ではどうぞ・・・
どうも織斑一夏です。春も半ばを過ぎ、暖かな日差しが気持ち良い今日この頃。ISの本格的な実習が始まった。
「今回はISの基本的な飛行操縦と武装展開のデモンストレーションを諸君らには見てもらう。織斑、オルコット、篠ノ之。それぞれはISを展開するんだ」
「「「はい!」」」
3人が揃って返事をし意識を集中させる。俺とセシリアは、ほぼ同時に展開。少し遅れて箒が展開した。白式の写真を見てイメージをインプットさせた事が、しっかりと反映されている。やはり練習は嘘を付かないな。
「ふむ、オルコットと織斑はなかなかの速さだな。篠ノ之は今後もう少し早く展開できるように練習しなさい。目標は2秒だ」
「は、はい」
「よし、では飛行開始!」
言葉と同時に俺は急上昇し上空で待機する。少し遅れてブルーティアーズが、更に遅れて紅椿が到着する。
「篠ノ之。初心者にしては上出来だが、スペック上の出力は白式やブルーティアーズより上だということを忘れてはいかんぞ」
「はい!」
ふむ、箒はうまいことイメージが掴み切れてないようだな。ちなみに俺は、自分自身をコントローラーで動かす様にイメージをしている。例えば十字キーで上下左右、R1で加速、L1減速。こんな感じが一番しっくりきている。
「むぅ…、なかなかに難しいものだ…」
ぼやく箒にセシリアが寄り添うように飛びながらアドバイスを送る。
「箒さん。空を飛ぶイメージは中々に難しいものです。私も一夏さんもそれぞれ明確なイメージがありますね。箒さんも色々な飛ぶものをイメージして自分にあったものを選ぶべきですわ」
「ああ、ありがとうセシリア。色々と参考にしてみる」
箒もセシリアのアドバイスに素直に応じる。
実は箒とセシリアは意外にも仲が良い。あの謝罪の後に簪を加えて俺を含めた4人でいる事が多くなった。今では3人共仲良しだ。
…でも食事の時は誰が俺の隣に座るかでよく揉める。そして毎回周りの視線が俺の胃のライフをガリガリと削って行くことを3人は知らない。一頻り文句を言い合ったらジャンケンをするのが恒例となっている。しかし未だに「修羅場」にならずにいるのでセーフだ。…セーフったらセーフなの‼︎
「よし、では3人とも次は急降下と完全停止だ。少々きつめだが、目標は地上から10cmだ」
おっと、指示が出た。
「了解しました。では一夏さん・箒さん、お先に」
そう言うと、セシリアは頭から突っ込み、地上スレスレで反転して完全停止をやって見せた。
「うまいものだ…」
「だね。それじゃ、次は俺が行くよ」
セシリアに習い俺も頭から突っ込み、地上が見えて来たところで反転して急停止した。測ってみると15cm程度だ。結構オーバーしちゃったかな?
「織斑も悪くなかったぞ。今後は10cmに近づけるよう練習するように」
「はい!」
先生の言葉に返事をして空を見上げた。
おや、箒も頭から突っ込んで来たな結構加速ついてるけど大丈夫かな?……ん?あれ?なんかこっちに来てないか?絶対こっちに来てるぞ‼︎ちょ、ま‼︎
ちゅどーーーーーん‼‼‼‼‼‼
「ぎゃーーーーーー‼‼」
辺りに砂ぼこりが巻き上がる。バリアでなんとか無事だがさっきの衝撃でISも待機状態に戻ってしまったようだ。とりあえず視界が悪いから声で無事なのか確認する。
「いたたぁ…大丈夫か?箒〜」
「うっ、うっ…何とか、すまない一夏…」
普段とは違い、弱々しい声だがどうやら心配ないようだ。だが…完全に油断していた。原作一夏のシチュエーションをまさか箒がやるとは…予想外すぎる。
つーか起き上がれない?何かが全身に乗りかかってる?身じろぎしてみよう
ふにょん
「ひゃん⁉」
「…え?」
なんだ今の艶かしい声は?…もしかして俺の胸の辺りに乗っかってるフカフカなものって‼
開けた視界で改めて確認すると、そこにはちょうど箒が俺を押し倒した状態で乗っかっていた。
しかも箒の「立派なものが」俺の胸の上でぽよんぽよんとしている。…ああ、これぞまさに桃源郷、桃だけに…。って違う違う⁉早くどかさないと、こんなとこ誰かに見られでもしたら…
「あーー!しののんがおりむーを押し倒してる〜」
早速ばれたー‼のほほんさんやめてー⁉そんな大声で叫ばないで!
「本当だ⁉大胆すぎるよ」
「すごい行動力ね。見習いたいわ」
「一夏君が受けか〜……多いにアリね‼」
うぉ〜…場がカオスになっている。箒は慌てて飛び退いたが顔は塾しすぎたトマトのように赤くなってしまっている。
「ほ、ほ、箒さーん!!」
セシリア来ちゃったー‼本当の地獄はここからなのか?
