東方死人録   作:nismon

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七話 少し汚れてる位が丁度良いんじゃない?

 

「穢れ?」

「そう、月夜見が言うにはそれが寿命というものの根源らしいわ」

 

 最近賢者の間で噂になっているらしい話。

 寿命の根源を技術やら幻想の力を保った彼らは突き止めたらしい。

 

「それ本当?」

「ええ、理論上はね」

 

 永琳の言うことをまとめると生き物同士の争い、出産、月経、また人間の恐怖から生まれた妖怪等々……生死に関わること全てが『穢れ』に区分されるらしい。

 

「いやいや、そんなのどうやっても無くならないでしょ、それこそ人が生きている限りはさ」

「でも逆に言えば人間以外の穢れなら無くせるってことじゃないかしら」

「……それはどういうこと?、永琳」

「あくまでも可能性よ。私もまだよくは知らないの。又聞きしただけで。多分だけど、あなたを警戒して情報規制されてるんじゃないかしら」

 

 人以外のすべてを否定して寿命を手に入れる。なんと冒涜的なことだろうか。

 妖怪そのものが穢れであるということは私も『穢れ』の1つであるということになる。それならば月夜見は一体何を考えているのか。

 

「とりあえず私がわかるのはそれくらいよ。後はあなたが誰に伝えようと私の知るところではないわ」

「……ありがとう永琳」

 

 少し自惚れかも知れないけど、その方法だと月夜見は私と同じ時を歩めない。第一「生きる」ことを否定するのは人としてどうかと思うけれど。

 ……いやお前が言うなって話だけどね。

 

 

 

 

 

 

七話 少し汚れてる位が丁度良いんじゃない?

 

 

 

 

 

 

 案の定というかなんというか。あれから月夜見の主導による『穢れ』の駆逐が始まった。いや正確にはもう既に始まっていたの方が正しいのか。ケモ姉との話題にでた人里の見回り組も恐らく布石の一つだったのだろう。その後里の有力な術者を集め締め縄を要とした『穢れ』を遮る結界が里の周りに張られた。

 周囲の穢れと分断された人里の人の時間は確かに伸びたのだった。しかしそれだけでは永遠の時を得ることには至らなかった。当然それでは満足などしない月夜見は『穢れ』の影響を減らすため生存競争を行なう妖怪や獣の掃討を開始した。

 

「全く無駄なことだと思うわ。だって生きることを根源から否定するなんて出来ないもの。そもそも彼がやろうとしていることそのものがより長く『生きる』為のことなのだから、結局はいたちごっこよ」

 

 というのは永琳談。私はケモ姉ら仲のいい数名の妖怪に警告する以外は特に何もしなかった。とういうのも永琳と同意見でその程度で月夜見の言う『穢れ』がどうにかなるとは思わなかったから。

 

 事実、月夜見の『穢れ』の駆逐計画はそれから数年後に頓挫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで月夜見。話ってなに?」

 

 現在私は月夜見の、里長の家に来ていた。すでに逝っていた。事故だか何だかで早めに亡くなったためまだ若い彼がその役を代わっていた。

 つまり現在、月夜見が名実共にこの里のトップということになる。

 

「話というのは『穢れ』についての事だ」

 

 いつしかとは違って直ぐに応答する月夜見。あれから時が経って月夜見の見た目は高校生、前世の私と同じ位の年になっている。

 

「何を今更。『穢れ』の掃討には失敗したんでしょ?」

 

 結局穢れの駆逐は叶わなかった。それは元より自明のものだったけれど。いつまで経っても終決しない戦いに他の賢者や里の民から不満が高まった結果だ。

 

「そう。余は失敗した。『穢れ』と距離を置くことで多少なり寿命が伸びたにせよ、結局の所悠久の時を手に入れることは叶わなかった」

 

 目を瞑ったまま向かいの椅子に座った月夜見は言う。やはりいまいち要領を得ない話し方だ。イライラする。

 ……いや、そう感じるのはきっと私自身にも問題があるような気もした。私は多分こいつが嫌いだ。

 

