一応これで幼年期~小学生編は終了です。
次回から中学生編に入りたいと思います。
ではどうぞ・・・
どうも小6になった織斑一夏です。いやはや、早いもので小学校の最上級生になってしまいました。 昨年は顔パンを喰らったり、古牧道場で新しく技を伝授されたり、篠ノ之道場を掃除したり、鈴ちゃんの家の中華料理屋でご飯を食べたりと、とても穏やかな日々を過ごしていました。
さて、俺は「ある世界大会の決勝戦」をテレビ中継で見ている。
それは中世のコロシアムのようなフィールドをそのまま近代化した会場である。参加国は21ヶ国とオリンピックなどの世界大会に比べると少ないが、アメリカ・フランス・イギリス・日本等の誰もが知る様な先進国が名を連ねている。そして競技に使用するのは「IS」である。
そう第1回モンド・グロッソ、ISの世界大会である。
この大会は格闘部門など様々な競技部門に分かれ、各国の代表が競う合う。各部門の優勝者は「ヴァルキリー」と呼ばれ、総合優勝者には最強の称号「ブリュンヒルデ」が与えられる。
現在、我が姉は日本国家代表として、この大会に参加してる訳であるが…桁違いの強さを披露しております。
今までもとてつもなく強かったが、古牧先生からの指導が入って以来その強さは他の追随を許さないまでに発展している。日本を除く20ヶ国は最新鋭の武器、技術、トレーニングなどの正に国家の粋を結集して挑んでいるが、千冬姉さんは、ただ一振りの「日本刀」と単一仕様能力(ワンオフアビリティー)を用いてその悉くを叩きのめしているのだ。暮桜…千冬姉さんが乗っている機体の名称である。白騎士に次いで開発された第1世代型IS。刀剣型近接武器「雪片」のみを備え、単一仕様能力(ワンオフアビリティー)「零落白夜」を搭載している。
そんな考えに浸っているうちに、姉さんが居合の構えをとった。決める気だ・・・。
次の瞬間、姉さんは爆発的なスピードで相手へと駆けて行き、すれ違いざまに一閃した。一瞬だが雪片が光ったことから瞬間的に「零落白夜」を使ったのだろう。相手は何が起こったのか分からないといった表情だったが試合終了のブザーが鳴ったのを聞いて自身の負けを悟ったようである。
今の技を簡単に説明すると古牧流抜刀術「荒れ牛」の応用だろう。技名の通り荒れ狂った牛からイメージされた技だ。もともとの技の突進力に加え、姉さんはそこに二重瞬時加速(ダブル・イグニッションブースト)を上乗せしたのだ。その加速力は正気の沙汰とは思えないほどのものだった。
更に絶妙なタイミングで発動された「零落白夜」を加えた雪片の一閃は元々の威力も相まって文字通りの「一撃必殺」へと威力が昇華されている。かすっただけでも大ダメージ必死の技をまともに受けたのだ、結果は火を見るより明らかである。
何はともあれ、これで格闘部門の優勝者は決った。俺は、高らかに雪片を掲げる姉さんを誇らしく思った。その後、総合優勝者が千冬姉さんに決まり「ブリュンヒルデ」の称号が授けられた。
「ありゃ、もうこんな時間か」
姉さんの試合を見ていたら遅くなってしまった。今から作るのも億劫だし…また鈴ちゃんとこの中華料理屋に行こう。
ガラガラ
「こんばんわ」
「いらっしゃ・・・あら一夏君また来てくれたのね」
「こんばんわ、恋おばさん。毎度スイマセン」
「あらいいのよ。今鈴音を呼んでくるからね」
そういって店の奥へ入っていく女性は凰恋恋(ファン・レンレン)さん、鈴ちゃんのお母さんである。
「おう、一夏君!いつもありがとうな」
「いつも、お世話になります。修おじさん」
こちらの、お水を出してくれた恰幅の良い男性が凰修(ファン・シュウ)さん、鈴ちゃんのお父さんである。
「しかし、一夏君は小学生じゃないほど落ち着いてんな~。うちの娘も一夏君くらい落ち着きが、痛!!」
そんな軽口を言っていた修さんの尻から「バチン」と良い音がした。
「落ち着きがなくて悪かったわね。一夏いらっしゃい」
エプロン姿の鈴ちゃん登場である。鈴ちゃんは修おじさんを一睨みし、こちらにはニッコリ笑顔であいさつする。
「うん、えっとニラ玉に酢豚にご飯スープセットをお願いします」
「りょーかい、ほらお父さん注文入ったから行った行った」
しっしとする鈴ちゃんに苦笑いを零しながら修さんは俺に向かって
「一夏君、こんな娘だが末永くよろしくな」
「にゃーーーー!!??いきなり何言いだすのよバカ親父!!さっさと厨房に行けーーーー!!!!」
突然の修さんの爆弾発言に鈴ちゃんは猫みたいな声で叫び俺は呆然としてしまった。当の修さんはまるでイタズラが成功した様なしたり顔で厨房へ消えて行った。
・・・・・ナニコレ、気まず!!
