IS~転~   作:パスタン

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鈴がフルスロットル
皆様が楽しんで頂ければ幸いです
ではどうぞ・・・


転校生はセカンド幼馴染でした3

 どうも織斑一夏です。昼休みとなり俺は食堂へ向う道すがら3人に鈴のことを説明している。

 

「ふむ、つまり彼女は私が引越したあとすぐに転校してきたのだな?」

 

「そう。そんで鈴の家が中華料理屋だったから、よく食べに行ってたんだ。あの頃は本当にお世話になったよ」

 

「なるほど」

 

「でも鈴さんはなぜ中国に帰ってしまったのですか?」

 

 そんなセシリアの質問に困ってしまう

 

「あ〜、それは俺からは言えないかな」

 

 苦笑いを浮かべながらやんわりと答える

 

「…何か事情があるの?」

 

「そんなところ」

 

 俺は彼女たちとの会話を切り上げ食堂へと歩みを進めた。

 

 

 

「待ってたわよ一夏!」

 

 おー、相変わらずの元気娘だな〜。

 

「お待たせ、食券出すからちょっと待っててな」

 

「うん」

 

 トレーを持ちながらも鈴と会話をする

 

「本当に久しぶり、帰ってきたなら連絡くれればいいのに」

 

「それじゃあ感動の再会にならないじゃない」

 

 ふふ、鈴らしいな。ちょっと背伸びしてる感が微笑ましい。

 

「なるほど、あっちでも元気だった?」

 

「勿論よ。あんたこそ怪我や病気してないでしょうね?」

 

「さすがに大丈夫だよ」

 

 まだあの時のことで心配してるのかな?流石にあんな怪我は早々…

 

「あんたの大丈夫は安心できないのよ!」

 

 …ごもっとも。とりあえず苦笑いを浮かべながら本日の昼食(和食定食)を貰って席に着く。

 

 

「さて鈴に紹介するよ。手前から篠ノ之箒、セシリア・オルコット・更識簪。箒のことは話したことはあるよな?俺が通ってた剣術道場の娘さん。セシリアと簪は代表候補生で俺にIS操縦を教えてくれているんだ」

 

「篠ノ之…あんたが…」

 

「?どうかしたか?」

 

「ううん。よろしくね箒」

 

「ああ、こちらこそ」

 

 どうしたんだろうか?少し複雑な表情だったな…。

 

「セシリア・オルコットですわ。よろしく鈴さん」

 

「うん、よろしくね」

 

 おお、原作と違ってすんなり挨拶できたな〜。

 

「さ、更識簪…よろしく」

 

「う、うん。よろしく」

 

 あ、あはは…やっぱ簪は初対面ではまだ緊張しちゃうか。しばらく雑談をしているとすぐに鈴は皆と打ち解けたようだ。もともとさはさばした性格だから男女関係なくすぐに仲良くなってたな。これも人望なのかな?さて俺から言っておかないといけないことがある。

 

「鈴…一つ言っておきたいことがあったんだ」

 

「なに一夏?」

 

「クラス対抗戦…全力で来い」

 

「!」

 

「下手な手加減はいらない。本気の勝負だ」

 

 原作では一夏の鈍感発言で鈴の怒りに火をつけてしまったが、俺は純粋に鈴と勝負がしてみたい!

 

「…分かった。あたしの力を存分に見せてあげるわ!!」

 

「ああ、期待してる」

 

「じゃ、後でね」

 

よし、これで本気の鈴と戦える…。そう言えばここにもう一人いたんだった。

 

「あ、もちろん簪もだぞ」

 

「ふぐ!!」

 

 簪が必死に胸を叩いている。あれ?喉詰まらせたかな?…え、顔色が段々と青く…

「か、簪が喉を詰まらて白目になったーー!」

 

「簪さんお気を確かにーー!」

 

「ちょーー!!簪カムバーーーク!!」

 

なんでこうなるかな?

