東方死人録   作:nismon

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六話 愛とか恋とかわかんないから萌えさえあればそれで良いと思わない?

 

 

〈前回までのあらすじ〉

 まわりの女の子達が可愛すぎて嫁にしたい。

 

 

 

 嫁にしたいとは言ったものの半分冗談。

 残念なことに(?)この体になってから人に惚れるという気持ちは全く解らならなくなってしまった。

 いや、前世で恋人なんかいた事は無かったから恋というものに対しては大分懐疑的で有るけれど、もっと本能的に、言うなれば性欲という物の存在が怪しい。

 長いこと人里に住んでる間は永琳の裸体を見る機会が何度か有れども、純粋な綺麗さに感動こそすれ、性的に興奮はしない。

 

 それなら男子ならどうだろう?と当然思ったがそれも無く。

 永琳の顧客のおばあちゃんとの付き合いもあり、興味本位で勧められたイケメンとお見合い擬きの事とかしてみたけれどやっぱり無理だった。まあそもそも付き合う気は無かった訳だけども。

 

 もうそろそろ人間歴より妖怪歴の方が長くなりそうだけど性別が謎だ。どっちつかずで中途半端。まあ一応今は体は少女だから女ということにしておこうかな。

 

 さて、そんな事は置いておいて現在は私は里長の家に来ております。里長と言うだけあってかなり荘厳な建物だ。まるで宮城みたいな感じ。これまたどことなく中国風だ。

 そんな威厳の塊みたいな建物の一室、恐らく応接間だろうに私は来ていた。ここに来るのは初めてではないが一つだけ何時もと違うことがある。永琳がいない。そう普段は賢者である永琳の付き人的な感じでしか来たことがないのだ。

 

「えぇと何用ですか月夜見さん?」

 

 一応お偉いさんの息子なので敬語で話す。

 今回私を、私だけをここに呼んだのは現里長の息子。恐らくは次期里長になるであろう月夜見だった。年齢は永琳よりも若い。まだ中学生位だろうか?この前永琳言っていた感じに中二病真っ盛りなのかもしれない。

 名前は神様っぽいっけど態度が横柄な坊々(ボンボン)っていうのが私の認識。

 

「うむ、今日はお前に話があって呼んだのだ」

 

 話があるのはわかってるんだって。

 横柄な感じなのはお坊ちゃんだからしょうがないか。

 

「話とは?」

「そうだな、私とお前にとって大事な話だ」

 

 いまいち要領を得ない。

 もったいぶるのはどうしてだろうか。

 

「で、その話とは?」

「うむ……」

 

 そこで彼は口を閉じて目をつむる。訪れる沈黙。

 ……ぅええ、そこで止まりますか。

 仕方がないので黙って次の言葉を待つ。訪れる緊迫したようなしてないような沈黙。

 私が今日の夕飯のレシピを5個くらい考えついたところで、それはようやっと解き放たれたのだった。それは月夜見の衝撃的な言葉によって。

 

 

 

「お主、余の伴侶になれ」

 

 

 

「ふぇ?」

 

 荘厳な応接間に似合わない、私のマヌケな声が響く。

 

 

 

 

 

六話 愛とか恋とかわかんないから、萌えさえあればそれで良いと思わない?

 

 

 

 

 

 

 月夜見に告白された。

 今度は私が黙る番だった。ちょっと衝撃を受け過ぎて何も言う言葉が出てこない。なにせ男子に明確な好意を向けられたのはこれが初めてだったから。

 と言うのは半分冗談で……性別関係なく前世でもこんなにも直接の言葉を聞いたことは無かった。思ったより真っ直ぐなのかなこいつ。自分の心に正直だ。

 てっきりひねくれものだと思ってた。雰囲気だけで偏見を持ってはいけないね。

 

「私妖怪なんだけど……?」

「構わぬ。お主はそこらの異形の者とは違う。それに種の壁など些細な問題」

 

 とは言うものどうやっても種族の壁は超えられない。妖怪と人間は本来生き方もその寿命も決して相容れないものなのだから。しかしなんでそんなに頑ななのか……

 

「私見た目は貴方より年下なんだけど」

「それくらいの年なら嫁いでいても何らおかしくはあるまい」

「私、女の子の方が好きなんだけど」

「それでも余は問題ないぞ。お前好みの女中を迎え入れてもかまわぬ」

 

 さも全肯定のようだが、私が伴侶になることは揺るがない。

 こいつ全く聞く耳を持たねぇ!頑固な上に逆らえない目上の奴ほど面倒くさいものは居ない。前世のバイト生活を思い出す。

 まあ、私にとって目上かどうかは微妙なところであるし、ここは素直に断ろう。

 

「申し訳ないけどその誘いには乗れない」

「……何故だ。不自由ない生活を約束しよう」

 

 不満げにそういう月夜見。

 

「そういうんじゃないよ」

「……理由を聞かせてはくれぬか?」

「色々あるけれど、やっぱり種族の壁は超えちゃいけないと思う。神の使いだなんだ言われても私は人外さ。人間とじゃ寿命の長さも違うしきっと碌なことに成らないよ」

 

 一番どうにも成らなそうなことを理由として突きつける。種族はそう簡単に変わらない。変わるはずがないのである。妖怪は人の畏れから生まれるもので決して人そのものにはなり得ない。逆もしかり。

 

「……なるほど。よくわかった」

 

 おおわかってくれたみたいだ。良かった良かった。これで問題なく……

 

「つまり寿命を延ばし、かつ人の身でお主と同じ時を歩めるようになってこそ、ようやく並び立つに相応しいということじゃな?」

 

 ……なに言ってんのこのガキ?

