IS~転~   作:パスタン

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 この小説も節目の10話を迎え、お気に入りが300を超えました。
 
これも全てはこの作品を読んでくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございました。

なお、今回一夏が少し壊れます。

皆さんが楽しんでいただければ幸いです。

ではどうぞ・・・


新たな出会い

 どうも5年生になった織斑一夏です。物語が一つの節目を迎え、篠ノ之姉妹がこの町を去りました。でも落ち込んでもいられません。千冬姉さんも箒ちゃんも束姉さんだって頑張っていると思えば、俺も負けてはいられない。

 

 そうそう、新しい出会いが一つ。昨年の冬に篠ノ之道場に通ってた方から新しく道場を紹介された。同じ市内で、家からも近かったので千冬姉さんと一緒に見学に行った。

 

 「古牧道場」という名だった。

 

 道場主の古牧宗太郎さんは、戦国時代より伝わる古牧流古武術の正統継承者であり、その筋の人からは「格闘界の人間国宝」と呼ばれいたらしい。年は60~70歳程度で白髪をオールバックにしており体格は小柄だが、その目、風格、所作は柳韻先生以上の武人を思わせた。以前は東京で道場を開いていたのだが、現在は第一線を退き、ここに道場を新たに開いて、主に剣術、護身術、格闘術などを格安で教えているそうである。

 

・・・ん?どこかで会ったことがある様な?「龍」が出てくるゲーム?いや気のせいかな

 

 しばらく千冬姉さんと古牧さんが話をして、姉妹そろってこの道場でお世話になることになった。帰り際に古牧先生が「お主ら姉弟は、「あの男」と同じような目をしているな」と少し嬉しそうに呟いたのが印象に残った。・・・あの男って誰だろう?

 

 千冬姉さんからも「あの方からしっかりと学ぶんだぞ一夏。今よりも確実に強くなる。私も暇を見つけたら稽古を付けてもらうとしよう」

 

 あの千冬姉さんがここまで言うのだから相当な達人なのだろう…よろしくお願いします。小牧先生!

 

 

 そんなこんなで年が明け、始業式から数日後のことだ。俺のクラスに転入生がやってきた。

 

「はい皆さん、今日は私たちのクラスに新しいお友達が来ました。仲良くしてあげてくださいね」

 

 そんな先生の言葉と同時に一人の女子が入ってきた。

 小柄な身長に、ツインテール、勝ち気そう目をした女子生徒である。

 

「凰鈴音(ファン・リンイン)です。皆さんよろしく!!」

 

 そう言って彼女は、元気にあいさつをした。

 

 …ビックリしたー!!つーか鈴ちゃんが転校してくるのってこの時期だったのか!?

 

 凰鈴音 

 

 ご存知一夏のセカンド幼馴染である。

 

 ツインテールの髪に小柄な体格という可愛らしい見た目なのだが、サバサバとした性格で気性も激しいところがあり、考えるよりも行動を地で行くタイプである。自他共に認めるほどフットワークが軽く、確か原作ではIS学園に持ってきた私物はボストンバッグ一つで収まる程だったことを記憶している。…補足として箒ちゃんの次に暴力的であり若干ヤンデレが入っていたような気がした。

 

 …ヤバい。対応を誤ればボコボコにされる。冷や汗ものである。

 

「それじゃ~席は…、織斑君の隣りが空いているわね。そこにしましょう」

 

 ふぁ!?ちょっと待って先生!まだ心の準備ががが、って早!もうこっちに来てるよ鈴ちゃん。おおお、落ち着け織斑一夏!!最初の印象が大事だぞ!とりあえず名前で呼び合うのを当面の目標にしよう。

 

「あんたが織斑一夏?」

 

 いきなり「あんた」呼ばわりかい!

 

「う、うん。よ、よろしく凰さん」

 

 俺、どもりまくり

 

「「鈴」で良いわ。名字で呼ばれるの慣れてないのよ。私もあんたのこと「一夏」って呼ぶからね」

 

 ありゃ!?当面の目標がもう達成してしまった!!いいのかこれで?

 

「分かったよ。これからよろしく鈴」

 

 とりあえず鈴ちゃんに握手を求めてみる。

 

「ええ、一夏が今までの男共と違って紳士的で良かったわ。よろしくね」

 

 にかっと笑って、握手に応じてくれた。あ、八重歯がかわいいな~。何だよもうー、心配して損した。これだったら大丈夫かもしれない。

 

 

「あ、「リンリン」って言ったら殺すから、覚えといてね♪」

 

 

・・・・・・・気が引き締まりました。本当にありがとうございます。

 

 

 それから俺はそれなりに鈴ちゃんと仲良くなった。学校や街の案内をしたり、勉強を教えたり、気の知れた友達あるいは姉弟みたいな関係だ。

 

