東方死人録   作:nismon

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五話 技術の発展は著しく、同じようにまた少女の成長も著しい

 

 

<前回までのあらすじ>

永琳と姉妹になった。

 

 

「なってないわよ」

「試しに儚お姉ちゃんって呼んでみて」

「?儚お姉ちゃん?」

「グハッ……!」

「意味がわからないわ」

 

 

 

 

 

五話 技術の発展は著しく、同じようにまた少女の成長も著しいのである

 

 

 

 

 

 私が人里に住み着いてから三年ちょっと。

 この里には暦があるので正確な年月がわかるので助かる。私の知っている暦、つまり現代の太陽暦とは違うものだが少し学べばどんなものかすぐに分かった。

 現在季節は恐らく夏。つまりめっちゃ暑い。マジで暑い。私はその暑さにとろけるように床に寝そべっていた。この前里の技術屋で扇風機みたいなのができたらしいけれどわざわざ買いに行くほどのものでもないしなぁ。

 

「ただいま。暑いならあの便利そうな能力を使えばいいじゃない。熱の向きをかえるとか」

「永琳おかえり~。能力使うと疲れるから却下」

 

 永琳が一仕事終えて帰ってきた。永琳は現在十代後半に差し掛かかった位。大分伸びたその綺麗な髪を腰の下位で綾紐みたいなものでくくっている。まだ少しの幼さはあるもの、すっかり少女から女性へと変化している。

 私と同じくらいの背丈だったのに今はもう少し見上げないと目が合わない。少しお姉ちゃん悲しい……

 ちなみにだが、現在私たちのいる家はあの小屋の時から何回も建て替えていた。

 最初のあばら屋と比べ大分近代的で、昔観た中国の歴史映画で見かけた物に近いかなと思う。

 赤い装飾が至るところに施され、窓にはラーメンの丼のアレのみたいな意匠が拵えてある。

 そして驚くべきは電気とガスが通っているのである。

 ……流石に進歩が速すぎる。全てがそうではないとは言え、ものの数年で近代に追いついてしまった。流石ファンタジー世界。

 まあ色々と変わっても実験用の壁を埋め尽くす瓶達はそのままだ。

 

「早くクーラーとかできないかなぁ」

「クーラー?」

「部屋を冷やす機械、そういうのがあるのですー」

「はあ、貴女のよくわからない発言にはもう慣れたわ」

 

 述べたとおり最近の人里の技術力の発展は目を見瞠るものが有った。前の世界だと何十年何百年かかる所を数年で走り抜けている。このままクーラーとかヒーターとかささっと作ちゃって欲しい。ああ冬は炬燵も欲しいなぁ。

 

「で、今日は何してきたの?」

「里長の息子が風邪をひいたらしいのよ。その治療よ」

 

 色々と環境は変わったとはいえ、永琳がやることはほとんど変わっていないのだった。いくら技術が発展しても病人は居る。寧ろ増えすらするもので。

 そんなこんなで相も変わらず彼女は里中から絶大な信頼を得ていたのだった。

 

「あら貴女も結構人気なのよ?」

 

 私も永琳と一緒に薬師の仕事をこなしている。そのせいも有って必然的に里の皆に顔を知られてしまっているのだ。人気かどうかは別の話だけれど。

 

「いつまで経っても見た目が変わらないから『あの子は神様の使いだ』なんて言う人も居たわね」

「妖怪の次は神様かぁ……」

 

 神、この人里には宗教は無いので特定の神は存在せず漠然とした物でしかない。だがしかしファンタジー世界。下手すると神は実在するのかもしれない。

 というか里の人々にそう思われてるせいなのかわからないが、最近体内の流れに新しい力を感じる。妖力とは正反対な眩い光の力。もしかしたら妖怪と同じように神様も人の想像から生まれるものなのかもしれない。

 そうするとこれはやはり神の力なのか。

 つまり私は神だ。

 やべぇめっちゃ厨二臭い!

