IS~転~   作:パスタン

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久々の箒ちゃんの登場です。
皆様が楽しんでいただければ幸いです
ではどうぞ・・・


剣道大会 ~告げられた想い

 どうも織斑一夏です。早いもので中学3年生になりました。

 

 ケガも全快し、日々のトレーニングやISの勉強も順調に進んでいる。

 

 姉さんもドイツから帰国し1ヶ月ほど家でゆっくりしていた。ラウラはこの一年で特殊部隊の隊長まで上り詰めたそうだ。隊員との仲も良好で、副隊長であるクラリッサさんとは日本の文化の好きな者同士で意気投合し強い信頼関係ができたそうだ。

 

 …クラリッサさんは間違った日本文化の啓もう活動をしていたような気がするが…。まぁ良いか、ラウラが色んな人との交流を持つのは良いことだしね。

 

 千冬姉さん曰く向こうに居て一番辛かったことは俺の料理が食べられなかったことだそうだ。だからこの1ヶ月は姉さんのリクエストをほぼ全部聞いてあげた。見事なまでの食いっぷりだったことをここに記述しておく。

 

 それから千冬姉さんは今度からIS学園で教師を務めることが決まったとの事だ。ドイツで教官をしてから人に何かを教えることに思うとこがあったのだろう。今の姉さんは、どこか使命感に燃える良い目をしていた。今の俺から言えるのはこれだけだ。

 

俺はにっこり笑ってこう言った。

 

 「帰ってくる時に洗濯物は持ってきてね。スーツはちゃんと衣替えするんだよ。それと俺がいないからって部屋の掃除をサボっちゃダメだからね」

 

 俺の言葉を聞くたびに姉さんの顔が赤く染まっていき、最後には両手で顔を覆い小さくなってしまった。

 

…どうやら色々と聞かなければならないらしい、主夫織斑の降臨である。 

 

 

 

 

 さて俺は今、剣道の全国大会会場に来ている。原作では、力に溺れた箒は、この大会で優勝しているが試合後にそれが単なる憂さ晴らしでしかなかったことに気付いて強い自己嫌悪と後悔に陥っている様であった。

 

 ここでの箒がどうなっているかは知らないが、折角来たんだし一声かけられれば良いのだが…。

 

 その時、入場口が少しざわついた。…箒だ!大垂にしっかりと「篠ノ之」とあった。下を向いて表情は分からないが直感的に感じた。

 

何か言わなければダメだと…。

 

「箒!!!」

 

 俺はあらん限りの声を出す。突然の大声に周りは驚いているが気にしていられない。当の本人は慌てて周りを見渡し、俺を見つけるとまるで幽霊でも見たような表情を見せた。時間も無いしこれだけは言わなければ、あの駆逐系女子を奮起させた言葉にアレンジを加える。

 

「戦え!!!」

 

 箒の見が見開く

 

「戦え、戦うんだ!!!自分と戦え!!前を向くんだ!!戦わなければ勝てないぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 あの事件が私と一夏を引き裂いた。ずっと続いて行くと思っていた幸せな時間は音も無く簡単に崩れ去った。次の日から私は学校に行くことすら出来なくなった。

 

せめて、せめて一目で良いから一夏に会いたい、会って伝えたい、あの時言えなかったことを伝えたい。

 

 でも私の願いは神様に聞き入れてもらえなかったようだ…。それから直ぐに政府の重要人物保護プログラムで私たち家族は強制的に離散してしまった。

 

どうしてこうなってしまったのだろうか?

 

幼いながらに私は考えたが明確な答えは出てこなかった。

 

 最初は姉さんのせいにしようともしたが、それも出来なかった。姉さんと過ごした時間に嘘はない。あの一緒に過ごした時間があったからこそ姉さんを憎むことなんて出来ないんだ。

 

 しばらくして一本の電話が掛かってきた。姉さんからだった。盗聴されていることを告げたが心配することはないそうだ。姉さんは、ただただ私に謝った。そして自分は大きな隠し事をしている。でも私を思う気持ちに嘘はないそれだけは分かってほしい。例え私に憎まれようともこの思いは変わらないという事を泣きながら話すのだ。姉さんの声に嘘はない…。直感的にそう感じた。だからこそ一つ姉さんに質問をした

 

「姉さん…。私は姉さんにとって何ですか?」

 

 姉さんは、こう答えた。

 

「箒ちゃんは私の家族だよ。命を賭けても守りたいと思える大切な家族よ!!」

 

 不覚にも私はその言葉に泣いてしまった。確かに感じ取った姉の愛に私はどうしようもない喜びを覚えたからだ

 

