IS~転~   作:パスタン

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2~3話ほど続く予定です。
皆様が楽しんでいただければ幸いです
ではどうぞ・・・


死闘

 血飛沫が飛び交う、それがもう自分のものか、相手のものか、それすら分からない。

 

 一体どれくらいの時間が経ったのだろうか?

 

 殴れば殴られ、殴られれば殴り返し、蹴れば蹴られ、蹴られれば蹴り返す。相手は「女」だ。

 

 だがそれがどうした?そんなものは些細なことだ。五体満足だが気力も体力も・・・意識を保つことさえもう限界に近い。

 

 だが、それでも俺たちはやめない。互いの顔に獣のような笑みを張りつかせ、俺たちは戦う。

 

 俺は戦う。今まで培ってきたあらゆる技術を用いて眼前の敵を打ち滅ぼすために戦う、己の矜持のために戦う、己の守る者の為に戦う、己の覚悟の為に戦う、生きるために……足掻き続けるために戦う!!

 

不意に互いの距離が離れた。浅い息を整えながら女は狂ったように笑い出した。

 

「ふふっ、ふふふ、ふふうふははっ、はははっ、ひひひひっはははっは!!!」

 

「・・・何が可笑しい?」

 

 息を整えつつ、俺は女に問う。そして力を蓄える。「最後の一撃」を敵にぶつけるために・・・。女の狂った笑いがピタリと止んだ。

 

 

「可笑しい?・・・違う、違うよ一夏。あたしは嬉しいんだよ!!!」

 

顔面を血まみれにしながら女は叫ぶ。それは鬼気迫るものがあった。

 

「今の男共は、口を開けば「ISなんてあるから」「ISがなければ」と同じような事を何度も何度もほざきやがる。その癖、ISを持っている女を見れば犬みたいに尻尾を振って愛想笑いを浮かべやがるんだ。反吐が出る。まるで家畜と一緒だ!!糞の集まりだ!!!」

 

ひとしきり叫び終えると、その表情をトロンとさせ猫なで声で俺に語りかけた。

 

「だけど~、お前は違ったんだよ一夏~。あたしがISを持っていても、お前は「化け物」みたいな笑みを浮かべて啖呵を切った。そしてあんたは、このあたしをここまで追い込んだ・・・。互いに生身同士とはいえ、あんたは15にも満たないガキだ。それに比べあたしは長年命のやり取りをしてきた」

 

そこで一息つき、更に言葉を重ねる。

 

「だが今の私は、ここまで追い込まれている。白状すると満身創痍だ。だけどね・・・あたしは今、心の底から満たされているんだよ!!!」

 

「……」

 

「なぁ一夏~、あたしたちと一緒に行こう。あんたは絶対に「こちら側の人間」だ。あんたほどの男がこんな生温い世界にいること自体が異常なんだよ。その眼の奥に燻っている常人じゃ発狂しかねない程の闇…。あたしらだったらまとめて受け止める事が出来る。だから来い一夏!!あたしら「亡国企業(ファントム・タスク)のもとへ、そして…、この「オータム」様のものになっちまえよ!!!」

 

 …亡国企業、通称ファントム・タスク

 

 裏の世界で暗躍する巨大秘密結社だ。その存在が確認されたのは第二次世界大戦中であり、単純な計算で50年以上前から活動している。

 

 原作で俺の誘拐事件がこの組織によって行われていたことが分かっていたが、まさかこんな大物が来るなんて。

 

 俺と死闘を演じている「オータム」、そしてそんな俺達を笑みを浮かべながら見つめる「スコール」。予想出来る限りで最悪の組み合わせだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも、織斑一夏です。

 

 現在、俺は日本を離れドイツの首都ベルリンに来ている。そうISの世界大会「第2回モンド・グロッソ」が開催されているのである。

 

 ここまでテレビ中継でしか見たことがなかったが生で試合を見て思ったのは、・・・チート過ぎるだろ姉さんである。

 