「それは知ってるよ。結局何の話なのさ?」

 

 痺れを切らした私は月夜見に問い掛ける。

 

「お主……いや(はかな)

 

 私の名前をわざわざ呼び直した月夜見。空気がピリリと張りつめる。

恐らくここが分岐点になる。『向き』が決まる。決まってしまう。

 能力のせいか、はたまたただの勘か。どちらにせよそんな気がしてならなかった。

しかし、何が有ろうと私の進む「向き」はとうに決まっている。

 

「余と共に月へ行かんか」

「……月?」

 

 予想外の言葉に少しだけ面を食らう。何を突拍子の無いことをと言い返したくもなったが、これまでの事を考え、そして思いとどまる。彼は自分にとって無駄なことは決してしない。そういう人間だ。

 

「そう月。月は神聖なる場所。限りなく『穢れ』が少ない…そこへ移住する事で我ら人も悠久の時を手にすることが出来るのだ」

 

 月に『穢れ』。まるでどこかの昔話みたいな話だ。学校の授業で扱われていた気がする。あの話に出てくる傲慢な使い達は余り好きじゃ無かったなぁ。選民主義というかなんといか、ね。

 

「私は妖怪なんだけど。妖怪は『穢れ』そのものじゃなかったっけ。そんなの連れ込んだらそれこそ問題じゃないの?」

 

 答えは決まっているがそれを伝えるのは疑問を解消してからでも遅くはないだろう。

 

「主の周りだけ隔離すれば問題ない。そのくらい余だけでも造作ない」

「……それはつまり私はその結界から出れないってこと?」

「そういうことになるな。だが心配はいらぬお前が欲しいもの必要とするものはなんでもやろう」

 

 何のことも無いように、そう言い放った月夜見。

 ……ははっ。思わず乾いた笑いが出そうになる。

なんともまあ典型的だろうか。結局のところこの男は自分のことしか考えていないのだ。わかってはいたけれど。

 

「余は月のような神聖な地こそお主にふさわしいと思っている」

 

 本人にとってはこれ以上無い口説き文句なのかもしれない。しかし私にとってはどうしようもなく薄っぺらいものに感ぜられた。

 

「私は行かないよ」

 

 そう言い放った。

 

「何故……何故そんな愚かな選択をする」

「何故も是非もないよ今回でより一層確認した。まず第一に私は月夜見、貴方の事が好きじゃない。嫌いじゃないけど好きじゃないよ」

 

 せめてもの手向けか何かはわからないが。すべての理由を彼に伝えよう。

 

「次に……いやこれは一つ目の理由とかぶるかな。私は何処まで行っても今は妖怪なんだ。だから仲間達を無碍にする貴方を、そして貴方のやってきたこれまでやってきた事を心良く思わない」

「……お主は奴らとは違う。何故そのようなことを」

「そう思ってるのは貴方だけ。少なくとも私はそうは思わない」

 

 思い浮かぶケモ姉や妖怪の集落の連中。確かに色々と、たまには残虐だったりどうしようもない奴も居るけど、私はそれを無造作に切り捨てる事は出来ない。

 

「そして最後に……」

 

 そう言って私は妖術、变化の術を使って自らの身体の外見を変える。だいぶん前に身に着けたが余り使う機会が無かった。今がその時だ。

私は『俺』に変身した。

 

「これが私……いや俺の本当の姿の一つだ」

 

 俺は何十年ぶりの口調で目を見開いている月夜見に語りかける。結局の所俺は前世のしがらみをまだ完璧には断ち切れていないのだ。無頓着な俺にしては珍しい。

「余を……騙していたのか」

 

 驚愕したままゆっくりと離す月夜見。瞳がせわしなく揺れている。どんな感情なのかはわからない。

 

「いや私も『俺』もどっちも本物さ。だからそもそもお前の想いは受け取れない。どっちつかずの私は結局異性としての思いを受け取れはしない」

 

