IS~転~   作:パスタン

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過去最大の長さになってしまいました…。
皆様が楽しんでいただければ幸いです
ではどうぞ…


友達の作り方、知らされる試験相手

 どうも織斑一夏です。座学を篝火先生に習う事になり1ヶ月が過ぎました。

 

でも授業で先生は必ずISスーツを着てくる。しかも授業中は、これ見よがしにお尻を振ったり胸を当てたりしてくるのだ。一度当たってる事を伝えたらいい笑顔で「当ててんのよん♡」と言われた…。

 

 誰か助けて下さい。俺近いうちにこの肉食系に食われてしまうかもしれません。さて実際ISを動かす訓練については…。

 

「一夏…それじゃ、昨日のおさらいから始めるね…」

 

「うん、今日もよろしくお願いします。『簪』」

 

 俺は、彼女に向かって一礼する。

 

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 彼女も慌てて俺に一礼した。

 

 さて、もうお分かりだろうが俺の訓練には、日本代表候補生である更識簪さん(さらしきかんざし)が特別に教官となってくれる事になった。ここまでに至った経緯を説明したいと思う。

 

 あの篝火さんの先生宣言の後、俺は食堂に向かうところだった。が、突然曲がり角から人が出て来て避ける間もなくぶつかってしまった。

 

「うお⁉」

 

「きゃ⁉」

 

 俺はよろめいただけで済んだが相手は持っていた大量のDVDケースをばら撒いてしまった。俺は慌てて相手に謝った。

 

「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です」

 

 相手はどうやら女性のようだ。衝撃が響いたのか、おでこを抑えてる。

 

………おや、この人のこと知ってるぞ二次元的な意味で。

 

 水色がかった髪は、セミロングほどの長さで切りそろえて、毛先は内側に向いており眼鏡をかけているこの人物。間違いない、原作での6番目のヒロイン更識簪さんだ。

 

 って今はほうけてる場合じゃない。俺はDVDケースを拾いながらジャケットを見ると「仮面バイザー The First」と書かれてあった。そういえば、簪さんの趣味はアニメ鑑賞だったな、中でも特に大好きなのが勧善懲悪のヒーローものだったと記憶している。

 

「!!!!!!」

 

 何気なく簪さんの方を振り向くと顔を真っ赤にしながら口をパクパクしていた。

 

 ヤバイ…。見られて恥ずかしい様だが取り敢えず落ち着かせないといけない。彼女が何か言う前に先に口を開いた。

 

「落ち着いて、取り敢えずDVDを拾っちゃおう」

 

「………(こくり)」

 

 少し間が空いたが、彼女が頷いたのを確認して再び散らばったDVDを集めて行く。一通り拾い終えてから、再び彼女を見ると顔はまだ赤いがどうやらある程度落ち着いた様だ。

 

 良かった〜、悲鳴なんてあげられたら暫く篝火さんに弄り倒されることが決定してしまうとこだった。

 

「あ、あの……」

 

 内心ホッとしていると簪さんが小さな声で呼びかけて来た。

 

「うん、何かな?」

 

 俺は出来るだけ彼女を怯えさせないように笑顔で対応した。

 

「あ、あり、がとう。それと…さっきは、ごめんなさい」

 

 そう言って簪さんは俺に向かって頭を下げた。

 

「いえいえ、俺もごめんね。怪我はないかな?」

 

「(こくり)」

 

 今度は、間を置かずにしっかりと頷いた。あ、そうだ。良い事考えた!!