 

 

 

 

 

 

アリーナ

 

「くっ!」

 

 目の前すれすれにレーザーが通る。思わず体を逸らして避けるが、体勢が不十分な所に箒が斬りかかる。咄嗟に八龍のクローを交差させ防御。

 

「せい、はっ、やぁ!」

 

お構いなしに押し込むような怒濤の連撃が襲う

 

「ぬぅ!」

 

 流石は全国大会を制しただけはある。見事な剣技だな。…だが甘い!!

 

「そこぉ!」

 

 箒が右腕を振り上げたと同時にその手に蹴りを入れる

 

「な!?」

 

 衝撃で雨月がふっ飛ぶ。いけるか?

 

「箒さん!」

 

 その声とともに箒を守るように四方からビットのレーザーが襲い、寸でのところをバックブーストで回避する。

 

「ちぃ!」

 

 ナイスアシスト…。本当に攻めずらいな。

 

 

 

ブーーー!!

 

 

 

終了の合図だ

 

「よし、今日はここまでにしよう。2人ともありがとう」

 

「ああ、最後は危なかった…。もし1人だったらやられていたかもな…」

 

「一夏さんも近接格闘がだいぶ上達しましたわ」

 

「うん、取り敢えず空中での格闘のコツは掴めたかな」

 

「それで鈴には勝てそうか?」

 

 箒の質問に少し間をおいて答えた。

 

「…長丁場になれば必ず不利になる、短期決戦に持ち込めるかがポイントになると思うんだ」

 

「やはりエネルギーの問題ですか?」

 

 セシリアの問いに無言で頷く。分かってはいたが白式の燃費が本当にひどい。最重要課題だよな…。

 

「どうにか出来ないのか?」

 

「こればっかりは今日明日で改善するものじゃないし、クラス対抗戦が終わったら簪に相談してみるよ。」

 

「うーむ。残念ながらそちらは専門外だ…」

 

「わたくしもあまりお役に立てそうにありませんわ」

 

「まぁーこれについては改めて考えてみるよ。それじゃあピットに戻ろうか?」

 

 

 

 

 

ピット

 

「ふぃー」

 

「お疲れ一夏。はいタオルとスポーツドリンク」

 

「おお鈴!わざわざありがとう助かるよ」

 タオルで顔を拭いてからキンキンに冷えたをスポーツドリンクを一口飲む。

 

「くぅ〜〜!最高!」

 

 それから静寂が辺りを包む

 

「やっと…2人っきりになれたね」

 

「あ、ああ」

 

 やばい…緊張するな。そう思っていると隣に座る鈴が俺の胸に頭を預けてきた。

 

「り、鈴…」

 

「寂しかった」

 

 その一言に、あらゆる思いが詰め込まれている。わずかに震える鈴を俺は優しく抱きしめた。

 

「鈴…大丈夫だ」

 

 言葉少なめに声をかけながら、しばらく鈴が落ち着くまで抱きしめていた。

 

「ありがとう一夏。もう大丈夫だから」

 

「おお」

 

 昔から気付いてたけど、…鈴も俺に好意を寄せている。…決めなきゃダメだよな。分かっているのに皆の気持ちに甘えている。はぁー俺って本当に恋愛ごとになるとダメだ…

 

「くっしゅん」

 

 やべ、体が冷えたな

 

「ごめんね一夏、体冷えちゃったよね」

 

「大丈夫、でもそろそろ戻るよ。シャワーも空く頃だし」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「シャワーも空く頃って…1人部屋じゃないの⁉」

 

「あ…」

 

 やべ、口が滑ったー!