 以上が私が月夜見の思いを拒むすべての理由だ。

 

「……もう良い。よくわかった」

 

 そう言って私に向かい合っていた月夜見は立ち上がり、私に背を向け奥へと繋がる扉へ向かう。

 

「月への出立は一年後だ。それまでは人里に居ても構わぬ」

 

 そう言い残し月夜見は部屋から出ていった。私も变化の術を解き里長宅をあとにする。

 ……過去最高に疲れた。帰りにお団子でも買っていこうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「愚か者め……余は許さんぞ」

 

 自室にてそのような呟きとともに、頬を釣り上げ冷笑する賢者が居た事は誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぅきへのいひゅうってふぉんとにふぇきるの?」

 

 お団子を飲み込む前に喋り出してしまったので破裂音がちゃんと発音出来ていないがまあ気にしない。

 

「……月夜見から聞いたのね。ええできるわ」

 

 永琳は私が何を言ったかわかったようでそう返答した。余談だが現在の永琳はすっかりもう大人になっている。そのスタイルはそんじょそこらの男子なら鼻の下をのばして目がハートになるぐらいには魅力的だ。私は全く成長してないんだけどね!どっちがお姉ちゃんかわからないよ!

 しかしどうやら本当に月へ行けるらしい。いや、本当だとは思っていたけど結構な人数がこの里には居る訳で。技術的に可能なのかという単純な疑問。

 

「まず機体をカーボンで作ってフェムトファイバーでカバーするのよ。それで発射のGに耐えれる機体が完成するはずよ。で肝心な推進力は術師達の霊力と今あるエンジン十基を組み合わせれば大気圏を抜けられるはずよ。その後は……」

「ああもう良いや。取り敢えずよくわからないことがわかったよ」

 

 永琳の知識の波に当てられて頭がぐわんぐわんしてきたよ。最近永琳が最早医者じゃなくて知恵の神の領域に達している気がするのだけれど。

 

「やっぱり永琳は人間じゃなくて神だった……?」

「失礼ね。私は人間よ。神様はどちらかと言えば貴女の方でしょ。」

 

 いやでも私は元人だし元々人外なわけだし。それに私は神様なんて柄じゃないよなぁとも思う。

 

「それでどうする?永琳は」

「……」

 

 口を閉ざす永琳。

 

「いや、ごめん。わかってて言った」

 

 彼女がどんなに人間離れしていようとも、私と中が良くても彼女はこの里の人、それも賢者なのである。つまりこの里の民を統括するに近い地位にある訳で。それを投げ出すことなんてできるはずがないのは私がよく知っている。

 

「……ごめんなさいね」

「いやいやなんで永琳が謝るのさ。まだ当分先のことだしまだ気にしなくて良いじゃん」

 

 

 

 

 

「はあ月への移住とな。人里の上の考えることはわからないねぇ」

 

 ケモ姉に例のことを話した。妖怪側にするにはあまり良くない話だ。何故なら妖怪は人が居ないと存在できない……つまり周辺の妖怪にとって人里の月移住は死活問題だった。ようは食料が完全になくなってしまうのだから。

 

「まあでも、それが本当ならきっと妖怪達は黙っちゃいないよ」

「だよねぇ」

 

 恐らくだが人里の地球離脱に関して周囲の妖怪たちからは猛反発が起こるだろう。その結果、恐らくは武力衝突にまで発展する。その規模は生半可なものじゃないはず。

 

「私もそうなったら出ないわけにはいかないからねぇ。儚はどうするんだい?」

「私は……見物かなぁ」

 

 人里の連中に顔を知られているから妖怪側につくのも忍びないし、同様に人里側について妖怪たちに対するのも嫌だからだ。……はぁどうしてこんなことになっちゃったかなぁ。

 

「流石は神様。文字通り高みの見物ってことかい?」

「だから私は神様じゃないって」

 