 

「あの、半分持とうか?」

 

「え?」

 

「このままだとまた人にぶつかるかも知れないし、実はお願いもあるんだ」

 

「…お願い?」

 

「それは向こうに行ってから話そう。どうかな?」

 

 少し考えてから更識さんはおずおずと言った感じで

 

「…じゃあ、お願いします」

 

 と了承の言葉を頂いた。

 

「うん、じゃあ行こうか?」

 

「(こくり)」

 

 

「これは、此処に置いていいかな?」

 

「…うん」

 

 更識さんの部屋は、俺の部屋と変わらないと変わらない作りだったが、ショーケースには、結構な数のフィギュアが並べられていた。

 

「あ、あの…」

 

 おっと、女性の部屋をじろじろ見るのは失礼だな。反省

 

「ああ、そういえば自己紹介がまだだったよね。俺は織斑一夏です。知ってると思うけど世界で初めてISを動かした男だ。よろしくお願いします」

 

 なるべく驚かせないように挨拶をする。

 

「え、えっと、テ、テレビで見たことある…。さ、更識簪です。よろしくお願いします。」

 

 どうやら最初の挨拶はうまくいったようだ。何事もあいさつが大事です

 

「それで、お願いって何かな?…」

 

 そう!それが重要なんだ!!俺は意を決して更識さんにお願いした。

 

「お願いします!!更識さんの持っているアニメDVDを幾つか貸して下さい!!」

 

「……え?」

 

 訳の分からないと言った表情をする更識さん。そりゃそうだろう、俺は詳しい事情を話していく。

 

「実は、俺も結構アニメが好きでさ。でもここでの入居が決まってから慌ただしくなってね…。お気に入りのを持って来るの忘れちゃったんだ。だから是非とも更識さんの持っているコレクションを貸して頂きたいと思って…」

 

 この研究所にもレクリエーションルームはあるのだが…アニメがない!!!もう一度言うアニメがないのだ。そんな思考をしていると更識さんは慌ててDVDの山から1本の作品をとりだした。

 

「…あ、あの、この作品は分かる?」

 

 おお~、これは俺が最初に拾ったやつじゃん

 

「仮面バイザー The first。第一期仮面バイザーのリメイク映画だよね。バイザ~変身」

 

 ついつい、掛け声まで入れてしまった…。

 

「!!!じゃ、じゃあこれは?」

 

「おお!!超時空要塞マキロス。戦闘機からロボットになる描写は興奮したよ。あと歌で敵味方の心を開くって言うのも斬新だったね。デカルチャ~」

 

「これはどうかな?」

 

 更識さんのどもりが無くなくなった。緊張が解れてきたかな?

 

「こりゃまた随分と古風な…。科学忍者隊チャッカマンだね。世界征服を企む秘密結社と戦う、5人の少年少女の物語だっけ?確か三部作構成だよね?」

「当たってる…すごいね」

 

 よし、少し裏情報を入れてみるか

 

「そういえば知ってた?この作品、当時の製作者サイドはあまり良く思ってなかったんだってさ」

 

「!?その話、もっと詳しく聞かせて!!」

 

 すげー勢いで食い付いた!!よっしゃ、俺も熱くなってきた!こうなったらとことん話してやるぜ!!!

 

 

そんなこんなで更識さんとアニメ話で物凄く盛り上がってしまった。

 

「ありゃ⁉こんな時間か…随分と長居したみたいでごめんね」

 

「う、ううん、話が出来てとても楽しかったよ」

 

「俺も本当に楽しかったよ。でもこんなに借りて本当にいいの?」

 

 更識さんから紙袋一杯にDVDを借りてしまった。見た事ないがどれもこれも良作な予感がする。

 

「み、みんなオススメの作品、織斑君に見てもらいたい」

 

「分かった。じゃあ見たらまたアニメの話をしようね」

 

「ま、また、来てくれるの!?」

 

 更識さんが驚いたような表情をする。

 

「勿論、俺たちもう『友達』なんだからさ」

 

 俺の言葉を聞いた更識さんの表情が固まった。

 

「……と、とも、だち?」

 

「うん、俺達はもう友達だよ」

 

「…………」

 

 やべ!!ちょっと馴れ馴れしかったかな…?あ、謝らないと

 

「ごめん!いきなり馴れ馴れしかったかな…」

 

 だが、更識さんは慌てて両手を振ってきた

 