 

「あ、いや、えっと」

 

「い・ち・か〜?」

 

「は、はい…」

 

「どういうことか説明してくれるわよね〜」

 

 殺される…。下手をすれば殺されてしまう。

 

「はい!ルームメイトがいます!!」

 

「はぁ!?ルームメイト!一体誰なのよ!誰なのよ!!」

 

 俺の肩を掴んで揺さぶる鈴に一言で答えた。

 

「ほ、箒…」

 

「箒って…あの箒のこと!?どうしてそうなった!!」

 

「い、いやね。1人部屋が間に合わなかったから…やむを得ずなんだよ~」

 

「ちょっと!それってつまり寝食をともにしてるってこと!?」

 

「そ、そうなるのかな?」

 

「そうとしかならないでしょうが!あーもー、こうしちゃいられないわ」

 

 そう言うと鈴は一目散に出口に向かって走り出した。

 

「お、おい鈴!」

 

「一夏!ちゃんとシャワー浴びなさいよ!風邪引かないように長袖のTシャツを着ること!いいわね!!」

 

「……」

 

 鈴は一気にまくしたてるとそのままピットから出て行ってしまった。

 

 

 

 いや、なんというか…

 

「鈴…まじオカン」

 

 俺の呟きは虚しく消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳だから部屋代わって」

 

「だが断る」

 

 笑顔で両手を合わせてお願いする鈴とそれを笑顔でぶった斬る箒。あ、鈴の目尻がピクピクしてる…。

 

「い、いやー、箒も男と同室なんて大変でしょう?だったら…」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「…」

 

「…」

 

 ちょっと、2人とも笑顔が消えてるよ!!瞳孔が開いてるよ!?怖いです…ものすごく怖いです!

 

「代わって…」

 

「嫌だ」

 

「代われ」

 

「お断りだ」

 

「お・ね・が・い」

 

「い・や・だ」

 

ブチ…!あっ、なんか切れる音がした。

 

「代われって言ってんでしょう!こんのモッピーめー!!!」

 

「嫌だと言っているだろがー!!てか誰がモッピーだ!!このちっぱ鈴めー!!!」

 

「誰がまな板貧乳娘じゃーーー!!」

 

「そこまで言ってないわーー!!」

 

イッピー知ってるよ!箒も鈴も強情だってこと。

 

そしてイッピー分かってるよ!これが修羅場だってこと!

 

「「一夏!!!」」

 

「はい!ごめんなさい!!」

 

「なに謝ってんの?それより一夏!あたしの味方しなさいよ!幼馴染でしょ!」

 

「一夏!鈴をどうにかしてくれ!幼馴染だろ!!」

 

 あーー、就寝前に板挟みですか?誰か助けてください。…しかたない鈴には悲しいお知らせをしないといけないな。

 

「はぁ〜鈴…部屋の交換なんて不可能だよ」

 

 俺は断言する。

 

「な、なんでよ!?」

 

 戸惑う鈴に俺はさらに続ける。

 

「まずは1年の寮長に許可を貰わないといけないけど誰だか知ってる?」

 

 そう、これが最初の障害にして最大の障害なのだ。

 

「そう言えば知らないわね。まぁー誰が来てもあたしなら問題ないわよ」

 

 うわ〜、なんてことを…。鈴は全然気づいてないけど、箒も思わず可哀想な子を見る目になってるよ。無知って怖いな…。

 

「で、誰なの?今から乗り込んでやるから!」

 

「その…姉さん」

 

「……は?」

 

「1年の寮長は千冬姉さんなんだ」

 

「……」

 

 あまりの事に大口を開けて呆然としてしまう鈴の肩に優しく手を置く箒、そしていい笑顔で口を開いた。

 

「では鈴、逝ってらっしゃい。短い間だったが楽しかった。武運を祈ってるぞ」

 

 この子、清々しいほどの笑顔でとんでもないこと言っちゃったよ!?

 

「いけるかー!理由を告げた途端にアイアンクロー確定じゃないのよ!?ちくしょー神様のバカやろーー!!あんたなんて大嫌いだーー!!!!」

 

 鈴は泣きべそかきながら捨て台詞を残して部屋を出て行ってしまった。そして残された俺たちはなぜか居た堪れない気持ちになってしまった。

 

「……」

 

「……」

 

「…一夏、もう寝よう。なんだがドッと疲れてしまった」

 

「奇遇だな箒…俺もだ」

 

俺たちは力なくそれぞれのベットに入り眠りについた。




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