 

「ふむわかった。そもそも余は不老不死に興味が有ったしな。いや実に丁度いい」

「いや、ちょっ」

「皆まで言うな。絶対にお主の時に追いついてみせる。それまで待て」

「いやだから……」

「今日の話はそれだけじゃ。楽しみに待っておれ」

 

 聞く耳もたずにそう言い放ち、大袈裟に椅子から立ち上がった月夜見は応接間から出ていってしまった。自分に正直とかそういうレベルじゃない。

 自分しか見えてねぇじゃんあれ!

 なんだかどっと疲れてしまった。帰りに茶屋にでもよってお団子食べよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでも月夜見に求婚されたそうじゃない。よかったわね」

「まったく良くないよ……人の気も知らないで。いや、知ってて言ってるよね?」

 

 現在夕飯時。いつも通り永琳と向かい合ってご飯を食べている。メニューは鍋。寒い季節にぴったりな料理である。ちなみに最近は週の半分位は妖怪集落で過ごすようにしている。ケモ姉にも会いたいしね。

 

「あのガキ、永琳にベッタリなんだから何か言ってやってよ」

 

 月夜見は彼女をまるで師か姉か何かのように慕っている。博識であり、自分を病魔から救ったことのある永琳をかなり気に入っていたのだ。というか永琳にあの熱情を向けた方が良いんじゃない?まあ恐らく永琳が釘をさせば少しぐらいマシな状況になる……かもしれない。

 

「弟分の恋路を邪魔するなんて姉のすることじゃないと思わない?お姉ちゃん」

 

 久々にお姉ちゃんって呼ばれたけど、にやけが隠せていない永琳。全然萌えない。この妹め、自分には関係ないからって好き勝手言いやがってっ……!

 

「それに私が言い聞かせてもあんまり変わらないと思うわよ?あの子無駄に頑固だし。相変わらず不死の研究を続けてるのよ。止めればと言っても全く聞かなくて」

 

 それは確かにそう思うけれど

 ……ああ私のこのやるせなさはどこにぶつければ良いのか。

 

「結婚しちゃえば良いじゃない。」

「絶対それは無い!」

 

 元男とか妖怪だとかを抜きにしてもあんな自己中野郎と生涯を共に過ごしますなんて、もはや生き地獄だよ。顔もタイプじゃないし。

 

「そうかしらね? 確かに自己中心的なところはあるけれど、その代わり一途じゃない。ずっと前から気になってたみたいよ、貴女のこと。私にしつこく聞いてきたわ」

 

 いらない情報ありがとうございます。何か段々寒気がしてきた。将来ストーカーとかになったりしないよね?

 愛は尊い物だと思うが、不純だったり行き過ぎたりするとろくな事にならないのは前世の経験で良く知っている。

 

「変なこと言ってないよね?」

「さあ?でも当分待てって言われたんでしょ?なら気にしなくて良いじゃない」

 

 誤魔化された気がするが??

 

「いやいや、ただ先延ばされてるだけだし。気が気じゃないよ」

 

 こんなことになるなんて思っても見なかった。大体私のどこが良いというのか……

 

「はあ……止めようこの話、私の気分が重くなるだけじゃん」

「そうかしら、私は楽しいわ」

 

 クソッ、最初に出会った時はあんなに可愛さの塊だったのに!そんな子に育てた覚えは無いっ!

 

「貴女に育てられてないんだから当然よ。でもまあ仕方がないから話を変えてあげるわ」

 

 そこでようやっと話題が切り替わる。

 

「最近やけに里の外が物騒らしいんだけど何か知らないかしら?今日の賢者の会議で議題になったのよ」

 

 話題は里の外のことに。どうやら人里の上層部も気づいたらしい。

 

「ああそれならケモ姉に聞いたよ。何か縄張り争いとか食料難とかで獣が争ってるんだってさ。妖怪も混じってる」

「へぇそうなの。でもそれだけにしては激しすぎないかしら?報告だと種によっては絶滅したものもあるらしいけど。今までこんなに殺伐としたことは無かったわよね」

 

 そう最近のそれらの争いは今までからすると異常な程過激なのだ。原因はわからない。食料が枯渇してきたのか、それとも天変地異の前触れとかだろうか。と冗談半分で考えてみる。

 