「ち、違うの!わ、私は臆病で…その、友達の作り方もよく分からなくて…」

 なるほど、彼女は自信が持てない故に人と話は出来るけど関係を作る事が困難だったのか…。

 

 よし、そんな時はこの方に限る!!!リリカルなN教導官、あなたの言葉をお借りします。

 

「大丈夫!」

 

「え?」

 

「簡単だよ。友達になる方法、すごく簡単」

 

 俺は自信を持って彼女にこう告げた

 

 

「『名前』を呼んで」

 

 

「な、名前?」

 

 キョトンとした表情をする更識さん

 

「うん、俺も更識さんの名前を呼ぶから」

 

「…い、一夏…」

 

 戸惑いながらも更識さんは俺の名前をしっかりと呼んでくれた。

 

 ならば俺もしっかりと返さなければならない。

 

「簪」

 

「!!!」

 

 驚いたような表情をする更識さん。今度はさっきよりも大きな声になる

 

「い、一夏!」

 

「簪」

 

 そう返すと、眼に涙をためて改めて俺の名前を呼ぶ

 

「い、いぢが!!」

 

 や、やばい…俺も少し泣きそうになってきた。こんなに泣き虫だったかな?

 

「簪」

 

 俺は何とか彼女に涙を見せないように笑顔になる。

 

「わ、わだじだち、こ、ごれで友達なんだよね!!」

 

「勿論!これからよろしくね」

 

 そう言って俺は右手を彼女に差し出す

 

「グス、うん…よろしく」

 

 彼女は俺の手を両手でギュッと握ってくれた。その表情は涙で濡れていたがとても良い笑顔だった。

 

 

 

 そんな事があって俺と簪さんは名前で呼び合う仲になった。次の日に俺にISの実地訓練を教えてくれるのが簪さんだった事にビックリだったが、どうやら簪さんも知らされていなかったらしくお互いにビックリ顔だった。

 

 実地訓練の中休みとなり、俺たちは食堂で昼食をとっている。ちなみに俺は牛塩鮭定食で簪さんは、カルボナーラだ。

 

「今日は、どうだったかな?」

 

「だいぶ機動も良くなったよ。上達が早いね」

 

 簪さんと話をするようになり今では、どもりも減って俺の事を本当の意味で友人として認めてくれたようだ。

 

「先生が優秀だからね」

 

 俺がそう言うと

 

「は、恥ずかしいからやめて…」

 

 と顔を少し赤らめてしまった。Oh~まじカワイイです簪さん。俺は心の中で親指を立てた。

 

「あーいたいた。一夏くぅ~ん、簪ちゅわ~ん」

 

 何処かの三代目大ドロボウのイントネーションで篝火先生が俺達を呼んだ。てゆうか何で知ってるの?

 

「どうしましたか?篝火先生」

 

「いや~実は2人に重要な知らせがあってね。とりあえず一夏君お尻触らせて」

 

 そんな事をニッコリ笑ってほざく篝火さん

 

「ひっぱたきますよ」

 

 ニッコリ笑って毒を吐く俺、そんな俺の言葉にビックリする簪さんである。

 

「ぐ!最近私への当たりが強くなってるような…」

 

「気のせいです。それより重要な知らせって何ですか」

 

 こんな時は、話題を変えるに限る

 

「う~ん、ちょっとここでは話し辛いね…。とりあえず2人とも食事が終わったら所長室に来てちょうだいな」

 

 そう言って篝火先生は去って行った。

 

「なんだろね?」

 

「(ふるふる)」

 

 簪さんも分からないと言った感じに首を振る。

 

「とにかく行ってみようか」

 

「うん」

 

 俺たちは、少し食べる速度を速めた

 

 

 

 

所長室

 

 俺たちは、所長室の扉の前でノックをした。

 

「失礼します。織斑一夏です」

 

「更識簪です」

 

「おー、入ってきてちょうだい」

 

 部屋の主の了解を貰い扉を開く

 

「やあ、早かったね。まぁ座って座って」

 

 俺たちは、促されるままに高級感溢れるソファーに座った

 

「それで俺たちに話って…」

 

「そうだね~…」

 

 歯切れが悪いな…。余程の事なのだろうか?