俺も鈴ちゃんも沈黙が続いた。
「い、一夏。お父さんの冗談なんだから気にしなくていいわよ。」
「う、うん」
顔を真っ赤にして言う鈴ちゃんに対して俺はそう答えるしかなかった。
「あらあら、初々しいわね。」
それは、いつの間にかお店に戻ってきた恋さんの声だった。
「そういえば一夏君、この前は「肉じゃが」ご馳走様。とても美味しかったわよ」
「いえいえ、いつもお世話になっているので、また持って行きます」
ここには、よく来るのでお礼も兼ねてよく作った料理を持っていくのだ。俺が料理をすることを知った鈴ちゃんは顔を青ざめていたの覚えている。
「あれから鈴も料理をするようになってきたのよ。ついこの間まで見向きもしなかったのに、一体何があったのかしらね~」
「べ、別に特に理由なんてないよ。ただ料理が出来たら良いなって思っただけなんだから」
「ふ~~ん、お母さんはてっきり「誰か」に食べてほしいのかなって思ったんだけど~」
「べべべ、別に「一夏」に食べてほしくて頑張ってるわけじゃ、あっ…」
「あらあら、お母さんは別に「一夏君」とは言ってないけどな~」
とニコニコ笑顔を浮かべる恋恋さん、対する鈴ちゃんは顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。
分の悪い勝負だ。って言うか俺ってば完全に蚊帳の外だな~。
そんな時「おーい、料理で来たよー」と修おじさんの声が聞こえてきた。
これ幸いと鈴ちゃん
「い、一夏君。ちょっと待っててね。すぐ持ってくるから」
と言うや否や脱兎の如く駆けだしていった。賢明な判断だ、戦略的撤退である。
「あら残念、逃げられちゃった」
「あんまりイジメちゃ可哀想ですよ」
「うふふ」
恋さんは笑うばかりだ。しばらくすると恋さんが話しだした
「ありがとうね一夏君」
「え?」
何に対してのお礼かよく分らなかった
「あの子が、あんなに生き生きした表情になったのは一夏君のおかげよ。」
「……」
俺は沈黙することで先を促した。
「前の学校では、帰ってきてもつまらなそうな表情ばかりだったの。でも今の学校であなたのに出会ってから今までが嘘のように昔のあの子に戻ったのよ。家でもあなたの話ばかり、「今日は一夏がオロオロしていたから助けた」とか、「明日は、一夏が街の案内をしてくれる」とか本当に楽しそうにしているわ」
そう話す恋さんは、とても穏やかで、母親の顔をしていた。
「だからありがとう一夏君、これからも鈴音の事をよろしくね」
そんな恋さんの言葉に俺はしっかりと返事をした。
「はい!!」
と力強く答えたのだ。それから間もなく
「ちょちょちょ、お母さん!!一夏に変なこと吹き込んでないでしょうね!?」
鈴ちゃんがトレーいっぱいに料理を持って走ってきた。
「あらあら、別に何も言ってないわよ。ねぇ~一夏君?」
「はい」
「ちょっと、何でそんなに意気投合してるのよ。あやしさ満点じゃない!?一夏!正直に話しなさい!じゃないとひどいわよーーーー!!!!」
そんな一人暴走する鈴ちゃんを見ながら俺と恋さんは静かに笑うのであった。
姉さんが優勝したことで、この世界の女尊男卑は更に加速していくだろう。
さてどうなることやら・・・・・・・・
いかがだったでしょうか。
感想並びに評価をお待ちしております。
ではまた次回。