プロローグ~終わりと始まり~
突然だが 俺は、転生者である。ありきたりではあるがそこにはツッコミを入れないで欲しい。
よくある設定では転生前に神様から何らかのチートな力をもらう様だが、そんなものはなかった。それどころか神様に会うことすらなかったのだ。本当に気が付いたら赤ん坊になっていた…。
小さな手足、寝返りも打つことが出来ない身体、目と耳もかろうじて機能する程度なのだ。状況も分からずにいたが、ようやく事の重大さに気づいた時は、情けないくらいに必死に泣いたし、誰に対するわけでもない罵詈雑言をあらん限り言い続けた。
以前は、二十代半ばの普通の男であった。趣味はスポーツにアニメにゲームと少々オタクな感じだが仕事も含めて今の人生を楽しんでいた。さぁ明日も頑張ろうと考え眠りについた。
それがどうだ……目が覚めたら突然この有様だ。
泣かない方がどうかしている。だが赤ん坊の身体では、この行為が無意味であると暫くして悟り、と同時に激しい虚脱感と疲労に襲われた。無理もない今の自分は赤ん坊なのだ。
無茶をすればこうなる事は、誰が見ても明らかだ。意識が途切れる間際に誰かの手が頭に触れるのを感じた。目はぼやけて見えなかったが、その手から感じたのは純粋な優しさと慈愛であったことは今でも覚えている。
そして、「大丈夫だぞ一夏。私が側にいる…私がお前を守るからな。」そんな力強い声もかろうじて聞こえてきた。
……………………ん?あれ一夏とな?
インフィニット・ストラトス(通称IS)とは、宇宙空間での活動を想定し開発されたマルチフォーム・スーツである。
開発当初は、注目されなかったが「ある事件」がきっかけで従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能を世界中に見せつけた。しかし皮肉にもこの事件が宇宙活動を目的としたマルチフォーム・スーツとしての機能より飛行型パワード・スーツとしての性能で注目を浴びた。各国はISを軍事転用し、抑止力として使用する結果となってしまった。
現行の兵器の攻撃力・機動力・防御力、それらの一線を画した兵器であるが弱点も存在する。まずISには謎が多い、特にコアに関しては自己進化するという情報以外完全なブラックボックスである。加えてISの開発者である
ここまでの思考は、過去……
あれから6年が経過し自分自身との折り合いも何とかついた。今の俺は
そうインフィニット・ストラトスの主人公でありこの世界で唯一ISを動かせる存在にしてとんでもないハーレム・ボーイである。
・・・神よ今あなたに会ったなら力いっぱい殴りつけたい。某グラップラ―に出てる組長の握力×体重×スピード=破壊力で殴りつけたい。冒頭で出た通り前世で少々オタクな自分の記憶には確かキャッチフレーズが「ハイスピード学園バトルラブコメディー」だったはず。
しかし俺が思うにコメディー部分は主人公(俺)が各ヒロインに暴力と暴言でボコボコにされた印象しかない。しかも原作が完結しておらず、俺自身もアニメと原作知識がそこそこしかなような状況だ…詰みかなこれ。加えて原作では物語的に露骨な死亡フラグはなかったはずだが、いつ後ろから刺されてもおかしくない状況である(それもヒロインに)。
……神様お願いです。あの日に帰して、悲しみの向こうに逝きたくないのです。
書いて初めてわかる難しさと楽しさ