 

 …………………まさか!!

 

「簪さん」

 

 いつにない真剣な表情で篝火先生が話をする

 

「は、はい」

 

「君のIS「打鉄弐式(うちがねにしき)」の完成なんだが、……少々危うい状況にある」

 

「…え?」

 

 やはりか!!確か打鉄弐式は倉持技研が開発を進めていたが、俺の機体「白式」の開発やデータ収集に全ての技術者を取られてしまい、永らく未完成のままだったはずだ。何という事だ。こんな所で原作的な場面に遭遇してしまうとは…。

 

「な、なぜなんですか?」

 

「うん…。実は我が倉持技研では、一夏君の機体「白式」の開発をしているのだが、そちらにスタッフを回せと上からお達しがあってね。弐式まで開発がいかなくなる恐れがあるんだよ…」

 

「そ、そんな」

 

 簪の表情がみるみる青褪めていく。こんな事あっていいのか?…良い訳ないだろ!!冷静になれ篝火先生は「危うい状況」だと言っていた。つまり打開は出来るという事だ。

 

「篝火先生。危うい状況と言う事は何か打開策があるんですか?」

 

 俺がそう言うと簪さんが俺の方を向き、篝火先生がニヤリと笑う。

 

「さすが一夏君だね。冷静に相手の言葉を読み取り判断する能力、なかなか出来る事じゃないよ」

 

 教え子を褒める様な口調だが、今はどうだっていい。

 

「そりゃどうも。それでどうなんですか?」

 

「焦らない焦らない、確かに打開策はあるにはある…。だがそれには君の「犠牲」が必要だ」

 

「俺の犠牲ですか?」

 

「正確には君のIS、白式のことさ。打鉄弐式の完成度は8割強だ。後はソフトウェア関係だから、うちの職員が総出で当たれば簪さんのISは入学式に間に合わせる事が出来だろう」

 

 なるほど読めてきた。篝火先生の言葉を俺は引き継いだ

 

「代わりに俺のISは入学式までには間に合わない…ですか?」

 

 更に彼女の笑みは深くなる

 

「その通り!優秀な教え子を持って先生は鼻が高いよ」

 

 いっそそのまま折れてくれないかな~。と若干黒い思考が頭をよぎる

 

「な、何か怖い事考えてなかった一夏君!?」

 

 おや?顔に出てたかな?こんな時は素知らぬふりだ。

 

「気のせいです。それでその決定権は誰にあるんですか?」

 

 これが一番大事だ。この決定権が今誰に委ねられているか…。それによって俺の選択が重要になる。

 

「そりゃ勿論、この私さ。何たってこの第2研究所の所長なんだからね」

 

 そう言って胸を張る篝火先生、や、やっぱり大きいですね~。何がと言わないが…。

 

「痛!!」

 

 そんな事を考えていると、突然俺の脇腹に鋭い痛みが走った。見ると簪さんが俺の脇腹を抓っていた。

 

「あ、あの、ごめんなさい」

 

 こんな時は、男が折れるに限る。

 

「ふん!」

 

 プイッと顔を背けられた。やっちまった…。見ると篝火先生が必死になって笑いを堪えていた。くそー、覚えてろよ~。と、とりあえず話を戻さないといけない。

 

「そ、それで先生はどのようにお考えなんですか?」

 

「う~んそうだね~。…一夏君が決めて良いよ」

 

「……え?」

 

 突然の事に頭が回らなかった。。

 

「あの、何故俺なんですか?」

 

 至極真っ当な質問だろう

 

「うん、まぁ上から言われた事は仮決定だしね。それに面倒だし。」

 