「授業中なのにそんな羨ま、ではなく妬ま、でもなくハレンチな行為に及ぶなど、このセシリア・オルコットが許しませんことよーー‼」
おーい、本音が漏れてんぞ。羨ましのか?妬ましいのか?
「こら、そこまでだ!」
織斑先生の声が響く
「はぁ、2人とも怪我はない様だな。再度ISを展開してこちらに来なさい。授業の続きをするぞ」
「これより武装展開を始める。まず織斑」
「はい!」
俺は正眼に構えを取りながら「一振りの刀」をイメージする。強くしなやかで、あらゆるものを断ち切る最強の刀。眩い光が手から放出され、それが収まると「雪片弐型」が展開されていた。うーん…時間的にはますまずかな?
「イメージはしっかりと出来ているようだな。今後はよりスピードを心がけるように。ではもう一つの武装も展開してみろ」
「はい!」
雪片を収納し、今度はもう一つの武装である格闘グローブ「八龍(はちりょう)」を展開する。(誤字ではありませんので悪しからず)
両手の甲には龍の上顎が装飾され、指には牙のような爪が装備されている。爪の長さは調節可能で最大で1m程度まで伸ばすことが可能だ。拳を固めることも剣のように手刀も出来る。また、この装備でも零落白夜を発動することが可能だ。
更にこの武装の特殊能力なのか、相手から受けたダメージの蓄積分がそっくり攻撃力へと変換される。使い所を間違わなければ頼りになる武装だ。
「こちらもイメージは纏まっているようだな」
「はい、イメトレを欠かさずにしました」
「うむ、良い心がけだ。引き続き頑張るように」
俺は頭を軽く下げて答えた。
「次にオルコット」
「はい!」
返事と共にスターライトmkⅢが展開される。すごいな…、1秒とかからなかった。
「流石は代表候補生だ。が、銃身は正面を向けるように展開しなさい。1秒を争う最中では命取りになるぞ」
「はい」
至極真っ当な意見にセシリア自身も思う所があったのだろう、素直に返事をする。
「次は近接武装だ」
「は、はい」
光の粒子がうまく纏まらない。
「まだか?」
「うう、インターセプター!」
こちらは先程とは違いコールを使わないといけない程にイメージが出来ていないようだ。
「ふむ、これに関しては練習が必要なようだな。織斑に懐を許したことがある以上、やっておいて損はないぞ。最後に篠ノ之、やってみろ」
千冬姉さんが箒の方に行くとセシリアがふくれっ面でこちらを睨みながらプライベートチャンネルで通信が入った。
『い、一夏さんが悪いんですわ!』
『えー、本当にそうかな?』
俺は優しく問いかけてみる。
『……すみません。本当は私が未熟なせいですわ』
素直でよろしい
『また、一緒に練習しようか?』
『は、はい是非ともお願いしますわ‼︎』
うんうん、笑顔が一番だ。そんなことをやってる間に箒の番がやって来た。だらりと腕を下げた状態から目を瞑りイメージを構築しているようだ。しばらくすると箒の両手には雨月(あまづき)・空裂(からわれ)が握られていた。
「まずまずだな。もう少しイメージを明確にする所から始めてみなさい。スピードに関してはそれからだ。」
「はい!」
と、ここで授業終了のチャイムが鳴る
「では、本日の授業はここまで。織斑、すまないが篠ノ之を手伝ってやってくれ。シャベルと土はそこにある」
そう言うと織斑先生と山田先生は去って行った。
「さてと、頑張りますか」
シャベルを片手に気合を入れる。
「す、すまない一夏」
申し訳なさそうに謝る箒
「気にしないで、先生に言われなくてもどうせ手伝うんだからさ」
「箒さん、私も手伝いますわ」
なんとセシリアから声が上がった。慣れない手付きだが頑張って土を運んでいる。正直予想外だな〜、良い意味で。
「私も」
「あたしも〜」
結局ほぼクラスの全員が参加して穴を埋めている。いやはや、これぞ青春って感じだな〜。俺も負けてられん!!そう思いながら俺もえっちらおっちらと土を運んで行くのであった。
「ここがIS学園…」
夜も更けて来た午後8時頃。あたしは今IS学園正門にボストンバッグ片手に立っている。帰ってきた…。遂にあたしは、この日本に帰ってきたんだ‼1年…言葉にすれば簡単だがその時間はあたしにとって永遠にも感じた…。彼のいない1年がこんなに苦痛だとは思わなかった。
元気かな?あたしがいない間にまた怪我とかしてないよね?一言連絡をすれば良かったかな?逸る気持ちを抑えてあたしは総合事務受付に向かって歩みを進めた。
この八龍は、清和源氏に代々伝えられたという8種の鎧の一つに数えられており、この8種の中にはなんと「楯無」という鎧も存在します。
いかがだったでしょうか?
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