 もうね・・・本当に対戦相手がかわいそうになるくらい力の差があった。例えるならば、プロボクサーと中学生がケンカしているようなもんだ。だって相手選手がもう涙目だもん。

 

 そんでもって今日は、いよいよ姉さんの決勝戦な訳である。つまり・・・俺を誘拐するなら正にこのタイミングが絶好だろう。俺は今とあるオープンカフェででコーヒーを飲んでいる。

 

 片言な英語が通じて良かった~。英語は嫌いじゃないんだけど、イントネーションが難しいよね。

 

 そんな感じで「熱々のコーヒー」をちびちび美味しく頂いていると、黒いワンボックスカーが店先の前で止まった。

 

 …来た。俺は直感で感じた。

 

 だが焦らない、不用意に動かず、まずは人数を確認する。車からは男性4人・女性2人がこちらに向かって歩いてくる。屈強そうな男4人だが怖くは感じない。古牧先生や柳韻先生の方がよほど怖い。

 

 一番に注意しなきゃいけないのは女2人の方だ。遠目でも分かった。

 

 強い、恐らく相当な修羅場を潜り抜けて来ていると予想する。そんな風にどうやってこの場を切り抜けるか思考していると一組の男女がこちらにやってきた。

 

「失礼、織斑一夏君でよろしいかしら?」

 

 そう流暢な日本語でニコリと問いかける金髪が美しい女性(女Aと呼称)。年齢は10代後半~20代ほど、整った顔立ちとモデルのような体形が印象的である。

 

「あなた方は?」

 

 少し目をやりながら単刀直入に聞く

 

「私たちは、IS委員会から派遣された。警備の者です」

 

「警備?」

 

「ええ、なんでもIS操縦者の関係者を狙った誘拐犯がこのベルリンに潜伏しているという情報を掴み、急ぎ関係者達を確保をしていたのよ」

 

 見え透いた嘘をつらつらとよく言うものだ。

 

 だいたいそんな事になっていたら各国の外務省関係者が直ちに動くはずだし、俺は前回大会の優勝者の家族だ。ドイツよりも日本が先に動くのは明白。それをさもIS委員会が一手に警備を引き受けているような言い方からして引っかかる。

 

 

 

 もう良いだろう。ここらでとんずらかまそう…。

 

 

「…そうですか。それはわざわざ」

 

 にこやかにそう言いながら熱々のコーヒーが入ったカップに人差し指をかけ…。

 

「ありがとうございます!!!!」

 

 2人の顔にぶちまけた。

 

 男の方はモロに熱湯を顔に浴びたが、女の方は咄嗟に顔を両腕でガードした。

ちっ、どっちかと言えば女の方を沈めておきたかったが仕方ない…。

 

 そして俺は、座っていた鉄製の椅子を持ち上げ男の頭に叩き込み、そのまま逃走を開始した。後ろから叫び声が聞こえてくるが関係ない。当然だがベルリン関した地理感覚は、ほとんどない。今になってもっと会場に近いところを選べば良かったと思ったが後の祭りだ。

 

 

 

 

 走って走って、辿り着いたのが川付近の廃工場だった…。

 

 

 

 

 長時間同じ場所にいるのは、得策ではないが…ここで一息つこう。そう思い呼吸を整えながら次に逃げる場所を考えていると、突然扉を開く音がした…。

 

 バ、バカな!!いくらなんでも早すぎる!!一体なぜ…?そこでハッとした。慌ててポケットを調べてみると人の第一関節程度の大きさの機械が入っていた。

 

 …やられた、こりゃ発信器だ。恐らく入れたのは女の方だろう。あの騒ぎの中で、冷静にしかも瞬時に俺のポケットに入れたんだ。やはりただ者じゃなかった。俺がそんな思考に浸っていると声が聞こえてきた。

 

「織斑一夏君、ゲームオーバーよ。おとなしく出てきなさい」

 