 開いた口がふさがらない。ふざけているのかマジなのか分からん…。だが俺にとっては好都合だ。

 

「だったら迷う事なんてありません」

 

 俺はハッキリと彼女に告げた

 

「打鉄弐式の完成を最優先にしてください」

 

 

 

 

 

 

「打鉄弐式の完成を最優先にしてください」

 

 彼はハッキリと篝火所長にそう告げた。一夏君は最近出来た私の友達だ。出会いは私が注文していたDVDを部屋まで持って行く時に彼にぶつかってしまった時だった。そして彼に内容を知られてしまった。

 

 内気で臆病な私は、他人に自分の趣味を知られてしまった事への羞恥心で声も出せずに震えているだけだった。そんな私を彼は温和笑顔で落ち着かせ、DVDを拾うのを手伝ってくれた。それだけでなく部屋まで一緒に運んでくれたのだ。普段の私だったら拒絶してしまうのだが、一夏君の笑顔と雰囲気が本音のそれと似ていたのだ。何だか落ち着く笑顔だった。

 

 それから一夏君もアニメが好きだという事が分かり色々な話をした。色々な話をしてどこからか仕入れてきた裏話なんかも教えてくれた一夏君は私以上にアニメ好きだという事が分かった。話してる最中、一夏君は常にニコニコ笑っていた。本当に落ち着く笑顔だ。こんなに穏やかな心は久しぶりかもしれない…。

 

 私は、嬉しくてコレクションから厳選した作品を一夏君に貸した。一夏君がまた話をしようと言った時は驚いたが更に驚く事を言ったのだ

 

「勿論、俺達もう「友達」なんだからさ」

 

 ……友達?最初は理解できなかった。けどその言葉を心の中で反芻していく内に私は呆然となってしまった。

 

私達は…友達なの?

 

「ごめん!いきなり馴れ馴れしかったかな…」

 

 どうやら、私が気を悪くしたのだと勘違いしているようだ。私は慌てて否定し、自分の性格や友達の作り方が良く分からない旨を告げた。

 

 こんなこと今まで誰にも、本音にさえ言った事はなかった…。なのに、どうしてこうも彼には自然と胸に抱いていた事を口にしてしまうのだろうか…。会って数時間しかたっていない彼に、そんな戸惑う私に彼は笑顔で友達の作り方を教えてくれた。

 

「名前を呼んで」

 

 彼が教えてくれたのはこれだけだった。とてもシンプルで明快な答えだ。

 

「簪」

 

 彼が私の名前を呼んだ瞬間、体に電気が走った。でもそれは、決して不快ではない。優しく温かい彼の声が私の名前を呼ぶたびに、私が彼の名前を呼ぶたびに、私の心の氷は溶けていき、遂には涙が溢れてきた。そして彼は私に右手を差し出した。彼の眼にも薄っすらと涙が見えた。私のために泣いてくれるんだ。嬉しい。嬉しくてどうしようもない私は、両手で彼の右手を握った。その手はすごくごつごつしてたけど、いつまでも握っていたい手だった。

 

 そんな一夏と過ごす1ヶ月は、とても幸せだった。

 

 私は一夏にISの操縦を教えることになった。一夏は教えた事を直ぐに吸収し、その応用も自力で発見していった。私が褒めると嬉しそうな笑顔を見せてくれた。訓練が終わると2人でアニメを見て過ごしたり今までにない充実感に私は満ちている。

 

 気づくと私は一夏にどんどん惹かれている事に気付いた。

 

 そうか…、私は…一夏の事が「好き」なんだ。それに気付いた私はその日は眠れなかった事を記録している。

 

 そんな時に、篝火所長からの残酷な宣告…。長年制作されてきた打鉄弐式が完成しないかもしれない状況…。しかも、私が好きな人の機体が原因となっている。

 

 でも私は不思議と怒りや恨むといった気持ちがなかった。そして、私のISが完成するかしないかの決定権は一夏に委ねられた。途中、所長の胸を凝視していた一夏に制裁を加えたの全くの蛇足だ。

