皆様が楽しんでいただければ幸いです
ではどうぞ・・・
どうも傷だらけの織斑一夏です。あれから3日後に姉さんはドイツへと旅立っていった。これでしばらく一人での生活か~。うーん、左手は少し痛む程度だけど肝心の利き手がこの有様だし…食事とか風呂とかどうしようかな?そんな思考をしていると。
ピンポーン、ピンポーン
「ん?」
画面を見てみると鈴ちゃんがいた。
「鈴?どうしたの急に?」
「やっといたわね。どうしたのじゃないわよ。ずっと学校にも顔見せないで、クラスの皆も心配してたのよ!!」
あーそう言えば、しばらく学校にも行けてなかったな。…色々ありすぎてすっかり忘れてた。
「ごめん。今開けるからちょっと待っててね」
松葉杖をつきながら玄関の扉を開けた
「もう~一体どうしたのよ。一・・夏?・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鈴ちゃんの顔が急激に青くなりガタガタと身体が震えだした。
「あ…」
そこでようやく悟った。。この時俺は失念していた。鈴にケガのことを全然話していなかったのだ。
「キ・・・・・」
き?
「キャアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
辺りに響く鈴の悲鳴
「どどどどどど、どうしたのよ一夏その怪我は!?」
「あ、えっと、いや、その~」
あまりの鈴ちゃんの勢いに俺はしどろもどろになるしかなかった。
「ととと、とにかく家に入って!!!」
俺は鈴の促されるままに家に入った。
はい、今俺はお布団で寝ています。うーん見た目ほど悪くはないんだけど俺の言葉を頑として受け入れない鈴に半ば強引に寝かされているのだ。
「はぁ~~、ビックリしたわ…。寿命が縮んだわ」
「ごめんね、色々バタバタしてて連絡入れられなかったよ」
素直に謝った。
「一体何があったの?千冬さんは突然引退しちゃうし、一夏は大けがしてるし、分からない事だらけよ…」
至極真っ当な質問だ。うーんどうしたものか。これについては緘口令に近いものが言い渡されてしまったし・・・。さて、どうしたものか
「う~ん、ちょっと猛獣見たいのとやり合っちゃって…」
あながち間違いではないだろう。
「あんたドイツに何しに行ったのよ!異種格闘戦!?」
至極真っ当な突っ込みありがとうございます。
「本当にごめんね。これ以上の事は俺の口からはちょっと…」
「む~~」
眉間にしわを寄せながら唸る鈴ちゃん、しばらくすると溜息を吐いた
「はー、まぁ良いわ。いつもは、ぽわぽわしてるくせに時々とんでもないことするんだから、こっちは気が気じゃないわよ」
うーむ、なんだかお母さんに怒られているみたいだ…。でも心配かけたことも確かだし、ここは黙って謝るのみだな。
「本当にすみません」
「もう良いわよ。ところで、その怪我で食事とかお風呂とかどうするつもりだったの?」
「実は、それを今考えてたところなんだよね。どうしたものか…」
少し考えていると急に鈴ちゃんが真剣な表情で立ちあがった。
「一夏、ちょっと電話してくるわね」
そう言って部屋から出て行った。…なんだか嫌な予感しかしない
しばらくして部屋から戻ってきた鈴に唐突にこう告げられた。
「一夏、今日からしばらくここに住むわ。」
「……・…え???えーーーーーー!!!!!!」
突然何を言いだしてんだ!?この中華娘!
「ななな、何言ってんだよ鈴!そんなのダメに決まってるだろ!!」
「しょうがないじゃない。そんな松葉杖ついてる身体じゃまともに料理も着替えも出来ないし、お、お、お風呂にだって入れないじゃない!!」
おい!なんで風呂でどもった!?