 笑いながら茶化してくるケモ姉。呑気なものだ。

 

「……もし戦うことになっても死んだりしないでよ?」

「ん?心配してくれてるのか?大丈夫だって。私がそう簡単に死ぬ玉に見えるかい?それに向こうには永琳もいるんだ、わたしゃ戦いに本気出しゃしないよ」

 

 まあ確かにケモ姉なら大丈夫だろうけれど。

 でも私の事を心配してくれたこともあるわけだし、精々心配してやろうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 一年が過ぎた。

 あれから色々有った。人里では月移住へ反対する勢力が暴動を起こしたり、また同じく月移住に反対する妖怪達が攻め入って人妖の全面戦争になった時もあった。結果として粘った人間側が勝ったのだった。全く終わりの見えない戦いに煮えを切らし、団結のゆるい妖怪側はバラけていったのだ。討伐されたものもいるし違う新天地を求めたものも居た。

 なんにせよ現時点で、月への移住を阻むものは居なくなった。

 そして今日はその出立日だった。

 

「……じゃあね。儚」

 

 私は永琳と向かい合っていた。

 

「そんな泣きそうな顔しないでよ。別段今生の別れって訳じゃないんだからさ」

「別に泣きそうなんかじゃないわ」

 

 とは言ったものの実際は再会するのは難しい。それは永琳も分かってる。事実上は今生の別れと言っても過言ではないだろう。

 

「あ、そうだ、あれを渡さないと」

 

 そう言った私は右手を宙に差し出し、人差し指を撫でるように動かす。そうすると何も無いはずの所に空洞ができる。能力を使い空間の『大きさ』を広げた。ここ数年で身につけた能力の応用だ。そして私はそこから弓と矢筒を取り出した。

 

「それは?」

「私からの餞だよ」

 

 一見普通の弓ではある。

 

「何年かかけて私の能力を掛け続けたんだ。だからちょっとやそっとじゃ壊れないよ。あ、私の力で所謂『穢れ』は出ないようにしてあるから。壊さなきゃそう問題にならないはずだよ」

 

 この弓は永琳の為に職人に頼んで作ってもらった作ったのだった。いつだか既存の弓に不満を唱えていた彼女にはこれくらいぶっ飛んだ弓でもきっと難なく使いこなすだろう。

 

「……ありがとう」

 

 弓と矢を受取った永琳はそれを優しい手つきで撫でる。

 

「確かに貴女の力を感じるわ。」

 

 そういった永琳の目は少し光って見えた。

 

「ちょっと永琳泣かないでよ」

「っん…泣いてなんか無いわよ」

 

 ふんっと顔を背ける永琳。……ああこの美人な顔も当分見れないと思うと残念だなぁ。

 

「そういえばさ、結局なんでそんな強い弓が欲しかったの?」

 

 ちょっと私も泣きそうになったので話を変え、前にははぐらかされてしまった理由を聞いてみる。

 

「ああそれは……貴女に守ってもらってばっかりじゃ何か悔しいじゃない。」

「えぇそんな理由?」

「そんな理由よ。きっと姉離れしたかったのよ」

 

 お姉ちゃん的にはいつでも守ってあげたいんだけどなぁ。

 

「じゃあ妖怪なんて存在しない月じゃいらなかったかな……まあでも逆に丁度良いか」

「そうね丁度良いわ。」

 

 私が姉で居続けるのももう叶わなそうだし丁度良かったということにしよう。

 

「大事に使ってよ?」

「月だと余り使うことはなさそうだけどね。いざ使ったときに壊れないことを祈るわ」

「私の能力を舐めないでね?きっとケモ姉が全力で引っ掻いても傷一つ付かないよ」

「それは楽しみね」

 

 こんな会話がずっと続けばいいのになぁ。

 

「……そろそろ行くわ」

「うん、行ってらっしゃい」

 