 

 だが彼は、何の迷いも無く私の機体の完成を最優先にして欲しいと告げたのだ。

 

 

 

 

 

「即決だね~」

 

「迷うことなんてありませんから」

 

「理由を聞いても良いかな?」

 

 にたりと笑って篝火さんが質問してきた事に対し、俺は真剣に答えた。

 

「彼女は日本の国家代表候補です。偶然ISを動かした俺と違って、必死に努力してこの地位を掴んだんです。そんな彼女が未完成のISを持たされるなんて理不尽過ぎます。」

 

 そう、彼女は必死に努力したんだ。自分の「姉さん」に追いつくために…。

 

「それに」

 

「それに?」

 

「大切な友達を助けない友達なんていないでしょ?」

 

 俺もニヤリと笑って篝火先生を見る。一瞬呆けるが、すぐに忍び笑いを浮かべる

 

「ぷっくくく、確かにそうだね。迷うことなんてないか」

 

 互いに笑みを浮かべる。簪だけが状況を分かってないようだ。

 

「分かった。彼女の機体は、この私が責任を持って完成させるよ。技術者の『魂』に誓ってね」

 

 力強い笑顔で篝火さんが答えた事で、簪もようやく理解したようだ。

 

「い、一夏、本当にいいの?」

 

「良いんだ」

 

「で、でも」

 

「簪!」

 

 少し強めの口調で彼女の名前を呼ぶ。

 

「ひゃい!!」

 

 そ、そんなに驚かなくても良いのに…。

 

「その代わり、俺と1つ約束してほしい」

 

「約束?」

 

 戸惑う簪に俺は伝える

 

「『勇気』を持ってほしい」

 

「勇気?」

 

 俺は頷く

 

「そう、どんな困難にも立ち向かっていける勇気を…ね」

 

 しかし、途端に簪はおびえた表情を見せてしまった

 

「む、無理だよ。私一人じゃ…。」

 

「誰も一人でなんて言ってないよ」

 

「え?」

 

「俺も一緒に戦う」

 

「!?」

 

「だから、簪も勇気を出して立ち向かってほしいんだ。『正義のヒーロー』の様にだ」

 

「!!」

 

「約束できる?」

 

 俯いた表情の簪が顔を上げる。いつもの弱気な表情じゃない。まっすぐ真剣に、戦う事を決意した眼だ。

 

「分かった。私、約束する。どんな敵にも絶対に退かない!!」

 

「うん」

 

 これで大丈夫だろう。もう彼女は間違ったりしない。この表情を見れば満足だ

 

「いよっし。これで1つ問題が片付いたね。で、次は一夏君なんだけど…」

 

 ああ、そう言えばそうだった。一体何だろうか

 

「君の相手が決まったよ」

 

「相手?」

 

「IS学園入試の実技試験の対戦相手さ」

 

 ああ、そうか。そう言えばあの時は試験なんて出来る状況じゃなかったな。まぁ山田先生あたりだろうけどね。原作一夏でも足を引っ掛けて終わりだったもの。

 

 楽勝でしょーーーー(*。>ω<)vブィッ~☆

 

「それで、一体誰なんですか?」

 

 俺が気楽な感じで聞くと

 

「ブリュンヒルデ」

 

と気楽な感じ篝火さんが答えてくれた。

 

 

ブリュンヒルデ?ああ、姉さんか?

 

………………………ゑ?

 

 

 

「イ、イ、イマ、ナント、オッシャイマシタカ」

 

「君の対戦相手は織斑千冬君に決まったよ。なんと!!向こうからの逆指名だよ」

 

 ………いやいやいや、いやいやいやいや!

 

「ま、まじですか…」

 

「大マジだよ」

 

 簪の方を見る

 

「(フイ)」

 

 眼を逸らされた…。少々汗が出ている。

 

 

 

 

オレオワタ\(^o^)/




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