 

「神様といえば、その里長の息子の名前ってなんだったっけ」

「月夜見(ツクヨミ)よ。なんで神様と関係があるのよ?」

「んーいやこっちの話」

 

 ふと思い出して確認してみたが、私なんかより何十倍も神様っぽい名前である。もしかしたら本当に神様になるのかもしれない。いや、流石に人間からは無いか。……無いか?ありそうだ。

 

「そうそう聞いてちょうだい。その子に不老不死の薬は無いのかって聞かれたのよ。まだ若いのに死にたくないだの何だのって言ってて」

「あーそういうお年頃なんだよ。うんうん」

 

 わかる。私もガキの頃は不老不死とか無敵付加とか色々妄想したものだよ。完璧な黒歴史だけどもね、ぐはは。

 

「それで終われば良かったんだけど、親バカ里長が本気にしちゃってね。お陰でこれから賢者を集めて会議なのよ」

 

 嫌そうに言う永琳。賢者とはこの里の有識者のことを指す言葉。いつの間にか自他共にそう呼ぶようになっていた。彼らは時々集まって人里の重要な取り決めを話し合う。もちろんその一人は永琳である。

 実は何故か私も誘われたのだけれど、当然辞退した。そもそも私は人じゃない。今更何をと言われるかもしれないが人のコミュニティの中心に異物である妖怪()が居るのは良くないと思うのだ。

 まあそもそも賢者になるほど博識でもないしね。

 

「あなたも一緒にくる?」

「遠慮しとくよ」

 

 不死の薬に興味は無い。だって妖怪は年をほとんど取らないのだもの。しかし永琳が居ないとなると暇だなぁ。本はこの前丁度読み終わってるし、新しいのを読む気分でもないし。うーん。

 

「ちょっと妖怪の集落に行ってみようかなぁ」

 

 本に関連してケモ姉のことを思い出したのだった。本の虫だと私を揶揄った彼女。

 あれから数年、結局一度もあっちには帰っていなかった。人里の居心地が良すぎたのかねぇ。丁度良い機会だし行ってみようか。暑いけど。

 と、永琳の方を見ると彼女は少しだけ目を見開いて驚いていた。

 

「……帰ってくるの?」

 

 永琳がほんの少しだけ不安を顔に滲ませながら聞いてくる。本人としては隠しているつもりなのかもしれないが私には丸わかりだった。

 お?これはアレですか。アレじゃないですか!私は能力を使い永琳の方へ飛んでいき彼女の頭を抱きしめる。

 

「もうそんな寂しそうな顔しなくたって帰ってくるってば!お姉ちゃんは妹の側にいる物なんだよ!」

「……そう。って私は貴女の妹なんかじゃないわ」

 

 永琳は少し恥ずかしなったのか腕の間から見える耳は赤く染まっていた。成長しても永琳はやっぱり可愛い!これはもはや宇宙の真理である。

 

「ああでも何日か泊まるかもしれないからちゃんと一人でも食事しなよ?」

「わかってるわよ。散々あなたに教えられたもの。もう料理くらいできるわ」

 

 そう頼もしげに言ってくれた。

 彼女も成長したもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで里を後にして三年ぶりに妖怪の集落に向かうことにした。まずは門へと向かう。

 大通りを通っていく。現在の里は「里」というより「都」と呼んだ方がしっくりくようになっていた。

 永琳の家もそうだったが、全体的に昔の中国王朝をイメージすると良いかもしれない。ここは中国寄りの文化なのかなぁと思ったりしたが日本産ぽい本や漫画までも生まれているので実によくわからない。異世界だから仕方がないね。

 しかし書籍がある世界に生まれてこれてよかった。ご都合主義万歳!そんなことを考えながら歩いていたのだが……

 

「何か少し寂れた?」

 

 妖怪の集落に到着した。

 久々に見るその集落は少しばかり荒んでいるように感じられた。以前は何というか妖怪特有の怪しくも騒がしい雰囲気がもっと濃かった気がする。

 

「まあ取り敢えずケモ姉の所へ行こうか」

 

 その後あばら屋極まるケモ姉宅に着いたが、肝心なケモ姉が居なかった。一瞬居なくなったのかと不安になったが生活感がめちゃくちゃ残っている(主に食べ散らかした皿)ので恐らくは出掛けているのだろう。やることもなく仕方ないので寝て待つことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガラリと音がする。ガタガタな木製の扉の立て付けの悪さが原因だ。あれから何年もこの家はそのままなのだからガタが来ているのだろう。それで私は微睡みから目を覚ます。寝ぼけ眼で玄関の方を見るとケモ姉が立っていた。なんとなく呆けている様子だがどうしたのだろう?

