った。

 

「そ、そんな……」

 

 ズーンという擬音と上から落ちる縦線が背後によく見えるような気がする。

 サラは落胆を隠せない。

 

「貴女の覚悟……っていうのは置いておくとしても、そもそも捨虫を使えるほど貴女は魔法を使いこなせてないのよ」

「へ? それはどういう……」

「儚、そうよね?」

 

 ここで私に話を振るんかいっ。サラがきっつい目で私を睨んでくる。やめてーやめてー。

 

「まあ、そうだね。今のサラじゃ使えない。独学だって聞いて納得したよ」

「どういうことよ?」

 

 敵対心を持たれていても話に興味が有るからか、大人しく聞いてくれるようだ。

 

「多分だけど、サラって多分あの炎弾とレーザーの魔法以外の魔法使えないでしょ?」

「なっ、そ、そんな事ないわよ」

 

 あからさまにどもるサラさん。

 

「じゃあ何が使える?」

「……発火魔法とか。」

 

 むすっと頬を赤らめるサラ。

 それ炎弾とレーザーの元に成るやつじゃん。火属性魔法の基礎中の基礎だ。

 

「私が昔教えた魔法ねぇ」

 

 と追い打ち掛けるルイズさん。恐らくサラがそれを自分なりに調べたりアレンジした結果があの炎弾とレーザーなのだろう。

 

「まあ独学だから仕方ないよ。で何でサラが捨虫の魔法を使えないのかって話に戻るんだけど」

「何よ、早く教えなさいよ…」

 

 なんて言おうか……いや、包み隠さず言ってしまおう。

 

「サラは魔力の扱いが下手なんだよね」

「へ、下手?」

「うん、下手。魔力弾もレーザーもそうだけど収束しきれていない、凄くロスが多いよ。多分だけど魔力の流れを正確に把握できてないんじゃないかな」

 

 こんなふうに軽い講釈を垂れられる位には魔法に精通している。ここ数百年の賜物である。向こうの世界の何処かに居るメディアに感謝を。

 

「捨虫の魔法は結構精密な魔力の操作が必要らしいんだ。私は使ったこと無いから詳しくはわからないけどね」

「そうなんだ……」

 

 それを聴いたサラは落胆しうーんと唸る。

 

「ルイズ、ちゃんと魔法教えてあげれば?時間掛かるだろうけどこの子ならその内出来るように成るよ」

「それはダメ! ルイズさんの時間をそんなに取らせるわけにはいかないわ!」

 

 ええ……さっき捨虫の魔法を聞いたじゃん。

 ああ、でも詳細は知らなかったからすぐ終わるものと思っていたのかな。

 

「そうねぇ……今は紀行文を書きたいし確かに時間が無いのよね~」

 

 元々そのためにここに来たわけであるしそれが終わった後も彼女は旅に出るだろう。

 再びルイズは何かを考え込む。そして数瞬の時を経て彼女の頭の上にピコーンと電球が現れた。

 ……あれれ~? 嫌な予感しかしないぞ?

 

「一週間、儚に魔法を教えてもらったらどうかしら?」

 

 どうやらルイズの思いつきで私はこの後苦労するみたいだ。

 

 

 

 

 




旧作キャラ好きなのでもっと作品増えろっ!

進行上魔法の細かい設定が必要になりそうなので色々資料を漁ってました。
古い東方の書籍とかなかなか手に入らないですねぇ…



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