「あ、あり、ありがとう姉さん。体に気をつけてね」

 

 そう言って一方的に電話を切ってしまった。もうこれ以上自分の感情を抑えることができそうになかったからだ…。

 

その日、私はひたすらに泣いた。

 

 あれから瞬く間に時間が過ぎていった。私は一夏から聞いた最後の言葉2つを実践しようとしている。

 

 1つ目が自分をコントロールするため。一夏から離れてからも欠かさず剣道と一夏から教えてもらった格闘術だけはしっかりと練習している。一夏だって戦っている。私も負けてはいられないんだ。だが決して力に溺れたりしない。むやみやたらと振るわれるのは暴力だ!私は絶対に溺れたりしない…。

 

でも2つ目は、今の私にはない…。

 

 私の大切な人、一夏がいないんだ。大切な人のため振るうべき力は、向けるべき矛先がないまま宙に浮く形になっている…。長らく続く引越しと聴取に私の心も限界に近づいている。

 

苦しい、悲しい、寂しい…。

 

 そんな陰鬱な気持ちを抱えながら中学生活で最後の大会に出場している。いっそうこの感情を相手にぶつけてしまおうかと思った。そんな時に私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

 この声は!?だいぶ声が低くなったが間違いない…。

 

 一夏だ‼どこ?どこなんだ!?あたりを回して見ると彼がいた。あの頃と比べるとかなり成長しているが紛れもない一夏だ。なぜ?どうして?と思考が流れたが更に一夏の声が響いた

 

「戦え!!!」

 

 一夏が必死に叫ぶ

 

「戦え、戦うんだ!!!自分と戦え!!前を向くんだ!!戦わなければ勝てないぞ!!!」

 

 その瞬間、私の全身を電気が流れた。そして私の頬に涙がこぼれた。また、助けられてしまった。

 

 すまない…、すまない一夏。私はもう間違えたりしない、もう諦めたりしない。ここで自分に負けてしまえば私は、あなたを想うことすら出来なくなってしまう。ありがとう一夏、何としても勝つ‼私は絶対に勝ってみせる‼だから見ていてくれ、私の剣を!!

 

 

 

 

 

 圧巻の戦いだった。流れる様な足捌きは相手を翻弄し、隙を見せた所に的確な一撃を加える。

 

 かの有名なヘビー級チャンピオンが言った名言「Float like a butterfly, sting like a bee(蝶のように舞い蜂のように刺す)」を体現するような戦い方だ。

 

 千冬姉さんとは違う、荒々しさが残りながらも美しい戦い。強くなった…本当に彼女は強くなった。優勝はもちろん箒だ。あの晴れやかな笑顔は、あの時の箒のままだった。

 

 今俺は会場の外にいる。なんとなくだが、彼女と会える気がしたからだ。

 

「一夏!!」

 

 振り返るとそこには道着のままの箒がいた。どうやら俺を探し回っていたらしい顔も少し赤くなっていた。

 

「久しぶり、箒」

 

「ほ、本当に、本当に一夏なのか?」

 

俺は無言で頷く

 

 彼女は一歩一歩近づいて確かめる様に俺の顔に触れた。俺は彼女の手を握りながら笑顔で答えた。

 

「優勝おめでとう。素晴らしい戦いだった」

 

それを聞いた瞬間、箒は俺の胸に飛び込んで泣き出した。

 

 暫くして落ち着いた箒と色々と話をした。終始笑顔の箒と聴き手に回る俺。

 

 

 そんな時、急に箒は真剣な顔で話し始めた。

 

「一夏、最後に会った日に話したことを覚えているか?」

 

「…勿論だよ。箒は言ってたな。私にも大切なものがあるって」

 

「覚えていてくれたか…そうだ。あの時言えなかった事を今此処で言わせて欲しい」

 

 それは、箒の願いなのだろう。箒がどんな時も大切にしていた。俺には聞く義務がある。

 

「聞かせてくれ、箒の答えを…」

 

 一つ頷いて箒はやや緊張した面持ちで答えた。

 

「私の大切なもの、それは…一夏、お、お前なんだ」

 

「……」

 

「いつも見ていた優しい笑顔も、私を守ってくれた鋭い目も、暖かい雰囲気も、全てが大切なものなんだ」

 

一息ついて、箒は話を続けた

 

「い、一夏‼」

 

「お、おう!?」

 急だったからどもってしまった…。

 

「私は、お前が好きだ‼‼」

 

 

 

え?………え??

 

ここで言っちゃった。




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