 

「おはよ、ケモ姉」

「……」

 

 声をかけても返事が帰ってこない。まるで屍の……ていうのは冗談で。一体どうしたのだろう?

「儚……」

 

 私の名を呟くケモ姉。それきり時が止まってしまったように動かなくなる。え?私なんかしちゃった?沈黙に包まれる。

 

 

 

 

「儚ぁぁぁぁああああ!!」

 

 

 

 

 そんな空気を破り去ってケモ姉が叫びながら私に飛びついてきた。思いっきり抱きしめられる。

 ちょっ痛い痛い!ぐぉお、マジで!洒落になんない!

 

「何処へ行ってたんだよぉ!!すぐ帰ってくると思ったのに何年経っても帰ってこないし!もしかして消えちゃったのかとおもったよ!!うう!儚ぁ!」

 

 涙止まらぬ様子で私を強く抱きしめてそんな事を叫ぶケモ姉。耳元で叫ぶので鼓膜がガンガンするし、鼻水と涙が服に付くので少しばっちい。法外な力で抱きしめられた体はキシキシと悲鳴を上げる。

 めちゃくちゃ痛い、痛いっす。能力を使ってケモ姉を吹き飛ばそうか……だが結局それはしなかった。

 なぜならばそんなに私のことを思ってくれてたことに驚いたし、悪いことをしちゃったなとも思った。

 それに何より少し嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁぁ!?あの人里に住んでたぁ!?…まったく、相変わらずあんたは面白いねぇ」

 

 ようやっと落ち着いたケモ姉とここ数年のことについて語り合う。私が人里に住み着いていることにたいそう驚いたのだった。

 

「そんなに驚くこと?」

「そりゃ驚くさ。知らないのか?最近のあいつら妙に力を付けてきたもんで迂闊に襲撃できないんだよ。あ、私以外のやつにあんまり人里に居た事言わないほうが良いぞ。多分目を付けられるから」

 

 そういえば住み着いて数年間妖怪の襲撃が無かったなぁ。恐らく技術の発展とともに妖怪に対抗する手だてが出来てきているのかもしれない。薬草採集以外で外に出なかったからその辺の防衛関係は何も知らなかった。

 

「お陰で何人か退治されちゃったよ」

「はぇーそんなに力をつけてるんだ。だから何だか閑散としてたんだね」

 

 なるほどそういうことがあったのか。そのせいで……

 

「……ああいやそれはちょっと違ってな。まあ原因の一つではあるんだが」

 

 ん?集落が寂れていたのはどうやら別に理由が有るらしい。

 

「最近周りの妖怪とか獣達が互いに争い始めてるんだよ。文字通り命をかけて。何だか数が増えたせいで他の縄張りに手を出し合ってるっぽいんだ。ここの集落の奴もそれに巻き込まれてる。私はもう群れの頭を張ってないから関係ないけどね」

 

 やれやれとケモ姉。生存競争という奴だろうか。獣の群れの長が妖怪ということも少なくないのである。ケモ姉も昔はそうだった。そうすると文字通り生死を争う過激な戦いも起こりうる。なかなかどうしてこの世界はサバイバルだねぇ。

 

「だから心配したんだぞ」

 

 まったくと言い、腕を組んでふんっと鼻を上げるケモ姉。彼女は少しがさつで竹を割ったような性格。だけども私を拾って家に入れてくれたことからわかるように根っこは凄く優しいのである。

 

「ふふっ、ありがと。悪かったね」

「わ、悪く思うんなら夕飯作ってくれ!それでチャラにしてやる!」

 

 つい私が笑ってしまったので顔をまっかにしたケモ姉がそう言う。永琳も可愛いけど負けず劣らずケモ姉も可愛いんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 「そういえば私が居ない間の食事ってどうしてたの?」

「昔お前に教わった鳥の卵の中身を飯にぶっかける奴だけ食ってた。あれ、旨いよなぁ」

「それだけ?ずっと??」

「ああ、ずっと食ってた」

 

 ……どうして私と親しい人は生活力が欠けがちなのだろう。

 いや二人ともちゃんと食べるようになったから進歩しているんだ。永琳は料理もできるし。

 

 

 

 

 

 

 

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