 さっきの女の声だ・・・。こりゃ逃げられそうにないな。俺は素直に姿を現した。

 

「あら、先程振りね。ご機嫌いかがかしら?」

 

 皮肉のつもりか?笑えやしねぇ。俺は、そんな悪態を顔にも出さず

 

「その節はどうも、機嫌ですか?最悪ですよ」

 

 そんな風ににこやかに皮肉を返した。

 

「それは良くないわね。ところで、あまり私たちが現れた事に驚いていないようだけどなぜかしら?」

 

 相手の人数を改めて確認すると、男3人・女2。どうやら最初に一撃をかました男は脱落したらしい。しかしこれは純粋な質問だろうか?まぁ良いおしゃべりが長ければ長いほど俺にとっては利益になる。付き合ってやるよ。

 

「先程ポケットの中を探っていたらこんなものが出てきました」

 

 そう言って、出てきた発信器を腕を伸ばしながら相手に見せる。

 

「恐らく発信器の類でしょう。要するに俺の行動はあなた方には筒抜けだったってことですね!」

 

 そう言いながら発信器を握りつぶす。

 

「なるほど、それとどうして私たちが「偽物」だって分かったのかしら?参考までに聞かせてくれる」

 

「…またえらくはっきりと白状しますね」

 

「あれだけの思い切った行動は、何か確信がないとそうそう出来るものではないわ。あなたにはそれがあった。けど私にはそれが分からないのよ」

 

 さて、どれくらい引きのばせるかな…出たとこ勝負だ。

 

「…初めに感じたのは疑問です」

 

「疑問?」

 

「はい、IS委員会は確かにISの動きを監視することを前提としていますが、警備部門があるなんて聞いたこともない。更に警備は前回も今回もドイツが全面的に行っています。いきなりIS委員会が出ても主催国側の動きが制限されるでしょう。よってここで「IS委員会からの派遣された」というフレ―ズに疑問を持ちました」

 

「なるほど、理屈は通っているわね。続けてくれるかしら。」

 

「2番目に感じたのは疑念です」

 

「疑念…」

 

「もし仮に誘拐犯のような人間が潜伏していたなら、各国の外務省やエージェントが動いているでしょう。それに日本からの大会関係者は俺だけ、それも前回大会覇者「ブリュンヒルデ」の弟です。何者に変えても日本政府は真っ先に俺の確保を最優先します。あなた方が出てくること自体がおかしいんです。そして最後にこれで俺の疑念は確信へと変わりました」

 

「・・・それはなにかしら?」

 

分からないか・・・ならば教えてやろう。俺は女を指さしこう言い放った。

 

 

「香水でごまかしているつもりでしょうけど、あなたからは血の臭いがするんです!!!昨日今日の話ではない!!どれだけ拭っても消せないような濃密な血の臭いがね」

 

 

 しばらく場が沈黙したが目の前の女が笑いだした。

 

「ふふ、ふふふ、あはははっははは」

 

 俺に緊張が走った。髪の隙間から見える眼に「狂気」が宿っていたからだ。

 

「素晴らしいわ一夏君。あの短時間にそれだけの推理、思考、直感が出てくるなんて……称賛に値するわ」

 

 若干興奮気味に頬を赤らめながら女は言う。と、ここでもう一人の女が口を開いた。

 

「それぐらいにしとけよスコール。写真を見た時からこいつがただ者じゃねぇことぐらい分かっていただろう」

 

 …スコール?スコール……スコール!!??じゃあ、今喋っているこいつは

 

「あらそうね、ごめんなさいオータム。ついつい彼とのおしゃべりが楽しくて」

 

 そんな風ににこやかに女…いやオータムに語りかけた。

 

 

 

ああ、間違いない…こいつら原作でも出てきた「スコール」と「オータム」じゃねえか!!!

 




いかがだったでしょうか
感想並びに評価をお待ちしております。
また近々、誤字脱字の修正と改行作業を行いたいと思います。
ではまた次回。

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