「風呂は、身体拭くから大丈夫だよ」
「そういう問題じゃないでしょ!!と・に・か・く!アタシは、もう決めたんだから!!良いって言うまでここを一歩も動かないんだからね」
そう言うとドカリと胡坐をかいて俺に背を向けてしまった。
弱った。こうなると鈴は絶対に自分の意志を曲げない…。だが鈴が言う事も正論ではあるし…。
ハァ~、背に腹は代えられないか・・・。
「…わかった」
「…え?」
「鈴が言う事も正論だしね…」
「ほ、ホントに?」
「ただし2週間」
そう言って痛む左手で2本指を作る。
「2週間?」
「松葉杖がとれて、左手が治るのに2週間って言われてるんだ。その間、鈴の世話になる。この提案が受け入れられなかったら俺も絶対に首を縦に振らない。」
これが最大限の譲歩だ
「…分かった。それで良いわ」
不承不承と言った感じだが納得してくれたみたいだ。
「じゃあ私、家から荷物とってくるね。一夏はしっかり寝てなさいよ。」
そう言うとリビングから出て行ってしまった。
「ハァ~…」
思わず溜息が漏れてしまう。まさかこんなことになってしまうとは思ってもみなかった・・・。
さてはて、一体どうなる事やら・・・。
それから俺と鈴ちゃんとの共同生活が始まった。
食事風景
「一夏~、ご飯が出来たわよ」
そういってエプロンをした鈴ちゃんがお粥を持ってきてくれた。鈴が持ってきたお粥は所謂「中華粥」と言われるもので生姜とゴマ油の香りが食欲をそそった。
具はごはん・鳥の胸肉・青ネギと結構シンプルな作りになっている。まぁ怪我人には丁度良いだろう。
「い、一夏の手がそんなんだから、た、た、食べさせてあげるね」
そう言いながら顔を真っ赤にして震える手でレンゲを持ちお粥を一掬いして俺の顔まで持ってきた。
ブルブルブルブルブルブルブルブル
「あ、あの鈴?」
「あ、あ、あーーーん」
「いやね、だから鈴?」
「な、何よ!!私に食べさせてもらうのが不満だっていうの!?」
顔を別の意味で真っ赤にして詰め寄ってくる鈴ちゃん
「いや、そうじゃなくてさ…」
「だったら何だって言うのよ!」
「レンゲの中に…何もないんだけど」
「…へ?」
俺の言ってる事が分からなかったのか、鈴ちゃんがチラッとレンゲを見ている。そこには掬ったはずのお粥がなくなっていた。実は先程の手の振動でお粥が器に戻ってしまったのだ。
「……」
「……」
気まずい雰囲気が流れる。俺は特に悪い事はしてないがなんだか居た堪れなくなってしまう。
…はぁー、しょうがないか
「あーーん」
俺はそう言いながら口を開いた。
「え?」
鈴ちゃんが眼をパチクリさせている。
「食べさせてくれるんでしょ?あーん」
俺は鈴ちゃんにそう問いかけて再度口を開いた。
「う、うん」
幾分か落ち着いた鈴ちゃんが、お粥を掬って暑くないようにフーフーしながら
「あーん」
と食べさせてくれた。鳥ガラスープや生姜がよくご飯と絡み合ってて美味しいな。だからちゃんと感想を鈴ちゃんに伝える。
「美味しい~」
「ほ、本当に!?」
「うん、身体に沁み込むよ」
「…お、おかわりあるから、ゆっくり食べて」
少し頬を赤く染めながらも鈴ちゃんは食べさせる事をやめなかった。
お風呂風景
「・・・・」
「ほ、ほら一夏覚悟を決めなさい」
「う、うん。じゃあお願いします」
えー只今、お風呂場の中です。俺は腰にタオルを巻いており、鈴ちゃんは水着姿です。
あーー、ヤ、ヤバい、色々とヤバい…。
「じゃー頭から洗わよ。一応防水用にビニール袋かぶせてあるけど、濡れない様に気を付けてね」
「はーい」
俺が返事をすると、鈴ちゃんは早速シャワーを俺の頭にかけて行く。
ゴシゴシ。さすがは女の子と言ったところか、鈴ちゃんは丁寧に俺の髪を洗ってくれる。
「あー気持ち良い~」
ついついこんな言葉が出てしまう。俺の顔絶対こんな感じ→(◦´꒳`◦)になってるよ。
「ふふ、お客さ~ん。何処かかゆいところはありませんか~?」
緊張が解けたのか鈴ちゃんの声からも喜色の感情がうかがえる
「大丈夫でーす。とっても上手だよ」
「ありがとう、じゃあ流すわね」
そんな感じで背中と手も洗ってもらった。…え?さすがに前は自分でやったよ。
就寝風景
「それじゃあ、そろそろ寝ましょうか」
現在午後11:00頃
「うん。ところで鈴は俺の隣で寝るの?」
俺が聞くと、鈴は少し顔を赤らめながら
「そ、そうね。もし何かあった時に近くに入れた方が良いしね」
そう言いながら、せっせと隣で布団を敷いて行く鈴ちゃん
「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「うん、じゃあ一夏。おやすみなさい」
そういって鈴ちゃんは電気を消した。
チクタク、チクタク、チクタク、チクタク、チクタク、チクタク、チクタク、チクタク・・・。
「「(・・・・・・・ね、寝れない!!)」」
いや!寝れる訳ないじゃん!!隣に眠ってるのは美少女だぞ。しかも多分俺に好意があると思う。
むしろここまでしてくれるんだから、普通に考えて確実にあるでしょ!!
原作一夏!!お前は何で彼女たちの行為に気付かないんだ!
そんな無意味な悪態をつきながら眠れぬ夜は過ぎて行った。
学校での風景
「ちょっ!!一夏お前一体どうしたんだよ!!」
俺を見た弾君の開口一番のセリフがそれだった。
「いやーちょっと向こうで事件に巻き込まれちゃってさ~。心配掛けてごめんな」
「それはいいけどさ。その怪我で学校来ても大丈夫なのか?」
「見た目ほど怪我は酷くないから大丈夫だ」
「そっか、困った事があったら何でも言えよ」
「ありがとうな」
それからクラスの皆が代わる代わる様子を見に来てくれた。どうやら俺には人望と言うものがあるらしい。うーん、学校では普段目立たないように生活しているのに・・・。謎だ。
そんな感じで鈴との共同生活は過ぎて行く。
いかがだったでしょうか?
感想並びに評価をお待ちしております。
ではまた次回