 鈴ちゃんは、そのサバサバした性格から男子にも女子にも人気がある。反対に俺は、学校では物静かな部類に入るので鈴ちゃんに引っ張られることが多い。鈴ちゃんの視点からしたら俺は弟のような存在かもしれない。でも、そんな関係も悪くないと思っているのも事実だ。

 

 そんな風に学校及び私生活を満喫していた俺に、またしても事件は起きてしまった。

 

 

 それは委員会の時間、学校裏での仕事を終えた時だった。

 

「おいリンリン、笹食ってみろよ。パンダだろお前~」

 

 不意に聞こえてきた声・・・まさか!不安を押し殺し、声のする場所まで走った。そして俺の目の前には箒ちゃんの時と同じ光景が広がっていた。鈴ちゃんを囲むように4人の男子が立ちはだかっていた。そして場所的に、ここはちょうど死角になる。

 

 誰の目から見ても明らかだ。故意によるイジメ。そして俺は男子の後ろ姿に見覚えがあった。見間違えるはずもない。こいつら箒ちゃんをいじめたモブ共じゃないか!?まだこんなことをしていたのか・・・

 

「あんたらには、私がパンダに見えるわけ?バカじゃないの?」

 

「あ゛、なんだと?」

 

 まずい!鈴ちゃんはその気性の激しさから他の男子と衝突することもある。その度に俺が仲裁に入ってその場をうやむやにしていたのだが、今回は俺がいないことでヒートアップしたらしい。

 

「女のクセにたてついてんじゃねぇよ」

 

 ドン!!

 

「きゃ!?」

 

 鈴ちゃんが倒された。それから鈴ちゃんに向かってモブ共は罵詈雑言を浴びせる。

 

「お前中国人のくせに生意気なんだよ」

 

「そうだ、中国人が勉強なんかしてんじゃねぇよ」

 

「アハハハハハハ」

 

 そのまま鈴ちゃんは耳を塞いでうずくまってしまった。

 

 もう限界だ…仏の顔も3度までと言うが…関係ない!!人類最強のドS兵長…セリフ借ります。

 

「よくしゃべるブタどもだな…」

 

 俺の言葉を聞いて4人はビクついた。モブ共は慌てて振り返り、俺を見たとたんに顔を青くした。

 

「お、お前、織斑!?」

 

「な、なんでこんなとこにいるんだよ」

 

「く、くそーー!!」

 

「お、おい!バカ、よせ!!」

 

 先手必勝とばかりにモブの一人が行き成り殴りかかってきた。

 

 …のろいパンチだ。俺はモブのパンチを避け、反対に腰の入ったボディーブローを叩きこむ。九の字になって横にうずくまる相手にさらに一発サッカーボールの要領で腹に蹴りを入れ、仰向けになったところに同じ場所踏み抜き足を置く。

 

 誰も何も言わない。恐らく俺の行為に恐怖しているのだろう。そこに絶対に逃がさないという気合いを込め、残った3人を睨みつけ某駆逐系男子をボコボコにした兵長のセリフを入れる。…やっぱり鈴ちゃんも震えていた。後で謝らなければ・・・。

 

「…これは自論なんだが、躾に一番効くのは痛みだと思う」

 

 意味を理解したモブ共が震えだす。だがもう遅い、お前たちは、一番侵してはいけない領域を侵したのだ。

 

「そして残念なことに、お前らは俺の大切なものに手を出した。…お前らブタ共に必要なのは、言葉による「教育」ではなく、「教訓」だ」

 

 モブ3人は更に顔を青くし震えていた。そして鈴ちゃんは、顔を真っ赤にして震えていた。

 

 …やべー、また勢い余ってトンデモナイことを口走ってしまった。ええい、もうやけくそじゃー!!

 

 俺は1番近くのモブの顎に飛びヒザ蹴りを入れる。喰らったモブは、背中から大の字に倒れた。前回はここで組長さんの凄みを入れたが、今回はナシだ。前回逃げた相手にもしっかりと「教訓」を刻みつける。

 

 最初のモブと同じようにボディーブローを入れ、膝立ちになった所に上からひじを叩きこむ(勿論手加減はする)。相手は土下座したかのように倒れ込んだ。

 

 残るは1人・・・。前回と同じ「モブリーダー」だ。だが今回は、前みたいに発破は掛けない…。しっかりとその身に刻み込む!俺は前転をした勢いで腹に飛び込み頭突きをかます。腹を抑えて屈みながら相手はよろめく。俺は素早く起き上がり、ガラ空きになった頭に蹴りを叩き込んだ。

 

 これぞ古牧先生に伝授された最初の技!!「前転の極み」である!!!

 

 

 あ~、やばい・・・こりゃ相当にヤバい。なんか格好つけて見たけど状況は最悪だ。死屍累々である。以前と同じで本当に申し訳ないが・・・誰か助けて。

 




実際は違いますが、古牧先生が「前転の極み」を教えたということでお願いします。
それではまた次回。

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