「そういう時期なんじゃない?」

「随分適当ね」

「適して当たるって書くんだからきっとこれが正解だって」

「はあ、まあ良いわ。何かわかったら教えて頂戴」

 

 そんな感じで夕食の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

「あ、永琳弓の練習行くの?」

「ええ、そうよ」

 

 弓矢一式を持って出掛けようする永琳。実は永琳は弓の名手としても名高い。ハイスペックすぎて羨ましい。

 

「また着いていって良い?」

「構わないわ」

 

 私もたまに永琳に同行する。前世では弓矢なんか全く興味は無かったがやってみると意外に面白い。

 

 

 

 

 

「1000発ど真ん中命中ぅ!」

 

 遂に千発連続でど真ん中に命中したぜ!いえい!こういうの皆中(かいちゅう)って言うんだっけ?いやぁ才能に溢れて困っちゃうなぁ。

 

「途中から諦めて能力使ってたわよね」

「半分位は自力だから良いの!能力も私の一部だし」

 

 ずるじゃないよ?ちょっと逸れそうになった矢の「向き」をほんの少しだけ変えただけだよ。うん。そもそも妖怪の身体能力のお陰が的から大きく外れることはまずないのだ。誤差誤差。

 

「そんなずるみたいな能力使わなくても当たるわよ」

「いやいや、それは永琳だけだって」

 

 私と同じように永琳は1000発命中させていた。いや、多分本気出せばもう十倍くらい打てるんじゃないかな?

 人間……人間?

 

「やっぱり永琳実は人間じゃない説を推していきたい」

「失礼ね。私は普通の人よ」

 

 永琳が普通だったら前世の私とか一体どうなるのだろうか。ナメクジとかになりそうだ。

 

「あ、そういえば例の弓は完成しそうなの?」

「それが良い素材が見つからないのよ」

 

 永琳は今新しい弓を探している。さっきまでやっていたのはほんの60m位の距離の的当てだが、永琳が本気を出すと何十倍も距離と威力を出せるらしい。人間の力である霊力をうまく利用するとかなんとか。

 しかし、そんな法外な力に普通の弓が耐えられるわけもなく数撃で弓が木っ端みじんになってしまうらしい。……ていうかさ。

 

「永琳って薬師とか医者じゃなかったっけ?なんでそんな殺人アーチャー目指してるのさ。英霊戦争にでも出るの?」

「英霊戦争……?別段ただ弓を撃つのが好きなだけよ。それに妖怪に対抗できる力をつけたいのよ」

「そりゃまた何でそんなことを?街は兵士が守ってるし、採集は私が居るから大丈夫じゃない?」

「……まあ、良いじゃない。さあもう日が暮れそうだし帰りましょう」

 

 そう言って話を打ち切る永琳。あからさまに何か隠してる。だけどあまり聞かないで欲しいっぽいなぁ……

 

 

 

 

 時は移ってこちら妖怪の集落、ケモ姉宅。季節は移り変わって冬。寒さが身にしみる。そんな中私は俗にいう人間をダメにする家具こと炬燵にてぬくぬくとしていた。

 

「炬燵はやっぱりいいなぁ。この世界にもできてよかったぁ」

「よくわからんがこの炬燵って奴の良さについては同意だぁ。人里の技術侮れん……」

 

 ふにゃりと力が抜けきったケモ姉の声。人間だけじゃなく妖怪もダメにするようだ。天板の上には蜜柑ぽい柑橘の果物が置いてある。蜜柑より二回り位大きいけど美味しいので問題なし。私はそれを一つ手に取り、能力で皮が『張り付いている』という向きを逆に変える。そうするとあら不思議。こんなにもキレイに剥けます!

 

「凄く能力の無駄使いだなそれ。どうせならあたしの分も剥いてくれよ~」

「能力使うと結構疲れるんだよ?無駄なんて言う人には使ってあげません~」

 

 疲れるなら使うなよ、とケモ姉からのお小言。いやぁでも皮むくのって意外にめんどくさいんじゃん?もしゃもしゃとミカンもどきを口にいれる。うむ、甘酸っぱい。

 

「そういえば、最近里の人間がやけに突っかかってくるんだが。儚は何か知らないか?」

「ん~特に聞いてないけど」

 

 ケモ姉がいうに最近人里の部隊が付近を哨戒しているらしい。なんだか最近ずっと物騒だなぁ。伝記物とかだと、こういう風に世が乱れ始めると最終的に災厄に見舞われるっていうのが定石だけど。

 

「妖怪たちも不満が募ってるからな。その内大きな戦いとか起こるかもなぁ」

 

 なんとも呑気な雰囲気で剣呑なフラグを建てるケモ姉。なんでもありのこの世界。あんまり洒落にならないなぁ。

 

「こんな風に皆のんきにくつろげばいいのに」

「お前はいつもくつろぎ過ぎだ。私みたいにもっとしっかりと人間に恐怖をだなぁ……ふぁぁ……」

 

 ケモ姉……そんなに耳を垂らしながら猫撫声で言われても説得力が無いって。

 

 

 

 

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