 それはやっぱり叶わない訳で。それで会話を終わりにして永琳は私に背を向けて歩いて行く。

その背中が見えなくなるまで私はじっと見つめていた。

 前世で家族が居なかったと言える私にとって永琳は初めての家族と言えるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かなり離れているのに耳が痛くなる。空気を揺らす激しい騒音と共に月行きの宇宙船は地上を飛び立った。

 

「ほえ、良くあんなのを作ったもんだ。どうやって動いてるんだい?」

「人の科学力と霊力の結晶だってさ」

「人間ってのはなかなかどうして大したもんだねぇ」

 

 それを妖怪の集落にてケモ姉と一緒にに見ていた。空へ勢い良く飛び立って行く技術の結晶は圧巻だった。もう既に視認できない距離まで飛んでいるから恐らくだけど、前世の現代よりもよっぽど技術的には進んでいるんだろうなぁ。

 

「ケモ姉はこれからどうする?」

 

 一通り感心し終わった私たちはこれからについて話し合うことにした。

 

「んん……やっぱり。人間を探すところからだよなぁ。焦る程じゃないがやっぱり食料は必要だ。現に他の連中はそうしてるし」

「じゃあ取り敢えずはのんびり旅をする感じかぁ」

 

 何度も言うように人が居ないと妖怪は存在できない。というわけで目下の目標は人探し。

 

「そうと決まったらさっさと行くか。善は急げ……ん?」

 

 ケモ姉の言葉が途中で止まる。そしてその目線は空を凝視していた。

 

「どうしたの?」

「ありゃ……一体なんだ?」

 

そう言って指を指すケモ姉。私もその方に目を向ける。

 

「ん?……黒い点?」

 

 私達が見上げた空は少し異様だった。小さくて目を凝らさないとよく見えないが空には無数の黒い点があった。

 

「良く見えないなぁ。空にあるってことは多分月に行った連中が落としてったのか?」

「うーんロケットの燃料の残骸とかかな?」

 

 それはあんまり良くないなぁ。環境汚染の恐ろしさは前世の社会科の授業で良く習った。

 ……でも永琳はそんなこと言ってなかったしなぁ。

 

「まあなんにせよ、早めにここを離れたほうが良さそうだな。さっさと準備しちまおう。」

「うん……」

 

 あんまり考えても仕方がないということで私たちは家に向かって歩き出す。しかし私は何か引っかかって仕方なかった。

 永琳が私達にそういう注意をせずに飛び立つだろうか。

 立ち止まった私はもう一回振り返り空を凝視する。今度は能力を使って自分の視界の『大きさ』を弄る。おお初めてやったけどなんとか成功。しかし慣れない能力の使い方は疲れる。早めに確認してしまおう。ということで私はその黒い点の一つに焦点を合わせる。

 それはまるで膨らんだエビフライの形だった。

 ん?なんだろうなぁ。何か見たことがある気がする。鉄の塊っぽいけど……

 

 そこで記憶の海にそれに該当するものを見つけた。

 

 見つけてしまった。

 

 

「ケモ姉!!!今すぐここから離れよう!!」

「どうした?急に慌てて」

「あれは爆弾だ!!!それも洒落にならないくらい強力な」

「なんだって?永琳はそんな事言ってたのか」

「言ってなかった……から多分別の人の独断だと思う」

 

 あの人里の(おさ)の顔が頭によぎる。

 

「とにかく早く……」

 

 そこまで言ったところで今度は別の異変が起きる。

 地面が光った……感じられるのは人の霊力。大規模な術式が発動されたらしい。それは私達の動きを縛るものだった。

 

「な、んだこれは。動けねぇ……」

 

 ケモ姉の力で動かないのならこれは相当な物だ。

 この一体の妖怪……いや、あらゆる生物、幻想か全て動きを縛られているのだ。

 あの空から降る「最悪」から誰一人逃がさないために。

 

「どうして」

 

 どうしてこんな事を。

 そう最後まで言い終わる前に私の視界は光に満たされた。

 

 

 

 

 

 

 

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